仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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EPISODE43 曲者

空を覆う巨大な魔法陣の明かりが怪しく照らす停止世界の中、駒王学園の趣のある佇まいは見るも無残な瓦礫の山と化していた。

上空でも地上でも爆音が鳴り響き、噴煙が舞い、怒号が木霊する。

校庭はすでに悪魔、天使、堕天使による3大勢力の和平会談を襲撃した『禍の団』との激戦区となっている。

黒いローブを被った魔術師の集団に立ち向かうのは雄介、祐斗、ゼノヴィア、イリナの4名。

4対幾百人の攻防戦。

さらに敵は次々と魔方陣から召喚され続けるため、人数が減ることはない。

しかし、誰の目から見ても圧倒的不利な状況にもかかわらず雄介たちは魔術師の集団を圧倒していた。

祐斗の聖魔剣が魔術師の防壁魔法ごと斬り払い、ゼノヴィアがデュランダルの斬撃とともに放たれる波動で校庭を縦横無尽にえぐっていく。

敵に同情するつもりはないが、ある意味、屠られる大勢の魔術師が不憫に思えてしまう。

イリナもまた、軽快な身のこなしと冴えるような剣戟で魔術師を斬り伏せる。

そして3人に負けじと雄介も次々と群れを成す魔術師を叩きのめしている。

飛来する怪光線をものともせず、校庭を駆け抜ける。

どうやら、魔術といっても怪光線しか放てないらしく、距離を詰めれた魔術師たちの誰もがなす術を失っていた。

その隙を雄介は人体の急所を的確に一撃を叩き込み魔術師の意識を奪っていく。

だが敵もいつまでも馬鹿ではなく、雄介に対して常に間合い以上の距離を保って攻撃を仕掛けてくるようになってきた。

挙句には空中からの攻撃が増え続け、空中戦や遠距離攻撃の手札が極端に少ない雄介にとって歯噛みする状況に次第に翻弄されてしまう。

 

「クッ―――ゴウラム!」

 

雄介の叫びで重低音を響かせながらゴウラムが空を駆る。

鋼鉄の装甲が魔術師の怪光線を簡単に弾き返すゴウラムの乱入に魔術師たちの連携が崩れていく。

 

「超変身!」

 

ゴウラムのおかげで自分が意識の外に置かれたと判断した瞬間、ペガサスフォームに超変身した雄介は素早くペガサスボウガンのトリガーを引き絞り、構えを取った。

極限にまで研ぎ澄まされた精神で狙いを定めるのはわずか一瞬。

 

ドオンッ!

 

鼓膜を震わす銃声が響く矢庭、空中に浮遊していた魔術師の内のひとりが体勢を崩し墜落する。

 

ドオンッ!ドオンッ!ドオンッ!――――

 

それからもステップを踏むような足取りで降り注ぐ怪光線を回避しながら雄介は圧縮した空気弾で次々と魔術師を撃ち落していく。

しかし、迫るペガサスフォームの制限時間のことも考えて別の姿への超変身を考えた時のこと。

 

「――――?」

 

不意に雄介はあらぬ方向から視線を感じた。

気配からして悪魔でなければ天使でも堕天使でもなく、ドラゴンや人間、グロンギの類でもない。

しばし謎の気配に拭いきれぬ違和感を感じ、結果、逡巡することなく雄介はその場で跳躍した。

ちょうど頭上の位置にいたゴウラムの脚に掴まりペガサスボウガンを構えて辺りを見回す。

そして見つけた。

銃口を向ける先――旧校舎裏の雑木林の一点に向けて雄介は躊躇なく発砲した。

直後、発射された空気の弾丸の着弾地点にいた人影が回避行動に移った瞬間を雄介の超感覚が確かに捉えた。

急いで雄介もその地点に向けて身を投げる。

空中でトリガーを引いて弾丸を装填、着地の受け身と同時に木々の間に身を隠す人影に向けて。

引き金を引いた。

だが人影はものの見事に空気弾の被弾を躱し、木々の間を縫うように駆け抜け雄介へ迫ってきた。

 

「超変身!」

 

眼前を人影が覆ったと同時、咄嗟の判断で横に跳んだ雄介は再度マイティフォームに姿を変えた。

とりあえずは制限時間が切れる前に姿を変えれたことに内心で安堵する。

 

「いやぁ、まさか俺っちが気配を気取られるとは思わなかったぜぃ」

 

