機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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今回は短めです。




第19話

 ザフト上層部に連合の艦隊が大西洋沿岸に集結しているとの情報が入り、参謀本部はすぐに作戦会議を招集した。

 

「どうやら連中ジブラルタルを攻めるようですね」

「キラ参謀長の予測が当たったようだ」

「これで敵が攻めてくる場所はわかった。後はこちらの対応しだいですね」

 

 会議に出席した面々は連合の侵攻が近いことを悟り、対策を練るべく話し合いを行う。

 

「キラ参謀長が色々と策を練ってきたらしい。まずは彼の話を聞きましょうか」

「僕に全て丸投げは勘弁してくださいよ。確かに考えがないわけではありませんが……」

「それはどんな物だ? 言ってみろ」

 

 参謀総長であるアウグストにそう言われた以上、答えないわけにはいかないのでキラは自分が考えてきた作戦を言う。

 

「確かに悪くないかもしれん」

「単純だが、連合のMSに高機動タイプは多くないから成功する可能性は低くはないだろう」

 

 キラの作戦を聞いて参謀の半分が賛成の意を示す。

 しかし、一部の参謀はある疑問を口にする。

 

「だが、その作戦を実行する場合味方は敵の攻勢をしばらく凌ぐ必要がある。下手をすれば総崩れに成りかねんぞ」

「確かにその恐れはあります。しかし、数に勝る連合軍が大攻勢に出れば小手先の戦術では効果がありません。それに今回の指揮官には指揮経験豊富なバルトフェルド隊長を充てます。彼が指揮をするのなら成功確率は高くなります」

「万が一失敗したときはどうする?」

 

 参謀の1人が失敗した場合の時の対応を尋ねる。

 キラは少し考えた後、口を開いて失敗した場合の時の策を説明する。 

 

「その時は例の兵器で連合軍を一掃します。そこを攻めれば逆転も可能です」

「キラ参謀長はあれを使うつもりなのか!? あれを使えば連合の怒りを買う恐れがあるのだぞ!」

「確かにその恐れはありますが、戦争に勝利できれば問題ありません。何より月基地を落とした時点で、向こうが講和に乗ってくるという考えが些か甘い予測でした。連中に対等な和平を結ぶ意思がない以上、向こうが音を上げるぐらいの被害を与えるしか方法はありません。我らは負ければ戦前よりも酷い扱いを受けるのですから」

 

 キラはこの決戦で敗北した場合と、この決戦に勝っても連合が和平を呑まない時は、例の兵器を使うことを心に決めていた。プラントの未来の為に、何より自分の未来の為にも負けるわけにはいかないのだ。

 

「キラ参謀長以上のいい作戦がないのなら、時間もあまりない以上、やむを得ないだろう。キラ参謀長の案を採用して、具体的な作戦案を練ることにする」

「決戦で勝利できるように全力を尽くします」

 

 参謀会議の結果、キラの案がザフトの作戦として採用されるのであった。

 

 

 

 

 ザフトは連合軍主力が動き出す前に行動を開始した。

 決戦を優位に進め、連合軍に挟撃されないようにする為にスエズ基地攻略を開始したのだ。流石にこの基地は連合軍の守りが固かったが、制宙権を制したことにより降下部隊を妨害されることもなく、効率よく送り出せるようになったザフトの敵ではなく、陸と宇宙からの波状攻撃と核動力MSの活躍により、士気が低下していた連合軍を撃破することに成功し、ザフトはスエズ基地を陥落させた。

 

 連合軍は大西洋を横断中にスエズ基地陥落の報を受けて、ザフトの挟撃が不可能になったことに慌てたが、今更作戦を中止することもできず正攻法でザフトを撃破する作戦に変更した。

 

「いよいよだな。また、地上に戻されるとは思ってなかったが、この戦に勝てば講和の道が開ける。そうなれば当分は趣味に没頭できるな」

 

 バルトフェルドはそう呟きながら、戦後の過ごし方について語りながら、決戦に向けて現地で準備を開始するのであった。

 

