もしクレマンティーヌが装者で絶剣で女神だったら 作:更新停止
アンケート結果
ジナコ2
向井・鈴1
あいか2+1(私の票)
めめ1
高鴨穏乃(咲)1
イアリティッケ・シン・ゴルオット1
ディアンヌ1
漆原静乃1
ヴィクトリカ1
イオナ1
ナタリア1
滝川ノア1
よってペルソナ4より『中村あいか』に決定しました。
投票した名前が↑にない場合は、元々出番の予定があったか、複数のキャラクターを推していたために切り捨てられたと思ってください。
※ネタばれ回避のため、活動報告は削除しました。
もしクレマンティーヌが魔術結社の一員でなかったら
6月29日 21:43 エ・ランテル内周部
アインズが森の賢王と呼ばれる魔獣、巨大なジャンガリアンハムスターを従えることになったりなどといろいろあったが、無事に漆黒の剣とモモンにナーベ、そして依頼人であるンフィーレアはエ・ランテルに戻ってくることができた。
「街に着きましたし、これで依頼は完了です。皆さんご苦労様でした。
報酬の方はもう用意してあるのですが、約束の追加報酬の方をお渡ししたいので漆黒の剣の皆さんは今から、モモンさんとナーベさんは組合の方で森の賢王を登録してからお越しいただけますか」
「了解いたしました」
「はい、では私たちの方もただついていくだけというのもなんですから、ンフィーレアさんの店の方で荷物運びなどのお手伝いをしましょう」
街に着いたアインズには、エ・ランテル内の安全性や責任の観点から森の賢王を自らの魔獣として登録する義務がある。ゆえに、漆黒の剣の人達のように依頼人であるンフィーレアに付いて行くことができないでいた。
「そんな、悪いですよ。わざわざ手伝っていただくなんて」
「いいんですよ。そうでもしないと、モモンさんにおんぶにだっこだった私たちが追加報酬をいただくなんて納得できませんから」
「それは……わかりました。でしたらお願いしますね」
優し気な口調でンフィーレアに話しかける漆黒の剣のリーダー、ペテルの様子に、ンフィーレアは折れることとなった。
「ではモモンさん。私たちはンフィーレアさんのお店の方に先に行ってます」
「わかりました。私たちも終わり次第そちらに」
アインズたち二人と漆黒の剣とンフィーレアの六人は、一時的に別れそれぞれ組合と店に向かう。
アインズは漆黒の剣達の後ろ姿を見つつ、森の賢王の背中に乗りながら溜め息をついた。
(ここから、街中の視線に晒されながら組合まで行くのか)
小さく溜め息をつきながら、彼はナーベラルに声をかけて組合へと向かう。
案の定、随分と目立つようで道行く人皆に見られることとなった。
もちろん、彼はその視線が森の賢王の力強さ(?)に驚いている物だと言うことは理解している。
しかし、理解しているからと言って同意できるかは別の問題だった。
(異文化交流は難しいと言うけど、本当に心の底からそれを実感させられるよ)
彼の主観では、森の賢王、つまりは巨大なジャンガリアンハムスターの上に乗っていることはただの羞恥プレイでしかないのだ。
「いや、悩んでも仕方が無いか」
そう、悩んだところでどうにもならないのだ。
冒険者モモンの力を見せつける以上、森の賢王であるこの魔獣から降りるという選択肢は無い。乗っているからこそ、従えていることを強調できているのだから。
組合に着鬼建物の前に森の賢王を止めた後、ナーベラルに森の賢王のことを任せて組合の建物の中に入る。
門にいた衛兵によれば、受付嬢に魔獣の登録をしたいことを言えばあとはほとんど組合がやってくれるらしい。
受付嬢に魔獣の登録をしたいことを告げると、衛兵に聞いていたようにこちらから何かを記入したりせずともほぼ全てを組合がやってくれた。