聞こえたのはどこか飄々とした口調の男性の声音。

そして月下の元に晒された人影の姿が露わとなる。

まず目に入るのは三国志の武将が身に纏うような鎧を彷彿させる衣装に、肩に担いでいるのは男の身長と同等の長さを誇る棍。

頭部には金色の輪っかのような装飾品をつけている。

 

「遠路はるばる迎えに来てみればなかなかどうして……おまえさん名前は?」

 

尋ねてくる男の整った顔立ちから浮かべる爽やかな笑みからは不思議と悪意は感じられなかった。

だが悪意の有無以前に、それを差し置いて雄介は目の前の男性に慎重を禁じ得ないでいた。

ただその場に立っているだけのはずなのに、視線を外せないほどの緊張感に襲われる。

対峙するだけで目の前の男性が生半可な実力の持ち主でないと確信に至った。

しかし名前を尋ねられたにもかかわらず無視を決め込むほど雄介の性格は曲がってはいない。

 

「俺はクウガ。仮面ライダークウガ、五代雄介」

 

警戒を怠ることなく雄介は名を名乗った。

 

「へぇ、面白い名前だな。俺っちは美猴ってんだ。よろしくな」

 

ノリの軽い調子であいさつをする男性――美猴。

どうやら先ほど感じた視線の主は美猴のもので間違いはないようだ。

同時に、美猴は何者なのか、考えられる可能性はひとつ。

 

「お前も連中の仲間なのか?」

 

「まあ、そうなるかな?」

 

美猴のどこか含みのある言い方に引っかかりながらも雄介はさらに問いただす。

 

「なんでこんなことを、世界の変革とか言ってたけど目的は何なんだ!」

 

平和を願う想いは誰もが抱く理想であり真実。

種族が違えど、互いに理解しあい、手を取り合うことだってできる。

それが今回の会談で証明され、目の前で成就されようとしていた。

しかし、たとえ時代が変わっても世界から争いが消えた試はない。

平和を否定し、武力で訴え、争いを生みだし、負の連鎖を撒き散らそうと企てる輩が必ずどこかに存在するのである。

今まさに、手を伸ばせば届いていた願いを踏みにじられるような思いに、無意識の内に雄介は言葉に怒気を含ませていた。

 

「……さあね」

 

「え?」

 

だが、しばしの沈黙から返ってきた返答に、雄介の中で燻っていた怒りは溶けるように消えていった。

すると、覚えず呆ける雄介に気にもとめず、美猴はつまらなそうに嘆息した。

 

「仲間っつっても計画を立てて実行に移した首謀者はあくまでカテレア・レヴィアタンで、今回の襲撃に関して言えば俺っちは脇役どころか完全な部外者なんだわ。旧魔王派の奴らは世界に変革だのなんだの謳っちゃぁいるが、俺っちにとっちゃそんなもの全然興味がないんだってばよ。俺っちは自由気ままに楽しく生きれればそれで満足なんだよねぃ」

 

「それが、テロリストの仲間に加わるってことなのか?」

 

「ほら、その方が強い奴と戦えるかもしれないだろぃ?」

 

出会った時から悪意を感じないこともそうだが、先ほどからの美猴の物言い違和感を抱いていた雄介は短いやり取りの中でなるほどと内心で納得した。

どうやら目の前で屈託のない笑みを浮かべる美猴という人物は善悪の区別なしに強さだけを求める類の輩のようだ。

言葉通り、彼は世界の命運よりも戦うことを欲している。

死ぬことになったとしても心が満たされていれば本望なのだろう。

いわゆるバトルマニア、ひどい言い方をすれば戦闘狂。

状況を考えてもある意味で説得の難しい相手かもしれない。

 

「しかし……ふむふむなるほど。おまえさんなかなかのオーラを纏ってるじゃないか」

 

これからどうするべきか考えていると、興味ありげにこちらに視線を向ける美猴の声に雄介の意識が我に返った。

 

「俺っちは“仙術”ってのを嗜んでてねぃ、この世のありとあらゆる生命が持つ気の流れを読むことである程度なら相手の強さとかががわかるんだわ」

 

胸を張り、そう得意げに語る美猴。

仙術、という言葉を初めて耳にしたが、恐らくは魔法や魔術と似て非なるモノなのだろう。

そんなことを考えていると、美猴はひとつ頷き、挑戦的な笑みを向けてきた。

 

「よし、ついでだ。おまえさん俺っちと戦え」

 

「は?」

 

