仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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EPISODE05 推理

はぐれ悪魔バヅーが倒されて3日経った夜のことだった。とある廃倉庫に複数の影が屯していた。彼らの共通点はひとつ。この場にいる全員がはぐれ悪魔だということだ。

 

「バヅーは死んだか…」

 

額に薔薇のタトゥーを入れた女性はぐれ悪魔が呟いた。

 

「奴が殺した“リント”の数は?」

 

「全部で43人だ」

 

続いて、蝙蝠のはぐれ悪魔の問いに、キノコのはぐれ悪魔が答える。

 

「今回は少なかったな」

 

「“覚醒(バブゲギ)”まであと何人だ?」

 

「まだ4桁を切っていない」

 

「で、次は誰が“挑戦”するの?」

 

「俺がやる。“腕輪(グゼパ)”をよこせ」

 

豹、カマキリ、サメ、ヤマアラシ、ハチのはぐれ悪魔が会話を繋げる。

 

「…いいだろう。“バヂス”、2日で120人だ」

 

そして薔薇タトゥーのはぐれ悪魔が“グゼパ”と呼ばれる勾玉がついた腕輪をハチのはぐれ悪魔“バヂス”に手渡す。

 

「楽勝だ」

 

腕にグゼパを装着したバヂスは廃倉庫を出て行った。

 

                      ☆

一方その頃、

 

カンカン、カン、カカンカンカン、カキン!

 

真夜中の駒王学園の校庭に甲高い金属音が鳴り響く。

周囲が結界に囲まれている中、祐斗と青いクウガに変身している雄介が模擬戦をしている。その様子を離れた場所で朱乃と小猫が観戦していた。

 

「はあっ!」

 

「ふん、そりゃ!」

 

祐斗の鋭い剣撃を雄介はドラゴンロッドで受け止め、さらに打ち合いが激しさを増す。

 

カキン!…カキン!…カキン!

 

お互い間合いを取りながらも素早い動きで接近し、得物がぶつかりあう度に火花が散っていく。

ここで戦法を切り替えたのか、祐斗は翼を広げ空を飛んだ。

しかし、雄介は青いクウガの持前のジャンプ力で難無く祐斗のいる位置に到達する。

祐斗は空中を旋回しながら、雄介は跳躍と着地を繰り返しながら再び得物のぶつかり合いが続く。

そして祐斗は雄介が着地したところを狙い急降下する。

だが、一瞬早く気配に気付いた雄介は跳躍し祐斗の攻撃をかわした。

一度着地した祐斗は地面を蹴り再び剣が背を向ける雄介に迫る。

しかし、

 

「はあっ!」

 

雄介は振り向きざまにドラゴンロッドを振り切った。

 

カキンッ!

 

甲高い音と共に祐斗の剣が宙を舞い2人から少し離れた場所に突き刺さった。

ここで手元から得物が弾かれたことで祐斗に隙が生まれた。

雄介はそこをすかさず足払いで祐斗の体勢を崩し、次の瞬間にはドラゴンロッドの先端が祐斗の喉を捕らえていた。

 

「勝負あり、ですね」

 

「お疲れ様です」

 

 

勝敗が決した2人のもとに祐斗の剣を回収した朱乃と小猫が近づいてきた。

雄介は変身を解くと横になっている祐斗の手を掴み立ち上がらせる。

 

「いやぁ、悔しいな。結構本気で行ったつもりだったんだけどな」

 

「いや、運が良かっただけだよ。俺も結構ギリギリだったし」

 

雄介の手には手ごろな太さの木の棒が握られていた。

それはさっきまでドラゴンロッドに変形していたものだ。

 

「それにしても、手にした物質を分子レベルで作り変えてしまう。ますます興味深いですわね」

 

と、朱乃はクウガの能力に感心していた。

 

「どうやら変身を解くと手にした武器も元に戻るみたいだね」

 

祐斗も雄介が手にしている棒を見つめながら呟いた。

 

「うん、それに桜子さんが言った通り“長きもの”なら何でもいいみたい」

 

「あれから、沢渡先生から何か連絡はありましたか?」

 

