もしも比企谷八幡が嘘つきだったら   作:くいな9290

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毎回のことながら遅くなって申し訳ありません!
ああ、こんなのあったなぁ程度に読んでいただければ幸いです。


ep.15 やっぱり比企谷八幡に夏休みはない

「小町ー、粉塵頼む。」

 

間延びした声で小町が答える。

 

「りょーかい。麻痺まだなのー?」

 

「もうちょい待ってくれ。

起爆は俺がするからな。」

 

夏休み。

言い方を換えれば、自宅で妹と戯れる最高のイベントである。

もちろん、今も小町を膝枕しながら絶賛ゲーム中である。

大丈夫。千葉の兄妹ならよくあることだ。

 

それにしても、と突然小町が話し始める。

 

「お兄ちゃん、こんなことしてていいの?」

 

「確かに今年受験の妹とダラダラとゲームしてるのはまずいか……。」

 

ここは兄らしく勉強させるべきなのだろうか。

俺が真剣に悩んでいるのに対し、小町はさっきと変わらない間延びした声で言う。

 

「そうじゃなくてー、いやそうなんだけどさ。

いつもお兄ちゃんが言ってる、ポイント稼ぎーってのはいいのかなって。」

 

ああ、なるほどな。

今でこそ幸せな夏休みだが、お盆が終わってからはあいつらと遊ばなくてはならない。

それにあの暑苦しくて対して美味くもない食い物を出す屋台が並ぶ夏祭りがある。

 

「あー、大丈夫だ。

こっから数日は忙しくて携帯触れないって前に言ってるからな。

それに俺はちゃんとポイント稼ぎしてるじゃねぇか。」

 

言って、俺は小町の頭を撫でる。

メールは読んで無視、LI○Eは未読無視、電話は小町以外非通知も含めて全て着信拒否、さらに家から出なければ完璧だ。

後から適当にど田舎の祖父母の実家に帰っていた、とでも言っておけば何の問題もない。

 

「確かに一緒にいてくれるのは小町的にポイント高いけどさー。

さっきからずっとお兄ちゃんの携帯鳴ってるよ?」

 

小町は気持ちよさそうにむふーっと息を吐いた後、テーブルの上の俺の携帯を指差す。

見ると確かに携帯が光っている。

 

「ったく、何なんだよ。」

 

手に持ったゲーム機を置いてソファーから立ち上がる。

携帯の画面を見ると知らない人物からのメールだった。

とりあえず俺は確認のために受信ボックスを開く。

 

差出人は相手のメールアドレスで……。

件名:平塚静です。メールを確認したら連絡ください。

本文:平塚静です。君には先生と言った方が分かりやすいかもしれませんね(笑)

比企谷君はこの夏休みをーーーー

 

長い長い。

本文のテキスト量が普通のメールの比じゃない。

というか、何で俺のメアド知ってるんだよ。

めんどくさいので最後まで読まずに携帯を閉じる。

 

あの人、メールじゃ人格変わりすぎだろ。いや、俺が言えたことじゃないことなんだが。

手に持った携帯をもう一度テーブルに置く。

 

「小町ー、ゲームの続きやるぞ……ってあれ?」

 

振り向くとソファーに座ってるはずの小町がいない、

いつのまに移動したんだよ。気配遮断のスキルでも持ってんのか。

 

「ちょっとー、小町ちゃーん?」

 

大方自分の部屋にでも戻ったのだろう、そう思って小町の部屋に向かって声をかける。

 

「あ、お兄ちゃんー。ちょっと待ってて!」

 

待つ?一体何を待てばいいんだろうか。

とりあえずやることもないので、ソファーに座ってボーッとする。

夏の朝、涼しい部屋の中でゆっくりしているのだ。眠たくなるのは必然だろう。

気づけば俺の瞼は重くなり、夢の世界に落ちていった。

 

****

 

「ほら!お兄ちゃん、起きる!」

 

目の前で小町の声がする。

ゆっくりと目を開けると、突然膝の上に大きな荷物が置かれた。

 

「えーっと小町ちゃん?これは何?」

 

ちらりと時計を見ると寝てからまだ三十分程度しか経っていない。

 

「遊びに行くよ!」

 

小町は俺の前で仁王立ちして堂々と宣言する。

 

「遊びに行く?どこに?

