ソードアートオンライン―泥中の蓮―   作:緑竜

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44.仮想世界で

 家に帰って、まだ回収されていなかったナーヴギアを取り出した。ソフトは永璃さんからもらったし、このソフト自体はナーヴギアで動くらしいので問題ない。とにかく、私はあの人にまた会いに行くために、自分の意志でナーヴギアを被る決意をした。それだけだ。

 永璃さんとは向こうで合流することになっている。あとは私がダイブして会いに行くだけだ。永璃さんにも、そして、―――蓮さんにも。

 

「リンクスタート!」

 

 そして、二年前のあの日以来使われなかった台詞を言うと、まるであの日のようにナーヴギアは接続を開始した。

 

 

 接続した直後、最初の設定画面に移った。名前は今まで通り、“rain”でいいとして、種族の選択画面で私は一瞬固まってしまった。エリーゼさんの種族はケットシーらしい。なんでも、見た目は猫のようにかわいらしく、テイミング―――モンスターを飼いならすことにたけているらしい。彼女に言わせると、猫のような敏捷性と視力の良さからケットシーにしたそうだ。正直、前線に出られない種族は私の肌に合いそうにない。戦闘の支援という点でウンディーネやプーカもいいが、私はそこまで器用ではないのでなし。インファイトがそこまで大好きというわけでもないのでサラマンダーも却下。宝探しが好きというわけでもないから、スプリガンも却下。と、ここまで考えたところで、一つの種族が目に留まった。

 

「レプラコーン・・・」

 

 鍛冶妖精レプラコーン。その名前の通り、装備を作ることを得意とする種族だ。考えてみれば鍛冶屋はリズさんくらいしかいない。それに、モンスタードロップの装備は、決して性能と見た目が一致しているとは限らない。むしろ、性能がいいのに見た目が、というものも結構多い。性能だけで装備を選ぶと妙な見た目になってしまうことも多かった。そのために、見た目だけのアレンジとして鍛冶屋に持ち込む人もいたくらいだ。無論、完璧に見た目をアレンジできることなどあまり、いやほとんどないといっていいが、それでも幾分ましになることは多かった。それに、私だって女の子だから、おしゃれの一つくらいしたいというものだ。それをタップすると、確認タブのYESを押した。

 

『では、ホームタウンに転送します。よい冒険を!』

 

 システムメッセージが聞こえた直後、私に襲ったのは転送の感覚―――ではなく、足元が崩れるような感覚だった。

 

「うわああぁぁぁああ!?!?」

 

 流石にこれは面食らって、自分でも情けないと思う悲鳴と共に私は落ちて行った。

 

(えっと、確か・・・!)

 

 一応事前にある程度、このゲームについて調べてはある。意志力だけで飛ぶことができる、らしい。そのための行動を起こしてみるが、なかなかうまくいかない。仕方なく、私はもう一つの方法―――コントローラーによる手動コントロールに切り替えた。何とかホバリングをしつつ周囲を見るが、街らしき影は全く見当たらない。どうやら何らかのバグのようだ。

 こうなってしまっては仕方がない。とりあえず今のステータスを確認しよう。そう思って左手でメニューを開く。SAOと何ら変わらないような、というよりほぼ一緒の作りに、私は驚いていた。似ているとは聞いていたが、ここまで似ているとは思っていなかった。ステータス画面に映ると、そこに映っていたステータスは、

 

(やっぱりというか、なんというか・・・)

 

 想定通り、SAOのステータスそのままだった。とここで、妙な通知が入った。

 

(メール通知?誰から?なんで?)

 

 さすがに開始数分で垢割れ―――アカウント情報漏えいを引き起こしたとは考えづらい。となれば誰だろうか?と思いつつ私はそのメッセージを開けた。どうやら何か添付されているようだ。そのアイテム名は“MHCP02”。なんだろうと思いつつ開けると、そこには一つ薄紫の滴があった。

 

(これって・・・)

 

 それには見覚えがあった。正確には、それに似たものに見覚えがあった。恐る恐るタップすると、目の前に現れたのは、薄紫でかすかにウェーブがかかった髪をした、見た目私と大差ないくらいの少女だった。その少女に見覚えはないが、心当たりはあった。

 目の前の少女は目をつむっていたが、やがてその目を開くと、私の顔を見て微笑んだ。

 

「やっぱり、あなただった」

 

 その言葉に、私は確信を覚えた。

 

「あなたは、ユイちゃんと・・・」

 

「そう。私は、元SAOのMHCP、その二号。コードネームはストレア、だよ。よろしくね!」

 

