仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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最初に。
どうも皆様、青空野郎です。
この度、この作品の第1話~3話の3つの作品を2つに分けました。
内容に変化はありません。
突然の変更に混乱させて申し訳りません。



EPISODE06 射手

ハチのはぐれ悪魔“バヂス”との戦闘中、雄介は突然“青のクウガ”から“緑のクウガ”に変わっただけでなく、緑のクウガになったとたんに激しい頭痛に襲われ冷静さを無くしていた。

 

「ぐう…あぁっ…」

 

階段の手摺から転落しても、雄介は退くことのない頭痛にもだえ苦しんでいた。

バヂスはそんな雄介を見下ろしていた。

 

「色が変わったか…だが調子が悪そうだな」

 

バヂスは一度自身の右腕を見たが針は生えていなかった。

 

「やはりまだ無理か…ならば」

 

針による射殺を諦めたバヂスは、急降下で雄介に襲い掛かった。

 

「ぐっ…くっ…ハッ!」

 

しかし頭痛にもだえる雄介だが、頭の中で入り乱れる騒音の中から自分に迫りくるバヂスの羽音を捉えた。

咄嗟に体を転がし寸前のタイミングでバヂスの攻撃を避けることに成功した。

 

「ほぉ、まだ動けたとわな…」

 

今度はグゼパをはめていた左腕を見つめがら少し悩むそぶりをすると、

 

「今回は一時撤退するか」

 

そう言い残し、バヂスは翅を広げ、この場を立ち去った。その後間もなくして、

 

「五代先輩!」

 

階段から駆け下りてきた小猫が雄介の名を呼ぶが残念ながら、今の雄介には返事をする余裕はなかった。

 

「ぐうっ…くうっ…はあ、はあ…ぐっ…」

 

以前として苦しむ雄介だったが、ある時を境に頭に走る激痛がピタリと止んだ。

気が付くと雄介は“緑のクウガ”から素体形態の“白いクウガ”になっていた。

そしてそのまま雄介が意識することなく変身が解けたのだった。

 

「大丈夫ですか?五代先輩」

 

「はあ、はあ…まあ、なんとか、ね。はあ、はあ…」

 

ようやく激しい頭痛から解放された雄介は地面に突っ伏したまま、最後の力を振り絞り、弱弱しい笑顔とサムズアップで答えるのだった。

 

                      ☆

 

場所が変わり、長野県、九郎ヶ岳遺跡付近に建設された研究所の一室で、一時職場から離れた沢渡桜子は古代文字の解読を進めていると携帯が着信音を奏でた。

桜子はキーボード片手に形態の通話ボタンを押した。

 

「はい、もしもし?」

 

「桜子さん、緑だよ!今度は緑!」

 

「え?五代君?」

 

先ほど雄介と小猫がバヂスと戦闘を繰り広げていた水上遊戯施設で電話の主、五代雄介は挨拶をすっ飛ばし携帯にくいついていた。

 

「音が聞こえすぎるぐらい聞こえるし、なんかもう、もう目も見えすぎてもうすごいのよ!」

 

いきなりそんなことを言われても何のことだか分からず桜子は軽く混乱していた。

 

「ちょっと貸しなさい」

 

すると雄介とは別に女性の呆れた声とともに携帯が奪われた。

 

「でもちゃんと説明しないと…」

 

「今の説明じゃ何も分からないわよ…もしもし、沢渡先生ですか?リアス・グレモリーです」

 

「グレモリーさん?」

 

女性の声はリアスのものだった。

 

「お忙しいところ申し訳ないのですが、実は五代君がまた新しい姿に変わったようなんです」

 

「え?」

 

「緑の戦士と言う記述、あるいは…例えば空高く跳ぶ戦士と言うようなものはありませんでしたか?」

 

と、リアスは空を見上げながら尋ねた。

 

「いえ、今のところは何も…でも分かりました。とりあえず調べてみます」

 

「よろしくお願いします。では、失礼します」

 

リアスは電話を終えると携帯を雄介に返した。

 

「桜子さん、何て言ってました?」

 

「まだ何も分からないって。これから調べてくれるらしいわ」

 