知り合いに出くわす可能性があるから俺はできれば家にいたいんだが。というかまだ寝たい。」

 

言うと、小町は顔を近づけて問うてくる。

 

「お兄ちゃんは知り合いと睡眠と小町どれが大切なの!?」

 

「ばっか、小町に決まってんだろ。」

 

即答。

むしろ小町より大切なものはないまである。

 

「だったら行こうよ!」

 

「はぁ……仕方ねぇな。

着替えてくるからちょっと待ってろ。」

 

しぶしぶ了承して立ち上がる。

ここまで小町がしつこく言ってくるのだ、何かしら譲れないものがあるのだろう。

 

「はい、これ着てね。」

 

自室に戻ろうとすると、小町から着替えを渡される。

渡されたのは伸縮性の高いズボンとTシャツ。

 

「……出かけるんだろ?

こんな適当な服装でいいのか?」

 

嘘とは言えども俺は割と今風の高校生をしている。

そりゃあいつらと遊ぶ時のために流行りの服ぐらい持っている。

小町がそれを知らないはずはないのだが……。

 

「ううん、これでいいの。

動きやすい服装じゃないとね。」

 

けれど、小町は笑顔を浮かべてそう言った。

 

「まぁお前がいいって言うなら構わないが。」

 

言いながら服を受け取りその場で着替える。

Tシャツから顔を出すと同時に小町から大きな荷物を手渡された。

 

「よし!それじゃ行こっか!」

 

「へいへい。」

 

やけに重たいその荷物を持って玄関に向かう。

なんだこの荷物。その辺に遊びに行くってわけでもなさそうだが。

疑問に思っていると小町が玄関のドアに手をかけた状態で振り返りウィンクしてくる。

 

「ーーと言っても、目的地はすぐそこなんだけどね!」

 

そのままガチャりとドアを開ける。

ドアの先にはいつも通り家の前の道路とお向かいさんのお家ーーーではなく謎のワンボックスカーが一台。

え、何、俺誘拐されちゃうの?

妹に誘拐されるとか斬新すぎるだろ。小説が一本書けそうだ。

 

「えーっと、何これ?」

 

そろそろ分からないことだらけで頭がパンクしそうになってきたんだが。

 

俺がその場で立ち尽くしていると家の前に停まっている車から一人の女性が降りてきた。

黒いTシャツにデニムのホットパンツ、足元には登山靴みたいなスニーカー。

長い黒髪はポニーテールに纏められ、カーキ色のキャップを被っている。

サングラスのせいで表情は窺い知れない。

その女性は俺の前に立つとサングラスをクイっと額の上にずらす。

……まぁ、言うまでもなく平塚先生なのだが。

 

「さて、メールに返信がなかったのと、電話が繋がらなかったことの説明をしてもらおうか、比企谷八幡。」

 

わぁ、とっても怒っていらっしゃる、この人。

 

「連絡先知らない人からの電話は着信拒否。メールは……寝てたんで気づきませんでした。」

 

真実と、否定しがたい嘘。

寝てたのは事実だよ、うん。

 

「お兄ちゃん、先生からのメール見てから寝てましたよ。」

 

まぁ小町ちゃん。お兄ちゃんは簡単に告げ口する子に育てた覚えはありませんよ。

小町の言葉を聞いた平塚先生はやれやれと言わんばかりに頭に手をやる。

 

「だろうな。

まぁ別にいいだろう。無事なら結構、以前のこともあるから少し心配だったのだよ。」

 

その心配はありがたいのだが……。

 

「余計なお世話ですよ。

あんな無茶する気は毛頭ありません。」

 

言うと平塚先生の目がスッと細くなる。

 

「というか、妹まで使って俺に連絡とらないでもらえませんか?」

 

すると、さっきの意味深な表情は消え去り、先生は豪快に笑いだす。

 

「ははは、すまない。

ただ、重要な連絡だったのでな。

どうせ君は合宿があるということも知らないのだろう?」

 

「合宿?」

 

初耳だ。

多分メールに書いてあったのだろうが、めんどくさくて全部読まなかったからなぁ。

 

