…どうしてこうなった?
現在、兵藤一誠は薄れゆく意識の中でただそれだけを考えていた。
今日は恋人である天野夕麻と念願の初デートを満喫していたはずだ。
洋服の店に入ったり、部屋に飾る小物を見たりして、そしてお昼は高校生らしくファミレスだったけど美味しそうにチョコレートパフェを食べる夕麻の笑顔に癒された。
そして夕暮れの公園で別れ際のキスに胸を躍らせていたその矢先、死んでくれないかなと言われ冷たい目つきの夕麻の光の槍に腹を貫かれたのだ。
そして今に至る。
倒れ伏す地面に血の池が広がっていく。
ツカツカと一誠に近づく足音。
そして耳に届くかすかな声は夕麻のものだった。
「ゴメンね。あなたは私たちにとって危険因子だったから、早めに始末させてもらったわ。恨むなら、その身に“神器”を宿らせた神を恨んでちょうだいね」
悪びれた様子もなくその場を去っていく夕麻に残念ながら今の一誠に立ち上がるどころか問いただすこともできなかった。
そうこうしている間にも血だまりは面積を広げていくと同時に意識が遠のいていくのが分かった。
マジかよ…高校2年生で死ぬのか?
まだ人生の半分にすら達してねえよ!
わけのわからないまま彼女に刺されてこの世とオサラバなんて笑えねえ!
今にも消えそうな意識の中、一誠の頭に悪友の松田、元浜そしてスケベでどうしようもないこんな自分を育ててくれた両親の顔が浮かぶ。
…つーか、自室の各所に隠したエッチな本が死後に見つかるのはシャレにならねぇ…
…てか死ぬ前になんでこんなロクでもないこと考えてるんだ、俺…
それが兵藤一誠という人物なのだろう。
最後の力を振り絞り、どうにか手だけは動かすことができた。
腹の辺りを手でさすり、顔の近くまで動かす。
紅い。
一誠の手のひらは彼の鮮血で染まっていた。
今際のきわ、一誠は一人の女性を思い浮かべた。
紅い髪をしたあの美人。
学校で見かけるたびに紅い髪が一誠の目には鮮烈に映っていた。
…どうせ死ぬなら、あの美少女の腕の中で死にたかったな…
そんなことを思っていると、いよいよ視界がボヤけてきた。
一誠が意識を手放しかけた、その時だった。
「あなたね、私を呼んだのは」
突然、一誠の視界に誰かが映り込み声をかけてきた。
目がボヤけてしまっているせいか、その声の主が誰なのか識別は不可能だった。
「死にそうね。傷は…へぇ、おもしろいことになっているじゃないの。そう、あなたがねぇ…。本当、おもしろいわ。いいわ、どうせ死ぬのなら私が拾ってあげる。あなたの命、私のために生きなさい」
鮮やかな紅い髪をなびかせ、リアス・グレモリーは興味ありげな含み笑いを浮かべていた。
☆
『オキナサイ!オキナサイ!オ、オキナイト、キ、キススルワヨ!』
「…うーん」
ツンデレボイスの目覚まし時計に起こされた一誠は気が付くと床でうなされていた。
…最悪の目覚めだ
ここ最近、恋人である夕麻に殺されるという最悪な夢を見る。
夕麻とのデートの日を境に一誠は変わった。
まず朝に弱くなった。特に朝日が苦手だ。
日差しが肌に突き刺さる。鬱陶しいとさえ思ってしまうほどだ。
しかし逆に夜になると力が湧き上がる。高揚感で心が打ち震える。
夜の感覚。それは以前と違うものだと確信できる。
そしてもうひとつ、一誠以外の人物全員が夕麻のことを忘れていたのだ。
それを裏付けるかのように彼女の電話番号やメールアドレスが一誠の携帯電話のメモリから消えていた。
