もしクレマンティーヌが装者で絶剣で女神だったら 作:更新停止
戦闘シーンって書くの難しいですね。特に主人公に手加減させるのは。
7、8回くらい気が付いたらニグンが死んでました。いったい何時から、私はニグンさんが嫌いなったんでしょうか。
そして、申し訳ありません。やらないと決めていた唐突に出現する架空の武技、という事態を発生させてしまいました。
作ったとしても動機やきっかけは書くつもりだったのですが、上手くその場面を挟めませんでした。本文で殆ど説明しないので、前書きに載せておきます。
武技:『空穿』
名前から想像つく人もいると思いますが、『空撃』の突き版です。わかりやすく言えば、飛ぶ斬撃の突き(なんか日本語的におかしい)ですね。
そして、感想で誰も言わなかったので言ってしまいますが、ガゼフとの切磋琢磨する関係は、ガゼフ強化フラグでもありますがクレマンティーヌ強化フラグでもあります。
「よろしかったのですか、アインズ様」
倉庫の中で、アルべドは自らの主に問いかけた。
主であるアインズは、周りの村人に聞かれないために彼女の疑問に
『ああ、彼女はこの世界でもかなりの実力者であるとされている存在だ。ならば、その力を確認しておくことも重要だろう。
それに―――』
彼は、その続きを今度は声に出して答えた。
それは、村人に聞かせるためか。はたまた、言葉に出すべきだと感じたのか。
「―――仲間とは何よりも大切なものだと、そう私は思うのだよ、アルべド」
そう言って、彼は自らの魔法に意識を集中させる。
彼の意識の中には、陽光聖典の隊長と相対するクレマンティーヌの姿があった。
「き、貴様は……」
「何、もしかして忘れちゃったかなー?」
唸るニグンに、クレマンティーヌは笑顔を作る。
その笑顔にニグンは、強烈な怒りにかきたてられた。
「貴様のような裏切り者が、よくもまぁおめおめと姿を見せられたな!!」
ニグンは、クレマンティーヌを怒鳴りつける。
裏切り者。ニグンの発したその言葉に、クレマンティーヌへと王国兵士からの問いかけるような視線が殺到した。
「まー、確かに裏切ったのは悪いと思うけどさ。私はあの国の社会体制のせいで、小さな頃から本当に苦しめられてきたんだよー。
あんなクソ国家。何度なくなってしまえば良いと思ったことか」
クレマンティーヌは、それを無視してニグンとの話を進めた。
「クソ国家、だと……。貴様、それは本気で言っているのか。真なる神々を祀るわが法国がクソ国家だと、貴様は本気で―――」
「ん? 本気で言ってるよ。あんな権益に溺れたクズどもの肥溜めが、人間種が一つになるなんて言葉で誤魔化してやりたい放題しているあいつらが支配する国が、クソ国家でない筈がないでしょ。
いくら他国の人間とはいえ、村人の虐殺なんて人間種の統一を掲げる国がすることじゃないでしょーに」
「貴様っ!! 言うに事欠いてその様な戯れ言をほざくか。
だいたい、村人達の命など大事の前の小規模な犠牲に過ぎん。その程度もわからぬ様な輩が神聖なる法国を侮辱するとは、最早呆れてものも言えん」
ニグンが、クレマンティーヌに大声で叫ぶ。
それを聞いた彼女は、やれやれとでも言いたげに肩を竦めた。
「戯れ言をほざいてるのはそっちでしょう。
土と風の聖典達による情報操作、これだけで王国は落とせるはずよ。それだけ、今の王と貴族の溝は深いもの。人間種を一つにしたいなら、崩壊した王国の人間を取り込むだけでそれに大きく近づくわ。そうすれば、運が良ければガゼフを取り込むことすらできたでしょう。
けれども、法国はガゼフを殺すことを選んだ。それはすなわち、ガゼフが法国にとって不利な何らかの要素を持っていることになるわ。
国民のために思い悩み、平民のためにこんな国境付近にある寂れた村までわざわざ見回りをする様な彼が、いったいどんな問題を持っているのかしらね」
いたずら気に口を歪ませるクレマンティーヌ。
しかしニグンは、彼女の言葉に何かを考えることは無かった。その言葉は、裏切者の言葉なのだから。
「ふん、そんな事は貴様の空想にすぎん。言葉を並べられてだけで揺れるほど、我が信仰は軽くはない。
……で、言いたいことはそれまでか」
ニグンの周りに天使が集結する。
その様子に、クレマンティーヌは大きく溜め息をついた。
「やっぱり、言葉で説得なんて私の柄じゃなかったか-。
まぁ、しょうがないかな。私は裏切り者だし」
ローブの陰から、彼女は剣を取り出して目の前の地面に突き立てる。
その剣は、ガゼフが先程まで使っていた剣と同じ色の輝きを持っていた。
「言いたいことは、もうないわよ。言っても無駄みたいだから」
「そうか、なら死ね」
挨拶のような気軽な口調で言われたその言葉。
そんなニグンの言葉とともに、クレマンティーヌへと数多の天使が殺到する。
四方八方、全方位からクレマンティーヌは剣を突き立てられ、彼女は天使の集合体へと姿を変えた。
「ふん、あっけないものだな」
ニグンは嘲う。
その光景を見ていた兵士達、陽光聖典達の誰もが、彼女の死を幻視した。
しかし―――
―――Balwisyall Nescell gungnir tron
クレマンティーヌの歌声が辺りに響き、天使達が吹き飛ばされる。
天使達がいた場所からは、先程の姿とは服装を変えた無傷の彼女の姿があった。
その怪我一つ負っていない姿に、ニグンは口を閉口させた。
「あっけないなんて、誰に向かって言ってるの?
