ソードアートオンライン―泥中の蓮―   作:緑竜

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41.激闘―第75層フロアボス攻略戦―

 カルマのクエストをクリアしてから、俺は最前線に潜り続けていた。理由はただ一つ、ボス戦への協力だ。俺の身の上からして、参加は難しいものがあるだろう。だが、協力くらいなら誰にでもできる。例えば、迷宮区を真っ先にマッピングして、そのマップデータを提供する、とか。

 俺がこだわるのには理由がある。それは、ここが第75層だからだ。ここまで、25の倍数層の攻略には犠牲を払うことが多い。第25層では軍の攻略部隊が壊滅する事態に陥り、第50層ではこれまたボス攻略の最前線を担っていた青龍連合が大打撃をこうむった。もう一つ付け加えるなら、ヒースクリフ及び彼が率いるKoBの名前を天下に知らしめたのもこの層だ。とにかく、ここで何も起こらず、すんなり通れるということはまずないだろう。なら、微力ながらも協力はすべきだ。もっとも、そこに眠っているレアアイテム狙いというのもあるのだが。

 

 迷宮区で狩りを続けていると、やがて攻略集団と思われる集団に遭遇した。俺の顔が割れているとは限らないが、用心に越したことはない。それに、今その攻略集団は、大きな二枚扉の前にいた。

 

(つまりは、そういうことだよなぁ・・・)

 

 ここがボス部屋ということだろう。74層が攻略されてから3週間余り。最近の攻略ペースを考えると、少し遅めな攻略となりそうだ。俺も戦っていて思ったが、ここはやはりかなり手ごわい。遅くなるのも納得だろう。

 やがて、攻略集団が二つに分かれた。どうやら、先遣隊が中に突入、何かあったら待機している後衛隊と合流するという流れらしい。過去にはボス部屋が水浸しになったということもあった。その対策も兼ねてだろう。これに関して、俺はまったく異存を覚えなかった。

 問題が発生したのはこの後だ。先遣隊が突入するや否や、扉がひとりでに閉まり、そのまましっかりとしまってしまったのだ。遠目から見るに、押して、引いて、横に動かして、という手段はすべて試しているようだが、扉はピクリとも動かない。考えられる可能性があるとすれば、

 

(俺、だろうなぁ・・・)

 

 ボスがボス部屋から出てこないことをいいことに、射撃スキルでボス部屋の外からちまちま撃ち続けるというあれは、完全に反則技だ。作戦と言ってしまえばそれまでだが、難易度を大きく落とすだけでなく、面白みもなくなってしまう。もともとその手の対策が速いSAOだ、早速その対策がなされたのだろう。

 

 やがて、扉が開いた。長く感じられたが、時計を見てみると10分しか経っていなかった。そして、扉の中には、何もなかった。ボスも、先遣隊も、何も。転移結晶で転移したような痕跡は一切ない。ということはつまり、

 

(死んだ、か)

 

 攻略集団10人が、10分という短い間に全滅した。その事実だけでも十分に脅威たり得るものだった。これは看過するわけにはいかない。俺の目的も考えれば、ここで助太刀に入るべきだ。だがおおっぴろげに入るわけにはいかない。そのために俺の頭は回りだしていた。

 

 

 

 

 

 その翌日の昼下がり、ボス攻略隊が75層攻略に乗り出した。そこには、キリト、アスナ、レイン、クラインだけでなく、エギルもいた。街中にもかかわらずハイディングをしてそこに紛れ込んだ俺は、まるであたかもボス攻略集団の一員であるかのようにふるまった。念のため仮面のような防具をして、素性を知られないようにしているから、一目では俺と分からないだろう。いかに強豪ぞろいの第75層迷宮区といっても、これだけ百戦錬磨の猛者たちばかりでは、間違いなく形無しだろう。まあ、フロアボスを除けば、だが。俺は弓を背中に担いでその場からするりと離脱した。

 

 

