もしクレマンティーヌが装者で絶剣で女神だったら   作:更新停止

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 【言い訳】

 更新遅れてしまいすみませんでした。
 実は、この作品に低評価を付けた方のご意見に、少し悩んでいたんです。

 『作品に対する愛が足りないな~』

 ……愛?

 とりあえず、カラオケでオバロのエンディングの某L×3だけを5時間ぐらい歌ってみました。何してるんだ私。
 それでもわからないので、何か設定に反したことがあったのかと考え、以前から買おうと思っていたアニメ設定資料(2700円)を購入。(設定資料集のくせにろくに設定なんて書いてありませんでした。面白かったです)
 その後、この話を一話から読み直していました。

 それで思いました。
 もしかしてこの作品を読んでくださっている方々の中の、書籍を手にしていない方々で、マルムヴィストさんが主人公側のメインキャラクターだと勘違いしている方がいたりするんじゃないか……と。

 なので、今後の書き方の参考のために、アンケート調査を実施します。
 内容は、読者の方々の中でどれくらい原作を読んでいる人がいるのか、という物です。
 可能であればで構いませんので、活動報告にあるアンケートに答えていただけると幸いです。

 ちなみに、原作において『六腕』のメンバーのうちゼロ以外のの5人は、戦闘開始後合計12ページで全滅しました。
 ゼロも似たようなもので、ワンパンチで死亡しています。


 このぐらい書けば、前話の鬱は消えたかな?

 では、シャーマニック・アデプトと言う名の何か&あの人vs魔改造クレマンティーヌ戦です。どうぞ。


もしクレマンティーヌが彼らと対峙したら

 ゼロは、『六腕』のリーダーを務めている男だ。

 

 彼もまた、二年前のあの日にクレマンティーヌと対峙した一人だった。

 

 そして、仲間たちと同じように強くなることを決意した一人でもあった。

 

 サキュロントが、自らの剣技と幻術を鍛えたように。

 デイバーノックが、アンデッドに対する支配の力を伸ばしたように。

 マルムヴィストが、人間の限界を超えた武技を生み出したように。

 

 ゼロもまた、己の力を伸ばしていた。

 

 その一つが、ドラゴンの呪文印(スペルタトゥー)だ。

 呪文印(スペルタトゥー)というのは、生物の魂を閉じ込めたタトゥーのことで、彼はシャーマニック・アデプトのスキルによりそのタトゥーから自身に魂を憑依させることができた。

 ただ、ドラゴンと言っても竜王のことではない。彼がタトゥーに封じ込めたのは、霧の竜(フロスト・ドラゴン)の魂だ。

 

 ゼルリシア山脈の北方、そこには多数の霧の竜(フロスト・ドラゴン)が存在している。

 彼は、わざわざ自分でそこまで赴き、霧の竜(フロスト・ドラゴン)の一体を仕留めていた。

 その一体の魂が、彼のタトゥーの一つに封じられている。

 

 彼がクレマンティーヌに撃ち込んだ一撃は、そのドラゴンの魂を憑依させて放った一撃だった。

 ドラゴンの力、その力は強大だ。

 それ程上位の竜ではない霧の竜(フロスト・ドラゴン)の一撃ですら、大岩を軽く砕くだけの破壊力はある。

 

 

 

 しかし―――

 

 

 

 沈んだ意識を覚醒させる。

 胸を穿たれ死んだはずのクレマンティーヌは、自らの胸を穿っているその腕を掴む。

 

「何っ!?」

「ねえ……ちょっといいかな」

 

 ゼロは、咄嗟に腕を引き抜こうとするが、まるで地面に飲み込まれたかのように動かない。

 

「別にさぁ、囮とか罠とかが悪いとは言わないよ。有効な手だし、人様を散々拷問したりして遊んできた私が、そんなにとやかく言えた口じゃないのもあるしね。

 

 でもさ―――」

 

「がぁ!!」

 

 ゼロの右手が、クレマンティーヌの手により握り潰される。

 

「―――なんというか、凄く不快なんだよ、それ」

 

 ―――武技、『剛撃』

 

 武技によって強化されたクレマンティーヌの裏拳が、ゼロの顔面に襲いかかる。

 だが、その一撃は横から飛び入ってきた人影に邪魔されることとなった。

 

