仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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EPISODE07 日常

夕暮れの校舎裏で2人の男女が向き合っていた。

お互いの顔が赤くなっているのは夕日のせいだけではない。

辺りは夕日に照らされている中、2人を包む雰囲気はフワフワしていた。

フワフワした感じにフワフワした背景、そしてフワフワした緊張感が2人の判断力を鈍らせていた。

しかし耐え切れなくなったのか、最初に少女がフワフワした空気を破った。

「あ、あの…私と付き合っていただけませんか?」

少女の弱弱しい言葉が少年の心を圧した。

 

「私と、付き合ってください!」

 

少年の頭にガンと殴られたような衝撃が走った。

勇気を振り絞った告白がただでさえ赤かった少女の顔をさらに赤く染めた。

そして少年も負けないぐらい顔が真っ赤になる。

少年に春が訪れた瞬間だった。

 

                      ☆

 

雄介がバチスを倒して数日の時が流れた。

その間に雄介が倒したはぐれ悪魔の数は2桁に達していた。

そしてとある平日の早朝のポレポレの店内に何か作業をする雄介の姿があった。

雄介の陣取る机には縫い針や糸といった裁縫道具が並べられていた。

どうやら雄介は現在、手にしているエプロンに刺繍をしているようだ。

しばらくの間黙々とエプロンと格闘していたがやがて、

 

「出来た!」

 

作業が終わったのか嬉しそうにエプロンを広げ完成した“それ”を満足そうに見つめていた。

丁度その時、ポレポレのドアベルが揺れた。

 

「おはよう、雄介」

 

「おじゃましますわ」

 

「あれ、リアスさんに朱乃さん?どうしたんですか急に?」

 

開店前の早朝にリアスと朱乃が現れたことに驚かずにはいられなかった。

 

「僕たちが呼んだんだよ」

 

「おはようございます、五代先輩」

 

すると2人の後に続いて祐斗と小猫が顔を出した。

 

「おはよう、祐斗君、小猫ちゃん。誘ったって?」

 

「実は前から部長と朱乃さんがここの料理に興味があったらしくてね、思い切って誘ってみたんだ。」

 

「もしかして、迷惑でしたか?」

 

「ううん、そんなことないよ!すぐに準備するから。ご注文は?」

 

机の裁縫道具を片付けながら雄介は彼女たちの注文を聞いた。

 

「それじゃあ、雄介特性カレーで」

 

「私も同じもので」

 

「私も2人と同じものを頼めるかしら?」

 

「あらあら、それでは私もそれでお願いしますわ」

 

「わっかりました、少々お待ちください!」

 

そういって、雄介は例のエプロンを身に着けた。

最初に“それ”に気付いたのは小猫だった。

 

「五代先輩、そのエプロン…」

 

「ん?ああ、これ?実はさっき出来たばっかなんだよ!」

 

と、雄介は見せびらかすように“それ”の周辺を引っ張った。

 

「それは確か、クウガのマークだよね」

 

祐斗の言うとおり、エプロンの胸の位置に刺繍を施された“それ”はクウガのマーク…もとい、“戦士クウガ”を意味する古代文字だった。

 

「そう言えば、店の前に置いてあったバイクにも同じものが入ってなかったかしら?」

 

リアスも思い出したように呟いた。

 

「はい、このマークが気に入って入れちゃいました。どうっすか、これ?」

 

「いいんじゃないかしら。悪くないわよ」

 

「私もいいセンスだと思います」

 

「僕もかっこいいと思うよ」

 

「私も同意見です」

 

「ありがとうございます!」

 

リアス、朱乃、祐斗、小猫から高評価をいただきご満悦な雄介は笑顔でサムズアップしたあと調理場に向って行った。

 

                      ☆

 

「まあ、こんなにおいしいカレーは初めて食べましたわ」

 

雄介特性カレーを口に運んだ朱乃が思わず称賛の声を上げた。

 

「喜んでもらえてよかったです」

 

お礼を言いながら、雄介は祐斗にコーヒーを配る。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう、雄介君。やっぱり朝に食べるカレーもたまにはいいね」

 

「そう言ってもらえると作った甲斐があるよ。はい、小猫ちゃん」

 

「ありがとうございます」

 