 予想はやはり当たっていた。そういえば、ロータス君はデュエルを受けなかったという貸しを利用して、MHCP02をもらい受ける、とか言っていた。そして、それに対してヒースクリフは、そのMHCP02を彼のローカルメモリに保存するようにしておく、と言っていたはずだ。ならば、

 

「君は本来、ロータス君のローカルメモリに保存されている、はずだよね?どうして、こんなところに?」

 

「あー、まあ、話すと長いんだけど・・・。その前に、プレイヤー反応。3人。こっちに向かっているところを見ると、PK狙いかな」

 

「PK、って・・・、そうだった、このゲームPK推奨だったね」

 

「そういうこと。加えて真っ逆さまに落ちて来たら、そりゃ目立つってものよ」

 

 それだけ言うと、ストレアは少し光ると文字通り小さくなった。サイズとしては手乗りサイズである。

 

「えぇ!?」

 

 さすがにこの変化は面食らった。

 

「ま、もろもろの説明はちゃんとするから、今は迎撃。お誂え向きに、初期装備は一括で片手剣だから、使いづらいってことはないはずだよ」

 

 そういわれて腰のあたりに目を落とすと、そこには確かに、いかにも初期装備というような片手剣があった。確かにこれなら、何もないよりはよっぽどかましである。それに手をかけて、空を見上げる。すると、やがて三人の女性プレイヤーがやってきた。

 

「およ?女の子がこんなところに一人きりとは不用心だよーっと!」

 

 その人物は、こっちに向かってくると、器用に空中で一回転して着地した。

 

「しかもレアアバターかな?かわいいね」

 

「あ、はい、ありがとうございます・・・?」

 

「いいのいいの、女にとって容姿は武器よ」

 

 かわいらしくウインクするその美人アバターの女性に、私は完全に毒気を抜かれてしまった。というか、ペースを完全に持っていかれてしまった。

 

「で、そんなバリバリ初期装備の格好で、どうして中立域にいるわけ?しかもソロで」

 

「あ、えっと、その、私にもよくわからないっていうか・・・」

 

「なにそれ、喧嘩売ってんの」

 

「あんたは黙ってな、話がこじれる。

 で、わからないっていうのは?」

 

 三人のうち、私のあまりにもあいまいな物言いにイラついたのか、一人が食って掛かろうとする。が、それは最初に話しかけた人の一睨みで黙り込んだ。どうやら、この人がリーダー格らしい。

 

「なんか、最初にログインして、ホームタウン?への転送の時に、落っこちたと思ったらここにいた、って感じです」

 

「・・・なるほど、つまりはバグか。君、種族は?」

 

「レプラコーン、です。一応」

 

「へぇー、女の子でレプラコーンかぁ、めっずらしい」

 

 それだけ言うと、しげしげとこちらを眺めた後で腰に手を当てた。

 

「よし、決めた!君をレプラコーンのホームタウンまで案内しよう。なに、心配することはないよ。私らそこそこ強いし」

 

「え、でも、私、会わなきゃいけない人がいて、」

 

「へえ、誰?」

 

「たぶんこっちだと、エリーゼ、って名前だと思うんですけど」

 

「エリーゼ、ねえ。綴りはわかる?」

 

「えっと、たしか、e、l、i、s、e、だったと思います」

 

 そこまで会話したとき、今までしゃべってなかった人が口を開いた。

 

「ねえ、もしかしてそのエリーゼさんって、ケットシーの女性で傭兵やってない?」

 

「あ、そうかもしれないです。前のMMOだと、傭兵やってた、って言ってたので」

 

「・・・ビンゴかな。

 フカ、もしかしたらそのエリーゼさん、私の知り合いかもしれない」

 

「マジ!?」

 

「こんなとこで冗談言ってどうすんの」

 

 まさかのまさか。こんなところで知り合いの知り合いに会う、いや遇うことになろうとは。

 

「なら、今すぐメッセ送って。向こうがどこにいるのかはわからないけど、レプラコーンのホームタウンならまず大丈夫でしょ。あそこ事実上の緩衝地帯だし」

 

「りょーかい」

 

 何気ないその呼吸から、かなり親しい間柄だということはわかった。確かに頼りになるらしい。

 

「なら、お願いしてもいいですか、護衛」

 

「いいってことよ。ついでにレクチャーもしてあげる。その感じじゃ、まだインして一時間もたってないでしょ」

 

「一時間どころか、30分経ったかどうか・・・」

 

「だと思った。ま、このお礼はいつか、ってことで。

 私はフカ次郎。フカでいいよ。で、最初に食って掛かったこの狂犬がシェピ。こっちの普段は静かなのがベリア」

 

「誰が狂犬か誰が!

