もしクレマンティーヌが装者で絶剣で女神だったら   作:更新停止

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完全にネタです。勢いで書いたので、もしかしたら矛盾してるかも。


もしクレマンティーヌが悪人でなかったら

 『もう絶望する必要なんて、無い!!』

 

 

 「だったら、何で私はこんな思いしなきゃいけないのよ」

 

 元漆黒聖典第九席、クレマンティーヌはリ・エスティーゼ王国の王都の宿屋で、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 クレマンティーヌは、3年前に自らがとある生まれながらの異能(タレント)を持つことに気が付いた。

 

 いまいちどんな能力かはハッキリしないが、把握できている範囲では『別世界の何者かの記憶を追体験し、その人物の力を使用できる』という物。

 

 彼女が現在持っている能力は3つ、

 一つは、立花響という少女の力。聖遺物と呼ばれる神々の遺産に匹敵するような武具の欠片をその身に宿したこの少女の力のせいで、クレマンティーヌは漆黒聖典を辞めなければならなくなった。後で話す三つ目の能力が無ければ、街に長期間滞在することすら難しかっただろう。

 

 二つ目は、ユウキと呼ばれる少女の力。その高い動体視力と反射神経は、クレマンティーヌのそれをわずかながらに凌駕していたため、彼女の力の底上げに大きく役立った。彼女の持つソードスキルと呼ばれる武技のようなものも、クレマンティーヌの戦い方に幅を持たせるだけではなく、新しい武技を考案する助けにもなった。ちなみに、この能力も漆黒聖典を抜けるに至った(間接的とはいえ)原因である。

 

 そして三つ目は、鹿目まどかと呼ばれる少女の力。ただの人の身にありながら、世界を変えた少女の力。ものすごく恥ずかしい目に遭わなければならないが、かの神々ですら殺せるであろう力を持った少女の力を私は持っていた。

 

 

 かなりの程度の差はあるが、どの人物の力も英雄クラスの力だった。

 もちろん、これらの力にも欠点はある。いや、副作用と言うべきか。

 

 

 もし、1番始めに手にした力が鹿目まどかの力であれば、私は恐らく世界最大級の殺人鬼になっただろう。しかし、私は今そうしていない。それが副作用だ。

 

 この生まれながらの異能(タレント)は、力を手にする前にその人物の人生、記憶、感情を追体験する。彼女らが何を思い、何を考え、何のために生きてきたか、その全てを私に投影させる。もし、彼女らが私のように性格破綻者であれば特に変化はなかっただろう。しかし、そうではなかった。

 

 ―――彼女らは、あまりにもいい人過ぎたのだ。

 

 毎日を微笑みながら生き、苦悩しながらも前向きに歩み、苦しみながらも願いに殉じた彼女達。

 

 自らの価値を見失いかけながらも、生きることを諦めず危険を前にしても歌い続けた立花響に、死の恐怖に脅えながらも、前を向き嘆くことなく笑って生きた紺野木綿季に、救いのない契約だと知りながらも、誰かのためにと真っ直ぐに願った鹿目まどかに、何の影響も受けずにいられるだろうか。いや、そんなことは不可能だ。

 

 

 私にとって、その意志は、その恐怖は、その決意は、全て私のものでもあるのだから。

 

 

 

「まぁ、だからこそ困っているんけどねぇ」

 

 だからこそ、いい人でない私は困っているわけだ。

 彼女達の感情は自分のものではない。しかし、同時に自分のものでもある。そのため、頻繁にとはいかないものの、稀にと言えない程度の頻度でその感情に引きずられる事がある。

 

 本来の私であれば、その辺の少年兵士なんかに稽古を付ける約束なんてしない、邪教徒の殲滅なんて面倒くさいからやらない、興が乗ったからと言っても貴族の暗殺なんて厄介事を背負ったりしない。

 

 まさか、王国戦士長と切磋琢磨しなければならなくなるとは、かつては夢にも思わなかった。

 

 

 まあ、それはともかく、

 

 追っ手としてやってくる漆黒聖典の連中をたまーに斬殺しながら、クライムを鍛えつつ、ラキュースを処女呼ばわりしながら、イビルアイを弄りまわし、ガゼフと食事をともにする。

 

 

 そうやって、今日も私は生きている。

 

 

 

 

 

 

 王国兵士の一人、クライムの朝は早い。

 彼は、月が夜空を照らす様な時間から目を覚ます。いや、覚まされる。

 

 彼は目を覚ますと同時に一気に意識を覚醒させ、全身を脱力状態からまともに戦える程度まで一気に引き上げる。そして左手で剣を手に取り、更に右手で弾かれるようにベッドから離れた。