カレーを食べ終えた小猫が雄介に手渡されたケーキに手を付け始めた。

みんながおいしそうに食べてくれる姿を見ていると雄介の顔に笑みがこぼれた。

しかしそんな中でただ1人、リアスが何か思い悩んだ表情で呟いた。

 

「やはり妙ね」

 

「妙って…もしかして口に合いませんでした?」

 

「え?あぁ、ごめんなさい。そう言うのじゃなくて、ただ、ちょっと考え事をしてたの」

 

「考え事と言うと?」

 

隣に座る朱乃が訪ねた。

 

「主を裏切りはぐれに堕ちた悪魔が人間を襲うと言うのは知ってるでしょ?」

 

「はい」

 

雄介の返事に同意するように朱乃、小猫、祐斗の3人もうなずく。

 

「まあ実際、“襲う”と言うより“食らう”と言ったほうが正しいわね。でも、ここ最近現れるほとんどのはぐれたちが行ってるのは“食らう”ではなく単純な“殺戮”なのよ。しかもそれを白昼堂々と行っている」

 

「言われてみれば確かに妙ですね」

 

今度は雄介を除く3人が悩むような顔をする。

雄介にはいまいちピンとこない部分があるのだが、悪魔である彼女たちにはどこか引っかかるようだ。

 

「気になって調べてみたけど他の地域ではそのような動きは確認されてないらしいわ」

 

「ということは奴らはこの町限定で殺人を繰り返してるってことですか?」

 

「正確にはこの町を中心とした広範囲の地域で行ってるみたいね。すでに被害者は700人を超えてるわ」

 

「そんなにですか!?」

 

それなりの人数が犠牲になったことは覚悟していたが、やはり具体的な数字で表されると驚きを隠せなかった。

 

「いくら倒してもまたすぐに新しいはぐれ悪魔が犯行を行うからきりがないわ」

 

「まさにいたちごっこ、って感じですね」

 

常に爽やかな笑みを浮かべる祐斗も苦い顔をしてしまう。

 

「あの、ひとつ気になったんですけど、はぐれ悪魔が群れるってことはあるんですか?」

 

「どうしたの急に?」

 

「いや、犯行の手口はバラバラですけど結果的に“殺戮”って部分が共通してるしてるじゃなですか。だからもしかしてはぐれ悪魔たちは何か“目的”があってこんなことをしてるんじゃないかって思うんです」

 

「なるほど。普段ならありえないの一言で即答なんだけど…。そうね、確かにその可能性は否定できないわね」

 

雄介の推測に納得するようにリアスは頷いた。

 

「とりあえず、今はその可能性も含めて様子を見るしかないわね。雄介の言う通りにしろ、無いにしろ私の縄張で勝手なことはさせないわ。…あら、そろそろ時間ね」

 

リアスの言葉で時間を確認すると、確かにそろそろ登校の準備をしないとまずい時間だった。

 

「それじゃ、私と朱乃は用事があるから先に失礼させてもらうわ。行くわよ、朱乃」

 

「はい」

 

リアスに促され、リアスと朱乃は席を立ちあがる。

 

「ごちそうさま。とてもおいしかったわ」

 

「それではまた、部室でお会いしましょう。失礼します」

 

代金を支払い、リアスと朱乃はポレポレを後にした。

 

「ありがとうございました…それじゃ、俺も準備しようかな」

 

そう言って、雄介は一度自室に引っ込んでいった。

 

                      ☆

 

「ありがとね、わざわざ待っててくれて」

 

「別に構わないよ。特に急ぎの用事はなかったからね」

 

「はい、問題ありません」

 

現在雄介は駒王学園までの通学路を祐斗と小猫の2人と歩いていた。

実は駒王学園はバイク登校の許可が下りており、雄介も時々バイクで登校している。

本来ならば本日もバイクで登校しようかと考えていたが、制服に着替え再び店に顔を出すと律儀にも小猫と祐斗が待っていてくれたのだ。

なので今回は2人と一緒に登校することにしたのだ。

 

「ところで五代先輩、クウガになってそろそろ一か月になりますよね?」

 

「ああ、そう言われればそうだね」

 

「体の方は大丈夫ですか?」

 

