仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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メリークリスマス!
まずは扉絵的な感じで、さっそくイラストを投稿します。


【挿絵表示】




EPISODE44 反旗

「まさか、白龍皇がテロリストの仲間!?」

 

三大勢力による和平の会談を妨害する目的の元、駒王学園を襲撃したテロリスト集団『禍の団』。

主犯格の旧魔王の末裔、カテレア・レヴィアタンが率いる部隊とはまた別に潜入していた『禍の団』の一員、美猴。

半ば強引な形で対峙することとなった雄介は、彼が仲間と称して口にした名前に驚きを禁じ得ないでいた。

赤龍帝一誠と対をなす存在である白龍皇ヴァーリは堕天使サイドの一員だったはずだ。

その正体がテロリストの仲間。

つまり、裏切者であるという事実に動揺を生まれる。

そしてその寸秒が致命的な隙となる。

 

「がら空きだぜぃ!」

 

力の流れを逸らされ、体制が崩れた胴に美猴の棍が突き刺さる。

胃からこみ上げる溜飲をどうにか堪えながらも、鋼の鎧を纏う巨体を宙に浮かすほどの衝撃に苦悶が漏れる。

タイタンソードを支えにして立ち上がり、息を整える雄介。

正直なところ、タイタンフォームの防御力がなければかなり危なかった。

しかし、同時にタイタンフォームの戦い方では美猴に決定打は与えられないと悟る。

例え上手く不意を衝いても、簡単に掻い潜られてしまうのが関の山。

こうなれば下手な小細工は捨てて、徹底的にガチンコ勝負に持ち込む他ない。

目には目を、歯には歯を――――スピードにはスピードを!

 

「超変身!」

 

アークルに意識を集中させ、雄介はドラゴンフォームへと姿を変える。

強固な鎧の重量が消え、必要最小限の装甲に体が軽くなる。

そしてタイタンソードから変形するドラゴンロッドを見て美猴がにたりと口角を上げた。

 

「……へえ、俺っちと棒術で勝負しようってのかい?」

 

片手で得物を弄ぶ美猴の期待に満ち満ちた笑みにどうにも調子を狂わされるが、雄介もドラゴンロッドを大きく振り回して精神を集中、そして切っ先を相手に向けた。

 

「いいぜぃ、そういうのは嫌いじゃないんだ。――――受けて立つってばよ!」

 

嬉々とした表情を認めた直後、雄介の視界から再び美猴の姿が消える。

刹那、背後から気配。

 

「―――っ!」

 

咄嗟に横に跳べば、先に雄介がいた場所に棍が振り下ろされていた。

だが、敵の初撃を躱したことに安堵するよりも早く雄介は着地のバネを利用して突貫する。

美猴も瞬時に反応し、バックステップと同時に棍を振りあげた。

ドラゴンロッドの軌道が上へと逸らされるが即座に修正、弧を描くように振り下ろす。

 

「おほぉ!?」

 

反撃に、これには驚嘆の声を漏らしながらも美猴は棍で受け止めた。

押さえつけようとする雄介と押し返そうとする美猴。

寸時の拮抗の中、美猴が力んだタイミングを見抜いて雄介はあえて一歩退いた。

すると力の流れの行き場を失い、美猴の体勢が大きく崩れた一瞬を好機と見た雄介が身体を旋回しドラゴンロッドを真横に薙ぎ払う。

これにはたまらず頭上の枝に飛び移り間合いを測るが、刹那に雄介は追撃する。

 

「――――キヒッ!」

 

そんな雄介の真っ向から攻め立てる姿に美猴は自身でも知らないうちに狂喜の笑みを浮かべていた。

両者が怒涛の連撃を繰り出す。

跳び、薙ぎ、風が鳴く。

移り、叩き、地面が抉れる。

走り、打ち、木の葉が散る。

迫り、突き、幹が砕ける。

互いが互いに立ち止まる暇すら与えない。

そこには残像と得物がぶつかり合う音しかない。

 

「ハハハハハハハ!いいぜ!いいぜぃ!最高だよおまえさん!だがもっとだ!もっと俺っちを楽しませてくれや!」

 

歓喜の笑いを上げる美猴だが、雄介からして見ればいつまでも彼の道楽に付き合ってやる義理はない。

気迫を練り上げ、雄介は動く。

直感を研ぎ澄ませ、間隙を縫い、ドラゴンロッドを大きく振り回して美猴を牽制。

すかさず相手の間合いに踏み込み、得物を打ち上げたところでさらに接近、がら空きになった胴を蹴りつけた。

そして束の間の間、宙に浮いていた美猴が地に足をつけたと同時、雄介は彼の背後に回っていた。

 