「いえ、今のところは何も」

 

「そうですか。では今日はこの辺で切り上げて部室に戻りましょうか」

 

「はい」

 

「そうですね」

 

「わかりました」

 

雄介、祐斗、小猫の返事をし、一行は部室に戻っていった。

 

                     ☆

 

「リアス、ただ今戻りました」

 

「お帰りなさい。あれ、雄介は一緒じゃなかったの?」

 

「え?」

 

リアスの言うとおり部室に入ってきたのは朱乃、小猫、祐斗の3人だった。

 

「あれ?確か旧校舎の前までは一緒にいたはずなんですけど…」

 

「もう帰ってしまわれたのでしょうか?」

 

「五代先輩に限ってそんなことはないと思います」

 

「呼びました?」

 

声がした方を向くとそこには部室の窓から顔を出した雄介がいた。

 

「…何で窓から?」

 

少し呆れた視線を向けるリアスはとりあえず率直な疑問を投げかけた。

 

「いや、前から思ってたんですけど、ここの壁って、登ってくれ!って言ってるような気がしません?」

 

そう言いながら、当たり前のように窓から部室に入る雄介に、

 

「しないわよ」

 

リアスは疑問に疑問で返してきた雄介をバッサリと切り捨てるのであった。

 

「あれ、リアスさんって目が悪いんですか?」

 

雄介の言うとおり今のリアスは眼鏡をかけていた。そして机の上にはたくさんの書物が積まれていた。

 

「あぁ、これ?気分的なものよ。考え事をしているときに眼鏡をかけていると頭が回るの。ふふふ、人間界での生活が長い証拠ね」

 

リアスは小さく笑うと、今度は朱乃が質問してきた。

 

「では、珍しくメガネなんてかけて何をしていたんですか?これは冥界の書物ですよね?」

 

朱乃は中から一冊を手に取った。

 

「クウガについて調べてたの」

 

「クウガについて、ですか?」

 

よく見ると机の上には書物と一緒に今まで桜子が解読した古代文字が翻訳された資料が置かれてあった。

 

「何か分かるかもしれないと思って手当たり次第に読み漁ってみたんだけど…」

 

リアスはため息をつきながら手にしていた本を閉じた。

 

「その様子では収穫はなかったみたいですね」

 

「そうね、これだけ調べても手掛かり1つ見つからなかったわ。やはり今は沢渡先生の連絡を待つしかないわね」

 

リアスはくたびれた様子で眼鏡を外した。

 

「で、そっちはどうだったの?」

 

今度はリアスが訊ねる。

 

「はい。やっぱり青いクウガは赤の時と違って棒術で戦うスタイルでした」

 

「他には驚異的な脚力が特徴的ですね。素早さは僕と互角、いや、もしかしたらそれ以上かもしれません」

 

「ですが代わりに攻撃力と防御力が著しく低下してるようです」

 

雄介、祐斗、小猫が順番に報告する。

 

「そう、それならいいわ。能力が把握できただけでも良しとしましょう。今日はもう帰ってくれて構わないわ。お疲れ様」

 

「「「「お疲れ様でした」」」」

 

雄介、朱乃、小猫、祐斗が重なり一同は部室を後にした。

 

                      ☆

 

次の日の夕方、学校が終わり部室に集合するまでの間の時間を使い雄介はおやっさんに頼まれ食材に買い出しに出ていた。

そして食材が詰められた段ボール箱を抱える雄介に同行する小猫の姿があった。

 

「手伝ってくれて助かるよ。ありがとね、小猫ちゃん」

 

「いえ、これくらい構いません」

 

小猫の右手には食材が入ったレジ袋がぶら下がっている。

 

「そうだ、帰ったらケーキごちそうするよ」

 

「ありがとうございます」

 

淡々と答える小猫だが、雄介は小猫がご機嫌な様子だということに気付いていた。

その時だった。

 

シュパン!