「うん、特に問題はないよ。心配してくれてありがとね、小猫ちゃん」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「それにしても、白、赤、青と続いて今度は緑か。本当クウガっておもしろいね。もしかしてほかにもまだ別の色があったりするのかな?」

 

「さあ、どうなんだろ?自分ではよくわからないからな…」

 

「ということは今は沢渡先生の解読待ちになるのかな?」

 

「そうだね。ところでさ…」

 

こうして、何気ない会話を交わしながらやがて3人は駒王学園の校門に到着した。

 

「それでは五代先輩、祐斗先輩、私はここで失礼します」

 

到着するなり、小猫は雄介と祐斗にお辞儀をして自身の教室に向かって行った。

 

「うん。また後でね、小猫ちゃん」

 

雄介と祐斗は手を振りながら小猫を見送るのだった。

 

「そうだ、雄介君。今日の放課後もよかったらお手合わせ願えないかな?」

 

「別にそれくらいならかまわないよ」

 

雄介はサムズアップで祐斗の挑戦を承諾した。

もはや雄介にとって祐斗との鍛錬は日常の1つとなりかけていた。

無論、それは祐斗にとっても同じことだ。

さて、話は変わるが裕斗は学園一のイケメン王子と称されている。

しかし実のところ、雄介も祐斗に負けず劣らずの人気を博しているのである。

現在、生徒の登校ラッシュはピークを迎えている。

それゆえ、多くの生徒が行き交う中で両者がこのような会話をしていると、

 

「キャーッ!木場君×五代君よ!」

 

「ううん、もしかしたら五代君×木場君かも!」

 

などとその手が趣味な腐の女子たちから黄色い歓声が上がってしまうのであった。

そしてその様子を悔恨と嫉妬、2つの感情が入り乱れた視線を向ける3人の人物がいた。

 

「何なんだあの金髪爽やかなイケメンと笑顔が似合うイケメン野郎は!いつも思うが世の中はひどく不公平だ!」

 

「この世に神も仏もありはしないのか!?」

 

「あんな奴ら!あんな奴らぁぁっ!!」

 

と、涙を流しながら理不尽な呪詛をぶつけるのは学園で悪名高い3人組、通称性欲の権化・兵藤一誠、エロ坊主・松田、エロメガネ・元浜の3人だった。

要するに彼らは変態なのだ。

純度100%の変態なのだ。

そして、性質の悪いことに彼らは変態であることを自覚するどころか、誇りに思っているのだ。

早朝から馬鹿みたいなことを馬鹿みたいに声高らかに馬鹿みたいに騒ぎ立てる3人に女子生徒から軽蔑の視線を向けられている。

しかし、この程度で彼らの熱が冷めることはなかった。

 

「なあ松田、元浜。何故俺たちはこの学園に入学した!?」

 

「ふん、愚問だな。我らが通う私立駒王学園は女子高から共学になってまだ日が浅い。現時点でも圧倒的に女子生徒の数が多く、それに加えて海外からの美人留学生も多く在籍している!」

 

「現時点で希少な男子にとって黙っていてもモテモテ確実!故に入れ食い状態になることは必至!」

 

松田と元浜が熱の籠った説明を始める。

 

「そう、それこそが俺たちの目標…」

 

ここで一誠が高ぶる気持ちを抑えるように呟くと、直後変態3人組の瞳に性欲という名の光がやどる。

 

「「「ハーレムであるっ!!!」」」

 

3人のシャウトがシンクロした。

一般的に考えて、いい年した高校生が早朝に声高らかに叫びながら言うセリフではないはずだ。

近くを通る女子生徒たちは軽蔑を通り越してドン引きした様子で3人からさらに距離を取るのは言うまでもない。

しかし、それでもなお、彼らがめげることはなかった。

 

「ただそれだけを目標に俺たちは、え?なにこれ?ドラグ・ソボールのナモック語の間違いじゃね?オー、シット!みたいな試験を突破し、夢への第一歩を踏み出したのだ!」

 

「そしてその先にキャッキャウフフ時々ムフフな青春が俺たちを待っているのだ!」

 

「おっぱい万歳!生尻万歳!」

 

しかし粗方理想を語りあげたのだが先ほどまでの勢いはどこへやら、一誠、松田、元浜の3人はため息をつきながら肩を落とした。

 