「そうですか…」

 

「それにしても…赤、青と続いて今度は緑って、少し安直すぎないかしら?」

 

「いや、そんなこと言われても…」

 

「まあ、いいわ。とりあえずこっちはこっちで出来ることをしましょう」

 

「出来ることと言うと?」

 

「とりあえず、椿先生のところに行きましょう。小猫は朱乃たちと合流して敵の捜索を続けて頂戴」

 

「分かりました」

 

こうして、彼らはそれぞれの目的地へと足を向けた。

 

                      ☆

 

再び場所は変わり、バヂスははぐれ悪魔たちが屯する廃倉庫に帰還していた。

 

「どうした?まだ“ゲゲル”は成功していないはずだろ?」

 

薔薇タトゥーのはぐれ悪魔が尋ねる。

 

「もしかしてギブアップでもするか?」

 

豹のはぐれ悪魔が茶化すように言った。

 

「“クウガ”が現れた」

 

『!!』

 

バヂスの言葉に廃倉庫に集うはぐれ悪魔全員に衝撃を与えた。

 

「それは本当か?」

 

「間違いない。この目で見た」

 

サソリのはぐれ悪魔が尋ね、バヂスが答える。

 

「そうか、クウガが…」

 

「もしかしたらバヅーを倒したのもクウガか?」

 

「あるいは」

 

カメ、カマキリ、イノシシのはぐれ悪魔の後に続き、

 

「なら俺にやらせろ!クウガを倒すのはこの俺だ!」

 

「ふざけるな!」

 

トラのはぐれ悪魔が名乗りを上げるが、バヂスに一蹴された。

 

「バヂス、グゼパはどうした?」

 

薔薇タトゥーのはぐれ悪魔はバヂスの腕にグゼパが装着されていないことに気付いた。

 

「…クウガの仲間に壊された」

 

「マジか?ヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!そいつは傑作だな!」

 

「黙れ!」

 

コウモリのはぐれ悪魔に馬鹿にされ、思わず激昂するバヂス。

 

「お?やるか?」

 

バヂスとコウモリのはぐれ悪魔が対峙するが、

 

「止めろ」

 

薔薇タトゥーのはぐれ悪魔が割り込み、再び口を開いた。

 

「バヂス、残念だがやり直しだ」

 

「分かってる。だが、まだ時間はある。新しいのをよこせ」

 

「…“ゴオマ”」

 

薔薇タトゥーのはぐれ悪魔はバヂスの再チャレンジを許可したようだ。

 

「チッ…」

 

“ゴオマ”と呼ばれたコウモリのはぐれ悪魔は舌打ちをしながらも言われたとおりに新しいグゼパをバヂスに手渡した。

 

「ま、せいぜい頑張ることだな」

 

バヂスはゴオマの嫌味を軽く聞き流し、グゼパを装着した。

 

「この数は“リント”、この数は“クウガ”。これでどうだ?」

 

バヂスは“リント”で1つ、“クウガ”で3つの勾玉を動かした。

 

「…いいだろう」

 

薔薇タトゥーのはぐれ悪魔に提案を受理してもらったバヂスはそのまま廃倉庫を後にした。

 

                      ☆

 

「相変わらずそそるやつだな、お前」

 

「そそりますか?」

 

雄介と秀一は顔を寄せ合い1枚のレントゲン写真を覗き込んでいた。

 

「緑になったらいろいろとすごく感じたって言ってたな」

 

「はい、いろんなものが見えて、いろんなものが聞こえて、芸術は爆発だあぁ!!って感じで」

 

「そのためにかなりの力を使うんだろう」

 

ここで一度雄介と秀一がレントゲン写真から顔を離した。

 

「そしてその結果、おそらく一気に白に戻った」

 

そして秀一が雄介の腹に手を当て軽くさする。

 

「この中の鉱石(いし)も気質変化を起こして、まるで輝きを失ったようになっている。見てみろ」

 

と、秀一は別の画像に切り替えた。再び雄介が顔を近づける。

 

「あぁ、確かにくたびれてるって感じですね」

 

画像に写されたアマダムは少し色が薄くなっているように見えた。

 