「それって小町もですか?」

 

言って小町を指差す。

ちょうど彼女は車の後ろのドアから中へ入るところで、やっはろー、とか言っている。

 

「ああ、彼女も参加したいと言ったのでな。

何、監督する子供が少し増えようが問題ない。

さぁ、君も乗りたまえ。」

 

小町が行くと言うなら俺もついていかないわけには行かない。

そもそも小町を懐柔された時点でチェックメイトだったのだ。

 

「ちなみに、どこに行くんですか?」

 

一応だが聞いてみる。

すると平塚先生はいたずらっぽく笑う。

 

「秘密、だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はこっちだ。話し相手になりたまえ。」

 

「実は補助席に乗ったら死ぬ病に……。」

 

「いいから乗れ。」

 

 

 

****

 

行き先の知らない車は俺の不安とは裏腹にどんどんと進んで行く。

昼下がりじゃないけどドナドナでも歌おうかな……。

 

行き先不明、とは言ったが車は高速道路に乗り、だんだんと山のある方へ向かっている。

……この道筋は覚えてないこともない。

 

「……千葉村っすか?」

 

助手席に乗り、後ろの雪ノ下と由比ヶ浜二人に挨拶した後ずっと黙っていたが、なんとなく行き先に予想が立ったので先生に声をかけてみる。

ちなみに、小町と雪ノ下、由比ヶ浜は三人でずっと騒いでいる。

いや、うるさいのは小町と由比ヶ浜だが。

 

「正解だ。

よく分かったな、君も林間学校で行ったんだろう?

記憶力がいい。道筋まで覚えているとは。」

 

感心したような声色で平塚先生が答えた。

 

「……たまたまですよ。」

 

嘘だ。

忘れていない、忘れられるはずがない、あの場所を。

 

すると、先生が少し間を置いた後、真面目な声で話し出す。

 

「……君の過去に何があったなど尋ねる気はない。

おっと、もちろん君が話すなら私はいつでも聞かせてもらうよ。

ただ、君はいつまでも過去の出来事に囚われるべきではない。」

 

「別に昔のことなんて気にしてませんよ。

過去は過去、今は今。ちゃんと割り切って生きてますから。」

 

嘘。

真っ赤な嘘だ。

 

平塚先生は小さくため息をつく。

 

「そうか……、それならいいのだが。」

 

俺はその独り言のような言葉に返答はせず、逃げ出すように窓の外の景色を眺める。

後十分と経たずに千葉村に着くだろう。

先ほどまで燦々と輝いていた太陽はいつの間にか流れてきた雲で遮られていた。

 

「ーーーそういえば。」

 

突然、平塚先生が話し出す。

 

「さっき言ったな、『あんな無茶は二度とする気はない』と。」

 

「それがどうかしましたか。

本心ですよ。偽る必要もありませんし。」

 

事実だ。

多数のデメリットを含んでいる割にメリットが一切ない。

つまり、するだけ無駄な行為ということだ。

 

「本当にそう思っているんだろうな、君は。

でもそれは嘘だ。同じ状況に陥れば君は必ず同じ行動をとる。」

 

けれど先生はきっぱりと断言する。

そんな訳がないだろう。

デメリットしかないどころか、下手すりゃ学校に戻ったとき居場所がなくなってる、なんてのもありうる。

 

「何を根拠にそんな突拍子もないことを。」

 

ジトッと睨みながら俺は彼女に問いかける。

 

「根拠はあるさ。君はそういう人間だからな。」

 

けれど、平塚先生は根拠どころか意味の分からない言葉を口にする。

 

「そんなの理由になってないですよ。」

 

言って再び窓の外に目をやる。

ああ、もうすぐ到着だな。

 

「だから君はそのままではダメなんだよ。

早くそれを理解するべきだ。」

 

そして、先生がポツリと漏らしたその一言を俺は聞かないふりをした。

 

 

****

 

「あ、ハチと結衣じゃん。」

 

「はろはろ〜。」

 

「こんなところで会うなんて奇遇だべ。

ハチたちもキャンプなん?」

 

「そうか、先生の言っていたもう一つのグループというのは奉仕部のことだったんだな。」

 

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!