それを含め、一誠の記憶以外から彼女に関する痕跡が一切見つからなかったのだ。
そんな変化に戸惑いつつ現在、一誠は、
「おっぱい揉みてえなあ!」
悪友2人とエロDVD鑑賞会にしけ込んでいた。
テレビから女性の卑猥な声が聞こえてくる。
しかし枚数を重ねていくうちに彼らの興奮は冷めていき、ついにはなぜ俺たちには彼女がいないのだろうか?と真剣に考えだし、逆に泣けてきてしまった。
松田は3作品前あたりからから涙が止まっていない。
元浜に至ってはクールに装っているが、メガネの奥で涙を溢れさせながら、
「俺さ、この前女の子に体育館裏に呼ばれたんだ。…生まれて初めてカツアゲされたよ…」
と呟かれ、思わず涙がこぼれてしまった。
3人のすすり声とテレビから女性の喘ぎ声が室内に響き渡った。
やがて最後の作品を見終え、解散することになった。
「じゃあな」
「ああ、いい夢見ろよ」
帰り道の途中で元浜と別れて数分、どことなく元気のなかった彼に後で激励のメールでも送るかなどと考えていると一誠の全身に悪寒が走った。
目の前の道の先からスーツを着た男が一誠を睨んでいる。
視線を合わせるだけで本能が警報を鳴らす。
「これは数奇なものだ。こんな都市部でもない地方の市外で貴様のような存在に会うのだものな」
そう言いながら静かに歩み寄ってくる。
何を言われているのか理解できず、一誠は思わず後ずさる。
「逃げ腰か?主は誰だ?こんな都市部から離れた場所を縄張りにしている輩だ。階級の低いものか、物好きのどちらかだろう」
わけの分からないことを言いながらスーツの男は一誠に殺気を飛ばしてくる。
身の危険を感じた一誠は振り向きざまに来た道を全速力で走った。
夜の闇を掻き分け、見知らぬ街道を駆け抜けただひたすら逃げるのみ。
15分ぐらい走ったところで開けた場所に出た。
駆ける足を歩みに変える。
弾む息をと問えながら周りを見渡す。
「ここは…」
今一誠がいるのは夕麻とのデートで最後に訪れたあの公園だった。
戸惑いつつ噴水の近くまで歩みを進めると背筋に冷たいものが走った。
ゆっくりと振り返ると眼前に黒い羽根が舞った。
一瞬カラスの羽かと思った。
「逃がすと思うか?下級の存在はこれだから困る」
一誠の目の前に現れたのは黒い翼をはやした先ほどのスーツの男だった。
「お前の属している主の名を言え。こんなところでお前たちに邪魔されると迷惑なんでな。こちらとしてもそれなりの…。まさか、おまえ“はぐれ”か?主なしならばその困惑している様も説明がつく」
スーツの男が何かつぶやいたかと思ったら今度は勝手にひとりで納得した。
ファンタジーな展開と緊張が支配する中、一誠はふと夢の出来事を思い浮かべていた。
あのデートの日、最後の最後一誠はここで夕麻に殺されたのだ。
よく考えると目の前の漆黒の翼にも見覚えがある。
夕麻が自分を殺す直前に同じものを生やしていた。
そうだとすると、一誠は自然と次の展開を容易に想像できた。
「ふむ。主の気配も仲間の気配もなし。消える素振りも見せない。魔法陣も展開しない。やはり“はぐれ”か。ならば、殺しても問題あるまい」
明らかに物騒なことをつぶやく男が手をかざす。
その先にいるのは勿論、一誠だ。
空気を揺らす耳鳴りとともに男の手に光が集まる。
やがて収束する光は槍の形を形成した。
殺される!