 相変わらずのハイディングと俺のスニーキングで、誰にもばれることなく俺はボス部屋前に到達した。ボス部屋の扉がゆっくり開くと、戦闘のヒースクリフが号令をかけた。

 

「全体、突撃―――!!」

 

 その声に、掛け声を上げつつ全体が突進する。俺もそれに追従する形で突撃した。何とか扉が閉まる前に俺も滑り込んだ。が、薄暗いボス部屋にボスの姿はない。はてさてどこにいる、と思った矢先、

 

「上よ!!」

 

 アスナが大声を上げた。その声に従い上を見ると、そこには天井に張り付くように骸骨のムカデのようなボスがいた。間違いなくこの部屋の主たるフロアボスだろう。銘は“The Scull Reaper”。骸骨の死神、ってところか。悪趣味なネーミングをしやがる。―――てちょっと待て、天井に張り付いているってことはこいつ・・・!

 

「逃げろ!!!!」

 

 俺は全力で声を張り上げた。正体とか今更どうでもいい。こうなったら死なないことが最優先だ。一泊遅れて周囲が動き出す。が、それを見てかフロアボスが降ってきた。最後尾の二人が遅れている。俺は一つ舌打ちすると、メニューをさっさと操作して適当な剣を一振り取り出して弓につがえた。こういうことも想定して、すぐに取り出せるところに剣を置いておいて正解だった。そのまま狙いは適当に放つ。だが、それはあっさりとボスの両手にあった鎌のうちの片方に弾かれ、もう一つの鎌が遅れていた二人のうちの一人を狩った。そのまま吹っ飛ばされたプレイヤーをキリトが受け止めようとするが、その前にそのプレイヤーはポリゴン片となった。つまり、

 

「一撃死・・・だと・・・」

 

「こんなの、無茶苦茶だよ・・・!」

 

 しかも、おそらくあの位置から遅れるとなると頑丈なタンクプレイヤーの部類だろう。そのプレイヤーが一撃死ということは、ダメージディーラーが食らったらどうなるかなど推して知るべしだ。加えて、あいつは俺の放った剣を鎌で弾いたのだ。高速で飛来する剣を弾く技量もある、ということに他ならない。アスナの言う通り、無茶苦茶もいいところだ。その火力に竦んだプレイヤーが固まっているところを見逃さず、スカルリーパーは鎌を振り下ろしにかかった。が、今度は距離が近かったこともあり、キリトがパリィしにかかった。が、勢いが殺しきれていない。そこにアスナが割り込むことで何とか止まった。

 

「横は任せて」

 

 レインはアスナたちにそれだけ言い残して、側面からの攻撃にシフトした。彼女はスピードタイプの剣士だ、あの重撃は受け流すこともままならないに違いない。早々に側面からの攻撃に切り替えるあたりさすがだ。そして、クラインやエギルも側面からの攻撃に切り替えたようだ。なら、俺のやるべきことは一つだ。そう思うと、俺は武器を弓から刀と小太刀に切り替えた。

 

「行くぞ」

 

 ダン!と強く地面を蹴る。キリトたちが受け持っていないほうの鎌をヒースクリフが受け止めたことを横目で確認して、俺は斜め上に辻風を繰り出し、空中でリーパーを繰り出した。二重の加速により爆発的な加速を得た俺は、さながら砲弾のようにスカルリーパーに飛びついた。そして、斬り込むときに丁度硬直が切れたことを確認して、俺は振り下ろしを繰り出した。予想通りというか、頭蓋骨に当たる部分は硬く、簡単にはじき返されたが、それによって空中に放り出さながら、俺は速攻でクイックチェンジ、弓に矢をつがえて連射した。もうこんな相手だ、出し惜しみなどしていられるか。軽く滑りつつ着地すると、スカルリーパーのヘイトは完璧に俺に向いた。振り向きざま鎌を薙いでくるが、そんな大振りの攻撃、

 

