ソードアートオンライン―泥中の蓮―   作:緑竜

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46.影

 ローテアウトしつつ、私たちは蝶の谷にたどり着いた。そこには、もうすでにシルフの一団がたどり着いていた。フカを含めたドッグアンドキャッツもそこにいた。

 

「遅いぞ、ルー」

 

「ごめんごめん」

 

「全くお前は・・・。調印を始めるぞ」

 

「はいはーい」

 

 そういって、二人が席に着こうとしたその時だった。

 

「悪いが、その会合は中止だ」

 

 第三者の声が鳴り響いた。そちらに顔を向けると、そこには赤い影があった。

 

「サラマンダー・・・っ!」

 

「しかもあの量、レイド一個分くらいはあるぞ」

 

 レイドひとつ、つまりは約50人。その人数が集まっているということは、

 

「どこからか情報リークがあった、って考えるのが自然か」

 

「そんな!」

 

 エリーゼさんのつぶやきに、私は内心で同意した。それに一言付け加えるならば、()()()()()()()()()()()()()()()、だ。100%確実な情報と分かっていなければ、これほどまでの人数は集まるまい。

 

「悪いけど、最低30人くらいは道連れにするよ」

 

「了解」

 

 フカの号令で、護衛全員が抜刀した。

 道連れにする。つまりは、玉砕覚悟で特攻するということと同義だ。つまり、ここで死んでもかまわない、ということの証左でもある。

 

「その心意気やよし」

 

 それだけ言うと、静かに指揮官が片手をあげた。その合図で、敵も全員が一斉に武器を構える。そのまま振り下ろそうとするときに、近くで轟音が響いた。まるでそれは、隕石でも落ちたのではないかと思うほどのものだった。

 

「双方、剣を引け!!!」

 

 とんでもなく大きな声で、その割り込んできた人物は言った。見たところ、黒いとしかわからない。黒系となると、影妖精スプリガンが該当したはずだ、と頭の片隅で思った。

 

「指揮官に話がある」

 

 あまりにも傲岸不遜な態度に、サラマンダーの中から指揮官が出てくる。

 

「あんたが指揮官か」

 

「ああ。そういうお前は何者だ」

 

 傲岸不遜な態度。それとともに、実力者にふさわしい風格。横に目線を移せば、そこにはおそらくあの少年の連れであろう少女がいた。

 

「あの子だよ、リーファちゃん」

 

「ああ・・・」

 

 いつの間にかそばに来ていたフカが小さくつぶやく。道理で強そうなわけだ。もろもろ終わったら手合わせしたいほどには強そうだった。

 

「俺はキリト。スプリガン・ウンディーネ同盟の大使だ」

 

 キリト。まさか、あの黒の剣士か。ならあの雰囲気も納得だ。が、その言葉が飛び出した瞬間に、リーファの顔が目に見えて固まったのが見えた。ということは、

 

(ブラフ・・・!?これが!?)

 

 ブラフとして切るにはあまりに大きすぎるカードだ。だが大きすぎるがゆえに露呈することも考えづらい。

 

「同盟の大使、か。護衛の一人もつれずにか」

 

「ここには貿易交渉のために来ただけだからな。それに、並大抵の護衛なら、俺にとっては逆に足手まといだ」

 

「・・・ほう?」

 

 最後に付け加えるように言われた一言に、相手の指揮官は目を細めた。

 

「そこまで言うのなら、試してやろう。30秒持ちこたえたら、お前を大使と認めてやる」

 

「随分気前がいいね」

 

 そういうと二人とも、己の獲物を引き抜いた。スプリガンのほうは、大きくて黒いとしか特徴のないような大剣。それを片手で振るえる時点で彼がかなりの使い手であることは明白だ。それに対するは、つばの部分に二頭の竜の装飾があしらわれた、こちらも大剣。

 

「・・・まずいな」

 

「え?」

 

 ぼそりとサクヤがつぶやいた。それに反応すると、サクヤは言葉を続けた。

 

「あの剣は、公式サイトでのレジェンダリーウェポン紹介ページで見たことがある。魔剣グラムだ。ということは、彼がユージーン将軍だろう。彼はサラマンダー中最強と言われている」

 

「つまり、ALOの最強クラス・・・?」

 

「と、いっても過言ではないだろう。さすがに相手が悪すぎる」

 

