とある至高の四十一人の日記   作:小狗丸

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 今回からしばらくの間、オリジナルの展開が行われます。


日記10

【十六日目】

 

 戦車蜘蛛の背中に乗ってバハルス帝国へと向かう最中、俺はあることを考えていた。それは以前クレマンティーヌに頼まれた俺のスキルを教えるという件についてだ。

 

 スキルの伝授なんて一体どうすればいいかな、と考えていると突然頭の中にあるイメージに浮かび上がった。

 

 それは相手の、この場合はクレマンティーヌの頭の上に手を置いて伝授したいスキルを使った時の様子をイメージするというやり方だった。こんな簡単なやり方で伝授できるのか、とか、何でいきなりこのイメージが浮かび上がったのか、と色々思ったが俺は直感でこのやり方が正しいと理解した。

 

 とりあえず俺は今思い浮かんだ方法でスキルの一つを伝授することにした。

 

 伝授したスキルは「血の暴発」というカースドアサシンのスキルの一つで、効果は触れた相手の体の箇所に爆発を起こして即死判定のある大ダメージを与えるというものだ。これは対象が生物に限定されて使用には片手か両手に武器を持ってはならないという使用条件があるものの、カースドアサシンのスキルの中では発動までの時間が早く、発動失敗によるペナルティもないスキルなので俺も近距離戦ではよく使用していた。

 

 そしてクレマンティーヌも魔法を封じたスティレットで相手を刺して、相手の体内でスティレットに封じられていた「火球」などの魔法を発動させるという戦いを得意としていたから相性は悪くないだろう。

 

 それで丁度いいところにゴブリンの集団が襲いかかってきたのでクレマンティーヌに試させてみたらアッサリと出来てしまいましたよ「血の暴発」。彼女も使えるようになったスキルを気に入ってくれたくれたようで、それはもう心から楽しそうに血の暴発を使って一人でゴブリンの集団を皆殺しにしていった。

 

 スキルの伝授ってこんな簡単なのかと思ったが、とにかくこれでスキルの伝授の仕方が分かった。これからは他の職業のスキルも教えていくことにしよう。

 

 

 

【十七日目】

 

 国境を越えてようやくバハルス帝国についた。

 

 さて、バハルス帝国についたのはいいがこれからどうしようか?

 

 俺以外のユグドラシルプレイヤーがこの世界に来ていないか情報を集めるのもいいが、やはり先に金を稼ぐ方法を考えた方がいいか。今は金がまだあるが、それだって無限にあるわけじゃないしな。

 

 俺がどうやって金を稼ぐか考えているとクレマンティーヌが「だったら『ワーカー』になればいいんじゃない?」と言ってきた。

 

 ワーカーというのは一言で言えば「冒険者のドロップアウト組」のような存在らしい。

 

 冒険者は報酬次第でどんな仕事でもする自由な職業と言われているが、それでも冒険者組合を仲介せずに仕事を受けてはいけないなどの様々なルールがある。そしてワーカーはそのようなルールに従わずに冒険者組合から除籍となった正真正銘の「報酬次第でどんな仕事でもする」者達なのだそうだ。

 

 仕事の下調べをして斡旋してくれる冒険者組合を通さずに自分達で直接依頼人と交渉するので、ワーカーの仕事は基本的に冒険者より危険でしかも確実に受けられるわけではない。だが本人の腕次第ではワーカーは冒険者よりもずっと稼げて自由な職業だとクレマンティーヌは言う。

 

 なるほど。要するに腕さえあれば稼げる職業であれば確かに俺達にピッタリな仕事だな。

 

 

 

【十八日目】

 

 戦車蜘蛛を走らせ続け、バハルス帝国の首都である帝都についた。

 

 昨日話した通りここでワーカーとして活動しようと思うのだが、クレマンティーヌにワーカーになるにはどうしたらいいと聞くと「そんなの自分達がワーカーだって名乗るだけでいいよー」という答えが返ってきた。

 

 本当にそれでいいのかよ。随分と簡単になれるんだな、ワーカーって。

 

 そんなことを考えていると俺は、クレマンティーヌに引きずられるように帝都にある闘技場にと連れていかれた。彼女が言うにはここでいい成績を見せることが自分達の腕を証明してワーカーの仕事を得る一番の近道らしい。

 

 クレマンティーヌの言葉を聞いてそんなものかなと思った俺は、彼女と一緒に闘技場の試合に飛び入りで参加して、三試合くらいモンスターと戦った。闘技場で戦ったモンスターは、俺とクレマンティーヌにとっては雑魚としか言いようがない弱さだったが、闘技場の観客達の反応は上々のようだ。

 

 三回目の試合で勝利した時にクレマンティーヌが「どうもー! 私達ー、最近ここに来たワーカーですけどー! 何か困ったことがあったら気軽に言ってくださいねー!」と調子良く観客達に言っていたので、これで俺達がワーカーと認識されて仕事が来ること切に願うばかりだった。




 クモエル、ワーカー編(?)スタート

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