「当たるかよ!」

 

 言いつつバックジャンプしながらさらに矢をつがえて放つ。矢が光り輝き、スカルリーパーが目に見えて怯んだ。

 

「今だ!」

 

 ヒースクリフの号令が轟く。瞬間、その場にいた全員の得物が様々な輝きを放つ。一気にフルアタックを決めにかかった時に、俺も本数の少ない虎の子の矢を放った。そいつは足に刺さった瞬間に爆発を起こし、スカルリーパーを強制的に転ばせた。

 レベルが80になって取った、アイテム作成スキルを使って俺が作った、俺お手製その名も“爆裂矢”。文字通り刺さったら爆発するギミックを搭載した矢だ。はいそこ、そのまんまとか言わない。その後も、普通の矢を三連続で放つ。特に、最後のは大きく溜めての三本同時発射だ。俺がここ一番というときに決める、射撃スキルソードスキル“トリニティレイヴン”だ。だが、それを放った瞬間に、この一時的な転び(タンブル)がもうすぐ回復することを察した。瞬間、装備を操作して防具を最高級のものに切り替えた。おそらく誰もが見慣れた血色の外套と、露わになった俺の顔に、一瞬だがざわつきが生まれる。

 

「動揺しとんな死にてえのかっ!!!!」

 

 再びの俺の怒号に集団がまた動き出す。このあたりはさすが攻略組だ。その隣に、一人の少女がやってくる。

 

「前は任せた。頼むぜ、レイン」

 

「・・・うんっ!」

 

 俺の言葉に一瞬嬉しそうに笑みを浮かべ、レインは再び突っ込んでいった。俺にできるのは、その背中を守るだけ。申し訳ないが、正面は新婚ラブラブバカップルな黒白夫婦と最強()と名高い聖騎士様にお任せしよう。言葉に棘があるって?知らんなあ。だから、

 

「そう簡単に死なせやしねえっての!」

 

 言いつつ、思いっきり弓を引き絞って発射。ほとんどずれなく尾の剣に命中し、その軌道をずらした。

 

「横から攻撃する部隊は、尾の刃に注意!できるだけフォローはする!でもアテにすんなよ!」

 

「大丈夫だ、誰もお前なんか最初っから戦力の勘定にゃ入れてねえ!」

 

 そりゃひどい。が、言われつつ俺の頬は緩んでいた。さてと、

 

「楽しい楽しい狩りの時間だ」

 

 その一言と共に、俺は再び狙いを付けた。

 

 

 

 戦いの狼煙を上げてからどれだけ経っただろうか。とにかく、時間感覚がおかしくなるくらい戦っていたということは確実だ。そして、俺たちはかつてないほどの死者を出しているということも自覚していた。弓の耐久度もだいぶ落ちてきた。

 

(仕方ないか)

 

 前衛もかなり薄くなってきている。唯一の最後衛としては、前衛がいないと危険度は倍どころの話ではない。ならば、自分が前衛に出ればいいだけの話。その覚悟をすると、俺は装備を鬼怨斬首刀とオニビカリに変更して突撃した。丁度その時、尾の剣が一人を屠りにかかるところだ。その相手はあきらめたように動かない。ならばやることは一つ。

 

「そら・・・よっ!」

 

 ドライブツイスターを使って剣を弾き上げる。軌道は逸れて、俺にも後ろのやつにも当たらなかった。そのまま横に一回転して構えなおした。

 

「どうしたお前、援護するんじゃなかったのかよ」

 

「前がこんなに薄くなったら援護どこじゃないっての」

 

 事実、今はPOT休憩している奴が多い。加えてこの攻撃力だ、生半可な回避は役に立たない。

 

「お前は大人しく後ろでちまちま援護だけしてりゃいいのによ」

 

「なんだよその言い草は・・・よ!」

 

 会話しつつ、飛んできた攻撃を一発パリィ。うん、今のは会心。

 

「正直言って邪魔」

 

