「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
月が照らす深夜の道を一誠は近所迷惑よろしく、自転車で爆走していた。
理由は簡単。簡易版魔法陣のチラシ配りだ。
人間に召喚され、契約を結んで、相手の願いを叶える。
そしてその代償として、それ相応の対価をいただく。
そのためにはこの簡易版魔方陣が必須なのである。
ゆえにこうして欲深い人間の家に行き例のチラシをポストに投函する毎日が続く。
これが現在の一誠の仕事だ。
事は一誠が悪魔だと認識したあの日にさかのぼる。
要するに、堕天使に殺された一誠はリアスに悪魔として転生させられた代わりに、これからは彼女の下僕として生きていかなければならなくなったのだ。
これが悪魔のルールらしい。
「私のもとに来ればあなたの新たな生き方も華やかになるかもしれないのよ?」
悪魔になったことで軽く頭を抱える一誠にリアスはウインクしながら言ってきた。
しかし、それでも一誠にとっては納得できないものがあるらしい。
「イッセー、いいこと教えてあげるわ。悪魔には爵位って呼ばれる階級があるの。これは生まれや育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔だっているの。最初は皆、素人だったわ。つまり、やり方次第ではイッセーでも下僕を持てるということよ」
「!」
リアスの最後の一言が一誠の脳内に椅子にふんぞり返り、周りを囲む数人の美女をはべらかし高笑いを上げるイメージが駆け巡る。
「下僕ってことは何を命令してもいいんですよね…」
一誠は溢れ出る何かを抑え込むかのようにゆらりと立ち上がる。
「そうね、あなたの下僕ならいいんじゃないかしら?」
それを聞いた瞬間、一誠の中で雷が落ちた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
悪魔最高じゃないですか!何これ!?マジこれ!?チョーテンション上がってきたんですけど!」
夢にまで見たハーレムという名のプレシャスがいきなり目の前にぶらさがってきたことで一誠のボルテージは臨界点を突破しようとしていた。
そんな一誠の姿に雄介と祐斗は苦笑いを浮かべ、小猫は一言、
「単純」
しかし、そんな小言も今の一誠には通用しなかった。
「今なら秘蔵のエロ本も捨て…いやダメだ。アレはダメだ。俺の宝だ。それとこれとは別だ。うん。」
「ふふ、おもしろい子ね」
さっきとはうって変わって考え込む一誠の姿を見ながらリアスがおかしそうに笑う。
「部長がおっしゃっていた『おバカな弟ができたかも』ってこの子のことでしたのね」
さりげなくひどいことを言いながら朱乃もにこやかに笑う。
「というわけで、イッセー。私の下僕ということでいいわね?」
「はい、リアス先輩!」
「違うわ。私のことは“部長”と呼ぶこと」
「“部長”ですか、“お姉さま”じゃダメですか?」
その問いにリアスは真剣に悩んだ後、首を横に振った。
「それも素敵だけれど、私はこの学園を中心に活動しているからやはり“部長”の方がしっくりくるわ。一応、オカルト研究部だからその呼び名でみんな呼んでくれているしね」
「わかりました!では部長!俺に“悪魔”を教えてください!」
一誠のその言葉にリアスは心底うれしそうに小悪魔的な笑みを浮かべながら指で彼の顎を撫でる。
「いい返事ね。いいわ、私があなたを“
その瞬間、一誠の中で何かが弾けた。
「おっしゃあ!どうせ人間に戻れないなら突き進むのみ!」
意外にもすんなりと状況を受け入れたてしまう一誠。
さらに一誠のスケベ根性の勢いは止まらない。
「ハーレム王に、俺はなるっ!」
恥ずかしげもなく歪んだ野望を豪語する一誠であった。
「で、俺は何をすればいいんですか?何でもやりますよ!」
「フフ、いい心がけね。とりあえず、あなたには実績を積んでもらうことになるわ。心配しなくても人間と契約して対価を得ること、ただそれだけ。そしてそれが私たち悪魔の力になるの。その実績が認められればあなたも“爵位”を得て下僕を持つことが許されるの。ちなみに、私の家の爵位は“公爵”。爵位は生まれも育ちも関係するけれど、成り上がりで爵位を得る悪魔もいる。もちろん、イッセーのような人間から転生した悪魔にもチャンスは与えられるわ」