 サクヤの返答に、リーファに浮かぶのは苦渋。つまり、それほどの強敵ということだろう。

 まず仕掛けたのは、ユージーンのほうだった。突進からの上段に対し、スプリガンはしっかり剣を立て受け止めにかかる。が、その防御など意味がないといわんばかりにその一撃はスプリガンを軽々と吹き飛ばした。

 

「なっ・・・!?」「なんで!?」

 

「魔剣グラムには防御を透過して攻撃できる、エセリアルシフトっていう特殊能力があるんだヨ!」

 

「んな無茶苦茶な!」

 

 驚きに対するアリシャの解説に、絶叫するかのようにリーファが声を上げた。これは私も同感だ。防御という防御がろくに成立しないなど反則、チートもいいところである。だが、私の知っているキリトという人物は、

 

「はああぁぁっ!!」

 

 この程度でくじけるようなやわな人物ではない。実際、彼は猛然と突進してきた。その一撃はたやすく防御されたが、ユージーンは少なからず感心したように見えた。遠目からは何か言葉を交わしたとしかわからないほど二言三言交わして、すぐに打ち合いに戻る。だが、若干キリトがジリ貧だ。いかに彼の反応速度が凄まじいといっても限度がある。加えて、ユージーンの太刀は豪打にして連撃は苛烈。それを躱し続けるなど、さすがに不可能だ。やがて、一発の斬撃がキリトに命中する。そこで、キリトはいったん間合いを取った。

 

「おい、もう30秒経ったんじゃないのか」

 

「いや、こんなに楽しい勝負は久しぶりで、終わらせるのが惜しくてな。気が変わった。首を取るまでに変更だ」

 

「ったく、くそが」

 

 軽く毒づいてキリトは再び剣を構える。そこから一気にラッシュをかける。いったん距離を取るかに思えると、そのまま反転して距離を取った。すぐさまユージーンが追撃に入るが、いつの間にスペルワードを詠唱していたのか、あたりが煙幕に包まれた。

 

「ちょっと借りるぜ」

 

「え?」

 

 かすかな声が聞こえた。直後に、リーファのものと思われる素っ頓狂な声。その言葉で私は彼の狙いを察した。ならば、この先は目をそらすことなどできない。

 

「時間稼ぎの・・・つもりかァッ!!」

 

 ユージーンの気合とともに、煙幕が晴れる。おそらく、ユージーンが何かのカウンタースペルを使ったのだろう。煙幕が晴れる。だが、そこにキリトはいなかった。

 

「まさか、逃げた?」

 

「「「そんなわけない!」」」

 

 私の知るキリトという人間は、決して仲間を見捨てることをしない人間だ。普段はソロを貫き通しているが、パーティになったら不退転の覚悟を持って前衛で暴れまわる。そういう青年なのだ。そして、何も考えていないようで案外考えている。この状況で一番有利な場所。それは、

 

(上、太陽の中)

 

 一番光度が高く設定されていて、しかもなおかつ急降下での奇襲の狙える場所。そこ以外にない。その予想にたがわず、彼は、ユージーンの真上に構えていた。右手であの大剣を保持し、左手は大きく引き絞る。そんな見え見えの、ただはた目から見ただけでは破れかぶれの特攻にしか見えない一撃を、ユージーンは正確に処理した。そして、カウンターを叩き込もうとしたその瞬間、

 

「なっ・・・!!」

 

 驚愕に目を見開いた。そこには、左手に握られた長刀。それで、きれいに受け流していた。

 二刀流、というのは、知名度としてはあるものの、一般的ではない。というのも、ざっくり言ってしまえば“負けないかもしれないが勝てない”からだ。竹刀を片手で扱う筋力、技量、二刀を同時に扱う連携、身ごなし。それらすべてをそろえ、しかもなおかつ一刀を両手で振るう相手に有効打を与えなくてはならない。その難易度は想像を絶するものがある。だが、キリトに至ってはその例外中の例外だ。SAOで培った、STR寄りのステータス、そして技量。その二つが相当以上に高次なレベルで実現しているからこそ可能なのだ。それが実現すれば、手数は飛躍的に上昇する。これは相当なアドバンテージとなりえる。実際、先ほどまでユージーン優勢で合ったのが、今ではキリト優勢になっている。だが、ユージーンも負けていない。凄まじいキリトの連撃に、しかも反撃を試みてすらいるようにも見える。キリトの連撃のすさまじさの前に防戦一方となってはいるが、その目は隙を虎視眈々と狙っていた。だが、キリトの連撃には勝てず、そのままリメインライトへと姿を変えた。

