東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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短いです、すみません。
では、どうぞ!


最終章四話「激突」

「月光ノ夜桜!!」

 

幾度も幾度も地面に叩きつけられ、殴られたのかもう暁はボロボロだった。

しかし放たれた漆黒の斬撃は鋭く光り、黄昏の足元を抉る様に突き進む。

黒き瞳は光を失わず、強く輝いていた。

 

「ふむ・・・まあ、結構強くは成ったみたいだね。」

 

黄昏は訝しむ様に評価を下し、暁の攻撃を弾き飛ばしながら右手に妖力を集中させる。

紫紺に煌めく球体は小さく小さく圧縮されながら回転し、周囲の空気が竜巻の様に渦を巻き始めた。

 

「飛べ、天鴉(あまからす)

 

瞬間、黄昏の掌から紫色の球体が放出。

空気を切り裂きながらそれは翼を広げ、暁に向けて突っ込んだ。

 

「纏・火!」

 

大妖怪の、初めて見せた技。

少なからず警戒した暁は自身に火を纏い、攻撃力と防御力を格段に上昇させた。

小太刀を逆手に構え、体を捻りながら暁は天鴉を縦に切り裂く。

それと同時に暁は姿勢を低くしながらも前に飛び出し、柄を強く握りしめた。

 

 

・・・しかし、背後から二つの鴉が暁を吹き飛ばす。

 

真っ二つに分断された天鴉は一つ一つが独立した妖力の鴉となり、同時に暁に体当たりしたのだ。

肺から空気を一気に吐き出し、暁は地面に叩きつけられた。

苦し気に呻く暁を見下ろした黄昏は足を軽く振り上げ、無防備に晒されている暁の腹部を蹴り飛ばす。

 

「ガッ・・・」

 

声にならない声を漏らし、再び暁は悶絶しながら地面を転がった。

 

痛くて、辛くて。

誰も助けてくれる人は居ない、孤独な闘い。

 

それでも、彼女はあきらめなかった。

 

「纏・雷・・・!!」

 

小太刀を杖代わりにしながら、震える足に鞭を打ち暁は立ち上がる。

泥にまみれた頬には額から滴る血が流れ、口からは荒く息が吐き出されていく。

青白い雷が刀と暁に纏わりつき、神速とも言えるであろう速さを暁に与えた。

 

目の前には天鴉、奥には余裕そうな黄昏。

 

柔らかく、でも俊敏に彼女は体を沈めーーー

 

地面を、蹴り飛ばした。

 

立ちふさがる天鴉の間を走り抜け、最速で黄昏の懐に潜り込む。

紫電を激しく散らす白刃を唸らせながら、暁自身もまた叫ぶ。

 

「月光ノ夜桜!!!」

 

至近距離から放たれる、神速の雷撃。

必ず当たり、少なくとも致命傷は与えるであろう必殺の一撃を。

 

「遅いよ」

 

黄昏は、右腕一本で消し飛ばした。

余りの風圧に暁の小柄な体躯は宙に舞い、衝撃波で纏っていた雷は全て打ち砕かれる。

 

 

無防備に、至近距離で晒された暁の体。

 

黄昏は今日初めて一歩踏み込み、掌底を放った。

 

パアアアアンンンッッッ!!!

 

肌と肌がぶつかり、気持ちのいい音を大きく響かせる。

 

 

 

蒼い軌跡を宙に描き。

黄昏の掌底に自身の握りこぶしを突き合わせた少年ーーーー

 

 

「悪い、遅れた」

 

天音 真は暁の前に立ちはだかった。


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