東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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どうも!ラギアです!
ふう、タグ詐欺に回避だぜ!(もう遅い)
妖夢、ヒロインだかんね!
こんかいは、俺にしては長めです。
4500ですって!あらやだ奥様!短いじゃない!
・・・これでも、頑張りました。
ここまで書きたい!ってのまで書いたらこうなりました。
では、どうぞ!


第三章第三話「氷精暴走」

階段を上りきった少女は、隔ととても良く似ていた。

俺はその女の子をじっと見てしまった。

「こんにちは。少し遅れてしまいましたかね・・・?」

その少女は頭をかきつつ照れた様子で挨拶をする。

・・・声も、隔とそっくり・・・いや、同じだった。

「・・・隔・・・!?」

「え?」

俺は思わず声に出してしまった。

その白髪の少女は困惑した様子で答える。

・・・良く考えれば、別人だと分かったはずだ。

しかし俺は。

「隔ーー!!」

少女に向かってあろうことか飛びついてしまった。

「ええっ!?」

少女は突然の事に叫び声をあげて、戸惑う。

しかし直ぐに腰に下げてある長刀を抜き。

俺に向かって振りぬく。

幸い峰うちだったため、死にはしなかったが。

頭に高速の斬撃が入り、俺は気を失った。

少女は、

「ああ・・・やってしまった・・・!」

刀を手に、震えていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ほら、おきろー」

額を何かで叩かれている。

俺は目を開けた。

そこは霊夢の家の和室で、いつのまにか魔理沙も起きていた。

頭がまだジンジンと痛む。

俺はすこし顔をしかめながら、起き上がった。

霊夢は俺の額から手をどける。

「全く、隔と勘違いして別の子にとびかかるなんて・・・言葉も出ないわ・・・」

霊夢は相当あきれた様子でこちらを見てくる。

「・・・いや、つい・・・」

俺は言葉に詰まる。

横を見ると、さっきの白髪の少女が咲夜さんの後ろに隠れていた。

「あ、白髪の人・・・さっきはすみませんでした!」

俺は頭を下げる。ドン!と畳が揺れ、白髪の少女は体を震わせた。

現実でやったら間違いなく警察行きだ。

「・・・大丈夫です。何でさっき飛びかかってきたんです・・・?」

少女はまだ咲夜さんにしがみついている。

それは人を恐れる小動物のようだった。

そんな事をここで言えば、今度は峰うちでは済まないだろうが。

「えっと、話すと長くなりまして・・・」

俺はこの世界に来た理由、隔のこと、そして今までの事を話した。

「なるほど、危ない人ではないと・・・。」

その少女は咲夜さんの後ろからおずおずと出てくる。

「はい。そう思って貰えたら・・・」

「ただ馬鹿なんですね・・・」

少女の褒めて落とす攻撃!

効果は抜群だ!

「・・・ま、お互い自己紹介しといたら?」

咲夜さんが苦笑いしながら提案する。

「天音 真です。・・・よろしくお願いします」

「・・・魂魄 妖夢です・・・宜しくお願い致します。・・・敬語、使わないで大丈夫です。」

それだけ言うと、やはり咲夜さんの後ろに隠れてしまった。

咲夜さんはお姉ちゃんみたいに前行きなさいよーとか言っていた。

霊夢がパン、と手を叩き、皆が霊夢を見る。

「会議を始めるわ。まずは、今回の異変の詳細よ。」

霊夢は身振り手振りも入れ、話し始める。

「最近、冥界の・・・生と死の境界線で不審な何かが目撃されたわ。その者は楽器、琴を持っていたとの事。そいつが琴を弾くと、魂・・・俗にいう幽霊ね。が境界線を越えてこちらに来たらしいわ。」