「にも関わらずフラグすら立たぬまま俺たちは2年目の春を迎えてしまった…何故だ!?一体どこで選択肢を間違えた!?こんなこと計算にはなかったはずなのに!?」

 

「言うな、虚しくなる…」

 

3人は現実の厳しさを痛感していた。

 

「だが俺たちにはまだ時間がある!諦めるにはまだはや―」

 

一誠が諦めるにはまだ早い、と言おうとしたその矢先に目の前に会話をする雄介と祐斗が横切った。

 

「「「…」」」

 

2人からキラキラとしたイケメンオーラが迸る、様に彼らの目には映った。

 

「2年B組五代雄介、そして2年C組木場祐斗!全女子憧れ1、2フィニッシュであり我々全男子生徒の敵!」

 

「言うな、虚しくなる…」

 

「畜生!ちょっとばかりイケメンで頭がよくて運動神経抜群で性格が良い位でチヤホヤされやがって!つーかさっきまで学園のマスコット的存在の搭城小猫ちゃんと登校してなかったか!?」

 

「言うな、虚しくなる…」

 

「イケメンか?イケメンなのか?そんなにイケメンが好きなのか?時代はイケメンしか求めていないのか!?ガッデェェェムッ!!」

 

「「やめろよぉぉぉっ!言うなよぉぉぉっ!!虚しくなるだろぉがぁぁぁっ!!!」」

 

一誠の自棄な自問にとうとう松田と元浜のリミットがブレイクした。

 

「イッセー、元浜!こうなったら次の休みはエロDVD鑑賞会としゃれ込むぞ!」

 

「おうともよ、我が同士!」

 

「あ、俺パスね」

 

盛るに盛られた空気をぶち壊したのは先ほどまでの暑苦しさを微塵も感じさせない一誠のあっさりとした一言だった。

 

「「何だと!?」」

 

当然、松田と元浜の内心が穏やかでいられるはずがなかった。

 

「どういうことだイッセー!」

 

「いつもなら率先して準備に名乗りを上げるはずのお前が、…一体何があったと言うのだイッセー!」

 

ものすごい形相で一誠に迫るエロ坊主とエロメガネ。

 

「実はな…」

 

「イッセー君!」

 

声が聞こえた方を向くと、3人の元に一人の美少女が現れた。

 

「あ、夕麻ちゃん!」

 

夕麻ちゃんと呼ばれた少女がそのままイッセーの隣に立つ。

 

「おい、イッセー。そちらの美少女様はどちら様だ?」

 

まず、元浜がうめくように問いかける。

それに対し、一誠は満面の笑みで夕麻の肩に手を回して答えた。

 

「紹介するよ。俺の彼女の天野夕麻ちゃんだ」

 

「天野夕麻です。よろしくね」

 

夕麻は思わず見とれてしまうほどのスマイルで挨拶をした。

 

「「――っ!」」

 

松田と元浜の脳内に雷が落ちた。

 

「「…」」

 

目の前の光景が信じられないのか松田と、元浜は無言でお互いの頬を引っ張り合った。

 

「ゴバッ!?」

 

そしていきなり一誠は松田にラリアットをかまされた。

一誠の口から情けない声が漏れた。

 

「どういうことだ!?どうしてこんな美少女がイッセーの彼女なんかにぃぃぃぃ!?」

 

松田がorzの体勢で地面を殴る。

 

「世の中のシステムが反転したに違いない…。イッセー、まさか犯罪でも起こしたのか!?」

 

元浜のメガネにヒビガ入った。

本人を目の前に失礼極まりないことをのたまう2人に一誠はというと、

 

「お前らも彼女作れよ」

 

肩にポンと手を置きがら余裕の一言を突き付けた。

そして止めと言わんばかりに、

 

「つーわけで、俺その日は夕麻ちゃんとデートだから。てへぺろ」

 

勝者の笑みを浮かべていた。

それを見た松田と元浜は敗者の表情を浮かべると、

 

「「ガッデェェェムッ!!」」

 

2人のシャウトが早朝の空に響いた。

 

                      ☆

 