一誠がそう思った時にはすでに槍が腹を貫いていた。
ゴボッ
一誠の口から大量の血が吐き出されたと同時に激痛が走った。
痛い。
それだけが一誠の中を埋め尽くす。
一誠はその場に膝をついた。
腹の中から焼けるような痛みを感じる。
やがてその痛みは全身に回り、耐え難いもものになっていた。
手で槍を抜こうと触れてみたら、今度は手に痛みが走る。
見ると、触れていた部分に火傷が生じていた。
「ぐ…あぁぁぁ…」
一誠はその場で呻くことしかできない。
あまりの痛さに涙が止まらない。
そこへコツコツと男の靴音が近づいてくる。
見上げると、男は新たに光の槍を作り出していた。
「抜けないだろう?光はお前たちにとって猛毒だからな。その身に受けると大きなダメージとなる。しかし悪かったな、痛い思いをさせてしまった。光を弱めで形成した槍でも死ぬと思ったのだが、意外と頑丈だ。では、もう一撃放とう。今度は少々光の力を込めるぞ。なに、怖がることはない。次は確実に、殺してあげよう」
これ以上はマズイと察する一誠だが体が言うことを聞かない。
それと同時にあの夢の続きも思い出していた時だった。
ひゅっ
風切り音が聞こえたかと思うと、一誠の眼前で男の腕が爆ぜた。
「その子に触れないでちょうだい」
一誠の隣を女性が通り過ぎていく。
紅。
鮮やかな紅い髪。
後姿からでも、すぐに理解できた。
夢では顔は分からなかったがこの人だと確信できた。
「その真紅の髪…グレモリー家の者か…」
「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、堕ちた天使さん」
スーツの男…堕天使が憎々しげにリアスを睨みつける。
しかしそんなことはどこ吹く風。
リアスは淡々と言葉を紡ぐ。
「この子にちょっかいを出すなら容赦はしないわ」
「これはこれは…その者はそちらの眷属か。この町もそちらの縄張りというわけだな…まあいい、今日のことは詫びよう。しかし下僕は放し飼いにしないことだ。私のような者が散歩がてらに狩ってしまうかもしれんぞ?」
「ご忠告痛み入るわこの町は私の管轄なの。私の邪魔をしたらその時は容赦なくやらせてもらうわ」
「そのセリフ、そっくりそちらに返そう、グレモリー家の次期当主よ。わが名は“ドーナシーク”。再び見えないことを願う」
ドーナシークは黒い翼を羽ばたかせ夜の空へと消えていった。
危機が去り一誠が少し安堵すると、途端に目がかすみ意識が消えかける。
「あら、大丈夫?確かにこれはひどくやられたわね。仕方ないわ。あなたの自宅は…」
ヤバイ、と思った時にはすでに一誠は意識を手放した。
☆
…どうしてこうなった?
一誠が今朝、夕麻ではなく謎の男に追いかけられるというバイオレンスな夢から覚めるとまず気付いたことは自分が裸だったことだ。
一切の衣類を身に着けていない、全てをさらけ出したフリーダム状態だ。
しかし、全てをさらけ出していたのは一誠だけではなかった。
視線を隣に移すとそこには生まれたままの姿で寝息を立てるリアスがいた。
………
……
…
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
エマージェーシー!エマージェーシー!雪のような白い肌が眩しいです!細い腰にスラリと伸びた美脚がすばらしい!極め付きには豊かなおっぱいがたまりません!まさに絶景絶景大絶景!違う違う違う!落ち着け俺!俺は何をした!?てか何が起こった!?待て何かしたのか!?つか何ができたんだ!?ダメだ何も覚えちゃいねえ!何てことだ!そこは覚えていこうよ!だから違えよ!何でこうなった!?いつの間にベッドイン!?どう考えてもこれはバックリいっちゃてるじゃねえか!思わず鼻血ブーじゃねえか!俺はK点越えたのか!?このタイミングでまさかの童貞卒業か!?無理だ!さすがの俺もこれだけは処理できねえ!要するにあれだろ!?俺と先輩はスッポンポンで○○○○が××××で△△△△を□□□□してああああああああああああああああああああああああああああああ!!
いきなりのアンビリーバボーな展開に一誠は混乱する。
そうこうしている内にリアスが目を覚まし、丁度最近の夜遊びに限界が来たのか怒り心頭の母親とまさかのご対面!
母が固まり、母が退室し、母が叫んだ。
「セッ○スゥゥゥゥゥ!イッセーがあああああ!国際的いいいいい!インターナショナルゥゥゥゥゥ!」
もう顔を両手で覆うしかなかった。
ちなみにリアスの処女が健在なのはまた別の話であった。
☆
「ドラゴン波!」
現在、一誠はオカルト研究部の部室でリアス、朱乃、小猫、祐斗の目の前でドラグ・ソボールの空孫悟の必殺技であるドラゴン波のものまねをしていた。
しかも全力で。
もう一度言おう。
どうしてこうなった?
つーかこれで何回目よ?