そして、と霊夢は続ける。

「居場所を求めた魂は、より強い者に入ろうとする。・・・そのせいで、妖怪などに入る事があった。」

魂の、いわば媒体か。

「妖力と霊力。異なる力が一つの体に入り、暴走するという事例が各地で見られる。」

霊夢は机をバン!と叩く。

「そこで!私たち異変解決メンバーは異変の元凶を倒し、各地の暴走を止めるという任務を果たす!」

暴走。

恐らく、妖力と霊力がぶつかり合い自我が保てなくなり・・・二つの力だけが制御できずに暴れまわっているのだろう。

もう何か所か事件が起きているらしい。

「今からチームを言うわ。・・・これは今回の異変の元凶、そしてバランスを見て結成した。」

霊夢は紙を取り出し、読み上げる。

「一個目のチーム。私、魔理沙、咲夜の三人。」

・・・となると。

「二個目。真、妖夢の二人。」

紙を机に置き、霊夢は高らかに宣言する。

「この二チームは早急に異変解決を目標とし、自分なりにあたりを回る事!」

霊夢は時計を見る。

今は1時20分だ。

「1時30分には出かける事ーーー以上を持って、会議を終了する。」

俺たちはチーム事に集まり、備品のチェック、作戦会議を始めた。

 

 

「・・・さて、どうする?」

俺は無難に質問を投げかける。

・・・正直、気まずい。

「とりあえず、色んな所を回って見ましょう。」

妖夢は刀を抱きながら答える。

恐らく、かなりの業物だ。

鞘に桜の飾り付けがしてある。

さっき少ししか見えなかったが、刃も綺麗な銀色に光っていた。

そして、もしかしたら自分の身長より高いかもしれない長刀を使いこなしているこの少女。

もう、達人レベルだろう。

「じゃあ、行こうか。」

「・・・はい。」

もう霊夢たちは出発していた。

俺たちは霊夢達が行ったのと逆方向に向かうことにした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「いやはや、見事に何も無いなあ」

霊夢たちと逆に来てみたが、暴走している妖怪も、ましてや異変の様子など微塵も感じられない平和な風景が広がったいた。

「そうですね」

妖夢もあたりを見回し、何かないかを探す。

あるのは木と草。

そして虫だけだ。

木陰は涼しいが、やはり日向は暑い。

風が吹き抜けるのは本当に気持ちがいい。

ちなみに俺は黒いスーツの上を脱ぎ、白いワイシャツの袖を捲っている。

妖夢も暑そうにしている。

そのとき、一筋の寒風がふいた。

おお、気持ちいい・・・

・・・え?

「真さん!今の!」

「ああ、行ってみよう!」

こんな真夏に冷たい風が吹く。

そして、姿が見えないのに俺たちまで届く。

・・・暴走か。

俺は嫌な予感を感じながら、風の出所まで走った。

 

走っていけば行くほど、寒くなっていく。

俺はワイシャツの袖を戻し、上のスーツも着ようとした。

・・・後ろを見ると、妖夢がかなり寒そうだ。

「・・・妖夢、これ。」

俺が黒いスーツを差し出す。

妖夢は呆気に取られていたが、余程寒かったのかすぐに着た。

「ありがとう、ございます。」

俺たちは森に入った。

葉っぱにはもう霜が降りている。

木々には時折氷がまとわりついていた。

俺たちは森を抜け、湖に出た。

湖にはすでに氷が張っている。

そして、その上に。

ーーー氷精、チルノが居た。

チルノは確かに強い。

しかしそれは、妖精内での話だ。

霊夢や咲夜さんには、遠く及ばないだろう。

しかし。

今のチルノが纏う冷気は、いつもの冷気とは一線を凌駕していた。

極寒。それ以外の言葉は要らない。

南極や北極を遥かに超える。

彼女は今、冷気を完全に支配していた。

彼女は後ろを向いていたが、こちらに振り返った。

いつもの、無邪気な水色の目ではない。

濁った、藍色の目をしていた。

チルノは俺たちを敵と判断したらしい。

軽く、ゆっくりと手を上げた。

それだけで、冷たい風が周囲から吹く。

渦巻き、湖に集まった風は。

水をまき上げ、一つの巨大な氷の腕を作り上げる。

「バースト!」

俺は霊力を体に流し、戦闘態勢に入る。

しかし、チルノは氷の腕を振っただけだった。

それだけでとてつもない強さの風が吹き荒れ、冷気を集めた。

地面が氷始める。

俺は急いで跳び、回避をした。

しかし妖夢は。

居合の構えをしていた彼女は、膝の下まで氷に捕まり。

剣は全体が分厚い氷に覆われ、氷塊となっていた。

「くっそ!」

俺は妖夢に気が向かないように、チルノに攻撃を仕掛ける。

人差し指と親指をたて、レーザーを放つ。

が。

氷の表面はとても滑らかで、鏡のように。

レーザーを反射した。

しかし、当初の狙いは上手くいき、狙いが俺になった。

「結界[双対の禊]!」

俺は自分の周りに四つの結界を生成する。

チルノは霰を作り、それを弾幕にしてこちらへ放つ。

広く、万遍無く撃たれた霰を俺は自分と妖夢に当たる分だけはじいた。

・・・鋭い。

いつもの彼女とはまるで違う、計算され、洗練された動き。

次に彼女は巨大な氷塊を生み出し、それを俺たちの上に落とす。

・・・妖夢が居る。

避けるわけには、行かない!