「正直上等だし邪魔なんざ百も承知だ。だからお前も死にかけてるって白状して回復しとけ」

 

「へいへい」

 

 それだけ言うと、俺と会話している奴もPOTローテに加わった。その代りに隣に立つのは長髪の少女剣士。

 

「前言撤回。背中預けた」

 

「預けられた。だから勝手に死なないでね?」

 

「互いにな」

 

 俺にはまだやることってのが残ってんだ。こんなとこで死んでなんかいられるか。

 短いやり取りの後、俺たちは同時にかけだした。

 

 戦っていると、不思議な感覚に襲われた。ボスの攻撃はよく読めるし、連携は今までとは段違いでとれる。本当に不思議な感覚だ。そんなときに、レインの右から攻撃が飛んできた。今の立ち位置から考えると、

 

―――右60、尾の剣の薙ぎ。しゃがみながら上30から40にパリィで凌げる!

―――了解!

 

(は・・・!?)

 

 驚いているまもなく、レインが俺の指示通りにパリィした。こっちに振り返ったレインと目があう。

 

―――ありがとう助かった!左120から鎌の突き!下がれば躱せるよ!

―――おう!

 

(いや()()じゃなくて・・・!)

 

 思いつつ全力のバク宙で躱す。俺くらいのSTRでの全力バク宙ともなると、比喩でも何でもなく数メートルはゆうに吹っ飛ぶ。そのまま空中で

 

(ああもう出し惜しみはなしって決めたろうに!)「ウェポンチェンジ、ボウ!」

 

 心の中で毒づきながら一言早口に叫ぶ。それだけで、俺の手には弓が握られていた。目の前には鎌を空振りして完全に隙だらけなスカルリーパー。そいつに着地と同時に矢をつがえて放つ。一瞬怯んだ隙に俺は両手を広げてもう一言、

 

「イクイップメントチェンジ、セットワン!」

 

 早口にそれだけ言うと、今度は両手に鬼怨斬首刀とオニビカリが現れた。

 俺が新たに習得したエクストラスキル、“高速武器換装”だ。どうやら、両手化を複数習得かつレベル一定以上で発生するものらしく、あらかじめ決めてあった装備セットを、ボイスコマンドで呼び出すことのできる便利スキルだ。その代りセットを間違えると悲惨なことになりかねないのだが、そのあたりは気を付けるだけだ。

 新たに現れた得物を握り込むと、俺は再び突撃した。

 

―――一気に叩く!足にホリスク!

―――了解!

 

(間違いない・・・)

 

 ひとまず、なんでこうなったとか、どうしてこんなことになったとかどうでもいい。とにかく、レインとはテレパシーもどきのようなことができるようだ。これなら連携も楽になると思いつつ、ホリゾンタル・スクエアを繰り出すレインの横で、俺は吹柳(ふいりゅう)を繰り出した。そのまま連続で転身脚につなげた。それでボスがこける。だが、その転びの時のボスがあがく。その時に、微かだが確実にパシャンという音が聞こえた。俺も、その音の回数を少なくするように努力はしてきた。が、全部防げたわけではない。現に、この音を聞くのは、このボス戦だけでも何回目かだった。数えることは少し前に放棄していた。

 

(・・・くそっ!)

 

 心の中で毒づく。だが、今のタンブルを起こした攻撃でボスのHPバーはラスト一本に突入していた。

 

「全員、突撃!」

 

 ヒースクリフの号令が轟く。ヒースクリフのユニークスキルである神聖剣ソードスキル“ユニコーンチャージ”を筆頭に、剣が様々な色に輝く。―――どうでもいいが茅場、ユニコーンは処女厨だぞ。と、まさにどうでもいいことを考えつつ、

 

―――これで決める!サポート任せた!

―――うん!