 

 

 

 プラントにあるクライン邸でシーゲルは娘のラクスと会話をしていた。

 

「お父様。やはり、アスランとの婚約は破談になったのですか?」

「ああ。パトリックも正式に受諾した」

 

 アスランとラクスの婚約は、婚姻統制が敷かれているプラントの政策を、他のコーディネイターに受け入れやすくするプロパガンダでもあった。しかし、パトリックが政治家として失脚した結果、この婚約はお流れとなり自然消滅してしまったのだ。シーゲルの周囲の者達もパトリックと繋がっていると思われる行動は控えた方がいいと騒ぎ立てているので、彼等を鎮める為にも婚約を破棄するしかなかったのだ。

 

「本当に済まないと思っている。だが、私は信じている支持者達の意見を無視できない。唯でさえ最近はヴァルハラに鞍替えする者が増えているからな」

「確かキラが作った政治結社でしたか?」

「ああ。カナーバやアウグストもメンバーに入っている組織だ。彼等の手腕が発揮されたおかげで、プラントは連合に対して有利な形勢を維持しているといっても過言ではない程だ。彼はザフトの失態の合間を縫って組織を拡大させていたようだ」

 

 シーゲルはキラ達のおかげでプラントの世論が、強硬路線に傾かないでいることを知っていた。彼等は自らの組織を使って、うまく大衆をコントロールしている。

 

「お父様は入らないのですか? 穏健派や中立派の人はほとんど入っていると噂を聞きましたが?」

「私は彼等の力が強大になり過ぎることを考慮して、表向きは入らないことにしているのだよ」

 

 シーゲルは会合に参加している穏健派が強硬派の様に増長しない様に、彼等のことを批判する人間が必要だと考えていた。そして、それは当分自分にしかできないと考えていた。

 自分の後継者と思っていたカナーバはそちらに入ってしまい、他の穏健派や中立派の一部も組織の一員になってしまった為だ。おまけに軍部はパトリックが失脚して完全に彼等が手綱を握ることになってしまった。

 

 それ故に誰かがストッパーになる必要があると思い、それをシーゲルは自分に課すことにしたのだ。

 

「しかし、最近は私を邪魔者と見ている輩も多いようだ。特にキラ君は私が以前要請したことに対して、未だに腹を立てている。私としてはそろそろ和解したいのだが、彼の私に対する印象は悪くなる一方のようだ」

 

 シーゲルは何とかキラと仲良くしたいと考えていた。何せヴァルハラ内での発言力はカナーバよりも断然キラが上なのだ。彼さえ説得できれば大半の人間が、ジャンク屋ギルドとの関係修復に舵を切ってくれるだろう。しかし、今のシーゲルはその段階で足踏みしている状態だった。

 

「お父様。いい手がありますわ」

「何だ?」

「プラントの婚姻統制の法は確か改案されるのでしたね?」

「ああ。プラントの人口を増やすことを第一とする方針にする予定らしいが、具体的な案は検討中だが中には一夫多妻制にすべきだという下らんものまで検討する連中もいるが……」

「そうですか……。それならば戦後になりますが、手を打てなくともないですわ」

「どういうことだ?」

 

 ラクスは自分の考えていることを、父であるシーゲルに告げる。

 

「私もそろそろ将来の道を決めたかったのです。彼の側ならそれが勉強できると思いますので」

「確かにその通りだが、私が警戒されている以上お前が参加するのは難しいぞ?」

「ええ。だから、私は今から勉強を始めます。彼等には己の力を証明できれば無下にしないと思うのです」

 

 ラクスはシーゲルに自分の意志は固いのだと目で訴える。それを見たシーゲルはやめる様に説得するのは無理だと判断した。

 

「わかった。私の方からカナーバに話しておこう。それと一応あのことも調べて置く」

「ありがとうございます。お父様」

 

 ラクスは自分のお願いを聞いてくれたシーゲルに感謝するのであった。


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