俺は四つの結界を全て防御に当てる。

ドゴォっと、一瞬止まるが。

少しづつ、押されていく。

ひびが入り、結界が崩れそうになる中。

俺は結界を斜めにずらし、俺たちの目の前に落とす。

結界は全て割れるが、ひとまずは防げた。

しかし。

チルノは無慈悲に、氷の巨腕を振り上げていた。

湖から伸びるそれは、一回当てればひとたまりもないであろう威力を秘めていた。

ポス、と。

俺の背に、何かが当たる。

それは先ほど妖夢に貸した、黒いスーツだった。

妖夢を見ると、もう腰まで氷が侵食している。

まだ上半身が自由なうちに、このスーツを渡したということか。

もう顔も青く、息も荒くなってきた彼女は喋る。

「・・・もう、私はダメかと。真さんは、霊夢さんや魔理沙さんを呼んできて下さい。」

妖夢はそこで言葉を切り、大きく息を吸い込む。

「そのスーツ、綺麗なうちに返しておきます。・・・今は、異変の解決が最優先です。」

もう、体の半分が氷に包まれていた。

「さあ、行って・・・」

俺を押した手は冷たく。

弱弱しく、力強かった。

俺はその場を離れる。

そして、来た道を戻るように走り出す。

妖夢の、儚げな笑みを思い出しながら。

氷の腕が振り下ろされ。

その拳は無慈悲に、妖夢をーーー

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

氷が、体をどんどん侵食している中。

真さんが、注意を自分に向け、私を守ってくれている中。

私は、自分の命が減っていくのを感じながらーーーー

何もできずに居た。

せめて。

彼が貸してくれたこのスーツは返そう。

私は冥界・・・死に、最も近い場所に住んでいた。

命は、儚く一瞬で砕けるものだと。

命あるものは、いつか必ず死ぬと。

分かっていたのに。

 

死ぬのは、こんなにも怖いことなのか。

 

私はスーツを脱ぎ終わり、彼にコートを渡す。

私の血や肉で、汚れないうちに。

彼は助けるべき人が居る。

そして、幽々子様を守る私の変わりなんぞ、いくらでもいる。

隔にとって、真は勇者だ。

幽々子様にとって、私は庭師だ。

なら。

私の命一つで。

勇者を救い、異変を解決できるなら。

これほど安いものはない。

私は彼に行け、という。

そして、一言。

 

スーツ、ありがとうございます。

 

とても、暖かったですよ。

 

彼には届いてないかもしれない。

でも、これで良い。

氷の腕が、風を切り裂き、私に迫る。

無慈悲に振り下ろされる腕は。

ここに、赤い花を咲かせるのだろう。

私は目を閉じ、静かに待った。

 

 

 

 

ドッゴオ!

と、大きな音がする。

・・・私の体は、潰れていなかった。

私は目を開ける。

そこには。

 

氷のこぶしに己の拳をぶつけ。

鮮血が飛び散っているのにも関わらず。更に力を込め、押し返そうとしている。

 

天音 真の姿があった。

 

そこに、彼の姿はあってはならないのに。さっき、言ったのに・・・!

「何故!?私のことはほっとい「俺さあ!!」

私の叫びは、彼の言葉に遮られる。

「俺さあ!馬鹿だからさ!」

彼は氷の拳を押し返し、自分の手から滴る血を振り落とす。

「人を見捨てて逃げるなんて事!出来ないんだよ!」

真はニヤッと笑い、私にスーツをかぶせる。

そして、私にまとわりついた氷を砕き、落とす。

「後で。」

私の氷を落とした少年は。

「あいつを倒した後に、スーツは返してもらうよ。」

そう言って、笑った。

流れる血なんて、気にせず。

友達に、笑いかける感じで。

私の、体に。

温かさが、戻る。


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