 

「見事!!」

 

「すっごーい!ナイスファイトだヨ!!」

 

 その決着に、誰もが手をたたいて賛辞を送った。本来敵であるはずのサラマンダーの軍団をもたたえていることが、この戦いのハイレベルさを物語っている。確かに、このレベルの激闘はなかなかお目にかかれるものではない。これは後からリーファに聞いた話だが、この世界の近接戦はもっと不格好なものらしい。そうでないなら魔法の打ち合いになるだけ、という、ある意味ワンパターンなものだった。それに慣れた目からすれば、これは驚異的極まりないの一言に尽きるだろう。

 

「誰か、蘇生魔法頼む」

 

「分かった」

 

 周囲の歓声にこたえつつ降り立ったキリトは、周囲に対して声を張った。それにこたえ、サクヤがリメインライトに向かって詠唱を開始する。やがて、リメインライトからユージーンが復活した。

 

「大したものだ。今まであった中で、間違いなく最強のプレイヤーだ」

 

「そりゃどうも。で、俺が大使だと信用してくれたか?」

 

 その瞬間、ユージーンの目が細まる。ああいった手前、断ることも難しいのだろう。その背中に、一人のサラマンダーが寄ってきた。

 

「ジンさん、ちょっといいか」

 

「カゲムネか。どうした」

 

「いやなに。俺のパーティが昨日、壊滅されたってのは?」

 

「知っている。それがどうした」

 

「その壊滅させた張本人がこのスプリガン一行なんだけど。確かに、その中にウンディーネがいたよ。大使同士だと考えていいと思う」

 

 その瞬間に、キリトの眉が一瞬だけかすかに動いた。眼の光にも、一瞬変化が見られた。このカゲムネとかいうプレイヤーの行動は、私からしても分からないことだった。

 

(―――ブラフと分かって乗ってきた?いったい何の目的で?)

 

「それに、エスの情報で追ってたのも、確かこいつだ。結局、撃退どころか返り討ちにあったらしいけど」

 

「・・・そうか」

 

 私の思惑などいざ知らず、言葉は続いた。エス、おそらくスパイというのが気になったが、今はとりあえず置いておいていいだろう。やがて、少し目をつむってかすかに笑みを浮かべると、ユージーンは一つ頷き、キリトに向き合った。

 

「そういうことにしておこう。

 確かに、現状で4種族という大集団と敵対するというのは、領主の意にも反する。だが、それとは関係なく、貴様とはもう一度闘うぞ」

 

「望むところだ」

 

 キリトとユージーンが拳を交わす後ろで、小さくカゲムネがウィンクした。その視線の先にいたリーファは、それにかすかな笑みを返す。どうやら、貸し借りはここにあったらしい。

 

(とりあえずぶっ殺すっていうジェノサイダーとか脳筋さんばっかじゃないんだね)

 

 少しだが、私の中のサラマンダーの意識が変化した。

 

 直後。異変は起きた。

 

 ゴウ、と、エンジンを思わせる音が轟く。音のほうを向くと、そこには、竜の背に乗った銀色の羽の天使がいた。その手には、長さの違う、二本の日本刀のような得物が握られていた。

 

「銀の羽!?」

 

「いったい何の種族だ・・・!?」

 

 いわれてみれば、銀の羽持つ種族など聞いたことがない。私のリサーチした記憶にもなかった。

 

「私は、天の種族、アルフ。王の影たる、ホロウ」

 

「王の、影、だと・・・?」

 

 誰かが、つぶやいた。

 

「そうだ。私は、王に代わって試練の代行を担うもの」

 

「つまり、グランドクエストの前にお前をぶっ倒せってことか!」

 

 サラマンダーの、血気盛んな前衛が一気に切り込んだ。だが、刃が交わる寸前で、相手が一瞬で動き、そこにはリメインライトが残っていた。

 

「馬鹿な!?」「一撃!?」

 

 領主二人が驚く。それもそうだろう、瞬く間に、すれ違いざま的確に斬撃を当て一撃死させるなど、ステータスと技量が相当な高次で実現していなければ不可能な荒業だ。だが、その太刀筋を見た瞬間に、私は確信していた。

 

「ロータス君!!」

 

「全軍、撤退!」

 