その日の放課後、一誠は校舎の裏手を祐斗とともに歩いていた。
リアスの使いで来たと言われ察した一誠は彼の後に続いている。
「そ、そんな木場君と兵藤が一緒に歩くなんて!」
「汚れてしまうわ、木場君!」
「木場君×兵藤なんてカップリング許せない!」
「ううん、もしかしたら兵藤×木場君かも!」
その道中に祐斗を慕う女子たちの絶叫はこの際無視した。
阿鼻叫喚の渦の中を黙ってやり過ごすと目的地である“オカルト研究部”の教室の前に到着した。
「部長、連れてきました。」
引き戸の前で祐斗が中に確認を取ると、
「ええ、入ってちょうだい」
奥から聞こえてくるリアスの声に促され室内に入ると一誠はまず中の様子に驚いた。
不気味な雰囲気に戸惑いながらも室内を見渡すとソファーで羊羹を食べる小猫を見つけた。
「こちら、兵藤一誠君」
「あ、どうも」
「どうも…」
お互い軽く頭を下げると小猫はまた黙々と羊羹を食べ始めた。
そんな反応に軽く戸惑っていると、
シャー
部屋の奥から水の流れる音が聞こえる。
見れば、室内の奥にはシャワーカーテン。
そしてカーテンに映る女性の体の陰影。
いや、それ以前にこの部屋シャワー付いてんの!?と驚いていると、
「部長、これを」
カーテンの奥に別の女性に声が聞こえた。
「ありがとう、朱乃」
あの中に裸のリアス先輩が?カーテンに透ける姿態がすごくエロい!なんて素敵な部室なんだ!!
などと勝手にヒートアップしていると、
「いやらしい顔…」
鼻息を荒くする一誠はボソリと呟く小猫の声に貫かれた。
そうこうしていると、カーテンの奥から制服を着こんだリアスが出てくる。
リアスは一誠を見かけるなり微笑むと、
「ごめんなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊りしてシャワーを浴びてなかったから、今汗を流していたの」
そんなことを言われてもやはり部室にシャワーがあるのが不思議でたまらないんですけど!
内心でそんなことを思いつつ視線をリアスの後方にいる女性に移したとき、一誠は驚きで絶句した。
「あらあら、あなたが兵藤一誠君ね。はじめまして。私、姫島朱乃と申しますどうぞお見知りおきを」
リアスと併せて“二大お姉さま”と称される朱乃にニコニコ顔&うっとりしてしまうような声音であいさつされる。
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
溢れ出るリビドーを抑えつつ、一誠も緊張しながら再びあいさつを交わす。
「さて、まだ全員じゃないけどその内来るでしょ。さっそくだけど、兵藤一誠君。いえ、イッセー。私たちオカルト研究部はあなたを歓迎するわ。もちろん、悪魔としてね」
素敵な笑顔とサムズアップのおまけ付きで勧誘されてしまうのだった。
リアスが言うにはこの世界には悪魔、天使、堕天使と呼ばれる種族が存在がいるらしい。
悪魔と堕天使は冥界、つまり“地獄”の覇権を巡って太古の昔から争っている、言わば宿敵同士の関係らしい。
そしてそこに悪魔と堕天使の両者を葬ろうと“天界”から神の命を受けた天使を含めた三すくみの戦いを大昔から繰り返している。
さて、ここからが本題である。
まず一誠を殺した夕麻の正体は堕天使だった。
彼女は一誠の身に宿る“神器”を危惧して犯行に及んだらしい。
“神器”とは、特定の人間に宿る規格外の力。
世界的に活躍している、あるいは歴史に名を遺した人物の多くが神器の所有者だと言われている。
大半は人間社会内の規模でしか機能しないものばかりだが中には悪魔や堕天使の存在を脅かすものもあるらしい。
一誠の場合は後者に当たり、同時にこれが原因で堕天使に殺されたのでる。
そして役目を終えた夕麻は一誠の周りから自分に関わる記憶と記録を消したのだ。
しかし、殺されたことが事実ならば何故自分は生きているのか?という疑問を浮かべた一誠にリアスが見せたのは1枚のチラシだった。
それには『あなたの願いをかなえます!』と謳い文句と部室の床に書かれているのと同様の魔方陣が描かれていた。
これは“簡易版魔法陣”というもので人間が悪魔を召喚するための代物らしい。
偶然、一誠もあの日夕麻との待ち合わせの時に同じものをもらっていたのだ。
これを用いて一誠は死ぬ間際にリアスを呼び、そして強く願ったのだ。
…どうせ死ぬなら、あの美少女の腕の中で死にたかったな…と。