 よろしく、シェピよ」

 

「ベリア。よろしく」

 

「レインって言います。よろしくお願いします」

 

 こうして、なりゆきで妙なパーティーが組まれることとなった。

 

 

「まず、随意飛行を習得しちゃおうか」

 

「ずいい、ひこう?」

 

「コントローラーなしの飛行のこと。こんな感じ」

 

 そういうと、フカは少しだけ浮かび上がった。その手には確かにコントローラーがない。

 

「便利そうですね」

 

「便利だし、何より楽しいよー。まあ、妙な疲れ方するのが玉に瑕だけど」

 

 それだけ言うと、フカはレインの後ろに回り込んだ。そして、静かにレインの背中を指一本でなでる。

 

「今指が触れてる場所、わかる?」

 

「あ、はい」

 

「ちょうどこの辺がフライトエンジン、要するに羽が生えるその付け根の部分。そこを大きく素早く動かすのが肝。リーファに言わせるとスピードが上がるとちょっと羽の動かし方が違うらしいけど、その辺はあのスピードホリックに聞くしかないか」

 

「リーファ?って誰ですか?」

 

「胸のおっきい少女アバターのシルフ。私もシルフのはしくれだからねー、一応知り合いなんだ」

 

「へえ。強いんですか?」

 

「そりゃもう。見た目かわいいからってなめてかかったら1分で沈められるよ」

 

「それはすごいです」

 

 それだけ言うと、レインは背中の動きに集中した。先ほどなぞられた部分は肩甲骨の少し内側から背中の中ほどあたりまで、縦に長くわたっていた。ということは、そのあたりの筋肉を動かしてやるイメージでやれば―――!

 

「おお、うまいうまい。結構筋がいいよー」

 

「ありがとうございます」

 

「うむうむ、素直なのも高ポイント。さて、飛び上がりはジャンプとかでどうにでもなるとして、問題は着地だね」

 

「難しいんですか?」

 

「コツをつかむまでは。ただ、失敗すると文字通り地面とキスする羽目になるから、きっちり習得する必要があるのも確か。

 レインちゃん、飛行機乗ったことってある?」

 

「ありますけど・・・すごく小さいころの話なので、あんまり覚えてないです」

 

「そっか・・・、ならそっからかな。

 飛行機とか鳥とかってね、着地時は翼を大きく広げるの。鳥はたたんでた部分も広げるし、飛行機は格納してある翼、フラップを広げて着地する。なんでかわかる?」

 

「・・・何でですか?」

 

「答えは簡単、減速するためだよ。でもただ減速するだけだと、今度は浮かび上がる力、揚力が足りなくなって、墜落する。飛行機っていうのは、前から流れる空気によって揚力を生み出してるからね。だから、それを補うために、翼を大きく広げて揚力を確保しつつ、減速して安全な速度で降下する。スピードが速すぎてもうまく着地できないからね」

 

「つまり、着地の時も、羽を大きく広げる必要がある、ってことですか?」

 

「お、飲み込み早いねー!その通り。正確には、横に大きく広げるの。さっき、羽を動かすときに使った筋肉。あれを思いっきり横に広げるイメージ。やってみ?」

 

 いわれて、そのままのイメージでやってみる。いつの間にかフカは正面に回り込んでいた。

 

「そうそうそう!ほんっと飲み込み早くて助かるわー!要点がわかったらさっそく実践、ってわけでさっそくレプラコーンのホームタウンへレッツらゴー!」

 

 元気に宣言すると、フカは私の手を取った。が、その背中から、ベリアが声をかけた。

 

「そうしたいとこだけど、もう少し飛ぶのは待ったほうがいいかも」

 

 その言葉に、フカの目が若干だが細くなる。

 

「敵?」

 

「たぶん。それなりに多い」

 

「距離にして300mくらい先に5人、だね」

 

 その言葉を受けてか、ストレアが初期装備の服の胸ポケットからぴょこと飛び出して言った。これにはその場にいた全員が面食らった。

 

「え、なにそれ、私初めて見たんだけど」

 

「あ、どうも。レインさんのナビピクシーのストレアです」

 

「あ、これはご丁寧に。フカ次郎です。・・・ってそうじゃない!なんでナビピクシー!?あれって確か初回特典の超レアものだったよね!?」

 

「レインさんは、初めてすぐやめて使われてなかったアカウントを使ってインしてるみたいで。私も中の人が違うと知ってちょっとびっくりしていたところなんだー」

 

「そんなことどうでもいいよ!300ってすぐそこじゃない?」

 

「っちゃーそうだったー!

