東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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パ「・・・最後分かりにくくないかしら?」
ラ「ね。・・・まあ友達が分かって無かったら明日補足説明をします。」
パ「ふうん。あ、パチュリー・ノーレッジです。」
ラ「動かない大図書館、だっけ?」
パ「まあまあ動くけどね。所で、私の出番はあるの?」
ラ「言えない!最終章かエピローグが次の出番だなんて!」
パ「遠すぎないかしら!?」
ラ「ギクッ」
パ「というか・・・最終章って、次が最終章でしょう!?」
ラ「ギクギクッ」
パ「・・・ロイヤルフレア」
ラ「え、やめてくださあああああああああああああああ!!!」

上手に焼けましたー♪

パ「じゃあ、どうぞ。」


第十章第十七話「最善手」

暁の声と雰囲気が一瞬、魂を取られる前の暁に戻る。

お互いに斬撃が少し鈍り、苦し紛れに俺は自身の刃を暁の小太刀に衝突させ、強引に一連の攻撃を中断させる。

桜花・居合。

その名の通り刀を鞘に納めた状態から放つ居合切りの類だ。

精神を集中させ、二撃目三撃目とは続かせない。

たった一回斬りつけたら失敗でも成功でも再び納刀する。それが桜花・居合である。

つい何時もの癖で納刀してしまった俺は、さっき俺の名を呼んだことに対して動揺しながらも暁に視線を送った。

 

「暁!?お前魂が戻ったのか!?」

「・・・なんのことー?」

 

しかし、俺の呼びかけに暁はまた首を傾げる。

さっきのは聞き間違いなのか?それか、本当に偶然なのか?

頭の中を様々な疑問が飛び交い、焦燥に俺は一度暁から意識を外してしまう。

瞬間、背筋も凍るような冷気が真上から放たれた。

 

ぶれた目線を戻せばそこに暁の姿は無く、舞い散った木の葉があるだけ。

殺気も空気も、何もかもがまるで凍り付いたかの様なーーーー

 

「纏・氷」

 

声と同時に上を振り向けば、そこには体の様々な場所を氷の鎧で覆い、小太刀に鋭い氷の刃を纏わせている暁が居た。絶大な冷気、霞むほどの斬撃。

真上から彼女の全体重をかけて放たれた一撃は、通った所を一瞬で氷漬けにしながら俺にその矛先を向ける。

 

あの氷を瞬時に溶かす事は、俺には出来ない。

そして今は真冬。氷が自発的に溶ける事は無いだろうし、護りに徹し始めればあの冷気で体力を削られてしまい、まともに戦う事すら難しくなる。

 

・・・簡単に言おう。

 

もう、真っ向勝負しか俺には残されていない。

 

柄を握る左手の親指で桜ノ蕾の鍔を弾き、刀を抜き放つ。

空気に触れた白刃は鋭く光を反射し、青白い光を纏った。

 

姿勢を低くし、俺は刀を両手で構える。

切り上げの体制になった俺は、そのまま射程距離拡張も込めようと霊力を解放するが。

 

「あ・・・れ・・・?また・・・?真?」

 

再び暁の顔に驚きの色が浮かび、俺の名前が呟かれる。

 

「っ!?」

 

思わず、俺は止まってしまった。

戦闘に置いての一瞬の硬直。勿論斬撃を避けれるわけも無く、俺の左肩に氷の刃が突き刺さる。

斬られた箇所から赤い鮮血が噴き出し、透き通った氷を赤く染め上げた。鈍痛に左手の力を緩めてしまった瞬間、暁の蹴りが桜ノ蕾を大きく弾き飛ばす。

 

「えっと・・・てくび、だよね?」

 

そして暁は間髪入れずに、無防備に垂れ下がった俺の手首を切り裂こうと村正を閃かせる。

 

「ぐっ・・・!」

 

しかし、俺は後ろ向きに大きく飛び退る事でそれを回避。左腕は使えない中、俺はバランスを崩し転倒した。

左腕から倒れてしまったため激痛が俺を襲い、思わずうめき声を上げる。荒く呼吸を繰り返しながら、俺はぼやけた視界で世界を確認しようとするが。

 

「あと、くびをきるんだよね。」

 

ぼすっと言う音と同時に暁が俺の上に跨り、逆手に持った小太刀で首を狙う。

万事休す。動けない俺の上に乗っている暁はあどけない笑みを浮かべ、呟いた。

 

「それじゃあね。ばいばい」

 

確実に一撃で仕留めるために、暁は右腕を大きく振り上げる。

夕日を反射し茜色に染まる銀の刃は、慈悲などを持たずただ一心に俺の命を切り裂こうとしていた。

右腕を抑えられ、腹部に跨られているため他も身動きが取れない。

 

頼む。××、あと一回だけ・・・・!!

 

最高まで上げられた腕が、ぴたりと止まる。

妖力がそこに集中し、逆に殺気を拡散していった。

 

そして、暁の向日葵の様な笑みと共にその刃は振り下ろされーーーー

 

「止めて・・・何で動かないの・・・!?」

 

直ぐに悲痛に包まれた、元の暁の声が聞こえた。

瞬間、俺は右拳を握りしめ叫ぶ。

 

「陽炎!!今だああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

全身から絞り出された大声は元の暁の顔を呆然とさせ、一つの魂が俺の体から飛び出た。

 

 

俺は、少し前に陽炎に頼んだ。

 

 

「・・・あのさ、陽炎。恐らく黄昏は俺が暁に攻撃しようとしたら”普通の暁の感情と記憶の魂”だけを暁に居れて、でも体自体は魂を抜かれた俺を殺そうとしてる奴が動かす・・・みたいな、どうやっても動きを止めてしまう様な事をしてくると思う。」

 

『成程。感情、意思とは裏腹に暁の体は動いちゃうのか。』

 

「うん。・・・そこで、陽炎に頼みがあるんだ。」

 

『何?一応聞いてあげる。』

 

これをすれば、暁が助かる代わりに俺は動けなくなる。

最悪、死ぬ可能性もある。

・・・でも、これが今の俺に出来る最善手。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・暁本来の魂が戻された瞬間、暁の魂で足りない所を俺の魂で代用してくれないか?」

 

 

 

 

 


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