異世界集結戦線   作:玉城羽左右衛門

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第拾Ⅷ話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫  漢達の戦い

「被弾! CIWS機能停止! これ以上は持ちません!」

艦橋に悲鳴が上がる。

だが彼らは狼狽えない。

流石は兵士と言うべきであろう。

そして彼らは目を見開き、自分たちが出来る最善の行動を模索していた。

現に彼らは戦っている。

だが先ほどの報告により艦橋内の人間が振り向く。

彼らが此処まで戦え来た頼りの綱たるCIWSが破壊されてしまったのだ。

一同暗くなる。

絶望が艦橋内を襲う中、ただ一人屈しない男がいた。

それはまさに不屈を体現化した人間っと言っても過言ではないだろう。。

そしてその男は艦橋内の全員に向かい声をかける。

「臆するな! いいか?まだ機関が動いている。つまりまだこの艦は生きている。生きていると言う事はまだ我々は死んでいない! 故に全員生きて帰るぞ! この島原艦長の名において!」

その言葉を聞き艦橋全員の顔が安堵の表情で満ちる。

彼らが此処まで戦えたのはこの艦長とあたご、そして全員の力量によって戦えていたのだ。

実際の所、艦長はそう言いつつも焦りを隠せずにいた。

あたごは深海棲艦の追撃を受けつつも難を逃れていた。

この様にあたごが生きているのは深海棲艦との戦いから得られた情報を元に緊急の対応策で開発された新型護衛艦用爆発反応装甲、通称対艦用リアクティブ・アーマーと石川島播磨重工業[IHI]開発、ゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン改良型新型機関JDM-1(J:Japan〔日本〕 D:domestic〔国産〕 M:Movers〔発動機〕)ガスタービンエンジンのおかげである。

護衛艦用爆発反応装甲こと対艦用リアクティブアーマーとは旧世代兵器を多用する深海棲艦向けに開発されたものである。

構造上、現代戦車ことMBT(M:Maine,B:Battle,T:Tank)が使用するものと何ら変わりはなく、正直な話74式戦車の改修案で出た爆発反応装甲をそのまま設計に流用。

艦砲からの威力を想定しその分爆発反応装甲を盛ったのが現状のあたごである。

しかしこの結果、重量が非常に重くなったため新たな発動機の開発が急務となった。

そして発動機に関してLM-2500のライセンス生産の実績を持つ石川島播磨重工業ことIHIに開発が委任された。

前作よりもより効率的である発動機の開発が国内で行われたのにはちゃんとした理由があるからだ。

海外の企業に発注したとしても開発に時間がかかりまた尚且つ大型になるかもしれないと踏んだ上層部は短期間でまた小型に建造できるやも知れないIHIに委任した。

実際発動機部門においてIHIの実績は名が知れており現状、自衛隊艦船のほとんどの発動機がIHIこと石川島播磨重工製が使われているほどである。

また、現状世界は深海棲艦との戦いの中にある。

自国の事で手一杯なのに他国の事など気にしてはなれない。

それが技術であれば尚更である。

まして戦いの最中である故自分で兵器を作ならなければいけない状況下にあるのである。

その事からIHIに発動機の開発が委任されたのだ。

敵艦艇からの攻撃開始から約1時間半今やその命運尽きかけようとしていた。

(もう少し頑張ってくれよ…あたご…もう少しで第一艦隊との会合点だからな…)

心の中で願う。

いや、祈ると言った方が正しいだろう。

だがしかし、そんな祈りも儚く崩れる。

突如、轟音と共に大きな揺れが艦を襲う、そして直後機関部から連絡が入る。

「艦長! 艦尾に被弾! 機関が停止してしまいました!」

「何ッ!?」

そして反復する様に質問する。

「復旧のめどは?!」

「機関部が大きく損傷し、消火活動を急いでいるため現状、たっておりません…」

「クソッ!」

艦長が叫びに近い声で話す。

「どうにかならんのかッ?!」

「消火はなんとかめどは立っていますが…駄目です! タービンが今までの回避運動の負荷と重なり先ほどの攻撃を受け…タービンが焼き切れてしまったとのこと…」

「新型なのに…無茶をさせ過ぎたか…」

此処に来るまであたごは全速力を維持し追撃を免れた来た。

故にあたごはタービンに非常に負荷を掛けてしまっていたのだ。

(駄目か…)

島原艦長が心の中でふと思う。

その時敵の砲撃が止んだ。

突如、襲った静寂に一同困惑する。

(終わったの…か…?)