ただ一つ、魔獣の姿を登録するためにその姿を模写する必要があると言われたことだけが問題だった。
模写の方法は、人の手によるものかマジックアイテムの手によるものかの二択。
人の手によるものである場合、時間がかかり正確性もマジックアイテムの物に比べれば劣る。その代わり代金はタダだ。
対してマジックアイテムによるものである場合、人の手によるものよりも正確ですぐに終わる。その代わり金がかかる。
金欠である彼にはマジックアイテムを使用した模写はできないのだが、そうしなければ彼の評判にかかわる問題となる。万が一ケチだの守銭奴だのと騒がれてしまえば、のちにその評判を引き継ぐこととなるアインズ・ウール・ゴウンの名が傷つくのだ。
しかし、無い袖は振ることができない。
仕方がないので、苦しい言い訳だったが『芸術に興味がある』ということにして描いてもらうこととなった。
予定では一時間半ほどかかるそうなので、いくつか厳命を――彼をモモンと呼ぶことや、むやみに人を傷つけないことなど―――下したナーベラルを先にンフィーレアの元へと向かわせ、彼自身は一時間半ほど待つこととなった。
できればただ待つだけでなく組合内を少し見て回りたかったが、芸術に興味があると言ってしまった手前絵を書いている様子を眺めなければならなかった。
そう言ったものの、正直に言えば彼は芸術に興味が全くないわけではなかった。
彼がまだ人間であった頃、ろくに芸術について学ぶ機会など無かったためだ。ナザリックの支配者としての体裁があったためナザリックでは学ぶことなどできなかったが、彼としては支配者の教養の一つとしてある程度の知識を持っておきたかったというのもある。
彼は、森の賢王のスケッチをする男性の手つきを見ながら、おぼろげにある芸術に関する知識と照らし合わせつつ観察していた。
しかし、彼がそれを一時間半もの間続けることはなかった。
6月29日 22:00 エ・ランテル外周部
「時間だ。では、死の螺旋を始めるとしよう」
6月29日 22:17 エ・ランテル内周部 冒険者組合
アインズが組合を訪れて20分程した頃、組合の建物に一人の衛兵が飛び込んできた。
相当焦った様子で受付嬢の前に並ぶ冒険者たちを押しのけると、手に持った紙を受付嬢の前に叩きつける。
「組合長に、はぁ、はぁ、アインザック組合長に届けてくれ!! 緊急の依頼だ!!」
受付嬢は衛兵の持っていた紙を見ると顔を青褪めさせ、紙をもって慌ててカウンターの奥に消えていった。
「……何かあったようですね」
「ええ、あの衛兵の様子からして相当大変なことがあったみたいですよ。衛兵が飛び込んでくるなんて、このエ・ランテルに来て初めてです」
アインズが傍でスケッチしていた男に話しかけると、男は彼の言葉に同意したように言葉を返す。
その時、アインズのある
「少し、失礼します」
彼は男に一言断ると、組合の建物を出て通りの中心に仁王立ちする。
彼の発する異様な威圧感に一般人は周りから離れ、近くにいた冒険者たちは興味深そうに見つめた。
「―――なるほど、街が安全地帯なのはゲームの世界だけか……」
背負った二本の大剣を背中から引き抜き、両手に持って構える。
その光景を見た周りの人間から、小さな悲鳴がこぼれた。
「おい、お前何をやっているんだ!!」
彼の様子を見ていた冒険者たちの一人が、彼に声をかけた。街中で剣を抜くことは、冒険者組合の規約でもこの街の法でも基本的に禁止されているためだ。
彼はその冒険者を一瞥すると、外周部の方角に向き直り応える。
「お前たちも戦う準備をしておけ。もうすぐ来るぞ」
丁度その時、遠くから引き裂くような悲鳴が聞こえた。
