機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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次話で戦後編はたぶん終わりです。これ以上はネタが思いつかないので……。


第14話

 ブリテン島に展開する大西洋連邦軍は遂に行動を開始した。

 現地の司令官は援軍を待って侵攻したかったが、大西洋連邦作戦本部から「援軍が到着するまでに橋頭保を確保せよ」と命令が下った為出撃することになった。

 

(ユーラシア連邦の降伏は確かに困るが、今の戦力でこの強固な防御陣を突破できるのか?)

 

 司令官は一抹の不安を抱えながらも、それを表に出さずに部下へ出撃準備が整ったか確認する。

 

「出撃準備は完了したか?」

「はい。フォビドゥンブルー並びにディープフォビドゥン部隊の準備も完了しました。いつでも行けます」

「そうか。全軍発進する! 目標はコタンタン半島ノルマンデイー海岸!制圧して橋頭保を確保するぞ!」

 

 司令官は全軍の出撃を命じ、大西洋連邦軍は増援の本隊が来る前に橋頭保を確保すべく出撃した。

 

 

 

 無論この動きはヨーロッパ連邦軍やプラント派遣軍の耳に入り、大西洋連邦軍を迎撃すべく出撃準備に取り掛かった。

 

「機体の最終調整はどうなっているの?」

「20分後にはすべて終わります」

「そう、最終調整が終わった部隊は順次発進させなさい」

「了解です」

 

 オプス艦内は敵軍の急な出撃に最初は騒然とした。だが、プラント軍はすぐに落ち着きを取り戻して冷静に対応し始める。

 

「ヨーロッパ連邦軍から連絡です。敵はコタンタン半島のノルマンディー海岸を目指しているそうです」

「前回の同じ場所ですか……囮の可能性もあります。ここは従来の計画に沿って我らの主力はブルターニュ半島で待機するのがよいかと存じます」

 

 参謀の1人は敵が同じ愚を繰り返すわけがないと考え、タリアにブルターニュ方面は向かうことを提案する。

 

「しかし、ブリテン島にいた大西洋連邦軍は、全軍でコタンタン半島を目指していると情報にはあるぞ。我が軍の偵察でも確認済みだ。ここは全軍でコタンタン半島に向かった方がいいのでは?」

 

 しかし、違う参謀がその意見に反論した。ブリテン島に配備されていた大西洋連邦軍が、ほぼコタンタン半島に集中していることは偵察の結果確定している。だから、コタンタン半島に殺到している敵軍を撃破する方を優先すべきだと主張した。

 

「グラディス司令。如何なさいますか?」

 

 部下がどうするのかタリアに判断を請う。

 タリアは部下達の意見を聞いて顎の下に手を据えて少し熟考した後、口を開き部下達に命令を下す。

 

「コタンタン半島の守りは充分固まっているわ。それよりも敵軍が他の場所から上陸することを考えて行動しましょう」

「了解です。さっそく艦を向かわせます」

 

 水陸両用工作母艦オプスは陸艦1隻を発進した部隊の補給艦としてこの場に待機させ、ブルターニュ半島へ針路を取った。

 

 

 

 西部戦線でも戦火が切って落とされた頃、大西洋連邦の艦隊はヨーロッパを目指して大西洋を横断していた。

 

「伝令。ブリテン島の我が軍は予定通り攻撃を開始しました」

「そうか。これで連中の目はコタンタン半島に向くだろう。我が軍はその隙にブルターニュ半島へ上陸して敵の背後を突けるな」

 

 大西洋連邦艦隊の司令官はCICからの報告を聞いてそう言い、艦長はその言葉に頷く。

 大西洋連邦軍は緒戦の敗退に懲りた結果、上陸が容易ではないと悟り、上層部は方針を転換。ブリテン島に配備された軍は引き続きコタンタン半島に上陸して橋頭保を築くように命じ、増援として派遣した艦隊に側面を突かせる作戦を立てたのだ。

 

「問題は制海権・制空権が向こうにあることですね。フランス近海に近づけば我らはたちどころに見つかります」

「心配は無用だ。その為にもブリテン駐屯軍には全力で攻撃するように命じている。敵に反転する余裕はないだろう。それに万が一我々を見つけてこちらに向かってもすでに時遅しだ。我々の上陸を阻む事などできん」

 

 此度派遣された大西洋連邦軍はMSはほとんどダガーLで構成されており、おまけに苦労して開発に成功したジェットストライカーを多数装備しており、制空権確保に関しては万全を期している。

 そして、敵水中用MSの襲撃に備えてフォビドゥンブルーとディープフォビドゥン部隊を、いつでも出撃できるように準備している。

 

「しかし、プラント軍が支援しているので、一筋縄ではいかないのでは? 万が一緒戦で敗退すれば我らは一気に不利に陥ります。……せめてもう少し数を連れてきたかったですね」

「仕方ないだろう。今回の遠征自体ぎりぎりなのだ。これ以上数を増やせば国民生活を圧迫することになりかねないのだからな」

 

 大西洋連邦ではいまだに大戦の傷が癒えていないせいか、国民の生活は非常に苦しかった。その結果戦争反対を訴えるデモが起きており、大西洋連邦政府は火消しに大わらわになっている。

 

「敵も防御を固めているだろうが、不意を突けば上陸は可能だ。1時間後にレイダー部隊を発進させろ。敵拠点を爆撃する」

「了解しました。30分後にパイロットへ出撃準備命令を出します」

 

