機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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何回も確認しているのですが、自分ではどうしても見逃してしまうのか脱字・誤字がなくならないので、見つけた場合は報告してくださるとありがたいです。

この話も残り数話になってきたから、そろそろ次回作を構想しないとまずいかな……。


第12話

 フランス・コタンタン半島。

 第二次世界大戦時アメリカを盟主とする連合軍が、ナチス第三帝国に直接侵攻する為に上陸した有名なノルマンディー海岸を有する半島。だが、時を超えて再びこの半島は戦場になる。

 

「ここを制圧して裏切者のヨーロッパ連邦共を倒す橋頭保にするのだ!」

 

 大西洋連邦軍の先遣部隊はこの半島を橋頭保とすべく上陸を試みたが、ヨーロッパ連邦軍の反撃を受けて甚大な被害を出しつつ撤退する羽目になった。

 

 そして現在、両勢力はドーバー海峡と英仏海峡を挟んで睨み合う状況になってしまい、西部戦線の戦況は完全に膠着状態に陥っていた。

 

「大西洋連邦軍の様子はどうなっているの?」

「緒戦の敗北に懲りたのかドーバー・英仏海峡を越えてくる気配は今のところないそうです」

 

 新型水陸両用MS工作艦オプスの戦闘ブリッジで、今回のプラント義勇軍の総指揮を任されたタリア・グラディス艦長は、同じく参謀本部から派遣された参謀に現地の戦況報告を聞いていた。

 

「参謀本部は再び攻勢を仕掛けてくるとしたら、援軍が来てからになるだろうと言っていたけど、どうやらその予測は今のところ当たっているようね……」

「はい。現在ヨーロッパ連邦軍はコタンタン半島と、ブルターニュ半島周辺の防御力を強化しています。わが軍も陣地構築に力を貸しているので、ここからの上陸は容易ではなくなるでしょう。制海権も何とか協力して奪還できましたし」

「でも、油断はできないわ。大西洋連邦が本格的に攻勢に出たら核動力機でも厳しい戦いになる。東部戦線が早く片づけば数の面で不安はなくなるのでしょうけど……」

 

 東部戦線はヨーロッパ連邦が圧倒的優位に立っていた。ヨーロッパ連邦軍はすでにロシア国内まで進軍しており、物資の補給もプラントからの支援で解決したことにより、現在ユーラシア連邦の一大拠点であるサンクトペテルブルク攻略を行っている。

 

「サンクトペテルブルクはユーラシア連邦の重要な拠点ですので、かなり抵抗されているようです」

「あそこは海岸に接している都市でもあるから、落とされるのはユーラシア連邦の戦略的にはまずいでしょうね。彼らの抵抗も当然だわ」

 

 サンクトペテルブルクは東ヨーロッパ有数の大都市であり、その経済規模はかなりのものがある。

 万が一ここを落とされるとユーラシア連邦にとってはかなりの痛手となるばかりか、敵に恰好の拠点を与えることになりかねない。現地の司令官もそれがわかっているからなのか、必死でユーラシア連邦守備軍は抵抗をしている。

 

「戦力集中は戦術の初歩ですからね。さっさと東部戦線の連中には戻って来てもらいたいものです」

「その心配はなさそうよ。上も東部戦線を早く片づけることが鍵だとわかっているから、特務隊所属のアスラン・ザラを派遣したそうよ」

「……それならサンクトペテルブルクの陥落は時間の問題ですね。尤もあそこを落としたとしてもユーラシア連邦は降伏等しないでしょうが……」

 

 参謀はそう言って、都市を落としたとしても講和に繋がらないと考えたのか、思わず溜息をつきそうになった。

 サンクトペテルブルクは確かに重要な拠点であることは事実だ。しかし、そこを落としたとしてユーラシア連邦がそれで降伏するかどうかと聞かれれば否である。この考えは総指揮官であるタリア・グラディスやほかの参謀も共通である。

 

「その為に陸艦を3隻派遣したのでしょう。私達は向こうの戦線が早く片付くのを待つしかないわ。それよりも大西洋連邦軍が再び上陸してくる可能性に備えて警戒を厳にしなさい」

「わかりました。全軍に通達します」

 

 タリアはそう言って警戒を強めるように命令を下すと、彼女は指揮官用の席に座り海峡の向こう側はメインモニターで眺めるのであった。

 

 

 

 

 東部戦線サンクトペテルブルク。現在この都市を巡って壮絶な戦いが行われており、正に激戦と言える戦闘になっていた。

 

「南西の方角からMS! 数は9! 機種はヨーロッパ連邦のダガーLです!」

「こちらもMS部隊を向かわせろ!」

「西から新たなプラント軍接近!バクゥ5、ゲイツR5、アンノウン3です!」

「予備兵力を一部西に回せ! 絶対に突破させるな!」

 

 ユーラシア連邦軍サンクトペテルブルク方面軍は敵を撃退すべく司令官から一兵卒まで上下関係なく奮闘していたが、三方から猛攻を加えられているせいか戦況は日に日に悪化していた。

 

『北西部方面軍。敵の猛攻により戦線をこのままでは維持できません! 後退許可を!』

『南部方面、敵の攻撃により現在我ら非常に不利。増援を請う!』

『司令。こちら西部方面、プラント軍に新たな増援を確認しました。このままでは戦線を突破されそうです。一時後退許可か増援を!』

 