 

後ろの方で何かが貫くような音が聞こえた。

その直後、1人の男性が動きが一瞬止まったかと思うとすぐにその場で倒れた。

不審に思った雄介は段ボールをその場に置き男性に近づいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

雄介は男性の体を揺するが返事はなかった。

それどころかピクリとも動く気配すらない。

いやな予感がし雄介は男性の手首に指をあてるが脈が鼓動することはなかった。

 

「死んでる…」

 

周りに集る野次馬が雄介の言葉を聞き騒ぎ始めた。

雄介は音が聞こえた直後に男性が絶命したことで病気による突然死ではないと考え、辺りを見回すがどこにも目立った変化は見られなかった。

しかし、

 

「五代先輩、これ…」

 

小猫が男性の足元付近にしゃがんで地面を見つめていた。

雄介も小猫に駆け寄り手元を覗き込むと、

 

「これは…」

 

よく見ると地面のある一点に何かが突き刺さっていた。

雄介は手を伸ばし慎重にそれを引き抜いた。

そして現れたのは、

 

「…針?」

 

雄介と小猫は全長10センチはくだらない極太の針を見つめていた。

 

                      ☆

 

夕方の騒動により約束した時間より早めに部室に顔を出した雄介と小猫はリアスと朱乃に事情を説明し、現在部室にはオカルト研究部全員が集まっていた。

後から来た祐斗にも簡単に説明をし、改めてリアスは口を開いた。

 

「雄介と小猫が回収してきた針からわずかだけど悪魔の魔力が残ってたわ。結果から言うと今回の事件にははぐれ悪魔が関わっているのは間違いないわ。朱乃」

 

「はい」

 

リアスの指示を受け、朱乃はビニールに入れられた件の針を取り出した。

 

「こちらが現場に打ち込まれた針です」

 

「大きな針ですね」

 

初めて現物を目にした祐斗はまじまじと針を見つめていた。

 

「調べた結果ハチの毒針に極めて近いものでした。被害者の死因が針による貫通ではなく、一種のアナフィラキシーショックによるものだと考えられます。それを踏まえると、今回はハチの能力を持ったはぐれ悪魔とみて間違いないと思われます」

 

「アナフィラキシーショック?」

 

朱乃の説明の中に聞きなれない単語を聞いた小猫が疑問を抱いた。

 

「アナフィラキシーショックって言うのは主にハチなどに数回刺された時に起こる一種のアレルギー反応で、めまいや呼吸困難に陥って、最悪の場合い死に至る症状のことだよ」

 

「なるほど」

 

雄介の解説に小猫は納得したようにうなずいた。

 

「何にしろ、私の領域で好き勝手をさせるわけにはいかない。すでに大公から許可は下りてるわ。見つけ次第討伐して頂戴。でも今回の敵は一撃でアナフィラキシーショックを起こしてしまうほどの高度な技術を持っているわ。くれぐれも、特に上空には気を付けて」

 

「あの、そのことなんですけど…」

 

雄介が遠慮がちに手を上げながら発言した。

 

「どうしたの雄介?」

 

「もしかしたら敵が次にどこに現れるかが分かるかもしれません」

 

「本当に!?」

 

「はい、確証はないんですけど…」

 

そう言いながら雄介は机の上に一枚の地図を広げた。

 

「これは、この町周辺の地図だね」

 

祐斗が確認するように呟いた。

 

「もしかしたらって思って、みんなが集まるまでの間同じような事件がなかったか調べてたんです」

 

「で、結果の方はどうだったの?」

 

「思った通りでした。今朝から、すでに40人近くの人が犠牲になってました」

 

「そんなに!?」

 

さすがのリアスも驚きの声を上げた。

他のメンバーも同じように驚愕の表情を浮かべていた。

 

「そして犯行現場と犯行時間は…」

 

雄介は数時間前からの犯行現場と犯行時刻を言いながらそのポイントをペンで×印を地図に書きこんでいった。

あらかた書き終えると、

 

「これって…」

 

「気づきました?」

 

雄介が犯行現場を順番に辿っていくと、現時点ではそれが偶然か、はたまた意図的なものなのかは分からなかったが、はぐれ悪魔の犯行にある法則性が見えてきた。

 

