とある至高の四十一人の日記   作:小狗丸

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日記19

【四十一日目】

 

 ようやく懐かしのギルド本拠地、ナザリック地下大墳墓に帰ってこれた次の日。モモンガさんの部屋にクレマンティーヌを連れて挨拶に行くと、見た目骸骨のギルド長に「昨日はお楽しみでしたね」と爽やかな顔(骸骨なので表情は分からないが雰囲気で分かった)でどこぞのRPGの宿屋の主人みたいなことを言われた。

 

 イラッときたのでモモンガさんに俺の持つ即死攻撃の中で特に強力な即死攻撃「霊魂強奪」を発動させようとしたら「ごめんなさい! 一回言ってみたかったんです! クモエルさんの即死攻撃はアンデッドの俺にも有効なので止めてください!」と頭を下げて謝ってきた。まったく、謝るくらいなら最初から言うなっての。

 

 俺はユグドラシル時代に得た隠し職業「オールキラー」から「万物を殺す才覚」というパッシブスキルを修得している。これはアンデッドモンスターやボスモンスター等が持つ「即死無効」のスキルをキャンセルして即死攻撃が通用するようにするスキルなのである。ちなみに「霊魂強奪」は万物を殺す才覚を持った状態でしか修得できないアンデットモンスター限定の即死攻撃である。

 

 モモンガさんが俺に頭を下げて謝ったのもこれらのスキルの恐ろしさをよく知っているからだった。

 

 それにしても本当に失礼だよなこの人は?

 

 確かに俺は今までずっとクレマンティーヌと二人っきりで旅をしてきたし、宿屋に泊まるときは何度も同じ部屋で過ごしたけど、一度も手を出したことはないぞ?

 

 昨日だって部屋のベッドはクレマンティーヌ一人に使わせて俺は部屋のソファーで寝ていたし、彼女を自室に連れていったのもシャルティアやデミウルゴス……そして特にアルベドの見る目が何故か殺気だっていたから、彼女の安全を確保するためなんだからな? というかここの奴らって人間に対してかなり険悪じゃない?

 

 そう言うとモモンガさんは「ああ……。クモエルさんもそう思いますか」とため息をついた。どうやらこの人、このことでかなり苦労しているようだな。

 

 まあ確かにアインズ・ウール・ゴウンは元々、プレイヤーもNPCも異形種ばかりで人間種のプレイヤーを対象にしたPKもよくやっていたギルドだからな。人間にいい感情を持っていなくても当然か。

 

 ……そういえば昨日、何でモモンガさんは自分のことを「アインズ・ウール・ゴウン」って言っていたんだ?

 

 気になって聞いてみるとモモンガさんは、この世界に転移してから今までのことを話してくれた。

 

 まずモモンガさんは、恐らくは俺とほとんど同じ時にこの世界にナザリック地下大墳墓と一緒に転移してきたそうだ。……モモンガさんは皆と一緒で俺だけはボッチって、この違いはなんだよ?

 

 次にモモンガさんは転移してすぐにGMコールやメッセージ等を行い、運営や仲間達に連絡をとろうとしたが全く連絡は繋がらず、この世界で生き抜くために単独で情報を集めることを決めたらしい。……そういえばこの世界に初めて来た日、寝ていると耳元で変な音がした気がしたが、もしかしてあれがメッセージの呼び出し音だったのか?

 

 そしてナザリック地下大墳墓の周辺を調べていたモモンガさんは偶然カルネ村っていう村が正体不明の集団に襲われているのを発見。この世界の戦力調査も兼ねて正体不明の集団と戦ってカルネ村を救い、その時に名を尋ねられた時に「アインズ・ウール・ゴウン」と名乗ったそうだ。……カルネ村? 俺が最初に転移した場所の近くにあった村もそんな名前じゃなかったか?

 

 ………。

 

 ………………。

 

 ………………………。

 

 あれ? もしかして俺ってばもう少し考えて行動していればもっと早くにモモンガさん達と合流できていた?

 

 ま、まあ、それはともかくモモンガさんがアインズ・ウール・ゴウンの名前を名乗ったのは、自身が有名になってこの名を世界中に轟かせることで、俺やモモンガさんのようにもしかしたらこの世界に転移しているかもしれないアインズ・ウール・ゴウンのメンバーに自分達の存在を知らせるためらしい。

 

 なるほど。確かにこの世界には来た時期は違ったがユグドラシルのギルド、六大神や八欲王も来ていたみたいだし、可能性は低いかもしれないがアインズ・ウール・ゴウンのメンバーも来ているのかもしれない。だったらモモンガさんがギルド名を名乗ったのもいい判断だと思う。

 

 うん。そういう事だったらモモンガさんにはこれからもアインズ・ウール・ゴウンの名前でいてもらおう。

 

 そう言うとモモンガさん……いや、アインズさんは「え!? いいんですか?」と驚いたが、アインズ・ウール・ゴウンの名前を背負うことができるのは今までナザリック地下大墳墓に残り、守り続けてくれた彼だけだと思う。俺も一応ナザリック地下大墳墓に残ってはいたが、俺は彼の手伝いをしてきただけなので、とてもじゃないがそんな資格はないだろう。

 

 そして更に話を聞いて知ったのだが、なんと先日出会ったアダマンタイト級の冒険者「モモン」はアインズさんの、「ナーベ」はプレアデスの一人であるナーベラルの変装だったらしい。なんでもこの世界の情報と金を集める(あとついでに息ぬき)をするために冒険者になったのだとか。……全然気づかなかった。

 

 あと、ナーベラル・ガンマ、ゴメン。俺、君のことを忘れていただけでなく「エロゲーのヒロイン」みたいと思っちゃったよ……。


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