東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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真「オーバーレイチートじゃん!!」
ラ「え?だって初代博麗の巫女だよ?」
真「いやまあ確かにこの小説で一番強いの幻夢だけれども!」
ラ「じゃあ問題ない!」
真「あそっか。・・・ってならねえよ!」
ラ「テヘ☆」
真「・・・」
ラ「やめて!?何も言わず引いていかないで!?」

真「・・・・・では、どうぞ。」逃走開始
ラ「まってええええええええ!」追跡開始


第九章第二十二話「一つだけの希望」

「・・・ふえっ?」

 

 

黒い槍が通った所は更地になり、地面が大きく抉り取られている。

衝撃波に依って吹き飛ばされた木々や家屋は一部に重なり、軽く拳を突き出しただけの俺としてはもう間抜けな声を出す他出来る事が無い。

突き出されたままの左腕を眺めていると、心の中で幻夢が語り掛けて来た。

 

『・・・まあ、ざっとこんなもんだ。・・・さて、次は魂手箱を破壊して、全てを解放しよう。今の真なら、絶対に出来る!』

「よし・・・行くぞ爛漸苦!!」

 

俺は叫び、鎌を盾にして俺の攻撃を防いだ爛漸苦に向けて走り出した。

 

 

・・・瞬間、爛漸苦が俺の横を一瞬で通り過ぎる。

慌ててブレーキをかけるも、最早爛漸苦とは数十mも離れていた。

 

「・・・あっれー?」

 

どうやら、急加速した俺が爛漸苦を通り過ぎたらしい。

頬を掻きつつ呟くと、振り向いた爛漸苦が肩を震わせ始める。

 

「そうですよ・・・その強さこそ!潰して一番楽しい物です!!ははは・・・ははははは!!もっと!もっと楽しみましょうよ!!」

 

そう言い、爛漸苦は鎌を持ち上げる。

蛇のように曲線を描く刃を遊ばせながら、混沌が鎌の刃を一瞬で20m以上に伸ばした。

黒い靄が鎌の辺りに立ち昇り、思わず俺は防御姿勢を取る。

 

「さあ・・・行きますよ!!」

 

体を極限まで捻った爛漸苦は、自分よりも各段に大きい刃を両手で振るった。

それにより起こった突風がここまで吹き付け、服をたなびかせる。

下手したら吹き飛んでしまいそうだが、俺は何とか耐え続けようと足を踏ん張った。

 

鳴り響く轟音。

吹き飛ばされ、掻き混ぜられる人里と近くの山林。

 

 

「・・・あれ?何か遅くない?」

『いや、まあ。・・・とりあえず守護の右っ側で鎌受け止めてみな?」

「おっけー。」

 

気の抜けた会話を交わしながら、幻夢に言われた通り俺は右手を頭上に掲げる。

そのままぼーっとしていると、俺からはスローに見えていた刃がやっと俺の腕に衝撃を伝えた。

・・・まるで、同年代の女子に叩かれたような。

 

 

ゴッグアアアアンンン!!!!!

 

 

「・・・あ、折れた。」

「何だと・・・!?」

 

瞬間、二十m以上の刃が呆気なく砕け散った。

無数の欠片となり、混沌は空に吸い込まれていく。

いつしか鎌は何時もの大きさに戻り、爛漸苦は驚愕に包まれていた。

 

「・・・えっと、来ないならこっちから行くよ?」

 

「・・・チッ!!良いでしょう。来れるもんなら来てみて下さい・・・!!」

「さーん、にーい、いーち、」

 

 

 

 

「ゼロ」

 

 

 

 

俺は指を一本ずつ折りたたみながらカウントし、爛漸苦が回避するのを待った。

しかし爛漸苦は回避せず、ずっと鎌を正面に構えている。

指を全て折り曲げた俺はそのまま手を下に持っていき、人差し指で地面を優しく押した。

 

 

・・・流石にそこまで飛ばないだろう。

その期待は直ぐに裏切られる事となる。

 

とんでもない速さで爛漸苦との距離を瞬く間にゼロにした俺は、視界に標的が映った瞬間取り敢えず拳を振るった。

 

 

 

ゴグシャアッ!!