「時間はほぼ15分おき、そして移動範囲は螺旋状に規則的に広がっていますね」

 

「それに犯行は数回ずつ区切られてる上に範囲が隣町まで広がっている所を見ると、あまり悠長なことをしている暇はなさそうですね」

 

小猫、祐斗は地図に書き込まれた情報を整理していく。

 

「これなら次に奴がどこに現れるか特定できるわ。御手柄よ、雄介」

 

リアスは雄介の推理に感心した。

 

「でも、さっきも言った通り確証があるわけじゃ…」

 

「そんなことありません。とても説得力のあるものでしたよ。自分を悲観することはありませんわ」

 

「とにかく、すぐに向かいましょう!」

 

「「「「はい!」」」」

 

こうして、リアス率いるオカルト研究部一同ははぐれ悪魔探索に移っていった。

 

                       ☆

 

「小猫ちゃん、何か見えた?」

 

「いえ、今のところは何も」

 

雄介は後ろに小猫を乗せながらバイクで犯行予測地点を走っていた。

普段の時点でも同年代の平均を軽く上回る身体能力を持つ雄介だが、クウガに変身しなければ下級悪魔にも対抗できないため、もしものことを考えリアスの指示で小猫が同行する形となったのだ。

ちなみに、彼ら以外の他のメンバーは別のエリアを捜索している。

 

「ねえ、小猫ちゃん」

 

「何ですか、五代先輩?」

 

「悪魔って基本飛べるんだよね?」

 

「そうですけど、それが何か?」

 

「いや、青のクウガでジャンプ力が増したのは確かだけどそれにも限度があるから、今回みたいに空から襲ってくるような敵にはどうすればいいのかと思って」

 

「その時は私たちがフォローします。それにほとんどの悪魔は地上で戦うので心配する必要はないと思います」

 

「そっか。ありがと、小猫ちゃん。もしその時が来たら頼りにしてるからよろしくね」

 

「はい。…!五代先輩!」

 

急に小猫の様子が変わった。

どうやら何かに気付いたようだ。

小猫が指差す方向の先には空中に浮かぶ人影があった。

 

「あれは…!」

 

雄介もその正体に気付きバイクのスピードを上げるのだった。

 

                      ☆

 

現在はオフシーズンのため閉鎖している水上遊戯施設内で一人の作業員が設備の点検をしていた。

そしてその作業員の姿をはるか上空でハチのはぐれ悪魔のバヂスが見下ろしていた。

バヂスの右腕からは一本の毒針が生えている。

毒針の先端を作業員に向けると、やがて作業を終えたのか男性が立ちあがり歩き出した。その瞬間を見計らいバヂスは勢いよく毒針を発射した。

 

シュパン!

 

何かが貫くような音と共に男性の体が一瞬硬直した。

 

「っ…!」

 

男性は声を上げることもなくその場に倒れた。

すると絶命した男性のもとにバヂスが降り立った。

 

「54人目」

 

そう言いながらバヂスは左腕にはめたグゼパの勾玉を1つ動かした。

バヂスは順調に“数”を稼ぐことことにほくそ笑みながらグゼパを見つめていた、その時だった。

 

バキイイインッ!

 

何かが一直線に跳んできて、バヂスの左腕に直撃した。

そしてその衝撃で腕にはめたグゼパが砕け散った。

破片が飛び散る中地面に転がるグゼパを破壊した物体は、ヘルメットだった。

 

「!?」

 

突然のことで動揺したバヂスがヘルメットの飛んできた方向を向くと、たった今現場に到着した雄介と小猫だった。

どうやらヘルメットは小猫が投げたようだ。

雄介はバイクから降りると腹部に手をかざし、アークルを出現させると同時にバヂスに向かって走り出し、

 

「変身!」

 

叫んだ直後、アークルから“赤”の音が鳴り響き雄介の姿は変化を起こし瞬時に赤いクウガに変身した。

 

「お前は!?」

 

「おりゃあっ!」

 

クウガの姿を見て驚きの声を上げるバヂスに雄介は跳躍し、殴りかかる。

 

「えい」

 