 

 それだけ通じ合うと、俺は勝負を決める覚悟を決めた。先の二つは硬直が短い。それを大いに利用して、硬直が抜けるまで待つと、俺は集中力のギアを上げた。ここからやる作業にミスは許されない。

 まず手始めに、小太刀で巻き上げるように飛びあがる。小太刀系ソードスキル“閃空烈破”だ。空中で体制を整えると、技の終わりに再び剣がきらめく。刀などの一部に見られる、連発で出すことのできるソードスキルの組み合わせが一つではないことは、何回も使ってわかっていた。そのまま、今度は斜め上にシステムアシストを得て吹っ飛ぶ。同じく小太刀系ソードスキル“空破特攻弾”だ。硬直が抜けるや否や、俺はその刃を今度は真下に向けた。俺も最初知った時は驚いたが、閃空烈破からはタイミングがシビアではあるものの三つのソードスキルの連発が可能なのだ。そのままさらに連続で小太刀ソードスキル“神縫い”を発動した。とここで、ボスが転びから復帰した。

 

(この体勢からだとちときついか・・・?)

 

 いや、いけ・・・!決めるんだろうが!

 

 強い意志を持ってさらに発動。転びから復帰して直後に、俺に攻撃を仕掛けようとしたスカルリーパーだが、そこには俺はいない。一瞬で背後に駆け抜け、切り払う刀系ソードスキル“幻狼斬(げんろうざん)”だ。直後に、俺は剣技連携(スキルコネクト)でさらに、左手で爪竜連牙斬を繰り出す。間髪入れずに爪竜連牙蹴。三連続くらいは余裕でつなげられるようになった。総ヒット数15という、三連撃ということを考えると、俺の中でも最大といってもいい手数。それが炸裂し、お互い長い長い硬直に入った。復帰は向こうのほうが早いが、こっちは一人じゃない。

 

「やああっっ!!」

 

 後ろから来たレインの剛直拳からのハウリングオクターブが炸裂。大技二つで再びボスが転ぶ。爪竜連牙蹴をかました俺の手に戻ってきた鬼怨斬首刀に、さらに光がともる。

 

「腹ぁくくれよ・・・」

 

 低い俺の唸りは、おそらく誰にも聞こえていない。その俺が繰り出す、単発としては相当なヒット数と威力を誇る、俺が出せる第二の大技、刀系九連撃ソードスキル“天狼滅牙(てんろうめつが)”が炸裂した。その代りこちらも硬直に入るが、なんということはない。

 

「うおおおおおっっっ!!」

「やああっっっ!!」

 

 正面で太陽のコロナさながらな二刀流の超連撃大技を繰り出し、助走をつけて神速にして必殺の一撃を叩き込む新婚夫婦のおかげで、大分時間が稼げた。その間に、俺の硬直が解ける。

 

「これで決める!」

 

 暗示にも似た宣言と共に、俺は小太刀を逆手でしまって刀を両手持ちし、横に跳んだ。呼応するかのように、刀が白い光に包まれる。この動きは、刀を両手持ちで振るわないと制御がかなり難しい。新婚夫婦でなく、それまでこれでもかと言うほどダメージを与えた俺にヘイトが向くが、なんということはない。何故なら、スカルリーパーが振り向いた位置に、俺はいないのだから。

 スカルリーパーの視界外から、横薙ぎと振り上げが見舞われる。そちらを向いても、次の瞬間にはもういない。背骨を飛び越しながらの一回転から、そちらを向いてもいない。史上最強といって間違いないフロアボスは、まるで道化のように見当違いの攻撃を繰り出すだけだ。残り少ないHPバーはどんどん減っていく。

 外から見ていれば、俺の人外じみた動きがよくわかったことだろう。俺は、ヒットアンドアウェイを繰り返しているだけだ。だが、そのスピードが異常に早いというだけだ。

 その刃は鮮烈で、まるで周りの闇を斬り裂くかのように、フロアボスを細切れにしていった。そして、この技の隠れ性能も引き出した結果、この技の最大ヒット数を引っ張り出す。