「甘いってばよ!」

 

転瞬の内に機転を利かせて美猴が旋回の勢いに乗せて棍で薙ぎ払う―――が、空を切る。

そこに雄介の姿はなかった。

 

「な―――!?」

 

認識が遅れ、本能が警鐘を鳴らす美猴の後ろには、再び背後に回った雄介がいた。

 

「足元がお留守だよ!」

 

それがフェイントだと理解した時には浮遊感が美猴を襲う。

体制が崩れ、無防備をさらす美猴の目に映るのは穂先を向け、狙いを定める雄介の姿だった。

 

「――――だああああああッ!」

 

叫ぶ雄介は美猴の鳩尾に渾身のスプラッシュ・ドラゴンを叩き込んだ。

大気中の水分が弾けるような感覚がドラゴンロッドを通じて腕に伝わった。

直線を描きながら吹っ飛ぶ美猴はそのまま真後ろに位置していた大木に激突、その衝撃で大木の幹に亀裂が走り、崩れるように地に倒れ伏す美猴とともにわずかに足元を揺らす地響きが荒れる息遣いを掻き消す。

残心し、息を整える足元が少しだけふらついた。

身体にたまったダメージや疲労は決して軽いものではない。

危険な線ギリギリの戦いだった。

だが、まだ事態が解決したわけじゃない。

みんなの元に戻らなければ、そう思った時、雄介の視界の端で美猴の指がピクリと動いた。

 

「いってててて………。いや~、なかなかの一撃だったぜぃ。正直今のはやばかった、さすがの俺っちも肝が冷えたってばよ」

 

相変わらずの純粋な笑みを浮かべて立ちあがる美猴に雄介は戦慄を覚える。

美猴の両手には真っ二つにへし折られた棍が握られていた。

おそらく、スプラッシュ・ドラゴンが直撃する寸前に棍を忍ばせて威力を削ったのだろう。

それでも、まさか立ち上がれるとは露とも思っていなかったために絶望の心地に襲われていた雄介を余所に、美猴は折れた棍を慊焉たる眼差しを向けていた。

 

                      ☆

 

美猴は心のどこかで退屈を覚えていた。

彼が求めることは強き者と戦うことただ一点。

戦うことで自分が満たされていると知ることができる。

戦うことで自分の強さを証明できる。

戦うことで自分はつまらないしがらみから解放される。

戦うことで自分は生きていると実感できる。

それでも、やはり何かが足りない、何かが違う。

そう思うようになったのはいつの頃からだろうか………。

もちろん、ヴァーリのように強さを認める者はたくさん知っている。

そのこと自体に不満はない。

しかし、それらは皆伝承に語り継がれる存在故強くて当たり前。

勝利したところで心にぽっかりと穴が開いたような虚無感を自覚した時、いつの日か美猴の心は戦うこと以外の刺激を欲するようになっていた。

それでも、強き者と戦っていけばいずれこの退屈も消えていくだろうと言い聞かせていた。

だが、戦いを重ねるごとにこびりつく虚無感は次第に肥大化していく。

そんな時に、美猴の前に現れたのが仮面ライダークウガと名乗るひとりの人間だった。

きっかけは舞い込んできた3大勢力の和平会談の知らせ。

いくつかの派閥が存在する『禍の団』で、美猴が所属しているグループ以外の連中が混沌だの変革だのとのたまっているが、そんなことは自分の知ったことではない。

たとえ世界が平和になろうと自分は戦って戦って戦うだけ。

とりあえず後に控える大きな戦いのためにヴァーリと合流しようと駒王学園に潜入し、状況を監視していたらただひとり、自分の存在を察知して立ち塞がったのが雄介。

それなりの強さを持っていることはすぐに分かったことで、最初は準備運動がてらの時間つぶしのつもりだった。

だが、いざ戦い始めるとどうだろうか。

妙な力を有しているとはいえ、精神面も身体能力も大きく劣るはずの人間が自分に喰らいついてくるではないか。

倒れても何度も立ち上がり、立ち向かってくる。

結果として自分は生命の危機を感じる一撃をもらい、武器も破壊されてしまう体たらくだ。

決して油断したつもりはなかったのだが、それでも今までの光景が美猴に現実を突きつける。

そして初めて気づく。

―――――自分の心は満たされている。

この感情の正体は何なのかはわからないが、今までにない感覚に戸惑いを覚えるも、それ以上に気分は高揚している。

ただ大きいだけの力とはまた違う強さを持つ者。

この出会いに、心に空いてた穴が塞がっている感覚に歓天喜地の域にいた。

世の中、まだ捨てたものじゃない。

だから、今はこの出会いを素直に喜ぶことにした。

 