ニグンちゃんはさぁ、私のかつての所属を知ってるでしょ。そんなんで殺せると思わないでよ」
彼女はそう言って、目の前に突き立てられている、先程まで彼女が手にしていた剣を引き抜いた。
「―――これでも、元とはいえ漆黒聖典第九席次だったんだから」
―――武技、『空穿』
彼女は、剣を薄い赤色に輝かせると突きを放つ。
その剣は切っ先から旋風を巻き起こし、その直線状にいる天使に穴をあけた。
「たかが上位天使ごときで、殺せると思わないでよね」
クレマンティーヌが大地を駆ける。
「
―――武技、『要塞』
行使者の肉体、もしくは武器に受けた衝撃を無効化する武技、『要塞』。
疾走するクレマンティーヌに衝撃波が襲い掛かるが、彼女はわずかに跳躍し肉体に武技『要塞』を行使し速度を落とすことなく無効化する。
高速で飛来する不可視の衝撃波を無効化するなど、並大抵の人間にできることではない。
その様子に、漆黒聖典という自称が嘘ではないと感じた他の陽光聖典達も、あわてて魔法を発動した。
「
「
「
「
「
―――武技、『超回避』
―――『四光連斬』
自身の回避能力を大きく強化する武技『超回避』と、四つの斬撃を同時に放つ武技『四光連斬』。
クレマンティーヌは、
魔法を剣で切るという彼女の絶技に、彼等は戦慄を隠せなかった。
「―――まず、一人」
―――武技、『流水加速』
―――『疾風走破』
―――『穿撃』
―――ソードスキル、『ヴォーパル・ストライク』
自身の動きを高速化させる武技『流水加速』と自身の移動速度を大きく加速させる武技『疾風走破』、そして強力な突きを放つ武技『穿撃』。
彼女は、手に持った剣を武技とは異なる光、強力な突きを放つソードスキル『ヴォーパル・ストライク』で輝かせると、それらの武技を同時に使用しその場に炸裂音を響かせる。
次の瞬間には、クレマンティーヌは天使達をかいくぐりとある陽光聖典の隊員を突き殺していた。
―――武技、『四光連斬』
―――『空撃』
―――ソードスキル、『バーチカル』
刃より斬撃を飛ばす武技、『空撃』。
そのまま置き土産とでも言うかのように、剣を振り下ろすソードスキル『バーチカル』を武技と同時に使用することでまわりに四つの斬撃を飛ばし、周囲の天使を光に変える。
「各員!! 天使を失った者は再召喚。他の者は魔法で弾幕を張れ、絶対に奴を近づけさせるな!!」
ニグンの声が戦場に響く。
陽光聖典達はその声に従い、クレマンティーヌに魔法を向けた。
さらに詠唱時間を稼ぐように、彼女の前に数多の天使が立ち塞がった。
だが、それでは脆い。
クレマンティーヌにとって、上位天使など動くだけの壁にしか成らなかった。
―――武技、『穿撃』
―――ソードスキル、『ヴォーパル・ストライク』
再び大きく炸裂音が鳴り響き、直後に陽光聖典達とクレマンティーヌの直線上に存在する天使達が光に変わる。
そして、陽光聖典達がそれを認識した頃には、彼女は陽光聖典の集団の前にいた。
「この程度じゃ、壁にもならないわよ」
一閃。
陽光聖典の一人が両断される。
クレマンティーヌはさらに踏み込み、返す太刀でもう一人切り捨てた。
しかし、陽光聖典達もただやられるばかりではない。