覚えず間の抜けた声を漏らしてしまった雄介。

まったくもって意味が理解できない。

だがしかし、目の前の男を放置するという選択は果たして正しいのだろうか。

この場を離脱し校庭に引き返したとして、もしも美猴が追いかけ来ればさらなる混乱を招いてしまうかもしれない。

誰にも言わずこの場に出向いたことは完全に雄介の落ち度である。

ならば、やはり自分がここで迎え撃ち、食い止めるのが妥当だろう。

決断した雄介は腰を落とし、いつでも動けるよう構える。

雄介の戦意を感じ取った美猴もまた大きく笑みを浮かべ、隙のない動作で棍を構える。

2人の研ぎ澄まされる戦意に呼応したのか、

校庭の方角から吹き荒ぶ爆風が一陣の風となり周囲の木々を揺らし始める。

枝葉同士が擦れる音がざわめきを生み、そして、一枚の葉が、静かに、地に落ちた。

 

「いくぜぃ!」

 

刹那、視界から美猴の姿が消えた。

まずいと本能が警告した時には既に、美猴は雄介の眼前にまで迫っていた。

 

「―――ッ!」

 

咄嗟に身体をねじり突き出される棍をよける雄介。

しかし、息をつかせる間もなくさらに間合いを踏み込む美猴は追撃する。

 

「そら、そら、そらぁ!」

 

残像が残るほどの速度で繰り出される連撃が襲う。

雄介は最小限の動作で躱し、回避しきれない攻撃は弾き、払い、一撃一撃を確実に受け流しながしていく。

 

「ははっ、やるねい!でも………」

 

突然、相手の間合いから離れようとした雄介の足元がグラついた。

 

「足元がお留守だぜぃ!」

 

足払いをかけられたと分かった時には鳩尾に突打をくらった。

 

「がはッ!?」

 

装甲越しにもかかわらず、以前にその身に受けたライザー・フェニックスの眷属悪魔ミラの打突とは比べ物にならない衝撃が全身を駆け抜けた。

息を吐き出しながら雄介の身体が後方へ大きく吹っ飛ぶ。

 

「くぅッ―――」

 

どうにか受け身を取り、体勢を立て直す雄介。

対する美猴は棍を振り回し、穂先を向けるようにして構えを取った。

深呼吸で息を整え、焦りを排除し、今一度冷静に相手との間合い測る。

高い速度と瞬発力を用いた棍術で相手は長いリーチを生かし自在に間合いを変えられる。

迂闊に踏み込めば瞬く間に二撃目を受けてしまうだろう。

呼吸とともに緊張を吐き出し、雄介は一思いに地を蹴った。

対して真正面から突っ込んでくる雄介に心底楽しそうな笑みを浮かべた美猴もまた迎撃に移る。

瞬く間に美猴の間合いに足を踏み入れた雄介。

狙われるのは人体の急所の一つ、額。

だが、雄介はさらに一歩間合いに飛び込む。

棍の穂先が迫るギリギリまでに引き付け、そして、かわした。

 

「!?」

 

一瞬、美猴の驚愕する表情が視界を過ぎるが、このまま止まるわけにはいかない。

雄介は握った拳を美猴の顔面目がけて思い切り振りきった。

だが―――

 

「あらよっと」

 

雄介の拳が美猴に届くことはなかった。

空振った勢いで崩れる態勢、その視界の端で美猴の棍の穂先が地面に突き刺さっていたのが見えた。

どうやら攻撃が躱されたと判断した美猴は瞬時に棍の狙いを地面に変更、そして突き立てるとそのまま棒高跳びの要領で跳躍したようだ。

予想以上の身体能力に舌を巻く雄介に、してやったりと口角を吊り上げて白い歯を見せる美猴は着地と同時、振り向きざまに棍を真横一文字に振り抜いた。

身に迫る薙ぎを、身を屈めてかろうじてよける雄介。

すぐに後ろに振り向くがすでに美猴の姿はなかった。

咄嗟に辺りを見渡そうと視線を巡らせようとしたが、突如後頭部に殴打の衝撃が襲った。

 

「がぁッ!?」

 