安堵しているのも束の間CICの電測員から思わぬ通信が入る。

「艦後方より大型艦接近! これは…戦艦級です!」

「何!」

驚くのも無理はない。

敵艦隊と接敵した際は重巡ばかりで戦艦級と思しき艦艇は居なかったのだ。

まして今までの砲撃は重巡クラスの砲撃がほとんどであった。

だからこそあたごは耐えることが出来たのである。

リアクティブ・アーマーは想定内においては重巡クラスの25cm砲55口径が最大でそれ以上の口径は艦に影響を与えかねないと言われている。

艦長はそのことを熟知していた。

そして観測に向かい問う。

「相手はどうしている?」

「はい、あの新手の戦艦野郎は悠長に微調整してやがります…」

「クッ…相手が無力だって知りやがって…」

現状、あたごの発射管は先の戦闘でほとんどの弾を消費してしまった。

残って居る者と言えば機銃ぐらいしかない。

機銃と言えど外部に運用員が露出する物ではなくドーム型の機銃砲塔である。

何故、この様な砲塔型で在るかは爆発反応装甲の特徴を知って居る者だったら理解が出来るだろう。

良い例が一つある。

74式戦車にはこの爆発反応装甲を装備する計画モジュールがあった。

しかしこれはとある問題により廃止された。

74式戦車が何故、爆発反応装甲ことリアクティブ・アーマーを装備しなかったのには第一に歩兵と言う単語が絡んでくる。

ではまず、爆発反応装甲ことリアクティブ・アーマーはどのようなものかと言うと戦車などの補助装甲として使用される装甲板で、2枚の鋼板の間に爆発性の物質を挟んだ構造をしており、簡単に言えば、装甲が内部から爆発する力によって、攻撃をはじき飛ばすことで防御するものである。