そして先制攻撃を受けてあとずさるバヂスに追い打ちをかけるように小猫が殴りつける。小猫の拳をもろにくらったバヂスの体が吹っ飛ぶ。

そしてその勢いは止まることなく施設の壁を砕いた。

 

「ぐっ…この…」

 

雄介と小猫は立ち上る砂煙の中から立ち上がるバヂスと対峙する。

今度は小猫がまた拳で攻撃するがバヂスは両腕でガードすると同時にバックステップで衝撃を減らす。

次に雄介が回し蹴りをするが、腰を沈めてかわされる。

しかしそこをすかさず顔面に蹴りが鋭く入り込む。

 

「ぶっ…」

 

「はあっ!」

 

続けて大きくのけぞるバヂスに拳の連打を叩き込む。

しかし、4発目の拳を受け止められがら空きになった腹部に膝打ちされてしまった。

ここで腹部を押さえながらあとずさる雄介と入れ替わるように小猫が蹴りを入れるがバヂスにかわされてしまいそのままバヂスの背後に位置していた螺旋階段の手摺が砕けた。

 

「このっ!」

 

バヂスが小猫に掴みかかるが、

 

「ふん」

 

簡単に振り払われ逆に強烈なひじ打ちを喰らってしまった。

バヂスが軽くうずくまったところを雄介は蹴りで、そして小猫は拳で追撃しようとしたが、バヂスが翅を広げ飛翔したことで虚しく空を切った。

幸いにも雄介と小猫では身長差があったため、お互いの攻撃が衝突することはなかった。

雄介は空を見上げながら青いクウガになることを念じると、アークルが雄介の想いに応えるかのように“青”の音が鳴り響いた。

次の瞬間には雄介は赤いクウガから青いクウガに変わった。

そして青の脚力で跳躍し螺旋階段の頂上に位置する展望台に着地した。

 

「…」

 

雄介は青空と眼下に広がる町並みを見渡すがハチ独特の羽音だけが聞こえるだけだ。

 

「…ハッ!」

 

突然背後から殺気を感じ振り向いた瞬間顔面をバヂスに殴られた。

 

「ぐあっ…くっ!」

 

負けじとすぐに足払いで応戦するがかわされてしまう。

すぐに周囲を見渡すがバヂスの姿はどこにも見当たらない。

相変わらず羽音だけが聞こえ、雄介を焦らす。

周囲を警戒するが再度殺気を感じた時には雄介の体は展望台から突き落とされてしまった。

 

「うああああああっ!」

 

雄介は最悪転落だけは避けようと咄嗟に手摺にぶら下がった。

 

「ぐっ…」

 

すると、何がきっかけになったのかアークルから“赤”でも“青”でのない音が鳴り響き“青いクウガ”から今度は瞳とアークルが緑に輝き、左肩にのみ肩パッドが装着された緑の装甲の“緑のクウガ”に変わった。

 

「う…くっ」

 

何とかよじ登り雄介は初めて自身の変化に気付いた。

 

「緑になった!?」

 

つい先日に“青”になったばかりなのに次は“緑”に変わったことに驚かずにはいられなかった。

しかしその直後、雄介に驚く余裕はなくなった。

 

「うあぁっ…くぅっ!?」

 

突然雄介の頭に鋭く重い痛みが走り、頭を押さえる。

 

「な、なんだ!?…あぁっ!?」

 

雄介の頭の中に、街中を歩く大勢の人たちの喧騒、会社内に鳴り響く電話の音、工事現場の重機の騒音、住宅街で屯する主婦たちの噂話、学校の校庭ではしゃぐ子供たちの声、ゴミ置き場で喧嘩する野良犬、道路で渋滞する車のクラクション、トラックのアイドリング、救急車のサイレン、電車の走行音、飛行機のエンジン音、船の汽笛…その他もろもろの光景や音が頭の中に一気に雪崩れ込んできた。

そして、

 

「ぐああああああああっ!」

 

とうとう痛みに耐えきれず手摺から手が離れ、雄介の体は地面に落下した。




執筆を初めて思ったのですが、この小説の最終回はどうしよう…。

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