「緑の状態はおそらく、全身の神経が極限まで緊張して感覚が何倍も鋭くなるんだ。精神を集中すれば遠くの目標をはっきり捉えたり、はるかに離れは場所の音を聞くことができる素晴らしい力になるはずだ」

 

「だからもったいぶって50秒しか持たないのかな?」

 

秀一の説明に思い当たる節があったのか雄介は納得したかのように頷いた。

 

「ま、そんなとこだ」

 

ついでに雄介は1つの心配事を秀一にぶつけてみた。

 

「もう変身できないってことじゃないですよね?」

 

「鉱石の状態は徐々に回復している。だが、あと2時間ぐらい変身はお預けだ」

 

秀一に太鼓判を押され安心する雄介だが、

 

「2時間か…どっちにしろ緑でできることが分かんないとな…」

 

「どうだ、その間もっとじっくりお前の体を調べさせてくれないか?」

 

秀一の瞳はおもちゃを目の前にした子供の様に輝いていた。

 

「いや、遠慮しときます…」

 

何か本能で察知した雄介は丁重に断るのだった。

 

「終わったかしら?」

 

別室で朱乃たちと連絡を取っていたリアスが顔を出した。

 

「はい、こっちは一応大丈夫です。そっちはどうでした?」

 

「こっちも駄目。目標を完全に見失ったみたいだから一度部室に戻って作戦を練り直すことになったわ」

 

「分かりました。じゃあ、俺先に行ってますね」

 

そう言って雄介は病室を出て行った。

 

「…」

 

リアスは雄介の背中を憂いた瞳で見つめていた。

 

「まだあいつが戦うことに戸惑っているのか?」

 

秀一に指摘されリアスは観念したのか独り言のように語りだした。

 

「正直、何も感じないと言ったら嘘になるわ。彼が協力してくれることは素直にうれしいし、感謝もしてる。でも、ふとした瞬間に思ってしまうの。本当にこれでよかったのかどうか…。彼、優しすぎるのよね。どんなに辛くてもいつも笑顔で大丈夫って言って、そのくせ無茶ばかりして。でも、不思議とその笑顔に安心しちゃう自分がいるの。矛盾してるけど、どうしてもそう思っちゃうの…」

 

「…」

 

それは共闘してくれる雄介へ謝意を表すと同時に自分たちの都合に捲き込んでしまったという罪悪感の板挟みに苦しむリアスの紛れもない本心だった。

そんなリアスの告白を秀一は黙って聞いていた。

 

「ごめんなさい。変な話をしてしまったわ。それじゃ、わたしも失礼させてもらうわ」

 

話を切り上げてリアスは紅く光る魔方陣を展開させた。

 

「リアス」

 

リアスの体が転送される寸前、秀一がただ一言だけ告げた。

 

「いい相棒じゃないか」

 

リアスはその一言で自分の中の何かが救われたような気がしたのだった。

 

                      ☆

 

オカルト研究部のメンバー全員が揃ったところで、部室では2回目の作戦会議が開かれていた。

 

「朱乃、現在の状況は?」

 

「はい、敵は2時間ほど前から再び動き始めたようですでに被害者は60人を超えました。相変わらず犯行は15分おきで、螺旋状に移動しているようですわ。このままいくと約1時間後にはわれわれの活動領域周辺に現れる計算になります」

 

「分かったわ。今回はその近辺を重点的に固めましょう。ところで雄介、緑になって変身できなくなったと言ってたけれど、調子の方はどう?」

 

「椿先生の言う通りならもう2時間経ってるんで変身出来ると思います」

 

「そう、それならいいわ。みんな、いい?前回のバヅーの事件から警察が動き始めてるわ。おまけにこうしてる間にも被害が増えていく一方。話が大きくなる前に一気に決着をつけるわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