「クックククク………かっかっかっかっか!」

 

高笑いが停止世界に響く。

 

「かっかっかっかっかっかっかっかっか!こんな愉快なのは久しぶりだってばよ!たかが島国と思ってたが、わざわざ足を運んで来た甲斐があったってもんだ!ごだいゆうすけ……五代雄介ね。オーケー!おまえさんの名前バッチリ覚えたぜぃ」

 

一方、何を思って笑いだしたのか見当もつかないでいる雄介は出方を窺っていた。

 

「五代雄介!」

 

さて、どう動くかと警戒していると、名を呼ぶ美猴がビシッと雄介を指し、そして、言う。

 

「今日からおまえさんは俺っちのライバルだ!」

 

「……………ハイ?」

 

突然の指名に今までの緊張感が吹っ飛んだ。

しかし拍子抜けをくらう雄介に構わず、美猴はひとり納得したように頷く。

 

「俺っちも前々からヴァーリのようにライバルがほしいと思ってたんだよ。ほら、ライバルってのはいるだけで精進に身が入るだろ?それに互いに強くなればそれだけ楽しく戦えるってもんだ。おまえさんの実力ならなら文句はないぜぃ!」

 

「いや、ちょ―――」

 

勝手に話を進めいていく美猴に物申そうとした雄介だったが、それは学園全体に拡散する力の波動によって遮られてしまった。              さらには目が眩むほどの閃光が瞬く間にして雑木林の景色を消し飛ばす。

どうにか踏みとどまり、何事かと思いモノクロの夜空を見上げれば赤と白の軌跡が衝突を繰り返していた。

間違いない、あれは禁手化した一誠とヴァーリだ。

 

「どうやら向こうも盛り上がってきたみたいだが、これ以上はちとマズイかねぇ………。つーわけだ、また次戦える時を楽しみにしてるぜぃ。またな!」

 

同じように赤龍帝と白龍皇の激突に苦々しく呟く美猴が改めて雄介と向き合うなり片手をあげて跳び去っていった。

 

「あ、待て!」

 

当然、雄介は風のように去って行った美猴の後を慌てて追いかけるのであった。

                                                             ☆                                                      

今の一誠はヴァーリを凌駕しかねない質量のオーラを迸らせている。

それは純粋な怒りから発せられるものだ。

きっかけはヴァーリが発動したハーフディメンション。

まばゆい光で包んだ万物を半分にしていく力。

最初は周りの木々が圧縮されていく現象に戸惑う一誠だったが、彼の引き金を引いたのはアザゼルが放った『つまり、ここにいる女どものバストも半分になる』という一言だった。

他人が聞けば何を場違いなことをと思うかもしれないが、性欲の権化とまで謳われた一誠にとってはまさに死活問題に値する事態なのだ。

思考が飛び、身体や精神といった兵藤一誠を構成するすべてを激情が支配する。

 

「やれるもんならやってみやがれ!二度と転生できないぐらい徹底的に破壊してやらあ!この半分マニアがァアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

常時の限界をはるかに超えるまでに倍加を果たした一誠の拳がヴァーリを地面に叩き付けた。

 

「アッハッハッハッ!なんだそりゃ、マジかよ?本当に力が跳ね上がりやがったよ!」

 

後ろでひとり爆笑しているアザゼルだったが、怒髪天を衝いている今の一誠はつっこむ気すらわいてこない。

彼の中にあるのはヴァーリに対する明確な敵意ただひとつ。

先の激しい衝突により両者とも兜が砕け、素顔が露わになっているため表情がよくわかる。

憤怒の一誠と対照的にヴァーリは嬉々とした笑みを浮かべている。

口元の血を拭う姿からはダメージを受けているようだが、その双眸は未だ戦意に満ち満ちていた。

 

「おもしろい………。おもしろすぎる!アルビオン、今の彼になら『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を見せるだけの価値はあるんじゃないかな?」

 

『自重しろ、ヴァーリ。この場でそれは得策ではない』

 

「―――我、目覚めるは、覇の理に――――」

 

しかし、アルビオンの警告を無視してヴァーリが何やら呪文のようなものを唱え始める。

 

『ヴァーリ!我が力に翻弄されるがお前の本懐か?』

 

アルビオンが憤激している様子を見るに、新たな攻撃が来ると危惧したドドメばかりの一撃を放とうとした時、夜空に浮かぶ月をバックにひとつの人影がヴァーリの前に舞い降りた。

 

「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」

 