そして時は流れ日曜日の夕方。

雄介は旧校舎の部室にいた。

現在、部室にいるのは雄介を含めリアスと小猫の3人だけだった。

残りの祐斗と朱乃の2人は仕事に出ている。

リアスは部長席に、小猫は部室のソファー座り雄介がポレポレから持ってきたケーキを食べていた。

そして雄介は小猫と向かい合う位置でソファーに腰掛け“あるもの”を見つめていた。

 

「どうしたの、雄介?」

 

丁度ケーキを食べ終わったリアスが雄介の持つ“あるもの”に視線を向けた。

 

「それは、確か…」

 

どうやら小猫は“あるもの”に心当たりがあるようだ。

 

「これは前に俺が倒したはぐれ悪魔の一人が持ってたんです」

 

それは以前小猫に壊されたバヂスのグゼパだった。

初めてバヂスと戦ったあの後に雄介が回収していたのだ。

接着剤でくっ付けてみてものの、損傷がひどくあちこち欠けており勾玉も2,3個足りない状態だ。

 

「後でよく考えたら他のはぐれ悪魔も同じ物を着けてたんですよ」

 

「本当に?」

 

「はい、間違いありません。全員ってわけじゃありませんけど」

 

「でも、それがどうかしたの?」

 

「たいしたことじゃないんですけど、何のために着けてるのかなって思って。…やっぱなんか数えてんのかな?」

 

そう言いながら雄介はグゼパをリアスに手渡した。

 

「そういえば、前にあなたが倒したバヅーも似たようなことを言ってたわ。」

 

リアスはグゼパを慎重にいじりながら呟いた。

 

「本当ですか?」

 

「ええ。確か、『悪魔を殺しても数には入る』とか言ってたわ」

 

「数、ですか。やっぱりその数っていうのも最近の大量殺人に関係あるんですかね?」

 

「まだ何とも言えないわね。でも、もしこれが本当なら雄介のはぐれ悪魔の群集説が濃くなってくるわね」

 

リアスの顔が少し厳しい表情に変わった。

すると、突然部室の魔方陣が光りだした。

 

「あら、まさか私が呼び出されるなんて一体誰かしら?まあ丁度いいわ。雄介、小猫、今日はもう上がっていいわよ。また明日」

 

「あ、はい。お疲れ様でした」

 

「部長、お気をつけて」

 

雄介と小猫が別れの挨拶をするとリアスはそのまま転送され、部室には雄介と小猫の2人が取り残された。

 

「さてと、俺は部室を掃除してから帰るけど、小猫ちゃんはどうする?」

 

「私も手伝います」

 

「ありがと」

 

こうして、雄介と小猫は部室の掃除を終え、帰路について行った。

 

                      ☆

 

…時は数分前にさかのぼる。

夕暮れの公園に一誠と夕麻の姿があった。

そして夕暮れが近いのか辺りに人気はなかった。

そしてただ今一誠のボルテージは頂点に達しようとしていた。

夕麻に告白されてからの初めてのデート。

思い出にしようとほとんどをスケベに侵食された脳汁を搾り出したプランをシュミレーションにシュミレーションを重ねた結果現在に至る。

 

「今日は楽しかったね」

 

噴水をバックに夕麻が微笑んだ。

 

「ねえ、イッセー君」

 

「なんだい、夕麻ちゃん」

 

「死んでくれないかな」

 

物騒なことを満面の笑顔で言われ一瞬一誠は何を言われたのか分からなかった。

 

「…え?それって…あれ?ゴメン。もう一度言ってくれない?俺の耳、なんか変だわ」

 

「死んでくれないかな?」

 

「…」

 

どうやら聞き間違いではなかったらしい。

冗談きついなー、夕麻ちゃん。と言いかけた瞬間、夕麻の背中から黒い翼が生えた。

 

「楽しかったわ。あなたと過ごしたわずかな日々。初々しい子供のままごとに付き合えた感じだった」

 

夕麻の手に光が集まり槍の形へ形成していく。

一誠は何がなんだか理解できずに立ちすくんでいると、

 

ドスッ!

 

鈍い音がしたかと思うと、気が付いた時には光の槍が一誠の腹を貫いていた。




ギャグパートに挑戦してみました。
ここからはしばらく一誠目線で行きたいと思います。

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