 私の大声をかき消すような、ユージーンの掛け声でサラマンダーの軍勢が撤退を始める。そこを逃さず追撃をかけようとするところに、ユージーンが立ちふさがった。

 

「ほう?」

 

「悪いが、やらせるわけにはいかん」

 

「そうか。ならば、ここで一度死ね」

 

 それだけ静かに言うと、刀をはじき返してもう一度構える。が、その横合いから、ケットシーの女剣士が飛び込んできた。それを、今度は竜を踏み台にして避けた。

 

「貴様も死にたがりか、女」

 

「どうしてよ、ロータス!」

 

「私はホロウだ。ロータスなどではない。しかし―――」

 

 そういって、彼はこちらを見た。その瞬間に、気づいた。その目は、いつかのように鋼の冷たさを宿していたが、それが完全ではないことに。

 

「いささか状況が悪い。これほどまでに手練れぞろいとは思っておらなんだ」

 

 それだけ言うと、彼はこちらを見た。はっきりと、その目が私を射抜く。その目に、今までの明るさも、暗さも、先ほどまでのかすかな濁りも同等になかった。あったのは、怜悧な刃物を思わせる、冷たい光だけ。

 

「ロータス君!何もかも、忘れちゃったっていうの!?」

 

 目を見た瞬間に、私は思わず叫んでいた。

 

「私は何も忘れてなどいない」

 

 ただ一言、私の問いに、深い声で答えた後、全体を見渡していった。

 

「未だ天の高みを知らぬものよ。この世界を知らんと欲するか」

 

「・・・ええ。知りたいわ。どうしてあなたがここにいるのか。王の影とは何なのか。いろいろとね!」

 

 半ば挑戦的に、エリーゼさんが答える。私も同じ思いだった。

 

「さすれば、そなたが背の双翼の、天翔るに足ることを示すがよい」

 

 それだけ言い残すと、光の粒子を残して彼と竜は消えた。

 

「どういう、こと・・・?」

 

 その横で、アリシャはかすかに笑っていた。

 

「アリシャ、さん?」

 

「え?ああ、先ほどの意味?そういえば、君はニュービーだったネ。

 “さすれば、そなたが背の双翼の、天翔るに足ることを示すがよい。”これね、グランドクエストの起動文なのよ。つまり―――」

 

「グランドクエストに挑め、というわけか」

 

「そういうことだ。まさか、かなり悩んでいた問題が、こんなにあっさり解決するとはな」

 

 サクヤの横で、アリシャもうんうんとうなずいている。と、いうことは、

 

「彼、かなりの問題児だったんですか?」

 

「ああ。重要なクエストが終わったり、主力が集っているときに襲っては、問答無用で全滅させていく、とな。加えて、相対した者に言わせれば、リーファや私ですら白兵戦は少々きついかもしれんという始末。これでも私たちはシルフの中でも片手の指に収まる剣士だからな。それが無理ということは、それこそユージーン将軍の手でも借りざるを得んかもしれん、と考えていたのだ。最も、そんなことをすればサラマンダーをさらにつけあがらせる一因になるかもしれんというのは、百も承知だが」

 

「そうなんだ・・・」

 

 一瞬重たい空気になったところで、リーファが大きな声を出した。

 

「あ、そうだ!忘れてた!

 サクヤ、シグルドがサラマンダーと通じてたんだよ!」

 

「シグルド?」

 

「シルフの幹部だ。・・・そうか、あいつが・・・。だから、サラマンダーがここに来たんだな。大方、モーティマーに乗せられたか」

 

「だけど、それに何の意味があるんだ?」

 

「次のバージョンアップで転生システムが実装されるという噂。あれが本当ならば、それでサラマンダーに転生と、それ相応のポストを約束させたんだろう。ギアススクロールでもない限り、あの用心深いモーティマーが約束を守ったとは思えんがな」

 

「で、どうするの?シグルドは今留守を任せてるでしょ?」

 

「ああ。

 ルー。確か闇魔法上げてたよな?」

 

「うん。でも、これだけ日が高いと、月光鏡は長く持たないよ?」

 

「問題ない。長話をするつもりもないしな」

 

 その答えを聞いて、アリシャは詠唱を始めた。少しすると、虚空にある部屋が映し出された。そこにある椅子に座るのは、がっしりとした体格の偉丈夫。この男がシグルドなのだろう。

 

「久しいな、シグルド」

 

