異世界集結戦線   作:玉城羽左右衛門

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どうも、玉城デス。
半日かけて書き上げました。



第拾弐話 ≪ 発令! 硫黄島沖救出作戦! ≫壱

「うう~染みるぅ~」

体を流しゆっくり湯船に浸かる。

今までの疲れがお湯と共に外へ流れた。

「まさに至福。疲れた時の風呂はこう体に来るもんがあるな…」

改めてしみじみ思う。

提督?

深海棲艦?

艦娘?

全く夢だったら覚めてくれよ。

そう心の中で真摯に思う。

いきなり、見知らぬ世界に来て救って下さいってねぇ…流石に頭がパンパンになるわ。

そう考えながら風呂に浸かっていると隣からブクブクと泡が噴出してきた。

何だろう。

ゆっくり落ち着いて見る。

にしても湯気が凄い。隣ですら正確に見えない程だ。

じっくり目を凝らす。

ピンクが見える。それと共に何かが上がってきた。

人間だ。

「ふぅ…気持ち良くって寝てたでち。此処はどこでち?」

独り言と共に周囲を見渡している。

俺はコイツを知っている。

潜水艦伊58、ゴーヤだ。

しかし何で居るんだ?

もしかしてコイツは男の娘だったのか?

周囲を見渡しているとどうやら俺を見つけたらしく軽く会釈をし

「あ、どうもでち。もしかして此処、男湯でちか?」

何の焦りも感じず聞いて来た。

「まあ、そうだけど…」

簡単に答える。

どうやら察した様で

「有難うでち。」

そう言うと潜っていった。

なんだったんだ…後味に残るものと共にゴーヤは消えていった。

だが自分はのぼせているのだと錯覚した。体の芯まで温まっていると言う体感からそろそろ出ることにした。

風呂場と脱衣所の入り口前でちゃんと体の水滴を取り脱衣所に入る。

自分の桶の所まで来ると白い服を持った妖精サンが居た。多分これが大淀の言っていた。服だろう。「ありがとう」と言い服を受け取った。

バスタオルで体を綿密に拭き、下着は洗面台に在ったものを履いた。そして妖精さんから受け取った服を着る。

ズボンとベルトは分けられており、ベルトをズボンに通し履く。とても白くしわがない。穢れ無き純白であった。

見た目はスーツの様な感じだが履いてみるとそうでもなかった。逆に動きやすい。非常に伸縮性があるものだった。太ももを上げてもキツイとは感じなかった。

上着を着る、これもまた白だ。だが何か黄色い紐が付いている。よくお偉いさんが付けている物としか認識がなかったため単なる手違いだろうと思い気にせず着た。これもまた脇を上げても不快感はない。

整えるため洗面台の前に来て自分の姿を見る。見た感じはまんま軍人さんって程様になっていた。

着た際のしわを伸ばし服を整える。

一通り大丈夫だと確信しまだ自分の温もりがある服を持ち外に出る。

だが外も外で騒然としていた。言うなれば問題が発生したか何かと思うぐらいであった。

書類を持ち走る自衛官。完全武装をした自衛官。艦娘と思しき人間と一緒に歩く妖精。

そんな緊張の高まる周りを見渡していると唐突に女の子がぶつかって来た。

「はわわわ、ごめんなさいなのです!」

ぶつかった反動で尻もちを着いたと共に書類が飛び散り廊下が白くなった。

「大丈夫かい?」

女の子へ手を差し伸べる。

この子も何処かで見た覚えがあった。

だがそんな事を考えているよりこの今の廊下をどうにかしなければ。そう思い右側を急いで集め書類を左に集約させた。

「申し訳ないなのです…」

謝りながら書類を集める。書類の一つを見ると赤文字で『艦娘近代化改修案』と書かれたリストらしきものを見つけた。それには金剛型、長門型、大和型など型で分類されていてそのリストの枠に兵器の種類が載っていたが彼には理解が出来なかった。

数秒でその書類を渡すと違う書類と同じく渡した。幸いにも書類は少なくすぐに集められた。

書類が片付くと女の子は深々とお辞儀をし去っていった。

遠くへ行く背中を見送っていると後ろから大きな足音と声が近付いて来た。

それに反応し後ろを向く。

「提督、此方に居られましたか。」

その姿は長門であった。しかも一部艤装を付けている。

「どうしたんだ、長門。艤装まで付けて。」

「緊急第一号が発令されました。長官からお呼びだしがありましたので提督には、同行して頂きます。」

緊急第一号? 何だそれ。だが長門の顔を見ると事の深刻さが解った。

「何があったんだ?」

「では、一緒に付いてきて下さい。歩きながら話します。」

そういうと長門は後ろを向き歩き出した。それを追う様にして歩く。

ある程度歩くと長門が説明を開始した。

「実は本土から歓迎として来たあたご型イージス艦、あたごが謎の勢力に攻撃を受け島に向け撤退中、敵勢力から深海棲艦の個体識別番号を参照したところ見事に深海棲艦と一致したため今、緊急第一号が発令されたのです。」