 最後に、斬りぬけた体勢から大きく飛びあがり、完全にダウンしたスカルリーパーに、振り向きざま大上段から振り下ろす。

 

「とどめだ!!」

 

 その一言で、ボスは膨大なポリゴンとなった。

 刀系()最上位ソードスキル、“漸毅狼影陣(ざんこうろうえいじん)”。そのヒット数は、単発技としては異常としか言いようのない40。その代り、ヒット数5以上のソードスキルを叩き込んで発動可能な天狼滅牙を発動し、その直後でないと発動できないという、厳しすぎるといってもいい制約がある。しかも、そういう完全にパーティ戦前提の仕様なくせに、動き回るという特性上一対一のほうが効果を発揮するというおまけつきが、それを果たすことができれば、このトンデモ技は最大の効果を発揮する。

 

「終わった、か」

 

 思わず、俺はその場に大の字で寝転んだ。というか、その場にいた全員がその場にへたり込み、寝っ転がった。

 




 はい、というわけで。
 とりあえず超お久な技解説。

トリニティレイヴン
 モンハン弓系狩技
 完全に書かれている通り。パクリ?オマージュだ。

閃空烈破
 テイルズシリーズ、使用者:クレス・アルベイン(TOP)、スタン・エルロン(TOD)他
 巻き上げながら上昇する技。読み方は“せんくうれつは”だったり“せんくうれっぱ”だったりするので、ご自由に。

空破特攻弾
 テイルズシリーズ、使用者:アニス・タトリン(TOA)、ラピード(TOV)他
 きりもみ回転しながら空にぶっ飛んでいくという、それ現実にやったら目を回すよねっていう技。

神縫い
 ゴッドイーターショートブレード系ブラッドアーツ
 空に飛んでいる状態で発動可能。真下に攻撃する技。ちなみに主はその真下攻撃がいまいち合わず、あまり使っていないBA。

幻狼斬
 テイルズシリーズ、使用者:ユーリ・ローウェル(TOV)
 一瞬で斬りぬけて背後から横一閃を放つ。その関係上、コンボの途中に組み込むと途切れても反撃をもらいづらいので、結構使っている技。

天狼滅牙
 テイルズシリーズ、使用者:ユーリ・ローウェル(TOV)
 バーストアーツと呼ばれる、一部上位技を発動した直後でないと発動できない技。十分強力な技なのだが、後述する裏最上位ソードスキルの引き立て役になってしまう。という事実に気付けている人物が果たしてどれだけいただろうか。

漸毅狼影陣
 テイルズシリーズ、使用者:ユーリ・ローウェル(TOV)、アルトリウス・コールブランド(TOB)
 ここでイメージしているのは完全にユーリのそれ。一瞬でヒットアンドアウェイを繰り返す秘奥義。ここでの威力はかなり強く、中ボス程度であればこれを出すまでの一連で一撃死を狙えるほど。だが、本文中にある通り、その発動条件が鬼畜すぎる仕様から、誰も気づいていなかった。主人公が気付いたのは完全な偶然。まさにハイリスクハイリターンなトンデモ大技。


 漸毅狼影陣はね、さすがにやりすぎかなと思いました。というか、ロータス君が前衛でここまで暴れまわる予定などなかったのですが。自分の頭の中ではアサシン的なアーチャーに徹して、ヒースクリフ戦の下りあたりで「お前いたの!?」って展開にしていくつもりだったのですが・・・。本当に麻縄でくくりつけてぶん回すのがそんなに楽しいかお前ら。

 更新が遅れたのは、まあ、もろもろの理由です。もう一つのほうにかまけていたのは否定はしませんが。


 あとSAO編は一話になります。お付き合いください。それにつきまして、活動報告に一つアンケを設けましたので、ご協力をお願いします。

 次は年の瀬なので、できれば半月くらいで投稿したいです。が、果たしてどうなるか。

 ではまた次回。

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