クレマンティーヌが剣を引き戻そうとしたとき、彼女が斬り捨てた陽光聖典の隊員がその剣を掴む。
クレマンティーヌが彼を見れば、彼の目は狂気に、狂心的な神への信仰に染まっていた。
「
「ちっ!」
陽光聖典達が、そんな彼ごとクレマンティーヌに狙いを定め、
いくらクレマンティーヌとはいえ、人一人抱えながら不可視の魔法である
その際、
剣は転がって行き、クレマンティーヌから遠く離れたところまで吹き飛ばされた。
「今だ!!」
武器を失ったクレマンティーヌへと、天使達が殺到する。
天使達の一撃は、ある程度の強さを持つモンスターでもなければ武器もなく受けられるようなものではない。故に、陽光聖典達は串刺しとなるクレマンティーヌを幻視した。
―――勿論、幻視しただけである。
「殺ったと思った?」
三度目の炸裂音。
それとともに彼女が拳を突き出せば、その先にいた迫る天使達が光の粒へと姿を変えた。
彼女がそれを二度ほど繰り返せば、彼らが気が付いたときには、クレマンティーヌは迫る天使達を殲滅されていた。
「期待させたようで悪いけどね、私は剣よりも拳の方が強いのよ」
そう言って、クレマンティーヌは跳躍し空を飛ぶ天使の頭部を掴むと、その拳で握りつぶす。
ただ純粋な握力で、天使がその身に纏う兜ごと頭部を握りつぶすという行為、それがどれ程までに出鱈目な行為であるか理解できる陽光聖典達は、無自覚に足を一歩下げた。
「狼狽えるな!!」
そんな彼等に、彼等の隊長であるニグンの声が届く。
「敵が強大であるなど、何時ものことだろう!! 亜人種どもの多くは、我々よりも強靭な肉体を有していた者たちばかりであったはずだ。だが、我らはそのすべてを打ち破ってきた。
臆することはない。各員、
ニグンの言葉に、隊員達の様子が変わった。
彼等は、クレマンティーヌにとって天使達が壁にしか成らないと知っているはずにもかかわらず、天使達をクレマンティーヌに向かわせ始めた。
クレマンティーヌはそれらの天使を握り潰し、叩きつぶしながら処理して行く。
クレマンティーヌが言った、剣よりも拳の方が強いという言葉、その言葉は確かに真実ではあるが、言葉の頭に『1対1では』と付ける必要があった。
多対1の状況においては、間合いの広い剣の方が当然有利になる。たとえ拳の方が取り回しが良くても、武技などを使わない限り原則的に剣の方が殲滅力に優れていた。
ガングニールの腕部ハンマーパーツを使用することで広範囲殲滅も可能ではあるが、マニュアル運用によりある程度エネルギーを制限しない限りそれは消耗が激しい。
そして、多くの天使達が剣を振り回す中でマニュアル運用、つまり腕部のパーツをスライドさせるという行為は、クレマンティーヌにとって大きな隙になる。できなくはないだろうが、万が一のことを考えれば無用な隙は作るべきではない。
突き、薙ぎ、確実に一体ずつ天使達を破壊する。
致命傷になりそうな一撃は、腕や脚の装甲で受け流し、受け止め、その隙に一撃を入れ破壊してゆく。
時間はかかりながらも、危なげない動きで確実に天使達を蹂躙していった。
しばらくクレマンティーヌが戦っていると、彼女は天使たちの鎧が急に固くなったことを感じた。
―――まさか、デバフをかけられた?