 まとにかく、こんなところで堂々とPKなんていう、挑発まがいの行為をするとなったら、サラマンダーでほぼ確定かな」

 

 どこかふざけたように言うと、フカは自身の獲物であろう両手剣を抜剣した。

 

「さてと、無粋な邪魔者を迎え撃つよ」

 

「「了解!!」」

 

 本当に統制のとれたいいチームだ、とレインは分析した。今まで見てきたどのチームよりも、しっかりとしている。

 

「来るよ!」

 

 ストレアの声とともに、上空から突撃してくる影が4つ。それをフカはいなし、シェピは迎撃してさらに打ち返し、ベリアは防ぎ、私は躱した。見事なコンビネーションだ。

 

「なんだ、誰かと思えば犬猫どもか」

 

「犬という認識は改めてもらおうか。我々は鎖を食いちぎる狼だよ」

 

 どこかで聞いたようなフカの返答に、襲ってきた赤い部隊―――サラマンダーのリーダーは鼻で笑った。

 

「狼も犬の仲間だろうが、ドッグアンドキャッツのリーダーさんよ。そっちのニュービーは新入りか?」

 

「訳合って今は仲間。手を出すっていうのなら容赦はしないよ」

 

「そうか。ならこっちも遠慮はいらないな」

 

 そういうと、そのリーダーは手を軽く掲げてから前に出した。そこから放たれるのは、私たちを軽く呑み込むサイズの火の玉、つまり魔法。―――突撃してこなかった最後の一人はメイジか!

 

「回避!」

 

「させるか!」

 

 フカが即座に指示を出すが、それを阻むようにサラマンダー部隊が立ちはだかる。相打ち覚悟、ということかもしれない。

 

「くっそが、退けぇ!」

 

 シェピが大声で毒づく。が、それで退いてくれるような相手ではない。とにかく、これで退路は断たれた。―――ように見えた。そう、ここにいる全員が勘違いしていた。

 

「やあああぁぁっ!!!」

 

 レインが、ただのニュービーであると。

 SAOで培った圧倒的ともいえるAGI-STR型ステータスと、攻略組として戦ってきたことにより磨かれた戦闘センス、加えて彼女の鍛えられた対人戦闘能力。それが生み出すのは、神速の連撃。瞬く間に三人を斬り伏せ、

 

「今だよ!」

 

 一言それだけ叫ぶと、自分はその炎を紙一重で避けられるルートで飛行。あっという間にメイジに肉薄すると、首と胸を一瞬で斬って落とした。そのまま、羽を動かすことをやめたレインは、まるで軽くジャンプしたかのように軽やかに着地した。その背後で、先ほどの大火球が爆発して、まるで特撮のような演出を生み出した。

 

「で、まだやるつもり?」

 

 装備はただの初期装備だ。だが、あんな真似をされたらその初期装備が初期装備には見えない。口調は柔らかいし、その表情は穏やかとしか形容しようがない。なのに、そこには得も言われぬ威圧感すら漂っていた。

 

「くそが・・・!」

 

 それだけ吐き捨てると、残ったサラマンダーのリーダーは飛び去って行った。それを見て、私は剣を収めた。

 

「すっご、なに今の全然見えなかったんだけど!?」

 

「あ、えっと、・・・」

 

 なんて答えるべきだろうかと私は悩んだ。馬鹿正直に“私はSAO帰還者”、と答えるべきだろうか。

 

「まあ、その元のアカウント所持者が相当やりこんでたんでしょ。深く詮索する必要もないわよ」

 

「それもそっか。じゃあ改めて、レプラコーンのホームタウン向けてアイキャンフラーイ!」

 

 改めて、フカは私を連れて高く飛んだ。

 

「そーいえば、そのエリーゼさんとレインちゃんはどうして知り合ったの?」

 

 隣で飛びながら、フカが私に聞いてきた。

 

「前同じゲームやってて、それ関連でリアルでも知り合いになって、誘われたって感じです」

 

「へえ、てことはエリーゼさんは結構なプレイヤーなのかな?」

 

「いや、むしろエリーゼさんは新入りにあたる部類だよ。でも、護衛から何から実力行使ならなんでもござれ、っていうプレイスタイルと、とんでもない腕前のおかげで、一躍有名になったんだよ」

 

「てことは、私らもお世話になってたり?」

 

「しないね。ただ、本当に種族間抗争には興味がないらしくて、力のないスプリガンの護衛からサラマンダーと手を組んでのボス戦まで、本当になんでもござれって動きをしてるみたい。その代り、対価を払わなかった相手はことごとく斬り捨てるって話だけど」

 

「わーお、そりゃお近づきになりたいね」

 