「じゃあ、おれも爵位を持てばハーレムも夢じゃない!?」
リアスの初級悪魔講座を聞きながら、一誠は鼻の下を伸ばしながら野望への期待を膨らませている。
すると、その端で雄介と小猫が何やらごそごそとしている。
「そういうことね。だからこれからはイッセーには働いてもらうわ。とりあえず、まずはこれを配ってもらおうかしら」
リアスの言葉とともに雄介と小猫が一誠の目の前に数個の段ボールを置いた。
ドサッ、と十分な重量感を醸し出すそれらの中には先ほどの簡易版魔方陣のチラシが敷き詰められていた。
それを目の前にした一誠の反応はと言うと、
「…はい」
どうやら、ハーレムまでの道のりは険しそうなのは間違いなさそうだった。
「まあ、頑張って!」
大量のチラシを目の前に途方に暮れている一誠に雄介はサムズアップで応援するのであった。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおお女の子に囲まれてええええええええええええっ!」
そして今日も一誠の叫びは真夜中の空に溶けていった。
☆
そして、数日後。
「戻りました!」
「あら、もう配り終えたのね。あんなにあったのに」
「ハーレムのためなら余裕です!」
「それじゃあ、次のステップにいってもらおうかしら」
「もしかして、やっとチラシ配りの下積みから脱出ですか!?」
「ええ。それじゃあ朱乃、お願いね」
「はい」
リアスから指示を受けた朱乃は部室の魔方陣の中央へ移動すると静かに詠唱を始めた。
さらには魔方陣が青白く淡く発行する。
「ど、どうしたんですか!?」
「今、イッセーの刻印を魔方陣に読み込ませているところよ」
「刻印、ですか?」
「私の眷属の証、といえばわかりやすいかしら。そして、魔力を使うには全てこの魔法陣が基本になるのよ」
さらには部室に書かれている魔方陣の模様は“グレモリー”の家紋を表しているらしい。
「イッセー、手のひらをこちらに出してちょうだい」
「え?はい…」
リアスに言われるまま一誠は左手を差し出した。
そしてリアスは一誠の手のひらを指先で軽くなぞる。
瞬間に一誠の手のひらが光りだした。
光が収まると一誠の手のひらにも青白く光る魔方陣が書き込まれていた。
「それは転移用の魔法陣を通って依頼者の元へ瞬間移動するためのものよ。朱乃、準備はいい?」
「はい、いつでもいけますわ」
リアスの確認に返事を返した朱乃派は魔法人の中央から身を引いた。
「じゃあイッセー、魔法陣の中央に立ちなさい」
「はい!」
促され、一誠が魔方陣の中央に立つと魔方陣の青白い光がさらにいっそう強くその輝きを増した。
その光に包まれた一誠は体の内側から力が溢れてくる感覚に見まわれる。
「イッセーはこの魔方陣を通って召喚されるわけだけど、到着後のマニュアルは頭に入ってる?」
「依頼者と契約を結び、願いをかなえて、対価をいただく!ですよね!?」
「結構よ。じゃあ、行ってきなさい!」
「失礼しまーす」
「お、やってるやってる」
リアスと一誠が最終確認をしている丁度その時、遅れてきた雄介、祐斗、小猫の3人が部室に顔を出した。
「いってきまっす!」
その瞬間一誠を包む光が最高潮に達した。
あまりの眩しさに思わず目をつむってしまうが次にあけたときは依頼者のもとにいるはずだ。
瞬間移動に契約取りの仕事、いずれにしても初めての体験に胸を躍らせる一誠。
そして、恐る恐る目を開けた一誠の目に最初に映ったのは、もうすでに見慣れた木造づくりの部屋、そして額に手を当て困り顔のリアスに苦笑いを浮かべる朱乃、キョトンとした表情を浮かべる雄介、祐斗、小猫の姿だった。
要するに今現在一誠がいるのはこれから向かうはずだった依頼者宅ではなくオカルト研究部の部室だったのだ。
「…あれ?」
「…イッセー」
何が起こっているのか未だに理解できていない一誠にリアスが声をかける。