 人影が振るった槍によってクレマンティーヌの拳は逸らされ、拳はゼロの頭上を過ぎることとなった。

 そして、人影はゼロの手を引くことでクレマンティーヌからゼロを引きはがし、男子トイレ側まで勢いよく飛び退く。

 

「へえ、こんなところにいたんだ、隊長」

 

 人影、漆黒聖典の隊長は、クレマンティーヌに対して槍を構える。

 

「それはこっちが言いたいさ、クレマンティーヌ。まさか、あの吸血鬼から逃げ切ったとはな」

「―――そこ退いてくれないかなぁ。隊長の人間性は別に嫌いじゃないし、今はそっちの糞以外には興味はないんだけど」

「悪いな。今朝、本国からお前の捕獲、もしくは殺害命令が出た。だから、お前を見逃すわけにはいかないんだ」

「そっかぁ、任務かー。ならしょうがないかな。

 ―――じゃあ、隊長も死んでよ」

 

 腰に吊るしていた布袋から、一本の槍を取り出す。

 SF映画にでも出てきそうなその槍。クレマンティーヌの持つ武器の中で、随一の攻撃力を持つ槍。その名は―――

 

「『スポイトランス』、本気で行くわ」

 

 ―――武技、『限界突破』

 ―――『流水加速』

 ―――『能力向上』

 ―――『能力超向上』

 ―――『疾風走破』

 ―――『肉体向上』

 ―――『肉体超向上』

 ―――『知覚強化』

 ―――『可能性知覚』

 ―――『急所感知』

 ―――『回避』

 ―――『超回避』

 

 もはや、室内がどうとか関係ない。

 

「全力で、殺す。生きていることを、必ず後悔させてあげる」

 

 ―――武技、『竜牙突き』

 

 高速の二連突き、クレマンティーヌはそれを二人に向かって放つ。

 

「―――その武器は!?」

 

 驚愕に顔を染める隊長。彼はとっさにゼロを突き飛ばし、その反作用で槍を回避する。

 避けられた槍は、背後の壁に突き刺さりそれを粉砕する。

 

「ちっ!! 『グ』、俺に力を貸せ!!」

 

 ゼロが、身体を肥大化させてクレマンティーヌに襲い掛かる。

 

 

 グ、それはトブの大森林に住む『東の巨人』の異名を持つ伝説のトロール。

 かの森の賢王と同様にトブの大森林を納めるモンスターの一体と言われており、その腕力は大地を割るとも謳われていた。

 

 ゼロの左腕には、奇形の人型の様な呪文印(スペルタトゥー)が彫られている。

 もちろん、そこに封じられている魂は、『グ』のものだ。

 

 ゼロは、『グ』の持つ力の一つ、高速再生能力を用いて右手を再生。右手に刻まれたドラゴンの呪文印(スペルタトゥー)を解き放つ。

 

 それだけではない。

 左足に刻まれた八足馬(スレイプニール)呪文印(スペルタトゥー)、背中に刻まれた多頭水蛇(ヒュドラ)呪文印(スペルタトゥー)を解き放ち、自らの身体を肥大化させる。

 

「くらいな、猛撃一襲打!!」

 

 ゼロは右腕にそれらの力を集中させ、クレマンティーヌに解き放った。

 

 クレマンティーヌは、その一撃をスポイトランスで受け止める。

 

「うそっ!?」

 

 だが、その一撃は彼女の予想以上に強力で、スポイトランスごとクレマンティーヌを吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされたクレマンティーヌは、背後の壁に背中を打ち付けて一瞬息が止まる。

 その隙に、隊長はクレマンティーヌに槍を突き出した。

 

 しかし、それを安々と受けるクレマンティーヌではない。

 

 ―――武技、『限界突破』

 ―――『即応反射』

 ―――『不落要塞』

 

 スポイトランスを持った右手が動き、隊長の一撃を受け止める。

 

「ならばっ!!」

 

 自らの一撃が受け止められたのを見た彼は、槍を引き戻し3連続で突きを放つ。

 クレマンティーヌは、それら全てを『不落要塞』で受け止めると、その場で一回転して背後の壁ごとゼロと隊長を薙ぎ払った。

 

「くっ」

 

 クレマンティーヌのその一撃を隊長が受け止め、それと同時にゼロがクレマンティーヌに拳を叩き込む。

 