 その話を聞いて、いよいよこれは人違いなどではないと確信を深めた。SAOでも腕利きの傭兵として鳴らしていて、そのうえどこまでも中立な彼女と、今の言葉はほとんど一致するといっていい。

 

「あ、そうそう、言い忘れてた。ALOについてある程度調べてきてるのなら知ってるかもしれないけど、ALOでの飛行は制限時間があるから注意ねー!」

 

「わかりましたー!」

 

 だんだんスピードが上がってきた。最初はついていくのもいっぱいいっぱいだったが、何となく感覚がつかめてきて、今ではもっと早くと思うようにさえなっていた。

 

「感覚つかめてきたみたいだね」

 

 いつの間にか真横を飛んでいたフカに話しかけられた。このあたりからも、彼女がそこそこ以上の手練れであることが察せられた。

 

「ええ。飛ぶって、こんなに楽しいんですね」

 

「うんうん、よきかなよきかな。

 よしみんなー、フルスロットル行くよー!」

 

 一つ宣言すると、フカが飛び出した。一泊遅れて二人も飛び出し、直後に私も飛び出した。

 

「おーおーおー、すごいすごい!たっのしー!」

 

「ちょっとフカー!レインちゃんおいてっちゃったらどうするのー!」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ、この子センスいいからー!」

 

「どーしてそーいいきれるわけー!?」

 

「勘だけどー!?」

 

 その答えに、シェピは半分反射でこめかみを押さえた。

 

「ごめんね、あんなリーダーで」

 

「いえいえ。というか、やっぱりフカさんがリーダーだったんですね」

 

「うん。あんなんでも腕は立つから」

 

 それは見ていればわかる。何となくだが、立ち居振る舞いが若干違うのだ。攻略組の面々には及ばないが、教会の子供たちに比べればその動きは洗練されていた。そのくらいの目は養われていた。

 

「フカ、エリーゼさんからメッセが返ってきた」

 

「ん、なんて?」

 

「どうせ通り道なんだから、フリーシアで待ってる、だって」

 

「フリーシア、っていうと、ケットシー領の主都か。私らなら顔パスだから問題ないね」

 

「アリシャさんに感謝だよね、そこは」

 

 いつの間にかフカが速度を落として、私たちは横一線で飛んでいた。

 

「ごめん、目的地変更!目的地、ケットシー領首都、フリーシア!」

 

「「了解!」」

 

「てかフカ、ただ単に経由地が目的地になっただけでしょ」

 

「あ、ばれた?」

 

「方向感覚がいい人間ならすぐわかるわよ。だってこれ、ルグルーから央都抜けて行くんじゃなくて、わざわざ大回りしてレプラコーン領に行くルートでしょ。なら、ケットシー領は通り道じゃん」

 

「あっちゃー、もろばれだったか。

 その通り。私たちはこのままケットシー領に行くつもりだった。その人ケットシーだっていうし、好都合かなーって」

 

「あ、そっか。もうすぐだっけ、蝶の谷」

 

「そ。だから、レプラコーン領まで往復してる時間が惜しい」

 

 私の知らない話をしているが、どうやらほぼ予定通りということらしいということだけわかった。とにかく、私はこうして何とか合流地点へと急ぐことになったのだった。

 




 はい、というわけでね。

 本格的にALO編での冒険が始まります。今回は、まあ、あれこれ書きたいネタを放り込みすぎた感はありますが、すべてそれ相応に必要なキャラクターなので、目をつむってください。

 まず一つ目。ゲーム作品より、MHCP02ストレアさんです。SAO編でもちょこっとだけ登場した彼女ですが、ここにきて本格参戦です。ぶっちゃけ必要ないような気もしますが、そこはそれ。
 二つ目、SAOの派生作品、時雨沢恵一先生著の『ソードアートオンライン オルタナティブ ガンゲイルオンライン』(以下GGO)その二巻からの登場人物であるフカ次郎を出してみました。本家だと結構気さくな人っぽく感じたので、こんな感じで。フカ次郎は、GGOにおいて主人公の友人である人物です。ゲーム廃人です。ネットの環境があれば速攻でネトゲを始めるレベルのネトゲ廃人です。名前は飼っていた犬の名前から。

 ちなみに、ドッグアンドキャッツのほかのメンバーの名前は犬種からとってます。有名どころを少しもじっただけなので、結構わかりやすいかと。

 今回は少し早めに書き上げることができたので、早めの投稿です。あれこれいろいろといじりすぎた割には結構勢いで書いたところもあるので、正直あれこれおかしな論調になっているところはあるかもしれませんが、そうだったら教えてください。

 ではまた次回。

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