リアスの気合の入ったセリフに影響されたのか彼女を除く全員の返事がシンクロした。

雄介、朱乃、小猫、祐斗は各自割り当てられた地区に向かったためすでに部室に彼らの姿はなかった。

リアスもすぐに後に続いて部室を出ようとした時だった。

突然電話の着信音が聞こえた。

音のする方に顔を向けるとその先には雄介の鞄があった。

どうやら雄介は携帯を鞄に入れたままそのままにしていたようだ。

放っておくのも悪い気がして心の中で本人に謝りつつ携帯を手に取るとディスプレイには“沢渡桜子”と記されていた。

それを確認したリアスはすぐに電話に出た。

 

「もしもし、沢渡先生ですか!?」

 

「あれ、その声はグレモリーさん?どうして五代君の携帯に?」

 

「彼が部室に忘れたままにしてたんです。それより、連絡をくれたということはもしかして解読の結果が出たんですね!?」

 

「ええ。“緑”とか“飛ぶ”というのは出ませんでしたが、五代君の話を聞いて一番近いのはこれではないかと…」

 

そして、桜子はパソコンの画面に映し出された古代文字を読み上げた。

“邪悪なるものあらばその姿を彼方より知りて疾風のごとく邪悪を射抜く戦士あり”

 

「射抜く戦士?」

 

                      ☆

 

連続殺人を再開させたバヂスは着々と“数”を稼いでいた。

次の得物を探しているとあるものが目に留まった。

それはこちらもバイクを走らせ、バヂス捜索の真っ最中の雄介の姿だった。

 

「クウガ?…一気に27だ!」

 

バヂスが雄介を次の標的に決めたのは当然のことだった。

 

「クウガ!あと少しの命だ、待ってろよ」

 

悲しいことに、雄介は自分を追いかけてくるバヂスの存在に気づくことはなかった。

 

                      ☆

 

別地点の高層マンションの屋上ではリアスは一度朱乃と合流していた。

地上のほうからパトカーや救急車のサイレンが聞こえてくる。

 

「部長?一体どちらに?」

 

「ちょっと新たに用事ができてね。でもそれはすでに終わらせたから気にしなくていいわ。それより朱乃、そっちはどうだった?」

 

「残念ながら私のほうでは見つけられませんでした。時間を見る限りもう移動したのではないかと…」

 

「そう、やはりこちらから追いかけるより、予め先回りしたほうがよさそうね。朱乃、次に奴が出るポイントは?」

 

「そうですね、このまま行くとここから東の方向にある海岸辺りになりますわね」

 

「分かったわ。すぐに向かいましょう」

 

「はい」

 

リアスと朱乃2人は羽を広げ次の出現予想地点に急いだ。

 

                      ☆

 

現在、雄介は海岸の砂浜に立ち海原の見える空を眺めていた。

未だにそのはるか上空でバヂスが見下ろしていることに気づいてはいなかった。

そしてバヂスの右腕には大勢の人たちの命を奪ってきた毒針が生えていた。

 

「クウガ、これで終わりだ」

 

当然だが、その呟きが雄介の耳に届くことはなかった。

バヂスはそのまま毒針を雄介へと狙いを定めた。

同じ頃、現場にリアスと朱乃が到着した。

 

「この辺りかしら?」

 

「ええ、間違いないはずです。…ところで部長、その手に持っているのは?」

 

朱乃の視線の先にはリアスの手の中にあるものが握られていた。

 

「ああ、これ?ちょっとした切り札、ってところかしら。すぐに分かるわ」

 

すると、何か確信を持った言い方をするリアスの視界に海を眺める雄介の姿が入ってきた。

 

「あれは、雄介?」

 

「そう言えばこの辺りは彼の担当でしたね」

 

納得したのも間、2人の頭にある可能性が浮ぶのに時間はかからなかった。

 

「まさか、奴の狙いは!?」

 

「急ぎましょう!」

 

そしてリアスと朱乃は走り出した。

 

「雄介!」

 

                      ☆

 

「雄介!」

 

雄介は突然名前を呼ばれたので振り返るとリアスと朱乃が血相を変えて走ってくる。

 

「あれ、部長に朱乃さん?」

 

「この上空に奴がいるわ!」

 

「狙いは雄介君、あなたです!」

 