「猛撃一襲打!!」

「『不落要塞』」

 

 その一撃を、クレマンティーヌは『不落要塞』を施したローブの残骸で受け止めるが、シャルティアの時と同じように突き破られてしまった。

 だが、さすがにその一撃にシャルティア程の破壊力があるわけではない。ゼロの一撃は、『不落要塞』の効果によりその威力を大幅に減衰させられる。

 

「ちっ!!」

 

 その一撃を、クレマンティーヌはスティレットで強引にそらし脇腹にぶつけさせる。

 脇腹はシャルティアとの戦いで金属化していたため、ゼロの一撃ではクレマンティーヌの身体に傷を負わせることはできなかった。

 

「さっさと死んでなさい、『空穿』!!」

 

 クレマンティーヌの槍が突き出されると、そこから旋風が巻き起こる。

 

 旋風により隊長は体勢を崩し、ゼロは吹き飛ばされる。

 

 本来、この武技は剣圧、いや槍だから槍圧とでも言うべきか、それを突きに合わせて放つという武技だ。

 クレマンティーヌは、今回その武技としての精度を意図的に落とし、空気の槍をただの風へと変えていた。

 

 体勢を崩した隊長を無視し、クレマンティーヌはゼロへと疾走する。

 その速さは、もはや人知を越えた速度に達していた。

 二年前のゼロであれば、クレマンティーヌのその動きに反応することすらできなかっただろう。

 

 しかし、クレマンティーヌの予想に反し、ゼロはその速さに反応する。

 

 吹き飛ばされたゼロは、クレマンティーヌの姿を視界に捉えると三度(みたび)その姿を肥大化させる。

 解放した呪文印は、『グ』、霜の竜(フロスト・ドラゴン)、そして右足のギガントバシリスク、胸の飛竜(ワイバーン)の4つ。

 飛竜以外は、生物の頂点に位置すると言っても過言ではないモンスター達である。それらの力を全て合わせた一撃は、アダマンタイトの鎧ですら防ぐことはできない。

 

 モンスター達の力により強化された知覚、それによりクレマンティーヌを捉えたゼロは、こちらに突き進むクレマンティーヌに対して自ら踏み込んだ。

 

 クレマンティーヌがそれに気が付いたときには、ゼロの姿は彼女の懐に存在した。

 

「前と一緒にしてんじゃねぇよ。舐めてんのか」

 

  以前のゼロにはできなかったという先入観、それを指摘しながらゼロはその拳をクレマンティーヌの顔面に叩き込む。

 

「っ!?」

 

 ―――武技、『不落要塞』

 

 クレマンティーヌは、反射的に顔面に『不落要塞』を施す。

 それにより威力を大きく削ぐことができたが、完全に受け止めることはできず文字通り鼻を折られ、吹き飛ぶことになった。

 

 吹き飛ばされたクレマンティーヌに、さらに背後にいた隊長が襲いかかる。

 

 

 神人である隊長の一撃は、『不落要塞』を突き破ることはできないものの、クレマンティーヌの身体を突き破ることは容易だった。

 

 隊長の一撃は、背後からクレマンティーヌを貫き、彼女の肺に大穴を開ける。

 

「退いてって言わなかった?」

 

 しかし、クレマンティーヌは肺に穴が開いた程度で動けなくなるような人間ではない。

 魔法少女である彼女にとって、肉体は外付けハードディスクのようなものでしかない。例えどれ程破壊されようとも、肉の塊でしかない身体など彼女の生死には一切関係ない。

 

 胸から突き出る槍の穂先を、クレマンティーヌは右手で握り潰す。ガングニールと化した両腕は、本来の彼の装備ではない槍など握力だけでゴミのように潰すことが可能だ。

 

 背後の隊長を蹴り飛ばし、その反作用により胸から槍を強引に引き抜く。

 同時に疾走、スポイトランスをゼロの首筋に叩きつけて首の肉を潰し骨を砕き、強引に首と胴体とを分断する。

 

 そして、宙を舞うゼロの顔面に槍を突き刺そうとして―――

 

 ―――『可能性知覚』により強化された第六感に従いその場から飛び退いた。

 

 直後に、彼女がいた場所をゼロの胴体が放った拳が通過する。

 

「なっ!? どうして……」

 