「はい…」
「残念だけど、あなた、ジャンプできないみたいなの」
「え…?」
怪訝な表情を浮かべる一誠にリアスが説明する。
「魔法陣のジャンプは一定の魔力が必要なわけだけど…あなたの魔力が低レベルすぎて魔方陣が反応しないの」
「う、うそおおおおおおおおおおおおおおんっ!」
衝撃の事実を突き付けられ、絶句してしまう一誠。
「…無様」
追い打ちをかけるかのように小猫の無慈悲な言葉に打ちのめされてしまう。
「あらあら、困りましたわねえ。どうします?部長」
さすがの朱乃も困り顔でリアスに尋ねる。
そして、しばし考え込んだリアスがハッキリと言い渡す。
「前代未聞だけれど、依頼者がいる以上、行ってもらうしかないわね…足で」
「足!?」
予想外の答えに驚愕してしまう一誠。
「ええ、チラシ配りと同様に移動して以来社宅に赴くのよ。仕方ないわ、魔力がないんだもの。足りないものは他で補いなさい」
「まさかのチャリだと!?てかどこの世界に召喚されてチャリでお宅訪問する悪魔がいるんですか!?」
ビシッ!
小猫が無言で一誠を指差した。
その行為が一誠の心を抉る。
「ほら、行きなさい!契約を取るのが悪魔の仕事!契約者を待たせてはダメよ!」
「うわあああああああああああああんっ!」
涙を流しながら一誠は部室を後にした。
☆
「どぉちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!悪魔が何ぼのもんじゃああああああい!」
深夜、目元を涙でぬらしながら今日も一誠は全力で自転車を漕いでいた。
場所は学園から30分ほど離れたマンションだ。
ドアの前に立ち呼び鈴を鳴らす。
「こんちゃー、お待たせしました。グレモリー眷属の悪魔です」
少ししてインターフォンから反応が来る。
『どうぞ、開いてますにょ』
返ってきたのは野太い声。
それは明らかに男性のものだった。
密かに依頼者が女性であることを期待したのだがその願いも儚く砕け散った。
そして気になる点がもう一つ。
「…にょ?」
そんな疑問を抱きならもドアを開けると、目の前に、モンスターが現れた。
「いらっしゃいにょ」
それは圧倒的な巨体だった。
鍛え抜かれた筋骨隆々な男がゴスロリ衣装を着こんでいる。
よく見れば服の端々が今にも破れそうで悲鳴を上げており、ボタンもはちきれそうだ。
極め付きには頭部に猫耳をつけている。
何より双眸から凄まじい殺意が迸っている。
ラーメンにケーキを混ぜるよりもはるかに強烈&異常な存在感に一誠は生唾を飲み込んだ。頬に一筋の汗が流れ、手は緊張で小刻みに震えている。
目の前のモンスターは“男”ではなく“漢”だと理解するのに時間はかからなかった。
今すぐ逃げなければと一誠の本能が警報を鳴らす。
しかし残念ながら一誠に逃げるという選択肢は存在しなかった。
「…ご、ご用件はな、なんでしょうか?」
涙目になりながらも勇気を振り絞り恐る恐る訪ねる。
「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」
「異世界に行ってください」
一誠は即答した。
いきなりの規格外の願いに頭を抱えてしまう。
「それはもう試したにょ」
「試したの!?」
「でも無理だったにょ。ミルたんに魔法の力をくれる人はいなかったにょ」
「だろうね!てか、ある意味今の状況が魔法的なんですけど!?」
「もう、こうなったら宿敵の悪魔さんにお願いするしかないにょ」
「宿敵なの!?」
「悪魔さん!」
「は、はいっ!?」
漢の発する声量に反射的に返事を返す一誠。
「ミルたんに…ミルたんにファンタジーなパワーをくださいにょおおおおおおおおおお!」
「いやもうすでにファンタジー通り越してホラーなんですけど!泣いてもいいよね、俺!」
こうして、一誠の叫びがこれから味わうこととなる
☆
次の日の早朝、すずめのさえずりが聞こえる公園のベンチに腰掛ける一誠の姿があった。
結局、あの後一誠は願いをかなえられず契約は破断。
その上、漢…いや、もうミルたんでいいや。