その言葉を聞いた途端、雄介の顔に緊張が走った。

まさか自分が殺人の標的にされるとは思わなかったのだろう。

すぐに大空を見上げるが、肉眼でバヂスを見つけることはできない。

雄介は緑のアマダムのアークルを出現させ、いつもの手順で両手を動かし、

 

「変身!」

 

アークルが“緑”の音を奏でながら風が雄介の体に渦巻く。その間に体には装甲が展開され風が止むと同時に雄介は“緑のクウガ”に変身した。

 

「雄介、これを使いなさい!」

 

リアスが雄介にあるものを投げ渡した。

それはドラマとかでよく見るような警官が常に携帯している拳銃だった。

ズシリとした独特の重量感が雄介の手に収まる。

そして拳銃は瞬く間に形を変え、銃口後部に緑の霊石が埋め込まれたボウガン“ペガサスボウガン”に変形した。

再び緑のクウガに変身した雄介だが、前回のように圧倒的な情報量に耐え切れなくなるような轍を踏むことはなかった。

精神を集中させ、ゆっくりと辺りを見回す。

今の雄介には潮風と波打つ音だけが聞こえる。

そして、

 

ブウウウウウン…

 

わずかだが、あの時と同じハチの羽音が耳の中に入ってきた。

 

「!」

 

音のする方向に顔を向けるガの力で極限にまで研ぎ澄まされた超視力が上空でこちらを狙っているバヂスの姿をはっきりと捉えた。

 

「終わりだ、クウガ!」

 

丁度その時、バヂスが毒針を発射した。

しかし、今の雄介には一直線に飛来してくる毒針すらも捉えることができた。

雄介は右手の人差し指と中指で毒針を流れるような動作で挟み取った。

すぐに毒狩りをほかし、今度は雄介のほうがペガサスボウガンの銃尻のトリガーを弓矢のように引きながら照準をバヂスに向ける。

ペガサスボウガンの弓なりの部分が狙いを定めるかのように折りたたまれる。

銃口に高密度に圧縮された空気の弾丸が装填されていく。

そして、雄介は引き金を引いた。

 

ドンッ!

 

「ッ!」

 

銃声とともに発射された空気弾が音速のスピードで迫る。

気づいたときにはすでにバヂスは緑のクウガの必殺技“ブラストペガサス”に射抜かれた。

射抜かれた部分には“封印”の古代文字が浮かび上がり、そこからバヂスの体に亀裂が走る。

そしてバランスを崩しそのまま海へと墜落していき、勢いよく水しぶきが上がった直後に爆炎が昇った。

その場にいた3人にとって、それがバヂスの死を確信させるのに十分だった。

 

                      ☆

 

「はあ~、くたびれたぁ」

 

緑のクウガの力を完全に使いこなすことに成功した雄介だが、やはり緊張した精神からくる疲労感には慣れていないのか、その場にへばりこんだ。

 

「お疲れ様」

 

リアスが朱乃とともに労いの言葉をかけてくれた。

 

「あ、部長。これ、ありがとうございました。おかげで助かりました」

 

そう言って、雄介は手にしていた拳銃を差し出した。

 

「それはあなたが持っていなさい。また緑になる時には必要になるでしょ?ただし人前で見せびらかさないようにね」

 

「え?ああ、はい…」

 

何か違和感を感じながらも曖昧な返事をする雄介だが、やはり気になり恐る恐る尋ねてみた。

 

「部長。これ、一体どうやって?」

 

拳銃の出所について聞いてみたが、

 

「あら?それを聞いちゃうかしら?」

 

含み笑いを浮かべながらのセリフに雄介はかすかな懸念を抱いた。

 

「まさか、やっぱりこれって本物…」

 

「ふふ、そんなわけないでしょ」

 

と、あっさりと否定された。

 

「それは形だけの単なるレプリカよ。沢渡先生からヒントをもらってすぐに作ったの。ちなみに、さっき言ったことは冗談よ。ちょっと力を使って銃だと認識できないようになってるから、安心しなさい」

 

何とも都合のいい内容であった。

 

「それでは、そろそろ帰りましょうか」

 

「はい」

 

「そうですわね」

 

部室に引き返す3人の背中を沈みかけた夕日が照らしていた。




次回、一誠出します。

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