 胴体は、拳を放った手と逆の手で宙を舞う頭を掴み、元々あったように頭を胴体に合わせる。

 すると、潰された首の肉が再生し、クレマンティーヌに挽肉にされる前の姿に戻った。

 

「前と一緒にするなって言ったろ、クレマンティーヌさんよぉ」

 

 驚愕するクレマンティーヌを見て、ゼロは顔に優越感に溢れた笑みを浮かべた。

 

 スポイトランスの効果により心臓の傷と肺の穴が塞がるのを見つつ、クレマンティーヌは背後の隊長と目の前のゼロに意識を向ける。

 

「随分と変わったみたいね。二年前の時は、そこまで人間辞めてなかったはずなんだけど」

「お前に言われたくはないさ、心臓潰されておいて生きているお前にはな」

 

 昔の隊長はともかく、今の隊長は空気が読めるので、会話中に割り込んでくることはない。

 クレマンティーヌは、ゼロとの会話を続けながら、目の前の男をいかに苦しめて殺すかを考えていた。

 

「そっち違って、私の場合は首飛ばされたら生きているとは断言できないわよ。心臓ならどうにかなるけど、流石にそれはわからないかなー」

「よく言う、風花聖典の連中やそこの隊長さんから話は聞いてるんだ。お前は以前首飛ばされたことあるだろ」

「バレてるかー。いやー、ブラフにならないかと思ったんだけどな-」

 

 クレマンティーヌは、手に持ったスポイトランスを見つめる。

 そういえば、この槍はHP吸収以外にも面白い効果があったな。

 

 クレマンティーヌは、ゼロへと槍を構える。

 

「ってことは、私の手札はバレているわけね」

「ああ、そうだ。お前の手札は全部わかってる。

 だから覚悟するといいさ、クインティアの片割れさんよぉ」

 

 どうやら、クレマンティーヌの経歴も、コンプレックスも、彼には知られているようだった。

 『クインティアの片割れ』などと呼ばれれば、以前の私であれば激昂して殴り掛かっていたかもしれない。

 

 ―――武技、『穿撃』

 

 スポイトランスによる神速の突き、それをゼロに放つ。

 ゼロはその一撃を軽々と受け止めると、槍の突起を掴みスポイトランスを抑え込んだ。

 同時に、背後の隊長がこちらに駆けてくるのがわかった。

 

 しかし、それは無視。どうせ刺されても殴られても行動できるのだから構う必要はない。

 本国にあるであろうあの槍を持たない隊長では、魂をソウルジェムに加工していることを知らない以上、クレマンティーヌを殺すことは不可能に近い。

 

 クレマンティーヌは、槍を持った手とは逆の手に持っていたスティレットをゼロめがけて振り下ろす。

 ゼロはそれを掴むと、スティレットを持つ腕に強い力をかけてきた。おそらく、その腕力で強引にスティレットを圧し折る気だろう。

 

 だが、しばらく数瞬力を入れていたゼロは、急にその力を抜いた。

 当たり前だ。作りが雑とはいえ、それはガングニールの破片より作られた武器。かつて、神の武器であった物から作られた武器だ。シャルティアの様な規格外ならともかく、ゼロごときに折れるものではない。

 

 クレマンティーヌは、その隙にゼロの急所に蹴りを入れる。

 スティレットに意識が向いていたゼロには、それを防ぐ手段はなかった。

 

「―――うっ」

 

 ゼロの顔が、あっという間に真っ青になる。

 そうしてゼロの身体から力が抜けたその隙に、槍とスティレットから手を放してゼロの服の襟をつかんだ。

 そしてそのまま、身体を捻りながら背後にゼロの身体を投げる。地球で言う背負い投げの最後に、地面に叩きつけるではなく後ろに投げたと言えばわかりやすいだろう。

 

 投げられたゼロは、ちょうどクレマンティーヌの背後に迫っていた隊長ともつれあう。

 ゼロが漆黒聖典の誰かであれば連携もとれているだろうからこんなことにはならなかったかもしれないが、息の合うはずもない二人では、こういう状況には対応できなかったようだ。

 

 その隙に、ゼロの両腕を槍で強引に切断する。さらに、それに書かれた呪文印(スペルタトゥー)を生活魔法のスクロールで焼く。

 見たところゼロの回復に起点は腕にあるトロールの呪文印(スペルタトゥー)から来ているように感じられた。ならば、その腕を切断すれば回復することはできないだろう。

 