ミルたんと朝までアニメ鑑賞に付き合わされてしまったのだ。
ちなみに、ミルたんと見たアニメに思わず興奮してしまったことはこの際おいておこう。
「はあ…」
一誠は手にしている一枚のアンケート用紙を見ながらため息をついた。
そして記述欄に『楽しかったにょ。またあくまさんとミルキースパイラルを見たいにょ』と丸っこいかわいらしい字で書かれていた。
しかし、逆にそれが一誠の気力を萎えさせる。
だが、そんなことは一誠にとってどうでもいいことだった。
問題なのは、このまま帰得ればどうなるかだ。
一誠の頭の中に怒ったリアスの顔が容易に浮かぶ。
そう考えると、とても見せられる気分にならない。
「はあ…」
早朝にもかかわらず本日何度目かのため息がこぼれる。
そしてこれからどうしようかと途方に暮れていた時だった。
「はわう!」
突然、一誠の目の前にシスターが転がってきた。
手を大きく広げ、顔面から地面に突っ伏している。
今の一誠ぐらいの情けない姿だ。
「あうぅ。なんで転んでしまうのでしょうか?」
「…あの、大丈夫ですか?」
一誠はシスターへ近寄ると起き上れるように手を差し出した。
「すみません。ありがとうございますぅ」
手を引いて起き上がらせると同時にシスターのヴェールがずり落ちた。
すると、ヴェールの中で束ねていたであろう金色の長髪が露になる。ストレートの金色が朝日に照らされキラキラと光る。
「大丈夫?はい、これ」
一誠は空いたもう片方の手でヴェールを手に取り、シスターに差し出した。
「ありがとうございます!」
ヴェールを受け取ったシスターは朝日にも負けないぐらいの満面の笑みでお礼を述べた。
「…」
一誠はその笑顔に心を奪われてしまい、しばしの間シスターに見入ってしまった。
「あ、あの…どうかしたんですか?」
シスターが訝しげな表情で一誠の顔を覗き込む。
我に返った一誠は目の前に現れた理想の女の子(金髪美少女版)に見惚れてしまっていたのだ。
「あ、ご、ごめん!えっと…りょ、旅行?」
動揺しながらの一誠の質問にシスターは首を振る。
「いえ、違うんです。実は今日からこの町の教会に赴任することになりまして…でも日に迷ってしまった上に言葉も通じず困っていたんです」
どうやらこのシスターは日本語がしゃべれないらしい。
しかし悪魔には音声言語限定で言葉の壁を越えられる能力が追加される。
つまり、今の一誠はシスターの言葉を簡単に受け入れることができるのだ。
「教会なら知っているかも。よかったら案内しようか?」
「本当ですか!ありがとうございます!これも主のお導きです!」
涙を浮かべながらシスターが一誠に微笑む。
かわいらしい笑顔を浮かべる彼女だが、その胸元でロザリオが光る。
それを見た瞬間、一誠に最大級の拒否反応が襲う。
そう、悪魔にとってロザリオの他に聖書や聖水といった神の祝福を得た聖なる力を放つ類の代物に極端に弱い。
本来両者は相いれない関係なのだ。
しかし、それでも困っている女の子を放っておけないのが一誠の性分だ。
こうして、一誠は美少女シスターを引き連れて教会に足を向けた。
2人が教会へ向かう途中、公園の前を横切った時だった。
「うわぁあぁん」
どこからか、子供の泣き声が聞こえてきた。
「大丈夫、よしくん?」
どうやら、よしくんと呼ばれた男の子が転んでひざを擦りむいたようだ。
一誠が近くに母親らしき人物もついてるから大丈夫だろうと思っていた矢先、一誠の後ろについていたシスターが歩く方向を変えた。
一誠が止めるのも聞かず、シスターはまっすぐ子供のそばに近寄っていく。
「大丈夫?男の子がこれぐらいのケガで泣いてはダメですよ」
言葉は通じていないのだろうが、シスターの表情は優しさで満ち溢れていた。
シスターがおもむろに自身の手のひらを怪我したひざに当てる。
次の瞬間、シスターの手のひらから淡い緑色の光が発せられ、子供のひざを照らした。
その光景に驚く一誠だが、その力の正体に心当たりがあった。
“神器”
こうして淡い緑光を見ていると一誠の左手が疼く。
自分の神器が彼女の神器に反応しているのか?