更にぶっちゃけて言えば爆発反応装甲とは戦車に装甲として爆薬を積み、飛んできた弾頭をその爆薬が爆発し『相殺』する。

『何だ、すごくいいじゃないか』と思う方も居ると思われるが爆発を相殺する際が問題なのである。

戦車と言う物には随伴歩兵成る物が大抵付く。

それは何故かと言うと戦車特有の弱点を補う為にある。

戦車は言うなれば重装甲と重武装を装備した車両である。

例えるならよくゲームに登場する大型のモンスターが良い例であろう。

攻撃力が非常に高く、もしその攻撃にあったったら只では済まない。

しかしながらその様なモンスターは共通して懐にに潜り込むと非常に弱い。そこで生まれるのが俗に言う必勝法と言う物だ。

だがゲーム制作者はその様な事も勿論想定内に入れている。

そして出すのが子分や小さな雑魚敵…言うなればこれこそが歩兵である。

大抵その様な敵は大型モンスターの懐に入れない様に防衛をする。

雑魚を相手にしていると大型モンスターの攻撃を喰らう…

この上記からも解る通り随伴歩兵とは戦車を守ることにおいて非常に重要なのである。

よく「戦車なんてハッチに上がって手榴弾入れれば倒せるし」とかいう阿呆が居るがそれが通づるのは第二次大戦時までか或いは高低差があるゲリラ戦でしかない。

日本兵の戦車戦闘は手榴弾を持って玉砕で勝てると言われているが日本人が異例過ぎるだけで他国は出来ない。いや出来る訳がない。

随伴歩兵は味方戦車の周りに配置されている。

もしそんな中で敵の攻撃が来てみたらどうだろう。

爆発反応装甲がたちまち起動するのは目に見える。

そして装甲が爆発する…

爆発すると言う事はつまり破片が飛び散ると言う訳である。

そうこれこそが提示された問題なのである。

実際破片の問題は大きく爆発反応装甲を持つ戦車の周りにいた歩兵が死傷すると言う事例が報告されている。

74式が爆発反応装甲を装備しないのはこの様な案件があったからなのだ。

まして日本の場合は戦車との併用運用が主として考えられているため兵士が負傷してしまっては元も子もない。

以下の物を考慮点に入れられた結果出来たのがドーム型機銃砲塔なのである。

ドーム型とは言えど流石に大艦の砲ではすぐにやられてしまう。

此方も結果的に微量ながら爆発反応装甲を装備した。

だが結果としては専ら対空戦闘にしか使えない代物になってしまった。

(防御は強化しても…物量戦では無理か…)

あたごは現状ドーム型機銃しか現状ない。

(127mmがあれば…少しは変わったかもしれんな…)

艦長が心の中でそんな事を思うが首を振り拒否する。

(だめだだめだ…アイツらには効かないし逆に俺らが狙われる…)

あたごに装備されていたMk.45 Mod4 62口径5インチ単装砲であるがこれはとある都合により廃止された。

勿論、これも深海棲艦との戦いによりだ。

深海棲艦にはどうやら学習能力があるようで敵の弱点を的確についてくる。

(米海軍の様にあっけなく死んでたまるか!)

これは地域的な海戦が各地で行われた際の米海軍戦訓から来ている。

たまたま飛んできた流れ弾が米海軍のイージス艦に被弾。

被弾箇所は単装砲部分を見事に直撃。

弾頭は遅延信管式の徹甲榴弾であったらしい…あとは言うまでもないだろう。

貫通直後、大きく爆発し弾薬庫に誘爆…そして連鎖的な爆発を繰り返し艦は轟沈した。

外部が大丈夫であろうと内部は大抵脆い。

長門型戦艦二番艦陸奥をご存じであろうか?

陸奥の轟沈原因は多々流れているが一番有力なのが弾薬庫の誘爆による轟沈である。

長門型戦艦の頑丈さたるやは皆さんも知っているだろう。

長門型一番艦長門は終戦後アメリカに引き渡され、核実験の標的艦にされた。

俗に言う、クロスロード作戦だ。

本作戦は言うなれば核兵器の実験である。

多くの旧式艦艇や戦章艦がこの作戦で沈んでいった。

長門はこの中において二度も核兵器に耐えてかつ、ダメコンさえ行っていればまだ沈んで居なかったとまで言われている。

この様な堅固さたる長門型の姉妹艦。

そんな長門型ですらですら内部の爆発に耐えられなかったのである。

+α遅延信管式と言う曲者がいた。

遅延信管式と言うのは砲弾の徹甲弾の中身が時限爆弾になっていると考えてくれればいいだろう。

この遠延信管式は80㎝列車砲ドーラの砲弾にも使われた物である。

ドーラの運用方法は敵陣地に砲撃を行いその区画を破壊すると言う…言わば攻城兵器である。

実際、マジノ要塞攻略時使用し多大なる戦果を挙げた。

遅延信管式はその特性上、貫通を行ったのち爆発する。

これにより強固たる要塞は破壊出来たのである。

堅いコンクリートの壁を貫通…敵要塞内部までに弾が侵攻した直後爆発が起こる…

遅延信管式の特徴は貫通した後爆発するので例え堅い装甲で在ろうと徹甲弾が許す限りではある種最強である。

遅延信管式と成形炸薬弾は良く間違われたりする。

爆発すると言う点においては同じではあるが基本的な理論が異なってくるので非常に全くの別物である。

この事からあたごは回収時において単装砲は取り払われその部分は弾薬庫の増設や装甲強化に当てられたのであった…


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