俺は平塚先生の車から降りたと思ったら、突然隣に停まった見知らぬ車から葉山たちが降りてきた!

な、何を言ってるのか分からねーと(ry

 

「え、えーっとどうしてお前らがここに来てんの?」

 

慌てて『比企谷八幡』を演じ、葉山に問いかける。

しかし、俺の問いに答えのは彼ではなく後ろからスッと現れた平塚先生だった。

 

「人手が足らなさそうだったから学校の掲示板で募集をかけたのだよ。

まさか彼らが応募してくるとは思わなかったが……。」

 

「人手?俺まだ何するか聞いてないんっすけど。」

 

「ああ、そういえばそうだったな。雪ノ下たちには既に説明しているんだがな。

君たちには小学生の林間学校サポートスタッフとして働いてもらう。

簡単に言うと雑用だな。もっと端的に言うなら奴隷だ。」

 

最後の一言は必要なかっただろ。

平塚先生の言葉を聞きつつ俺は葉山に近寄り話しかける。

 

「どうしてこんな活動に参加したんだ?」

 

すると葉山は苦笑交じりの笑顔で答える。

 

「奉仕活動で内申加点してもらえるって俺は聞いてたからな……。

もちろん結衣と比企谷も誘おうと思ったんだが、結衣は用事があるって断られてお前は連絡がつかなかったんだ。

比企谷は忙しいって聞いていたが、なるほど、奉仕部の合宿だったんだな。」

 

納得した、という風に葉山は頷く。

納得してくれたのは嬉しいんだが俺もそれを聞いたのは初めてなんだよ……。

もちろん着信拒否にしてたなんてことは口にしない。

 

葉山と俺が話していると他の三人も会話に参加してくる。

 

「あーしはなんかただでキャンプできるっつーから来たんですけど?」

 

「だべ?いーやーただとかやばいっしょー。」

 

まぁお前らならそんな考えで来たんだろうな……。

 

「わたしは葉山君と戸部君がキャンプすると聞いてhshs。」

 

ま、まぁ海老名ならそ、そんな理由で来たんだろうな……。

俺が苦笑いをしていると彼女がずいっと目の前ににじり寄ってくる。

 

「で、でも!もちろん比企谷君もいるなら三人で!!」

 

「え、いやーそういうのは……。」

 

どうどうと両手で彼女の興奮を抑え込もうとする。

当然、俺一人では彼女を宥めることなどできるわけもなく、隣から三浦が救いの手を差し伸べてくれる。

 

「はいはい、落ち着きなよ姫菜。」

 

三浦が海老名の両肩を抑えて彼女を落ち着かせる。

そんな二人を横目に見ながら葉山がパンっと手を叩いて注目を集める。

 

「それじゃ、そろそろ行こうか。

平塚先生案内お願いしますね。」

 

「ああ、着いてきてくれ。」

 

平塚先生を先頭に俺たちは歩き始める。

 

「おお小町ちゃん久しぶり〜。」

 

「戸部さんもいたんですか。

いつも兄がお世話になってますー。」

 

戸部が小町に話しかけている。

ははは、戸部。それ以上近づいたらお前でも許さんぞ?

 

「小町さん、彼らと面識があるのね。」

 

いつも間にか隣を歩いていた雪ノ下が尋ねてくる。

 

「ああ、以前二、三回あいつらを家に呼んだことがあるからな。」

 

あれは大惨事だった……。

そもそもプライベートな俺の自宅にあいつらを呼んだのが間違いだったんだ……。

あまり良い記憶ではないので思い出さないが。

 

「というか、お前はあいつらが来ること知ってたのか?」

 

聞くと雪ノ下は頭でも痛いのかこめかみを押さえて答える。

 

「他にも呼んであるとは聞いていたのだけれど、まさか葉山君だとはね……。

平塚先生、そういうことは話してくれないから。」

 

「まだマシなほうだよ、お前は。

俺なんか合宿のことすら今さっき聞いたところなんだから。」

 

「あら、それはあなたの責任でしょう?」

 

そう言って雪ノ下はちょこんと首を傾げる。

 

「確かにな、先生のメール最後まで読まなかったのは俺の責任だ。」

 