そんなことを考えていると、いつの間にか子供の傷は塞がり、怪我の痕はきれいさっぱり消えていた。
子供も、子供のお母さんもきょとんとしている。
信じがたい現象が目の前で起これば誰でもそうなるはずだ。
「はい、これでもう大丈夫ですよ」
シスターは子供の頭をひとなですると、一誠のほうに顔を向ける。
「すみません、つい」
彼女は小さく舌を出して笑う。
きょとんとしていた母親は頭を垂れると、子供を連れてそそくさとその場和去ってしまった。
その去り際にシスターに向けた母親の汚物でも見るかのような視線を一誠は見逃さなかった。
シスターもその視線に気づいたのか、沈んだ表情になってしまう。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
子供がシスターに感謝の言葉を述べる。
「ありがとう、お姉ちゃん、だってさ」
一誠が通訳するとシスターはうれしそうにほほ笑んだ。
「その力…」
「はい、治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」
一度微笑む彼女だったがまた表情を曇らせてしまう。
それだけで彼女が苦労人であることが見て取れる。
そんな彼女の姿が見ていられなくなり、一誠は視線を自分の左手に移した。
そして黙って左手を握りしめ、気持ちを切り替えるようにシスターに声をかけた。
「さ、行こうか!こっちだよ」
「あ、はいっ!お願いします!」
こうして一誠は教会への案内を再開させるのだった。
☆
「あ、ここです!よかったぁ」
地図に書かれたメモと照らし合わせながらシスターが安堵の息をつく。
その隣で一誠は全身を伝う嫌な汗と悪寒で体が震えていた。
それは悪魔としての純粋な拒否反応だった。
以前にリアスに神社や教会に近づくなと特に説明されたのを思い出す。
長居はできないことを悟り、厄介ごとに巻き込まれる前に退散することにした。
「じゃあ、俺はこれで…」
「待ってください!ここまで連れてきてくださったお礼をさせてください!」
別れを告げてその場を去ろうとした一誠をシスターが呼び止めた。
「いや、俺急いでいるもんで…」
「でも、それでは…」
困った表情を浮かべるシスター。
しかし、一誠は彼女の言葉を受け入れることができない。
「俺は兵藤一誠。みんなイッセーって呼んでるからイッセーでいいよ。で,えっと、君は?」
せめてもの妥協案として名前を名乗ると、シスターは笑顔で応えてくれた。
「私は“アーシア・アルジェント”と言います!アーシアと呼んでください!」
「じゃあ、シスターアーシア。また会えたらいいね」
「はい!必ずまたお会いしましょう、イッセーさん!」
手を振って別れを告げる一誠にアーシアも姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。
そしてこれが、兵藤一誠とアーシア・アルジェントの数奇な運命、その出会いだった。
本日発売の小説・仮面ライダーアギト、ファイズを購入しました。
ほかの作品の発売も待ち遠しいのですが、…それよりクウガはいつ出るんだろう?