 司令部に入ってくる戦況報告はこちら側の不利を示すものばかりであるせいか、サンクトペテルブルク方面司令官の顔は厳しくなるばかりである。

 

「司令。最早限界です。ここは組織的な撤退ができるうちモスクワに撤退するべきです」

「何を言うか! ここを制圧されればモスクワが一気に窮地に陥るのだぞ! そう簡単に放棄する訳にはいかん!」

 

 参謀のサンクトペテルブルク放棄の意見に司令官は思わず怒鳴り返す。

 ここを万が一制圧されてしまえば敵の物資補給は容易となり、モスクワが一転して窮地に陥る。その為、司令官はここで都市を放棄して撤退するという考えは彼の頭の中には存在していない。

 

 だが、このままでは全滅の憂き目に合うのは確実なので、参謀たちも必死で司令官を説得する。

 

「しかし、我が軍は圧倒的に不利です。このままでは全滅してしまう恐れもあります。モスクワを守るためには戦略的撤退もやむなしかと……」

「むむむ……」

 

 司令官も頭の冷静な部分では都市を放棄して撤退するしかないとわかっていた。しかし、このサンクトペテルブルクは現在のユーラシア連邦の有力な拠点であり、ここを失うと継戦能力が著しく低下してしまう恐れがあった。何せヨーロッパ連邦は連邦の成立と同時に攻撃を仕掛けてきたので、ユーラシア連邦は大した備えもできておらず、生産拠点の後方移転も当然できていなかった。

 だから、ここを放棄することは更に戦線を後退させることになり、東ヨーロッパの生産力をごっそりと失うことになる。

 

 しかし、参謀の言う通りこのままでは、ヨーロッパ・プラント連合軍に自軍が押し切られるのは時間の問題である。それ故に司令官は決断を下す。

 

「我が軍は本日13:00を持ってサンクトペテルブルクを放棄し、モスクワ方面に撤退する。準備に掛かれ」

「「「了解です!」」」

 

 ユーラシア連邦軍サンクトペテルブルク守備軍は、守り切れないと判断してモスクワ本部にそのことを通達して、都市を放棄を決定する。しかし、この決断は少し遅かった。何故ならプラント軍は敵が撤退する前に包囲殲滅を完了すべく、切り札である核動力機を投入していたのだ。

 

「休暇明けの任務が最前線とは参謀本部も扱き使ってくれる」

 

 アスランはもうじき解体される愛機のコクピットでそう呟きながら、銃火が飛び交う戦場に突入する。

 

「敵の数が多い! だが、アフリカ程ではない!」

 

 ジャスティスのファトゥム-00から散弾を地上に打ち出し、自分に砲撃してきたリニアガンタンクと戦車をまとめてスクラップにする。

 

「アスラン! 貴様1人だけ活躍するな!」

「誰が活躍したっていいじゃないか。イザーク」

 

 ジャスティスの後ろから、パーソナルカラーを塗ったブレイズウィザード装備のザクファントムのイザークとディアッカが追いかけて来る。

 

「それよりもさっさと敵司令部とやらを襲撃しに行こうぜ。敵さんどうやら撤退を開始するみたいだからな」

「ああ、今が攻め込む絶好のチャンスだ。このまま敵司令部を叩く! 行くぞイザーク、ディアッカ」

「お前に言われなくてもわかっている!」

 

 3機は時折攻撃を加えてくる敵機を連携を駆使して一方的に撃破しながら、サンクトペテルブルクへ侵入することに成功する。

 

 街中を進むと自分達を撃退すべく敵機が猛攻撃を加えてくるが、3人は自らの腕と自機の性能をフルに使い、それらを躱しながら反撃を加えて敵を沈黙させていく。

 

「この新型はすごいな。軽くて機動性があるだけじゃない、防御力も今までの量産型MSを遙かに凌いでいやがる」

「上も威張っているだけではないということか」

 

 ディアッカとイザークは自分が乗っている新型MSザクの性能に感嘆する。連合が開発したG兵器以上の機動性を有していながら、量産機とは思えない程強固な装甲をしており、プラント版ストライカーシステムといえるウィザードシステムによる装備換装を含めて、この機体は非常にいい機体だと2人は結論づける。

 

「どうやら俺達が開いた穴から、味方が敵戦線を打ち崩すことに成功したようだな」

 

 自分達が侵入した所から味方が次々と雪崩れ込んでくるのを確認した後、敵司令部を制圧すべく街の中心部に機体を向けた。

 

「それじゃ手柄を横取りされないうちにさっさと行きますか」

「二人共陣形は崩すなよ」

「こちらのセリフだ!」

 

 ジャスティスがビームサーベルで自機に突撃してきたダガーLを真っ二つに切り裂き、ザクが地上にいるストライクダガー部隊を12連装航空ミサイルランチャーで全機爆散させる。

 

 ジャスティスとザク2機の計3機は襲い掛かってくる敵機を屠りながら、敵司令部目掛けて突入していった。

 

 そして、1時間後。プラント軍3機のMSが司令部及びその周辺を制圧したことで、サンクトペテルブルク守備軍の指揮系統は崩壊。守備軍は這う這うの体でモスクワ方面へと敗走していき、都市から脱出できなかった者達や途中で追撃されて逃げきれなかった者は降伏した。

 

 こうしてサンクトペテルブルクはヨーロッパ・プラント連合軍によって完全に制圧され、サンクトペテルブルク攻略戦は幕を閉じるのであった。

 


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