外周部の方向から聞こえたその悲鳴に、冒険者たちが思わずそちらを向く。
「そこにいる冒険者達、全員武器を取れ。民間人は街の中心部に避難するんだ」
周りの冒険者たちは、彼の言葉に従い剣をとる。
彼は
その様子を見た周りの一般人は、何か大変なことが起きていると感じて中心部へと歩き出す。
「……なあ、あんたは何が起きてるのかわかんのか」
冒険者達の一人が、彼に不安げに声をかけた。
「ああ、この気配はおそらく―――来たぞ」
その言葉に答えようとするが、彼は途中で言葉を切り身体の向きを変える。
冒険者が彼の正面に視線を向けると、そこには
「アンデッド……墓地から溢れたのか」
彼の隣から、呆然と呟く冒険者の声が聞こえる。
彼はその冒険者を無視して、アンデッドの大群へと一歩踏み出した。
冒険者たちとアンデッドの大群までの距離はおよそ100m、彼はその距離を瞬く間に詰め、アンデッド達をその巨大な剣で薙ぎ払う。
剣の間合いにいたアンデッド達はその一撃で身体を二つに分けられ、そのすぐそばにいたアンデッド達は剣が起こした風によろめかされた。
力任せに振るったがために起こったその隙に、彼は一歩進み多くのアンデッドを間合いに納める。
そして、再び一閃。
それは風を切り裂くような技に優れた一撃ではなかったが、風ごと薙ぐその一撃は力の弱い
大剣の一撃により
「……すげぇ」
冒険者たちの誰かが呟く。
両手に握った巨大な大剣を振るいアンデッドの大群を蹴散らすその姿は、まるで英雄の様だった。
「―――はっ!!」
気合い一閃、片手に持った剣をブーメランの様に投擲する。
もちろん、ブーメランのように投げたからといって剣がブーメランの様に戻ってくることはない。大剣は、彼の怪力により高速で回転しながら単に大群の中を飛んでいっただけだ。
だが、アンデッド達にはそれで十分だった。
回転する刃に飲まれたアンデッド達は、肉を裂かれ骨を砕かれ吹き飛んで行く。
剣が飛んでいった距離は50m程、その範囲にいた50体近いアンデッド達は、一瞬で土に帰ることとなった。
彼は、投擲した剣によってできた道を、左手に持った剣を振り回しながら駆ける。
その様子は、まさに竜巻。剣を振るい辺りのアンデッドを切り伏せつつ、赤いマントをたなびかせて疾走していく。
「おい、俺達も行くぞ!!
「お、おう!!」
「エ・ランテルは、俺達の大切な街なんだ。突っ立ってるだけで何もしなかったなんて知られたら、笑いものじゃ済まねぇぞ!!」
彼の様子を見ていた冒険者達は、彼の一騎当千の働きを見て動き出す。
彼等の叫び声を聞いたのか、組合の建物中からも多くの冒険者達が出てそれに加勢していった。
「……ふん、雑魚アンデッドを片づけるだけでこれか」
アインズは、剣を振るって
遠くの方をよく見れば、この大通りから外れ路地に入ってゆくアンデッド達の姿が見える。
彼は、目の前の
「この中に
突然のその声に、冒険者達は目の前のアンデッドを切り伏せて安全を確保すると彼の方を向く。
「アンデッド達の中には、通りから外れて路地に入った者達もいる。もし
彼のその呼びかけ、それに戦っていた冒険者の内の何人かが答えると、彼らは路地裏の方に消えていった。
アインズはそれを見届けると、付近に出現した巨大なアンデッド、
彼一人でこの軍勢を相手にすることは可能だが、この大通り以外にもアンデッドがいることが分かった今それをすることはあまりにも非効率だからだ。
冒険者モモンの名は、一時的にとはいえ一人でアンデッドの軍勢を抑えたことで十分に広がるだろう。
ならば、次に重要になることはモモンの名を広める人物を少しでも生き残らせることだ。