 その直後、ベッドのクライムがいた場所に銀色に輝くスティレットが突き刺さった。

 

「うん、とりあえずは合格かなぁ」

 

 突き刺した女性、クレマンティーヌはそう呟く。

 

「ありがとうございます」

 

 そんな彼女に、クライムはそう返した。

 

 

 

 クレマンティーヌは、クライムの師匠と言うべき人物の一人である。

 剣術の師匠がガガーラン、魔法の師匠がイビルアイだとすれば、クレマンティーヌは変な言い方たが動き方の師匠と言うべきだろうか。

 

 毎朝、もしくは毎晩行われる不意打ちは、その訓練の一環である。

 これは、可能な限り身体の疲労を取る休息方法の訓練と、気配察知の訓練、そして脱力と行動の転換を素早く行う訓練の三つを兼ねたもので、彼が彼女に教えを請うてからの1年間毎日行われている。

 

 

「それじゃあ、先に行ってるわよ」

 

 少しの間雑談を交わした後、クレマンティーヌは窓から飛び降りて、場内にある兵士達の訓練に使われる大広間に向かっていった。

 

 彼女が部屋を後にすると、クライムは素早く彼女のとの鍛錬時用の鎧姿に着替える。チェインシャツやチョッキを身につけ、その上に艶消しされた傷だらけの黒い鎧を身に纏う。

 この鎧は、鍛錬時に戦闘の際に使えるようなものを使用しなければ鍛錬にならないと主張した彼女から貰ったものだ。魔法で鍛えられていたりはしないものの、並の騎士では手にすることすら叶わない様な高価なものだ。余り階位の高くないような貴族であれば宝物庫に死蔵していてもおかしくないほどの物である。

 

 それはともかく、

 

 すぐさま、大広間へ。クレマンティーヌが稽古を付けてくれるのは夜明けまで、決して時間は無駄にはできない。

 

 人通りの少ない夜の王宮を駆け、大広間へとたどり着く。

 そこには、黒いローブ姿のクレマンティーヌが何時も鍛錬時に使う鉄の剣を2本手に待っていた。 

 

 クレマンティーヌは、その暗殺者のような服装とは裏腹に比較的()()()()()()()()()()戦士だ。王国戦士長とは受けと回避、相手の攻撃に対する対処の方法は異なるものの似た戦い方と言えるだろう。

 

 一度、クレマンティーヌの様な人間がただの旅人をしていることを不思議に思い、何故旅人をしているのか聞いたがはぐらかして答えてくれなかった。

 彼女の性格からして、何か後ろ暗いことに手を出しているとは考えにくいので、何か事情があるのだろう。

 

 

 屈伸や前屈などで身体をほぐし、彼女から鉄の剣を受け取る。

 

「それじゃ、始めるわ」

「よろしくお願いします!」

 

 二人で向き合い、剣を構える。

 毎朝の奇襲の後は、何時も模擬戦をしていた。

 模擬戦と言っても、クレマンティーヌが武技を使ってはいけないこと以外は、実戦と同じだ。手元の刃は潰されていないし、剣を使った戦い方に限定したものではなく、蹴りも投げ技も絞め技も、一般的な戦場ですら禁忌するものもいる様な目潰しや急所を突くような技(ゴールデンボール・クラッシュ)まで許可されている。限りなく実戦に近づけたものだ。

 

 

 身体を動かさないように、小さく深呼吸をする。実戦ではこんなことは出来ないが、1戦目に限りこの模擬戦では許可されている。

 そして、大きく一歩目を踏み出した。

 

 ―――武技、《能力向上》

 

 動きを加速させる武技を発動する。

 その効果はクライムが知るものよりも遥かに弱いが、確実にクライムの動きを加速させていた。

 

 クレマンティーヌまでの距離の二歩を瞬く間に詰め、その勢いのまま剣を突き出す。

 しかし、彼の剣はクレマンティーヌの姿を捉えることはできなかった。

 当然だ、武技を使ったクライムよりも、クレマンティーヌの方が早いのだから。

 

「うーん、少しは速くなったみたいじゃない」

 

 ―――でも、まだ遅い。

 

 その言葉を聞くよりも速く、突き出した剣を振り上げる。

 その剣は、上空から剣を振り下ろすクレマンティーヌの剣と打ち合わされる軌道を描いていた。

 

 ―――武技、《重心稼働》

 

 クレマンティーヌの剣と打ち合うのに合わせるように、重心を動かし剣と合わせる。

 しかし、クレマンティーヌは、その一撃を剣を用いて自身が滑り降りるかのように受けながし、剣を振り上げてがら空きになった首筋へと突きつけた。

 

「はい、死亡。安直に迎え撃ったりしない様にしなさい」

 