「なっ、サクヤ!どうして!」

 

「少し、な。そういえば、ユージーン将軍が君によろしく言っていたよ」

 

「・・・ッ!・・・ちっ・・・!」

 

 最初は焦った顔だったが、忌々し気な顔をするシグルド。だがすぐに、あきらめというより開き直った顔を見せた。

 

「それで?俺をどうするつもりだ」

 

「いやなに、シルフが嫌だ、というのなら、お望み通りにするまでだ」

 

 そういうと、サクヤはシステムウィンドウを操作した。直後、シグルドにも通知が発生する。その通知を見た瞬間、シグルドは血相を変えた。

 

「なっ・・・!追放、だと・・・!?」

 

「そうだ。レネゲイドとして、中立域をさまよえ。お前ほどの男だ、いずれどこかが拾ってくれるやもしれん。ではさらばだ、シグルド」

 

「貴さ―――!」

 

 何とかこちらにつかみかかろうとしたが、その言葉を言い終える前に、シグルドは部屋から消え失せていた。同時に、アリシャが月光鏡を解除する。一つため息をつくと、サクヤはリーファに向き直った。

 

「ところで、リーファ。君はどうするつもりだ?」

 

「私も、シルフ領を飛び出して、この人と一緒にアルンに行って、・・・そのあとは考えてなかったけど。いつか必ず、スイルベーンに戻るよ」

 

「そうか。待っているぞ」

 

 その話を聞きながら、私は一つの可能性に思い当たった。

 

「ねえ。この同盟って、もしかしなくてもグランドクエスト―――世界樹の攻略を目指してるのではありませんか?」

 

「ん?まあ、究極には、な」

 

「なら、それに私たちも同行させてもらえませんでしょうか」

 

「私からも、お願いします」

 

「俺からも、頼む」

 

 私に続く形で、エリーゼさんとキリトさんも頼んだ。

 

「むしろこっちからお願いしたい。だが、全員分の装備を整えるとなると、それ相応に時間がかかる」

 

「なら、これを足しにしてくれ」

 

 そういうと、キリトは麻袋を取り出して渡した。何の気なしに受け取ったアリシャは、その重さに驚いた。そして、その中身を見て、目を剥いた。

 

「凄、10万ユルドミスリル貨がこんなに・・・!?」

 

「ありがたい話ではあるが、本当にいいのか?一等地にちょっとした城が立つ金額だぞ?」

 

「いいんだ。俺が持ってても無用の長物だしな」

 

「そうか」

 

 それだけ言うと、二人の領主は中身をうまく折半してそれぞれ収めた。

 

「なら、私たちは一足先にアルンに行ってるね!」

 

「ああ。レインたちはどうするんだ?」

 

「私は護衛を全うしなきゃね。傭兵は信用第一だから」

 

「私も、そちらについていきます。皆さんには、あとから合流します」

 

「そっか。じゃあ、ここでいったんお別れですね」

 

 その言葉を交わすと、二人はさらりと去って行った。こちらとしても、ここに長居する理由はない。私たちはそのまま、行きと同じように分かれた。

 




 はい、というわけで。

 いやー、もう前回投稿から一か月もたってたんですね。驚きです。

 今回は蝶の谷ですね。サブタイトルは“影”妖精のキリトの活躍、王の“影”であるホロウことロータス君ということで、こうなりました。
 まあキリトVSユージーンは省略するとして、正直ロータス君強化しすぎたかなーってかすかに反省してます。まあでも、こういう立場で鬼ステータス与えられてるし仕方ないよね。

 次とその次くらいは一応オリジナルです。ほとんど原作の裏を突くような行動ばっかりですけど。


 あ、ちなみに。
 ALO編はあと5話くらいで完結予定です。このペースだと半年後くらいかな。ですけど、最近は家より学校のほうが筆が進むことがわかり、空きコマもそこそこあるので、そこで書き上げます。そうすると以前ほどとはいかないものの、月2くらいのペースにはなると思うので、そうなれば早まる、かも。

 前々からちらほら言っていたif編ですが、この続きで投稿することにします。願うことならこっちのUAが伸びてほしいなーっていう、個人的な願望こみこみです。主のモチベが持たないと打ち切りになると思いますが、その時はまたこっちで予告します。実は次回作の検討もしてあったり。

 ALO編だけでいいや、って方も、あと少しお付き合いください。

 ではまた次回。

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