ラ「気にするな」
妖「というかいつに成ったら覚醒するんです。今日覚醒してないじゃないですか。」
ラ「・・・しょーがない。」
妖「何してたんです?」
ラ「将棋。好きなんです。」
真「お前が!?煩悩の塊であるお前があ!?」
ラ「うっせえ!俺をただの引きこもりのコミュ障の学生だと思うなよ!?」
妖「引きこもりのコミュ障なんですね分かりました。」
真「まあまあ、泣くなって。」
ラ「泣いて無いし!!(´;ω;`)」
白い光の渦を抜け、辿り着いたのは見た事も無い森の中だった。
チチチ…と鳥は囀り、木々の隙間から優しい木漏れ日が溢れ出る。
緑が生い茂りながらも暑くは無く、春の陽気くらいの丁度いい環境。
上を見上げれば青く澄み渡った大空、雲は気ままに風に流されている。
そして、俺は視線を細める。
少し先に開けたところが在り、そこに一人の人間が立って居た。
一息ついた俺は、静かに歩き始める。
妙に落ち着いていて、不気味な程に世界が鮮明に見えた。
「・・・よお、俺。」
「・・・来たか。」
林を抜けたところで、俺は俺自身に話しかけた。
幻想郷に来る前の私腹を纏っている奴は、振り返りながら呟く。
そして、手を打った。
「さて。幻夢にはお世話になったが・・・ここからは俺自身の戦いだ。俺を倒して見せろ。俺はお前のリミッターだ。つまり、今の自分自身の限界をぶち壊せって事でもある。さあ、夢を叶えるため、か。」
そう言い切った次の瞬間、目の前に立つ俺が黒いもやを纏う。
そして、それが突然光りーーー
「さあ、倒して見せろ!お前の綺麗事でなあ!!」
目の前に立つ俺自身が、黒い霊力に蝕まれた。
ゴオッ!!と、気づけば俺も白い渦を纏っている。
竜巻の様に渦巻くそれを、俺は自身に取り込んだ。
力が溢れる。
懐かしい感覚。指の先まで熱くなり、そして。
俺達は同時に、地面を蹴り飛ばした。
土が飛び散り、俺たちの拳が飛び交う。
盛大な風切り音を立てながら、お互いに空を切り裂いた。
「おいおい!今までと同じじゃ勝てねえぞ?今の、限界を超えろっつってんだよ!!楼符[彼岸桜]!!」
「結界[双対の禊]!!」
黒い桜の花弁がゆらりと揺らめき、閃光の様に吹き荒れた。
急いで四つの結界を生成した俺はそれで自信を囲み、何とか耐え凌ぐ。が。
「甘いなあ!!黒大剣[鬼丸]!!」
「・・・霊刀[羅刹]!!」
獰猛に迫る大きな刃は結界を瞬く間に砕き、眼前に迫る。
ギャリイイイイ!!!と激しく火花を散らしながら、防戦一方の俺は霊力を暴発させる。
右手が急加速し、羅刹が鬼丸の刃に食い込んだ。
そのまま切り裂くか。
更に力を込めるが、それを黒い俺は鬼丸を一振りすることで中断させる。
「やだなあ。俺、こんなに弱いのか。・・・あーあ、ガッカリだよ。」
「・・・どういうことだよ。」
俺が呟くと、黒い俺は鬼丸の切っ先を俺に突き付け、口を開いた。
「だからよ。手前は何の為に戦ってるんだ?って事だ。強くなる為?違うだろ。皆に頼られるため?違うだろ?お前が今戦ってんのは!夢を叶えるためだろうが!暁助けたくねえのか!?助けられなかった無責任な自分の、その思いの中に夢はあるんだ!なあ天音真!何も出来ないで突っ立ってんなら!叶えようと、努力しないなら!せめて抗えよ!女の子一人くらい助けて見せろよ!それは夢じゃねえ!幻でも無い!現実だ!迷ってんのか?そんな事は無いだろうがよ。」
そこで言葉を切った黒は、一言呟いた。
「もう道は決まってんだろ。掴めよ。希望を。未来を。」
その言葉は俺に突き刺さり、溶けて、心に響き渡った。
空に消えた音は消え去り、後には何も残さない。
残したのは、たった一つの、希望。
俺の右手が虹色に輝き、光は