 読まれていた。クライムはそう感じた。

 いや、読まれるのも当然だろう。重心稼働という武技を作り出しクライムに教えたのは彼女なのだから。

 

 重心稼働と呼ばれる武技は、クレマンティーヌ曰く、即応反射と呼ばれる武技の劣化版らしい。事実、才能の無いクライムですら、しっかりと使いこなせる様な武技だ。

 ……劣化版の武技をわざわざ作り出して、クライムに教えてくれる辺り、クレマンティーヌのいい人さ加減が現れている気がすると感じるのは、クライムだけではないだろう。

 

 

 この後も、クライムとクレマンティーヌは太陽が顔を覗かせるまで剣を打ち合わせていた。

 

 

 

 

 

「げ、クレマンティーヌ」

「あれぇ、ラキュちゃんじゃない。こんなところを歩いているなんて、男あさりでもしてたのかしら?」

 

 王都の裏路地、そこを歩いていたラキュースは、クレマンティーヌと出くわした。

 

「男あさりなんて人聞きの悪いこと言わないで欲しいわね。この近くの情報屋に行ってただけよ」

「へぇ、情報屋ねぇ……まあ、よく考えればラキュちゃんに男あさりなんてできるわけ無いわよねぇ。処女だもの」

「……毎回そのネタね。そうやっていっつも同じ事ばっかり言って、飽きないのかしら」

「ラキュちゃんが処女じゃなくなったら変えるわ。あ、御免なさいね、そうしたら同じネタで一生弄ることになっちゃうわね」

 

 ラキュースの顔が僅かに歪む。処女処女処女としつこく言われれば、頭にくるのも当然と言えるだろう。しかし、怒ることはしない。彼女が怒れば、それが彼女の思うつぼだとわかっているからだ。

 

「……はぁ、で、何のようかしら」

「むぅ、なれたみたいね。まあいいわ。

 この間頼んでおいたものができたか確認しにきたのよ」

「頼んでおいたって、あの金属で武器を造って欲しいって話のこと? 一応、あなたがどうやってあんな恐ろしいものを手に入れたのかは聞かないけれど、どれ程の物であるのかは前もって教えておいて欲しかったわ」

 

 クレマンティーヌは、以前漆黒聖典との戦闘で手に入れることとなった『ガングニールの破片』、およそ250kgをラキュースに渡し、その余りを渡すことを条件に武器を造ってもらう約束をしていた。

 

「とても希少なものだって前もって言っておいたはずだけど?」

「恐ろしく軽量でありながら、オリハルコン以上の頑強さ。その上、高い魔法に対する耐性を持つなんて想像なんてしてないわよ。うちが贔屓にしている鍛冶屋の炉は魔法によるものだったから、あの金属を使って武器を造るために鍛冶屋探しから始めなきゃならなかったんだから」

 

 ラキュースがクレマンティーヌに頼まれたものは六つ。

 2本のスティレット、騎士用の、それも丁度クライムが使うような大きさの鎧、両刃の長剣2本、そして魔法で強化された片手剣だった。

 

「とりあえず、スティレットと両刃の剣はできたわ。鎧も殆どできてる。片手剣については少し時間がかかってるけど、来週末にはできるそうよ」

「へぇ、なら長剣とスティレットは今からもらえる? その長剣はガゼフの分だし、久しぶりに今日会えるから渡しておきたいんだけれど」

 

 ラキュースがクレマンティーヌに散々からかわれながらも嫌うことができない理由は、この意外な優しさにある。彼女は、懐に入った人間には表だって言わないものの、かなり優しいのだ。

 

「わかったわ。ガガーランに預けてあるから、今から取りに行きましょう」

 

 故に、彼女はクレマンティーヌと未だに付き合いを続けている。

 

 

 

 

 

 「転移(テレポーテーション)っ!!」

 

 ―――いびるあい は にげだした。

 

 

 

 

 

 ―――『流水加速』

 ―――『能力向上』

 ―――『能力超向上』

 

 自身を加速させる武技と、身体能力を強化する武技。

 ガゼフは、その三つの武技を重ね掛けし、クレマンティーヌに向け加速した。

 

 ―――武技、『能力超向上』

 ―――ソードスキル『ヴォーパルストライク』

 

 それを、クレマンティーヌは武技によって強化された身体から繰り出す、ソードスキルと呼ばれる特殊な攻撃によって迎え撃つ。

 

 空気の壁を斬り裂き、大きく音をたてる刃。

 ガゼフはそれを、流水加速によって加速した反射神経と強化された肉体能力で強引に弾き逸らした。

 

 ―――武技、『即応反射』

 ―――武技、『即応反射』

 