そう言って現れた人物―――美猴がヴァーリに爽やかな笑みを向けていた。

 

「美猴か。何しに来た?」

 

「北のアース神族と一戦交えるから帰って来いってよ」

 

「そうか、もう時間か………」

 

「みんな!」

 

一誠を放置した形でヴァーリと美猴が勝手に話し込んでいた丁度そこに、後を追いかけていた雄介が駆け付けた。

 

「雄介、無事だったのね!」

 

雄介の姿を認めた途端、リアスが安堵の笑みを浮かべる。

やはり随分と心配させていたようで他のみんなも胸をなでおろした表情を作っていた。

 

「あいつは……」

 

「紹介するぜヴァーリ。あいつこそが俺っちのライバル!仮面ライダークウガ、五代雄介だぜぃ!」

 

突拍子もない美猴の言葉はその場にいる者全員を驚かせるには十分な威力を持っていた。

 

「ちょっと、どういうことなの雄介!?」

 

「なんだ、俺たちの知らないところで随分と仲良くやってたみたいだな」

 

「いやぁ、まあ、成行きみたいなものなんですけどね?」

 

動揺するリアスとからかうような口調のアザゼルを筆頭に集中する視線にどう反応すればいいのかわかず、雄介はただただ苦笑気味に答えることしかできなかった。

対して、ヴァーリが雄介に向けていた視線は怪訝なものから慮外なものに変わっていた。

 

「ほお、まさかお前が実力を認めるとはな。仮面ライダー、ますます興味が湧いてきたな」

 

「おっと、いくらヴァーリでもあいつは譲らないぜぃ。おまえさんには赤龍帝がいるからいいじゃねぇか」

 

馴れ馴れしく肩に肘を置いて美猴は軽い調子で抗議する。

 

「ふっ、そうだな。ようやくこちらもおもしろくなってきたところだ。また次に期待するとしよう」

 

だが、彼の行為を特に気にした風もなく、ヴァーリがまんざらでもない笑みを浮かべた。

 

「いや、つーかお前はなんなんだよ?いきなり現れやがって!」

 

ここに来て、今しがたの激戦を妨害され、さらには蚊帳の外にさせられていた一誠が感情に任せて問うのは当然の反応だろう。

彼の疑問にアザゼル答えた。

 

「そいつは美猴。闘戦勝仏の末裔だ。わかりやすく言えば西遊記で有名な孫悟空だ」

 

「孫悟空!?」

 

矢庭、さっきまでの怒りが吹き飛ぶぐらいの衝撃が一誠を襲う。

だがそれは雄介も同じだった。

つまり雄介は先程まで言葉通り、あの孫悟空と戦っていたことになるのだ。

グロンギに悪魔や天使、堕天使だけでなく今度は伝説の妖怪の登場。

いい加減、予想外にも程がある。

 

「正確には孫悟空の力を受け継いだ末裔、だがな。まさかお前まで『禍の団』入りしてたとは世も末だよ。いや、白い龍に孫悟空。お似合いっちゃあお似合いか?」

 

アザゼルの言葉に美猴はケタケタと笑う。

 

「かっかっか、俺っちは初代と違って自由気ままに生きるんだぜぃ。よろしくな、赤龍帝」

 

そうして一誠に気軽にあいさつした後、美猴は棍の穂先を地面に突き立てた。

地面に黒い闇が広がる。

ヴァーリと美猴の身体が闇の中に沈んでいく。

 

「待て!逃がすか!」

 

逃げようとしていると理解が至った一誠が駈け出そうとした瞬間、一誠の禁手化が解除され、赤い龍の鎧が霧散してしまった。

どうやらアザゼルに与えられた腕輪の制限時間が切れたようだ。

同時に激しい疲労感に一誠は地面に倒れ伏してしまった。

 

「あれだけの力を一瞬とはいえ、爆発的に発散したんだ。無理もないさ」

 

説明するアザゼル。

それこそが一誠とヴァーリとの決定的な差。

一誠がいくら一時的にヴァーリを超えたとしても、その力を長時間維持できなければ意味がない。

現実を痛感している間にも2人の姿が闇の中に呑まれていく。

 

「じゃあな、仮面ライダークウガ、また戦おうぜぃ」

 

「次戦うときは、もっと激しくやろう。もっと強く―――」

 

それだけ言い残し、ヴァーリは美猴とともに闇の中に消えていった。

 

                     ☆

 

「悪魔と天使と堕天使の共同作業ね」

 

「本当に和平が成立したのですね」

 

現在、3大勢力による戦闘後の後始末が行われている。

修復されていく駒王学園の風景にリアスと朱乃が表情を綻ばせている。

 

