真「かなり気合入れて書いた前書きが吹き飛んでラギアが可笑しくなっているが、基本的に変わらないから気にしないでくれ。ちなみにこいつが学校で真面目に授業してると皆が『明日は槍がふるっ!!!』って言うらしい。ある意味伝説だよな。」
ラ「ふへへ・・・チノちゃん可愛い・・・リゼちゃんスタイルイイ・・・。」
真「とりあえずこのロリコンを殴って来る。では、どうぞ!」
メギイ!どこ!ぼす!ボキッ!
「・・・ああ、やっぱり。全く、何であの子はこんな子の為に・・・。」
暗い暗い、どこまでも続く無限の空間。
そのなかで、一人の女性はため息を付いた。
自身の目の前で倒れる少年を蘇生し、傷一つなく何時も通りにする。
それまでの動作を一瞬で終わらせた賢者、八雲紫はその少年をーーー
普通に、蹴り飛ばした。
「起きなさいっ!!こっちは冬だし眠たいのよ!!」
「理不尽じゃない!?」
に、三回転がり意識を取り戻した少年は、条件反射の様に叫び返した。
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俺は腹部に突然痛みを感じ、思わず叫びながら跳び起きた。
そして、目に入ったのは宿敵とも言える八雲紫。
言うまでも、そして考えるまでも無く伝わる圧倒的強者の風格。
それでも俺は立ち上がり、叫んだ。
「バースト!」
・・・しかし、霊力は俺の体を回らなかった。
何の音沙汰も無いまま、静寂が無限の空間を包み込む。
「なっ・・!?」
「無理よ。今の貴方に戦うことは出来ない。」
「紫・・・何かしたのか!?」
「私は何もしてないわよ。したのは爛漸苦。まあ考えてみたらすぐ分かるじゃない。」
「幻夢と陽炎が居ないんだから、貴方一人では何も出来ないって事が。」
「・・・は?」
紫は扇子で口を隠しながら呟いた。
その紫色の瞳は細められ、視線は俺に焦点を合わせている。
「爛漸苦が説明したでしょう?”魂を操る程度の能力”を持つ箱の事を。簡単じゃない。それが貴方から幻夢と陽炎を奪った事なんて。」
「・・・何で・・・幻夢達が・・・!?」
「貴方を守る為に決まってるでしょう!!」
呆然と呟いた瞬間、紫が大きく声を発した。
そのまま絶大な殺気を伴った眼をで俺を睨みつけ、続ける。
「そんな事も分からないの!?魂手箱に入った魂は全て夢幻魂歌のエネルギーに使われる!あの箱を壊さない限りには、その中の魂は決して蘇らないのよ!?それを悟ったからこそ、あの子たちは自らを犠牲として真、貴方だけを守った!貴方なら、自分たちをまた救い出してくれる、そう信じて!でも!貴方は何をしていた?幻夢達の行動に気づかず、目の前の敵だけに力を使おうとした・・・?ふざけるな!!・・・でも、もう良い。天音真。貴方には今度こそ、幻想郷からいなくなってもらう!!!!」
紫がそう言い切ると同時に、扇子から莫大な妖力が放出された。
ゴオオ…と紫色の光を放つ中、もう一度、彼女は口を開く。
「貴方の傷を治したのはあっちで騒がれないため。・・・永遠の別れよ、天音真。何も出来ない、無力な少年。」
紫の輝きが俺の視界を覆い尽くし、黒い奔流が俺の傍に在る空間を叩く。
次元が割れ、世界が砕け散る中。
・・・八雲紫は、強い瞳で俺を貫いていた。
『戻って来るなら、戻って来なさい。』
・・・あたかも、そう言うかのように。
真一文字に結ばれた紫の口が開かれる事は、無かった。
「・・・・これで。邪魔者は消えた。あの子には爛漸苦の混沌さえも突き破る絶対的な何かがある・・・。一番の危険因子はあの子。そして、遂に。遂に、準備が整った。」
パチン。
虚空の中に扇子が閉じる音だけが響き、妖絶な赤い唇が一つの言葉を紡ぐ。
「・・・待っててね、幻夢。」
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高い高い山の上。
初冬だからだろうか、眼下を行く人々はパーカーなどを着ていた。
明るいネオンが目を刺し、車やバイクなどの叫びが耳を刺激する。
生ぬるい風に乗って、排気ガスが俺の頬を撫でた。
空は晴れていながらも幻想郷の様に星は見えず、暗闇に閉ざされている。
電線、舗装された道路、明るい店舗。
「・・・あ・・・・ここ、は・・・。」
幻想から幻想へ。
ーーー忘れ去られた者の土地である幻想郷。
それは現・・・現代社会に住む俺達にとっての幻想。
ーーー現の土地、社会・
それは幻・・・幻想郷に住む者たちにとっての幻想。
幻想郷の、幻想。
「・・・・・・・・日、本・・・」