暇な時にでも。
「はい、滅壊ノ星撃を足で使って加速!」
「うおおおお!!」
ボスっムニッ
「・・・あの、妖夢さん?」
「一度、冥界を拝みたいようですね・・・!!」
視界が白いシャツに覆われ、顔が柔らかい二つの曲線にのめり込んでいる。
博麗神社の境内、俺は今妖夢の指導の元滅壊ノ星撃を移動にも使おうとしていた。
しかし、その加速に俺自身が着いていけるわけも無く。案の定、変なところに突っ込んでしまったというわけだ。反省はしている。でも、男として後悔はしていない。
オーバーレイ使用禁止から、もう二日が経った。
今は昼時で、この指導が終わったらご飯と言う事になっている。
・・・が。
「妖夢、真。行くわよ。」
「「へ?どこに?」」
妖夢が刀を振りかざそうとした瞬間、霊夢が俺達に声を掛けた。
真剣な顔で宣言した霊夢は、そのまま続ける。
「紫を、倒しに行くわよ。」
「紫を!?」
「ええ。このままここに居ても意味が無いしね。幸い紫の場所は何となく分かってるから、お昼を食べたら乗り込むわよ。皆でね。」
すると、奥から咲夜さんがお握りと卵焼きを持って来てくれ、縁側に皆で座った。各々に手を合わせ、「頂きます」と五人分の声が境内に響く。お茶と一緒に放り込んだお握りは、疲労している体にはとても有り難かった。
「それで?まずはどこ行くんだぜ?」
「適当に南へ飛んでく。」
「適当すぎるんじゃない?」
魔理沙、霊夢、咲夜の順番で会話が続く。百鬼夜行異変時に霊夢は南へ向かい、八岐大蛇と共に人里を襲ったので紫たちは南側に居る・・・と考えているのだろうが。
「・・・でも、西も怪しいのよねえ。」
「何でだ?」
「勘・・・とさ、真の話によると爛漸苦って奴が暴れてたのも西方面らしいじゃない。」
霊夢は少し前の自分の考えを否定し、お茶と共に飲み込んだ。
数分後にはお握りは全て無くなり、俺達は立ち上がった。
刀を装備し、八卦路やナイフ、お札の準備も霊夢達はしている。こういう時にすぐ出発できるから、刀使いと言うのは楽だ。手入れをすればいつでも使えるのも、強みだろう。
「よし、向かうのは・・・・西で!」
準備が終わったのか、霊夢が手を叩きならした。
その時に、俺が色を見ていたのは本当に偶然だったのだ。
暇だったからただ単に世界の色を見ていただけ。そして、霊夢の背後から放たれた魔力を俺はいち早く感知した。
急いで拒絶の霊力を放ち、その魔力の塊ーーーー
マスタースパークを、空に跳ね返す。
「・・・魔理沙・・・!?」
思わず呟いた俺は、直後に現れた妖力にも目を見開いた。
「はあ、魔理沙。仕掛けるの急すぎないかしら?」
日傘を傾け、ため息を付きつつ紫は現れた。
魔理沙の右腕から立ち昇る黒い靄。そこに刻まれた文字。
・・・何が起こっているのか、誰も分かっていなかった。