「これで、やっと………」

 

その隣で戦争にトラウマを抱えている雄介も和平の締結に心の底から歓喜していた。

校庭の中心ではサーゼクスが片腕の姿のアザゼルに謝罪していた。

 

「カテレアの件は私たちに問題があった。その腕に関しては―――」

 

「いいよ、もともと義手だったんだ。それにこっちもヴァーリが迷惑をかけたしな、未然に防げなかったのは俺の過失だ」

 

そう言うアザゼルの瞳には寂しさの陰りが写っていた。

きっとヴァーリと間で彼なりに思うところがあったのだろう。

未練を振り払うように背を向けて、アザゼルはサーゼクスたちの元をから離れていく。

 

「白は力を、赤は女を。どちらも驚くほど純粋で、単純なもんだ。神はいなくても世界は回るのさ」

 

詩を唄うように呟くアザゼル。

そして彼は憂いと懐かしさが入り混じった視線で雄介を捉える。

 

「仮面ライダークウガ、か。………どうやら、お前の魂は、お前以上におもしろい奴に受け継がれてるみたいだぜ。なに、心配すんな。もう同じ過ちは繰り返させはしねえよ」

 

堕天使の総督は雄介の姿に重なる面影に向かって呟いた。

 

「そういう約束だもんな―――リク」

 

                      ☆

 

「よお、今帰ったぜぃ」

 

「おかえり~、どうだったにゃん?」

 

アジトに帰還したヴァーリと美猴を出迎えたのはあからさまな語尾の女性だった。

着崩した黒い着物からはふくよかに実った豊胸の谷間や透き通った柔肌がまぶしい美脚がのぞいている。

誰もが羨む美貌を併せ持ち、そして何より目を引くのは頭の上でピコピコと動く猫耳とフリフリと揺れる2本の尾。

 

「残念ながら、会談を妨害することには失敗したが、それなりには楽しめたさ」

 

「カレテアも死んじまったぜぃ」

 

「ふ~ん、あっそ。いい気味にゃん」

 

「……アーサーとルフェイはどうした?」

 

「2人とも向こうで仮眠をとってるにゃん。まあ、ルフェイに関しては熟睡してるだろうけど」

 

そうか、と納得したヴァーリはその場を後にする。

おそらくもう2人の仲間を起こしに向かったのだろう。

 

「迎えに行っただけなのに随分と派手にやられたようね」

 

後に残された女性は美猴の持つ折れた棍に目を向けていた。

 

「出撃までには直しておくってばよ」

 

「まあ、いいけど。でもその割には嬉しそうじゃない。何かあったにゃん?」

 

武器が破壊されていたにもかかわらず、あっけらかんとした様子を不思議に思い訊ねてみれば、待ってましたと言わんばかりに美猴は破顔し、胸を張った。

 

「へへん、よくぞ聞いてくれた!実は俺っちこと美猴、この度ライバルができました!」

 

「へえ、あんたにライバルに選ばれるなんて災難な奴もいるにゃんね」

 

「おいおい、ひどくねえかぃ、それ?」

 

「冗談にゃん。でも興味はあるわね、どんな奴にゃん?」

 

好奇心が刺激され女性の猫耳が大きく揺れ動いている。

 

「おう、五代雄介っつう人間なんだけどな」

 

「――――え?」

 

が、美猴が雄介の名を口にした途端、女性の猫耳がピタリと動きを止めた。

その表情は驚愕に染まっている。

 

「いやぁ、こいつが強ぇのなんのって………ん?どうかしたか、黒歌?」

 

「え?……あ、ううん、なんでもないにゃん」

 

我に返り、慌てて笑顔を取り繕ってその場をごまかした黒歌と呼ばれた女性。

そうかと、相槌を打ちさらに得意げに語る美猴に安堵するも、内心では激しく動揺していた。

 

「五代、雄介………まさか、雄介………?」

 

無意識に黒歌は、誰にも聞き取れないような声音で雄介の名前を呟いていた。

 




すいません、本当は少し前にできていたんです………。
ただ、なんかクリスマスも近いし、少し前にイラスト描くって言ったわけですし、ちょうどいいかなという理由で更新を引き延ばしていました。
まずはこんな僕のわがままをお許しください!
イラストに関しては喜んでもらえると幸いです。

さて、というわけで駆け足気味ですが、和平が結ばれ、雄介にライバルできて、最後に伏線を残しつつも、これにて会談編は終了です。
長かった………話数じゃなくて期間がですけど…………。
本当、すいません。
来年からは新章、ライジング編をお送りします。
お楽しみに!

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