 大西洋連邦が派遣したユーラシア連邦救援艦隊は、敵の索敵範囲外でレイダー部隊を発進させ、その後水中MS部隊を発進させて艦の護衛をさせながら、ブルターニュ半島へ針路を取った。

 

 

 

 

 ブルターニュ半島の守備軍は退屈していた。何故なら戦いが起こっているのはコタンタン半島であり、こちらには敵影の1つもないからだ。

 

「総司令部は敵がこっちに来る可能性があるから注意しろと言っていたけど、敵影をまったく確認できませんね」

「油断はするなよ。何せ大西洋連邦は何も知らせずに我が軍を囮にした連中だ。どんな汚い手を使ってくるかわかったものではない」

 

 ブルターニュ半島を守る司令官は油断しないように部下の士官達に言う。

 大西洋連邦軍は数も多く手ごわいことを理解しているこの司令官は、確実に手薄だと思ってここに攻め込んでくると考えていた。

 

「レーダーに反応あり! これは……MSです! 機種はレイダー制式タイプです!」

「迎撃しろ! それとMS隊に発進準備! 敵が来るぞ!」

 

 ブルターニュ半島司令部は急に騒がしくなり、遂に大西洋連邦の本格的な攻勢が始まった。

 

 

 大西洋連邦軍、ブルターニュ半島へ侵攻。その報はすぐさま後方で待機していたプラント軍にも入る。

 

「MS隊発進準備! 全艦迎撃用意! 本部にもこのことを報告せよ!」

「MS全機発進準備完了しました。いつでもいけます!」

「救援要請が届き次第発進。目的は敵部隊を排除して大西洋連邦軍を海に叩き返す!」

 

 そして、数十分後。ブルターニュ半島を守る軍から救援要請があり、タリアこれを承諾。艦内からMSが次々と発進していった。

 

 

 

 ブルターニュ半島の攻撃はまずレイダーによる爆撃で始まった。レイダーは対空砲火を掻い潜り対地ミサイルを次々と守備軍の陣地に打ち込んでいく。そして、ミサイルを打ち終えたレイダーは機銃掃射を行った後、戦闘空域から離脱していく。

 

 守備軍はこの猛攻に耐えた後、敵艦隊を沖合に展開しているのを確認する。

 

「どうやら制海権は再び奪われたようだな。だが、上陸は断じてさせんぞ!」

 

 司令官はそう言ってMSやリニア・ガンタンクに上陸してくる敵部隊の撃破を命じる。

 ヨーロッパ連邦軍カラーに変更されたダガーLやストライクダガー、リニア・ガンタンク・戦車等が大西洋連邦軍のMS部隊と激突する。

 

「怯むな! 上陸した大西洋連邦軍のMSの数は多くない! 一気に海岸線まで追い散らせ!」

 

 ヨーロッパ連邦軍のMS小隊を指揮する下士官はそう部下を叱咤し、敵部隊に激しい攻撃を加える。しかし、敵はそれ以上の攻撃を空と陸から雨あられとしてくる。

 しばらく、ビームと実弾の打ち合いが続いたが、遂に大西洋連邦軍のMS部隊が切り込んできた結果、海岸線沿いは両軍が入り乱れる乱戦となった。

 

 大西洋連邦軍のダガーLがビームサーベルをストライクダガーに突き刺し爆散させたと思ったら、そのダガーLがビームに貫かれて爆散するなど、敵を倒した者が今度は敵に倒されるという光景が量産されていく。

 

 しかし、ヨーロッパ連邦軍の士気が高くても大西洋連邦軍の圧倒的物量は凄まじかった。倒しても倒してもわらわらと湧いてくる敵機に対して、ヨーロッパ連邦軍将兵は疲弊していった。そして、遂に本格的な上陸を許してしまい、司令部は戦線を少し後退させて態勢を立て直すことを考え始めた頃だった。

 

「後方から友軍の増援を確認しました。プラント軍です!」

「間に合ったか!」

 

 司令官は援軍が間に合ったことに内心安堵した。もし、あと少し増援が来るが遅れていたら本当に撤退をしなければいけなかったからだ。

 

「プラント軍は上陸した大西洋連邦軍の側面を突いています。それにより敵戦線が徐々に後退しています」

「よし。全軍総攻撃だ! 不埒な侵略者どもを海に押しだせ!」

 

 プラント軍が参戦したことにより形勢は逆転。上陸した大西洋連邦軍は次第に押し返され最終的に撤退した。無論プラント・ヨーロッパ連合軍は追撃を行い多くの敵機をスクラップに変えることに成功する。

 ブルターニュ半島での戦闘が終了した直後、コタンタン半島に侵攻していた大西洋連邦軍もブリテン島に撤退したとの報告が入り、プラント派遣軍とヨーロッパ連邦軍の上層部は何とか攻勢を凌ぎ切り内心ほっとした。

 

「何とか死守したわね」

「はい。しかし、こちらの被害も小さくありません」

「補給と整備が必要な機体は作業を急がせない。敵がまた、いつ侵攻してくるかわかったものじゃないわ」

 

 タリアは敵の再攻撃がいつあるかわからない以上、部下に補給と整備を急がせるよう命じる。

 しかし、彼女の心配は杞憂で終わった。

 

「東部戦線に派遣した陸艦から連絡。モスクワの陥落に成功。ユーラシア連邦はヨーロッパ連邦に停戦を申し入れたとのことです」

 

 タリアは通信参謀からの連絡を聞いてこの戦争が終わりに近づいたことを悟った。

 

 


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