そのため彼は、ある程度の雑魚は冒険者たちに任せ、自分は路地などから回り込んでくるであろう伏兵となりうるアンデッド達を相手にするつもりだった。
「―――はあっ!!」
声と共に剣を振り下ろしてゆく。
彼は、
彼と冒険者たちが大通りの軍勢を全滅させたのは、戦い始めてからおよそ20分程経ってからだった。
アインズの心配は杞憂に終わり、路地に入っていったアンデッド達は
「―――申し訳ありません、アイ、モモンさ―――ん!!」
大通りの殲滅が終わったころに、騒ぎを聞きつけたナーベラルと漆黒の剣が駆けつけてくる。
ナーベラルは転移魔法まで使用してアインズの目の前に現れると、恐怖に染まった表情で跪いた。
突如現れた絶世の美女に驚き、辺りの冒険者達は彼とナーベラルに注目する。
彼女、ナーベラルの心は恐怖に染まっていた。
彼女は本来、至高なる方々の盾となるべく存在する者だ。いくら彼女の主の方が強いとはいえ、僅かでも主が危険となる際に盾となる彼女がその場にいないなど言語道断である。
跪く彼女に、アインズは声をかける。
「いやナーベ、お前に否はない。手持ち無沙汰となったお前に、ンフィーレアの所に行くよう告げたのは私だ。むしろ、命じられた事を守ったお前を賞賛するべきだろう」
ナーベラルは、その言葉に感極まったように深く頭を下げた。
「さて、一旦組合の方で事情を聞くべきだな」
彼は手に持った剣を背中に納めると、ナーベラルを引き連れて冒険者組合の方に足を向けた。
6月29日 22:45 エ・ランテル内周部 冒険者組合
組合には、多くの冒険者達が集まっていた。
集まった冒険者たちの表情は硬く、今のエ・ランテルの危機的な状況を表現していると言えた。
そんな冒険者たちの前に、ここエ・ランテルの冒険者組合長であるアインザックが現れる。
「さて、全員いるな。では話を始めよう。
今回君たちに集まって貰った理由は、エ・ランテルを拠点とする冒険者である君達全員に指名依頼が入ったためだ」
そこで一旦言葉を切り、アインザックは冒険者達を見渡すと再び口を開いた。
「依頼主と依頼内容は想像がつくと思う。
……依頼主は領主、依頼内容はこの街のアンデッドの掃討だ。
現在、ミスリルの冒険者チームである『クラルグラ』と『天狼』が外周部との境界にある門の敵に対処しているが、戦況は芳しくないと報告が来ている。
君たちは、まず『グラルグラ』や『天狼』と協力し門の付近の敵を片づけ、門を一旦閉門、その後日が明けたのち外周部の攻略に移ってほしい。
もちろん、今回の依頼は指名依頼である以上君たちには依頼を拒否する権利がある。今回の依頼は過酷なものとなるために、自分では力が及ばないと感じる者もいるだろうから当然だ」
その言葉に、冒険者たちの一部、
しかし、彼らは続く言葉で凍り付くこととなる。
「だが、その者たちは、今後この街で過ごすことは困難だと考えてほしい。
この依頼は、エ・ランテル全体の危機に立ち向かうための依頼だ。冒険者組合としてはこの依頼を拒否した者を差別することは一切ないと確約するが、この街の住民たちが何を考えるかはわからんからな」
アインザックはそう言うと、もう一度冒険者たちを見回す。
「さて、ではこの依頼を拒否するものは手を挙げてくれ」
彼の言葉に、誰も手を挙げる者はいなかった。
「そうか、ならこの場にいる全員が依頼を受領したとして扱わせてもらおう。
一応言っておくが、個々にカウンターで依頼の手続きをする必要はない。こちらでまとめてやった方が君たちも楽だろうし、何より時間の無駄だからな」
アインザックのその言葉で、多くの
「では、細かい説明に移るとしようか」
アインザックはそう言って、冒険者組合長らしく強い眼差しで彼らを見た。