 

破壊の左拳に伝わってくるのは、骨が骨を砕く武骨な感触。

限界まで研ぎ澄まされた聴覚に触れるのは、鮮血が飛び散りパタタ、と地面に滴り落ちる音のみ。

 

吹き飛ばされる事は無かったが、それでも爛漸苦は強く地面に叩きつけられた。

何が起きたか分からない、と言う顔をしている爛漸苦に向けて、俺も一言呟く。

 

「大丈夫。俺も何が起きたか分かって無いから。」

 

 

 

 

 

 

そのまま、俺は魂手箱を踏みつぶした。

 

 

 

豪華な装飾が煌びやかに散り、蝶番が空に舞う。

そして、一気に閉じ込められていた魂が解放された。

 

 

色取り取りの魂が全て空に向けて解き放たれ、様々なところに散っていく。

 

・・・そして、二つの魂が俺の中へと帰って来る。

 

暖かい思いが胸を、体を満たし。

体が、心地よい重さを背負う。

 

『・・・よし!完全版になったよ!』

『・・・ただいま。』

 

「・・・おかえり、幻夢。陽炎。」

 

心の中に大きく響く、聞きなれた声音。

優しく微笑んでいるであろう二人を感じながら、俺は爛漸苦から距離を取った。

 

 

 

「・・・なあ爛漸苦。お前は前に、”希望程脆く壊れやすい物は無い”と言ったよな。・・・残念だったな。それは間違いだ。・・・本当は。真実は、逆なんだよ。」

 

強く拳を握りしめた俺は、片膝をついて立ち上がろうとしている爛漸苦に向けて。

・・・心から、叫んだ。

 

 

「俺は、馬鹿だからさ!目の前の状況が全てで!絶望して居たら絶望しか無い、そう思ってしまう様な奴なんだ!でも・・・だからこそ!俺は断言できる!絶望程、脆く壊れやすい物は無い!!真っ暗闇の中でも、たった一つの光が差せば、それはもう希望なんだ。絶対に無くなったりしない、強い希望だ!・・・行くぞ爛漸苦!お前の腐った思考・・・俺が全部、乗り越えてやる!!!」

 

 

ゴオオオ…

 

霊力の焔が更に勢いを増し、大気をびりびりと震わせる。

 

 

 

 

「・・・イヤダ。セッカク、アソコマデカンセイシテイタノニ。・・・エネルギーハ、アトスコシデジュウブンダッタノニ・・・。ユルセナイ、ユルセナイ、・・・・天音、お前は俺が殺す・・・・っ!!」

 

そして、虚ろな表情で紡がれる言葉。

しかしそれは段々と感情を持ち、黒い混沌を荒ぶらせていく。

ドポッ言う粘着質な音と共に混沌が爛漸苦の体を包み、秩序・・・ルールの無い、完全な力が結晶となった。

 

眼だけが赤く光り、その光を散らしながら爛漸苦は俺に向けて一歩踏み出す。

 

・・・今までの俺なら、陽炎や幻夢を救い出す事も。

ましてや、この力の結晶となった爛漸苦に一撃を入れる事さえ不可能だったろう。

でも、皆が居る。

だから、立ち向かえる。

 

さあ、行こう。

 

 

 

最大の、矛盾を。

 

ルールに逆らう、たった一つの刃を胸に秘めて!!

 

 

「お前の混沌は!俺には・・・・通用しない!!」

 

矛盾。

それは、世界の理的にあってはならない物を指す。

でも、現に俺の信念は矛盾して居ながらもこの世界に存在している。

それは何故か?答えは世界の理から外れたからだ。

オーバーレイの瞬間だけ、俺は矛盾を突きとおせる。

 

 

そして、爛漸苦の混沌自体も世界の理ではない。

 

二つの異質。

 

・・・同じ分類の物は、全て等しく干渉しあう。

 

今まで無敵の殻であったろう混沌に向けて、俺は右拳で正拳付きを放つ。

爛漸苦も混沌が今の俺には通用しないと理解したのか、全力で回避した。

 

お互いに、さっきとは全く違う、各違いの強さを持っている。

圧倒していたのも束の間、一瞬で互角まで引き戻された。

 

・・・だから、ここから。

 

もう一歩、踏み出せ!!

 

 

 

『・・・真。あんたは私に、”幻夢の様な事は出来ない”と言ったね?・・・今度は、それをも越えよう。」

 

「・・・どういうことだ?」

 

爛漸苦と再び距離を取った俺は、幻夢に聞き返す。

一拍の間の後、短く幻夢は呟いた。

 

 

 

 

 

 

『・・・本物の”博麗”を。今、伝授しよう。』

 

 


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