「がああぁぁっ!!」

 

 腕を切断されたことによる痛みのせいか、ゼロは大きく叫び声をあげる。

 クレマンティーヌはそれに心地よさを感じながら、彼を蹴り飛ばして隊長から引きはがした。

 蹴り飛ばされたゼロは、壁に背を打ち意識を失う。

 

 その直後に、いまだ体勢が戻らない隊長をスポイトランスで薙ぐように殴り飛ばす。

 スポイトランスによる一撃をくらった隊長は、壁を突き破り食堂の方に転がっていった。

 

 

「さて、これで邪魔は入らないかな」

 

 そういって、クレマンティーヌはゼロの腹筋にスポイトランスを突き刺す。

 

「啜りなさい『スポイトランス』」

 

 彼女がそういうとスポイトランスが一瞬輝き、そして次の瞬間、普通であれば石突があるはずの場所から血が噴き出し始めた。

 

 その痛みによって目覚めたためか、ゼロが声にならない悲鳴を上げる。

 クレマンティーヌはそれを嘲笑いながら、彼の口に安物のポーションを大量に押し込んだ。

 

「ふふふ、苦しいでしょー。うん、いい気味だねぇ」

 

 安物のポーションでは、ゼロの傷を癒すことはできない。しかし、その血を補う程度には回復させることができる。

 彼は今、血を抜かれた端から足されているような状況だった。

 

 ゼロは槍を引き抜こうと暴れるが、床に貫通するように突き刺さっているためか、両手のないゼロでは逃げ出すことはできない。

 

 足を懸命に動かして暴れるゼロ。

 クレマンティーヌはそれを見ながら、かつて漆黒聖典の一員として働いていたころのように楽しそうに笑った。

 

「うるさいなー。ちょっと黙ろうかー」

 

 暴れるゼロの口に、腰にある無限の背負い袋の中にあった薬草類を詰め込む。

 それにより、ゼロの声は少しだけ静かになった。

 

「これでよし、このまましばらく放置しておこーか。隊長と戦い終わるころには、もっと面白くなってるでしょ」

 

 クレマンティーヌはゼロに背を向けて食堂の方へ歩き出す。

 だが、廊下に出る直前に腕を強く掴まれ、彼女は足を止めることとなった。

 

 顔を振り返らせると、そこには大量の薬草を銜えて目を血走らせたゼロが、どうやって再生させたのかわからないが、両腕でクレマンティーヌの両腕を地面に這いながら掴んでいた。

 

 だが、彼女を掴んでいる両腕は、皮膚はなく筋肉がむき出しであまりにも無残な姿をしていた。

 おそらく、その両腕はかなりの無理をして再生させたものなのだろう。

 

「ほいふ、ほいふはへは……」

 

 薬草を口の中で動かしつつ何かを言ったゼロは、再生させた両腕を強く握りしめる。

 彼の怪力により、クレマンティーヌの腕に着けられていた黒い籠手が砕けた。

 

 だが、流石に腕そのもの、ガングニールの欠片でできた腕を壊すことはできなかったようで、彼はクレマンティーヌから手を放してうつぶせに倒れる。

 

「ちっ」

 

 クレマンティーヌは舌打ちをしつつ、倒れ伏したゼロを蹴りつける。

 

 蹴られたゼロは、また背中を壁に打ち付け、崩れ落ちるようにして座り込んだ。

 

 彼は、小さく目を開くと、不適な笑みをクレマンティーヌに向け、そして力尽きたように目を閉じる。

 

 そして、『六腕』のリーダーである彼は息を引き取った。

 




 ※これは、すべて女子トイレで起きた出来事です。





(感想で)ゼロは死なないと言ったな、あれは嘘だ。
申し訳ありません。気が付いたらゼロさん死んでました。どうしてこうなった。

そもそも、今回の話は『魔改造zero&「俺一人で漆黒聖典だ!」vs魔改造クレマンティーヌ』というかなりの激戦の予定だったのです。しかし、なぜかクレマンティーヌの圧勝に……
おかしい、何故だ、Why? レベルアップしたせいか?

あ、あれです。隊長は部下が逃げるための時間稼ぎに集中して、むやみに攻めなかったからこうなったんです。そうに決まってます。

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