最後までちゃんと読んでればきっとあの長文のどこかに合宿のことが書かれていたのだろう。

そう思った発言だったのだが、雪ノ下は首を振っている。

 

「いえ、そうではなくて。

一応連絡網という形で私が由比ヶ浜さんに、彼女があなたのところに連絡を回しているはずなのだけれど。」

 

連絡網なんてあったのか。

というか、俺が一番下なんだな。入部の順番からして由比ヶ浜と俺逆じゃねぇか、普通。

別にいいんだけどさ。

 

「そんなのあったのか。

ちょっと携帯見てみる。」

 

言ってポケットからスマホを取り出しメール受信ボックスを開く。

 

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

平塚静

由比ヶ浜結衣

葉山隼人

 

あった。

まめにメールを見てたわけじゃないから気づかなかった……。

というか、平塚先生メール送りすぎだろ。

 

後、葉山は忙しいって分かってて電話だけじゃなくメールまで送っててくれたんだな、律儀なやつだ。

 

「悪い、気づいてなかった。」

 

雪ノ下に画面を見せる。

すると彼女はふぅとため息をつく。

 

「そんなことだろうと思っていたわ。

まぁ、結局あなたがこうしてここにいるから問題ないのだけれど。」

 

「悪かったな、わざわざ家まで来てもらって。」

 

「いいえ、あそこまで行くと決めたのは平塚先生よ。

ちなみに私は置いていこうと言ったわ。」

 

涼しげな顔で雪ノ下が言う。

悪かったな、着いてきてしまって。

俺も家で夏休みを満喫する気満々だったんだよ。

 

「こら。そこ、いつまで喋ってるんだ。

もう着いたぞ。」

 

先生に言われて改めて前を向くと広場に到着していた。

確か、この周辺に小学生が止まる建物があったはずだ。

見るとその広場に林間学校に参加する小学生達が既に集まっていた。

 

****

 

その後、俺は入所式で高校生代表として小学生の前で挨拶する役を葉山から押し付けられたりもしたが、滞りなく事は進み、林間学校最初の予定、オリエンテーションが始まった。

オリエンテーションと言っても、チェックポイントを周りゴール目指すだけの簡単なものだ。

 

そこでの俺たちの仕事は彼らより先に目標地点に到着し昼食の準備をすることなのだが、当然俺たち全員を乗せられる車などあるわけもなく、現在、その目標地点まで歩いている。

別に歩くことに異存はない、歩くことに関しては。

 

「お兄さーん!一緒に探そ!」

 

ただ、小学生達が纏わり付いてくるのだけはどうにかならないだろうか。

 

もちろん俺たちの通る道は小学生も通るわけで、先ほど前で挨拶した俺やイケメンオーラを醸し出す葉山は彼らに大人気で男女問わず『優しい』お兄さん達に話しかけてくるのだ。

ちなみに由比ヶ浜や戸部達も小学生に積極的に話しかけたりしており、雪ノ下と小町だけが二人で後ろから付いてきている状況だ。

 

そして現在、女の子達だけで構成されたグループと鉢合わせしているのだが。

 

「よし、じゃあここだけ手伝うよ。

ただし、他のみんなには秘密だぞ?」

 

膝を折り、彼女らと同じ目線になる。そして人差し指を口元に当てて笑いかける。

ああ、さっきから何回この動作してるんだろう……。

 

「あっちの方とかありそうじゃないか?」

 

俺の言葉を聞いた葉山が適当な場所を指差して彼女達を先導する。

小学生達もほんとだー、なんていいながらその方向へ向かっていく。

 

俺はその集団の少し後ろから追いかける……が、集団から離れたところに女の子が一人。

不意にその子が振り返り俺と目があう。

 

その目はなんというかお世辞にも小学生らしい純真で綺麗な目とは言えず、端的に表現するならーーー

 

『腐っていた』。

 

 

 

 

 




八幡に続き次の犠牲者は……お察しですね。
最近あまりにも筆が進まなさ過ぎるので、気分転換に別の小説でも書いてみようかな、と思案中です。
書くとすればガイルと何かのクロスオーバーになりますかね。
ですが、こちらの更新も続けてまいりますのでよろしくお願いします!

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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