「緊急第一号とはなんだ?」

そう質問をすると嫌がらずに説明を開始した。

「緊急第一号とは我々が第一海域から第四海域までに張っている警戒網のうち第一海域と呼ばれる海域に撤退中の友軍と敵勢力が入った際に発令されるものです。基本的には敵勢力の殲滅や友軍の救出を目的にされており、その作戦時には当海域に駐留する第一艦隊や後方で待機中の第二海域駐留第二艦隊により行われます。この他にも敵が侵攻された際に発令される防衛第一号等があります。因みにこの一号、二号は敵がどれくらいの勢力かや敵の侵攻海域によって決められており、大規模艦隊だった場合やもしくは第三海域の侵攻が認められた場合、全海域駐留中の艦隊を出撃可能とする、第三号系統の命令が発令されると言う感じになっており最大四号まであります。」

ふーん、そんな感じになって居るのかと長門の説明を受け関心しているといつの間にか指令室前に到着していた。

指令室に入るととても薄暗くなりコンピューターの轟音と独特なひんやりした感じが覆っていた。

一礼し入ると早速勘付いた山本長官に呼ばれた。

「提督君、すまないね。風呂上りなのに。」

すぐさま長官の隣に付く。

「いいえ、大丈夫です。」

「そうか。では、早速君に頼みたい事があるんだ。」

何か不吉な予感がする。背筋に寒気を覚えた。

「ところで提督君は我が基地における命令の発動等を聞いているかな?」

「ええ、ついさっき長門から聞き及びました。」

「では話が早い。現在、我々は緊急第一号の発令に伴い現海域に駐留中の第一艦隊艦隊を救助兼殲滅に向かわせている。そこで君に頼みたいことがあってな。呼んだ訳だ。」

あ、やべ。寒気が身震いってレベルになった。

「君に特務迎撃用音速改修型局地戦闘機『桜花改』に乗って貰い第一艦隊の翔鶴に着艦、そのまま第一艦隊の指揮を行って貰いたい。」

え。

「ことがことでな。すまないが頼めないか。」

「ええっと今何と?」

「桜花改に乗って、第一艦隊の翔鶴に着艦、そしてそのまま指揮を執って貰いたいと…」

「桜花ッスカ?」

「ああ、桜花だよ。」

桜花って確か特攻機だよな? そんな考えを構わず山本長官は切り込んでいく。

「別に問題はなかろう?」

「桜花って元特攻機ですよね?」

その質問に対し冷静に長官は対応をする。

「確かに元特攻機ではあるが今は局地戦闘機だ。大丈夫。ちゃんと生きて帰れるから。」

「いや、そういう問題じゃなくてですね…」

終始困惑する。自分と長官の経験の差は明らかであった。

冷静な長官は困惑する自分に真意を問いて来た。

「大丈夫じょろ?」

「待って下さい!私にも心の準備と言う物が…」

「別に無理だったら降りても構わないがどうする?」

そんなことを言われやや考えに困った。

降りるか? 降りればそれはそれで自分はいいが味方を見捨てる同じような行動だ。

例え降りたとしたらそれは自分の心に不可解なものを植え付けるだけだ。

就職以来の混乱に言葉が浮かび上がらなかったが自分だったらどうするかと言う事を考えてみた。

道徳心が心の中で助けるべきと囁かれた、しかし欲から助けなくて良いと囁かれる。そうした混乱の中モニターからあたごからの通信が聞こえる。

激戦の音と声だ。明確に判断出来る。

それは救助を求める声であった。

もし自分が降りればこの人達はどうなる?

そう深く考えた。

一つ決心がついた。自分が今できると言う事の決心が。

「俺、受けます。」

「やってくれるのか?」

「困ってる味方が居るんだったら助けるのが当たり前でしょう!」

そういうと長官は悟ったの如く目を瞑った。その顔には嬉しさがあった。

「では、長門について行ってくれ。」

「はい!」

そういうと提督は長門と共に指令室を後にした。

ドアが閉まる。それを確認した大淀はデスクワークを行いながら長官に向かい言った。

「提督君、受けてくれましたね。」

「ああ、提督君にはみてもらわないとなぁ儂らの戦争を。」




いかがだったでしょうか?
因みに主は零戦は三二型が好きです。

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