召喚されたリアスは一誠を見てすぐに神器所有者だと気付いたらしい。
そして悪魔として、リアス・グレモリーの眷属として一誠の命を救うことを選んだのだ。
以上、リアスを含むオカルト研究部談でした。
まさにファンタジー全開な内容だった。
もう何が何だか(笑)
そして、現在に至るわけだ。
何故一誠がいい年こいてドラゴン波のポーズを取っているのかというと、なんでも最初に神器を発動させるためには自分の中で一番強い人物の一番強く見える姿を真似ることがコツらしい。
一誠にとってそれがドラグ・ソボールの空孫悟のドラゴン波だったわけだ。
羞恥を殺し、やけくそ気味に声を張り上げドラゴン波のポーズを取った直後に変化は起きた。
突然一誠の左腕が光りだす。
やがて光は序徐々に形を成していき左腕を覆っていく。
そして光が止んだとき、一誠の左腕は赤い籠手が装着されていた。
手の甲には宝石のようなものがはめ込まれており、周りもかなり凝った装飾が施され、見た感じは立派なコスプレアイテムだった。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
当然の神器の出現に一誠は驚きを隠せなかった。
「それがあなたの神器。一度ちゃんと発現できればあとはあなたの意志でどこにいても発動できるようになるわ。そしてあなたはその神器を危険視されて堕天使、天野夕麻に殺されたの。そして私があなたを生き返らせたの。悪魔としてね」
その瞬間、一誠を除くメンバーの背中に悪魔の翼が生えた。
もちろん一誠も例外ではない。
すぐに一誠の背中からも同じ様に悪魔の翼が生えたのだった。
「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうわね。祐斗」
「2年生、木場祐斗。兵藤君と同じ2年生ってことはわかっているよね。僕も悪魔です。よろしく」
リアスに名前を呼ばれた裕斗が一誠にスマイルを向ける。
「1年生、塔城小猫です。悪魔です。よろしくお願いします」
小猫が小さく頭を下げた。
「3年生、姫島朱乃ですわ。研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」
礼儀正しく朱乃は深く頭を下げる。
「そして私が彼らの主、リアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」
最後にリアスが紅い髪を揺らし堂々と言う。
そして一誠がようやく自分はとんでもないことになってしまったようだと自覚した時だった。
「すいませーん。遅くなりました」
部室の窓が開くとともにシリアスな雰囲気をぶち壊すような気の抜けた声が聞こえた。
見ると、やはりそこには窓から顔を出した雄介がいた。
「「「「「…」」」」」
当然、その場にいた全員の視線が雄介に注がれる。
逆に雄介は部室にいるメンバー全員が悪魔の翼を広げているという光景を見て一言。
「あれ?デジャブ?」
そんな雄介にリアスは軽く頭を抱えていた。
「雄介…あなたまた窓から入ってきて。前にも注意したはずでしょ?」
「そうですけど、やっぱりここの壁、登ってちょ!って言ってるみたいで…不思議ですねえ」
「不思議なのはあなたの行動よ。と言うより、どうして名古屋弁?」
「ハハハ、なんとなくです」
雄介は愛想笑いでリアスの皮肉を軽くスルーすると状況をいまいち呑み込めていない様子の一誠に近づき、
「君が部長が言ってた新しく眷属になった兵藤一誠君だね。俺は五代雄介。よろしく!」
いつものように自作の名刺を差し出した。
「あ、ああ、よろしく…」
おぼろげな返事とともにそれを受け取った一誠は念のために尋ねてみた。
「リアス先輩、もしかしてこいつもここの部員なんですか?」
「そういうことになるわね。そして我がオカルト研究部唯一の人間よ」
「マジですか!?」
思わず一誠は他のメンバーに確認を求める。
「マジよ」
「マジだよ」
「マジですね」
「マジですわ」
あっさりと肯定された。
「ちなみに、先に言っておくけど今のイッセーじゃどうあがいても雄介に勝つことは不可能よ」
「マジですか!?」
「マジよ」
「マジだよ」
「マジですね」
「マジですわ」
再び笑顔で即答され、一誠は顔をひきつらせながら一言、
「あれ?デジャブ?」
ギャグパート2&やっとD×Dの原作行けた…。
さわりだけど…。