 その直後、二人は崩れた身体を崩れた体を立て直す武技によって戻し、お互いに向かって剣を振るう。

 

 ―――武技、『重心稼働』

 ―――『不落要塞』

 ―――『超回避』

 ―――武技、『六光連斬』

 

 ガゼフの剣が赤く光り輝き、クレマンティーヌに六つの斬撃が放たれる。

 彼女は、その内の一太刀を攻撃を無力化する武技で受け止めると、わざと吹き飛ばされるように重心を動かし、回避力を大きく上昇させる武技である超回避と組み合わせることで残り五太刀の間合いの外に逃れた。

 

「流石だな、まさか流水加速中の六光連斬を無傷でいなされるとは」

「今更驚くことでもないでしょ」

「それもそうだな」

 

 ふたりは、再び剣を正面に構える。

 

 ガゼフ・ストローフとクレマンティーヌ、彼らは、王都から少し離れた平原で戦っていた。

 王都の訓練施設で行わない理由は、訓練施設が王宮内にあるため部外者であるクレマンティーヌが入ることが許されないからである。日常的に王宮に忍び込んでいるクレマンティーヌとしては、王宮内に入る程度ならそう難しいことではないが、さすがによるガゼフと一騎打ちなどすれば見つかるので、王都の訓練施設を使うことは諦めていた。

 

 ふたりが構える剣は、僅かに橙に輝く両刃の剣。クレマンティーヌがラキュースに頼んで打ってもらったものだ。

 彼等は、自らの鍛錬のついでとして、この剣の使い勝手を確かめていた。

 

「さて、では続きと行こうか」

「りょーかい。今度はこっちから行くわね」

 

 ―――武技、『流水加速』

 ―――『疾風走破』

 ―――『能力向上』

 ―――『能力超向上』

 

 クレマンティーヌが、武技によって強化された身体で駆け出す。

 ガゼフは、それに剣を振り下ろして迎え撃った。

 

 ―――武技、『超回避』

 ―――武技、『即応反射』

 

 振り下ろされたガゼフの剣を、クレマンティーヌは武技によって軽々と避ける。

 しかし、ガゼフはその回避に合わせるように武技を使い即座に体勢を整え、超回避が終わった時点に合わせるように剣を振るった。

 

 ―――武技、『即応反射』

 

 咄嗟に武技を使い、クレマンティーヌはその剣をかろうじて避ける。

 剣は、辛うじてクレマンティーヌのローブの端を僅かに斬り裂くに留まった。

 しかし、その反射的な動きはガゼフに大きく隙を見せることとなった。

 

 ―――武技、『戦気梱封』

 

 ガゼフは、武技によって武器を強化すると、返す太刀でクレマンティーヌが手に持った剣に向けて剣を振り上げた。

 

 クレマンティーヌの手から剣が弾き飛ばされる。

 

「あー、読み切られたかぁ」

「これでようやく十勝か、長かったな」

 

 二人は、僅かに息を吐いて身体から力を抜いた。

 

「それにしても、この剣は本当にもらってもいいのか? 俺は鑑定士ではないから詳しくはわからない が、アダマンタイト級の冒険者が使っていてもおかしくないほどの業物に感じられたぞ」

「いいのいいの、私の武器を造ってもらうついでに造ってもらったものだから」

 

 ガゼフとしては、これほどの業物をもらうのは心苦しかった。多くの借りを持つ彼女に、これ以上世話になるのは本当に申しわけなかったのだ。

 しかし、そんなガゼフの様子にも意を返さず、彼女は善意のこもった笑顔で彼の遠慮を流した。

 

「さて、そろそろ日が暮れ始める時間だ。今日は、もうこれぐらいにしないか」

「えー、勝ち逃げする気?」

 

 空が僅かに暗くなり始めたのを見て、ガゼフは鍛錬を切り上げることを提案した。

 しかし、クレマンティーヌは不満なようで、僅かに不満を乗せた口調でガゼフに言葉を返す。

 

「ああ、久しぶりに勝てたのだ。勝ち逃げくらいさせてくれ」

「ぶーぶー、横暴だー」

 

 納得してもらえるよう、一応正直にガゼフは言葉を返すが、その言葉にクレマンティーヌはまるで子供のように返した。

 

 

 

 

 ……結局、ガゼフが彼女に夕飯を奢るという約束をすることで、話は決着することとなった。




更新予定は未定

 ユウキだけ本人ではなく、ゲームのアバターの能力というツッコミは無しの方向でお願いします。

 響さんは、(筆者がGXをまともに見てないので)無印仕様です。

 まどかさんは、(手元にゲーム以外の媒体がないので)PSPゲーム仕様になってます。
※簡単に言うと、SGを自分で浄化できます。

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