彼女はデバフ、すなわち弱体化魔法をかけられたのかと推測するが、すぐにその考えを振り払った。
弱体化魔法の多くは、例外はあるが原則として視認しなければ行使できない。この天使の隙間から、自らの姿を捉えることはそう簡単ではないはずだからだ。
ならば、強化魔法か。
クレマンティーヌはそう考えたが、次いで別の天使を破壊すると即座にその考えを捨てた。
次に破壊した天使は、先ほど倒した天使よりもより硬くなった様に感じられたからだ。
いくらなんでも、天使達全員に強化魔法をかけることは非効率だ。故に、強化魔法という線はない。
拳を振り上げ、薙ぎ、振り下ろす度に、天使たちはより堅牢になる。
その原因、それを彼女が知るのは上位天使たちの殲滅が終わろうとしていた時だった。
この世界には、ユグドラシルに存在しなかった力や技能が存在する。
一つは
二つ目は武技、戦士たちの能力を大幅に向上させるそれは、大きな力の差を覆すことすら可能とする強力な物である。
そして三つ目、その技能の名は
「
陽光聖典の隊員のその言葉により大地に魔法陣が刻まれ、宙に浮かぶ巨大な天使の数が一体増えた。
『監視の権天使』、第四位階魔法にて召喚される天使が、クレマンティーヌの傍に数えることが億劫になりそうなほどの数存在していた。
「うっそぉ」
流石に、その数には驚く。
彼女自身、分類上は魔法詠唱者ではないので体感したことはないが、魔法上昇という技法がどれだけ負荷を強いるのかは知識としてだが知っている。
巫女姫の儀式のように、本来の自分が使える魔法の位階から3又は4位階上昇させる様な行為をするわけではなくても、とても消耗を強いる魔法だ。
それをまさか隊員全員が会得しているとは思わなかった。まさに、信仰の凄まじさと恐ろしさを感じさせる。
とはいえ、流石に隊員全員が魔法上昇を使ったことは驚いたが、陽光聖典の人間が魔法上昇を使い出したことその物は、可能性としては考えていたために驚いていない。個々の力は漆黒聖典に劣るとはいえ彼等はエリート部隊、戦闘中に『龍雷』が飛んでくる可能性程度は考慮していた。
ただ、クレマンティーヌには一つ問題があった。
それは、陽光聖典全員が魔法上昇を使ったことではない。
問題なのは、彼等が召喚した天使の特殊能力だ。
『監視の権天使』。
その能力は、停止している状態において視認している天使の防御力を向上させる、という物だ。
そんな能力を持つ天使が百近い数存在している。これは、彼女にとってとても嫌な状態だった。
彼女の持つ切り札のいずれかを切れば、簡単にこの場所は切り抜けることができるだろう。しかし、おそらくこの戦場は土か風や水のいずれかの聖典に監視されている可能性が高い。
漆黒聖典という強大な敵に立ち向かわなければならない彼女にとって、切り札の露呈はなるべく避けたい行為であった。
ふとその時、彼女の頭の中に一つの閃きが浮かび上がった。
それはとても単純な手、切り札にはなれず、腐らしていたとある手段。
そして、この状況にはぴったりで、最高に皮肉が効いた手段でもある。
ついつい、彼女は無意識に口角を上げてしまった。
彼女はローブの中に手を入れると、懐から出した様に見せかけながら、手の平にとある物品を出現させる。
それは、遠くに輝く夕日を反射し輝いて見えた。
そして、それを見た陽光聖典達の動揺も彼女の視界に映る。
そんな中、唯一落ち着いていたニグンがクレマンティーヌに問いかけた。
「貴様、そんな物を取り出していったい何をするつもりだ。そんな物で、この状況を覆せるとでも思っているのか?」
否、問いかけではなくそれは嘲笑いだった。
その証拠に、ニグンは彼女をせせら笑うかのように笑っている。
確かにそうだろう。
高位の天使に辺りを包囲され、数多くの魔法詠唱者を相手にしなければならないこの状況。
仮にこの場に立つのが、第6位階の魔法を使えるかの帝国の魔法詠唱者でも、この状況を覆すのは難しいに違いないだろう。
そう、それ程までに―――この状況を魔法で覆すのは難しいのだ。
しかし、彼女はこの状況で最高に機能する『法国に露呈しているであろう手札』を持っていた。
クレマンティーヌは、手に持った『魔封じの水晶』を掲げる。
「目には目を、歯には歯を。
うんうん。
彼女は規定の使用方法に従い、封じられた魔法を解放した。
水晶に込められた魔法は、とある第7位階の魔法。
その魔法の名は、
―――
水晶から光が溢れ、草原を白く照らす。
光が収まると、現れたのはまさに光の結晶のような天使だった。
数多の翼を生やし、手に持つのは笏。聖なる存在と呼ばれるに相応しい波動を放ち、辺りの空気を清浄な物へと変えて行く。
―――そう、正にそれは至高の天使。究極の力を持つとされる大陸最高位の存在。
ここに、魔神すらも殺す大天使、
ニグン「権天使軍団を召喚!!」
クレマンティーヌ「はいはい、主天使召喚」
ニグン「うぇっ!?」
というわけで、ニグンさんは涙目ですね。プリン以下略は、視界に入っている天使の防御力を強化するので、戦闘を視界に入れてる限りドミニオンも強化されるんですから。
ところで聞きたいんですが、皆さんはズラのガジットさんの活躍は読みたいですか? ちょっと書くか悩んでいるので、読みたい方がある程度いれば書くことにしようと思っています。
追記
ガジット関係の話は書くことにします。