訳が分からないまま今度は脇腹に衝撃。

ようやく理解が追いついた時には腹、肩、脚と次々に殴打の猛攻に合っていた。

擦れ違いざまの攻撃、木から木へと縦横無尽に跳び回る身の熟しはまさに猿そのもの。

やがて、美猴が足場に利用していたいくつかの枝が着地と跳躍の余生に耐え切れず折れていく。

まともに姿を視認できない状況に苛立ちが積もるが、主導権は完全に相手に握られてしまっている今で焦りは禁物。

すべての攻撃を回避しようとすればいずれ動作が間に合わなくなる。

美猴の追撃は止まらない。

気力を振り絞り、咄嗟に雄介は横に跳んで猛攻を掻い潜り、足元に転がっていた手ごろな長さの木の枝を手に取った。

そして背後から迫る気配を感じ取りつつ、雄介は叫んだ。

 

「超変身!」

 

瞬時にタイタンフォームへと姿を変えて、雄介はタイタンソードを頭上に構えた。

当然、美猴が振り下ろした棍は雄介のタイタンソードによって防がれる。

咄嗟の起点に美猴の動きが一瞬止まった。

 

「だあああッ!」

 

これまでの激戦で培ってきた勘に任せて、雄介はタイタンソードを全力で振り切った 。

だが美猴は苦し紛れの雄介のカウンターをバックステップで回避。

そのまま雄介と距離を取る。

間一髪外したかと思ったが、雄介はわずかな手ごたえを感じていた。

すると、美猴の鎧にパックリと大きな切れ込みが走った。

斬り裂かれた部分をなぞりながら美猴は笑う。

 

「そうこなくっちゃなぁ!」

 

相も変わらず、美猴は実に楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

                      ☆

 

駒王学園上空では堕天使総督アザゼルと『禍の団』旧魔王の末裔カテレア・レヴィアタンの激しい攻防が繰り広げられている。

実力ではアザゼルが凌駕しているはずだが、カテレアは予想以上に食い下がっていた。

アザゼルが身の丈を大きく超える光槍を無数に出現させ、カテレアに投げ撃つ。

対してカテレアは防壁の魔方陣を幾重にも張り巡らせ攻撃をしのいでいる。

何者にも付け入る隙を与えない戦いは両者の攻防の余波だけで校庭に多大なダメージをまき散らしていく。

唯一の救いといえば、学園の敷地全体に強力な結界に囲まれていることで周囲の住宅街への被害を防いでいることだ。

 

「そろそろ覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」

 

すると、これまで劣勢だったはずのカテレアが含んだ笑みを浮かべ、懐から小さな小瓶を取り出した。

フェニックスの涙かと思ったが違う。

小瓶の中には小さな黒い蛇らしき影が蠢いていた。

そしてカテレアは何の躊躇いもなく、小瓶を傾け黒い蛇を飲み込んだ。

刹那―――空間が激しく振動し、駒王学園全域に力の波動を波立たせた。

カテレアの全身から膨れ上がる魔力が放たれたのだ。

 

「蛇だと……?」

 

訝しげに睨むアザゼルの目の前でカテレアの身体に黒い影が這っていた。

再びアザゼルが無数の光槍を放るが、カテレアは右腕を横に薙ぐだけで難なく消失させてしまった。

 

「食らいなさい!」

 

お返しとばかりにカテレアが展開した魔方陣から大多数の蛇が出現する。

蛇たちはうねりながら一点に収束し、極大な魔力の塊となった。

声を漏らす間もなく、ドス黒い魔力の奔流は一瞬にしてアザゼルを飲み込んだ。

勝った!とカテレアは不気味な破顔を見せた。

 

「その前にはっきりさせようじゃねえか」

 

しかし、勝利の余韻に浸っていたのはわずか一瞬の出来事、背後からこの世から屠ったはずの人物の声が耳朶を打ったのだ。

殺意を込めた表情で振り返ると同時にカテレアが魔力を纏わせた掌で裏拳を振るうが、アザゼルは軽々と受け止めた。

膠着する体勢のままアザゼルは不気味なオーラを漂わせるカテレアの魔力に視線を向けた。

 

「このオーラ、高々魔王の末裔風情の力じゃねえな。黒幕(バック)になにがいる?」

 

「答える意味はありません。あなた方は今ここで死ぬのですから!」 

 

「そうかい!」

 

怒りに歪んだ貌で叫ぶカテレアに対し、アザゼルはただ余裕の笑みを崩すことはなかった。

 

                      ☆

 

「そぉらよぃ!」

 

「ハアァッ!」

 

静寂の森に雄介と美猴の得物がぶつかり合う甲高い音が響いていた。

素早い身の熟しで攻め立てる美猴が有利に見えるが、雄介は思いのほか互角の戦いを見せていた。

襲い掛かる棍の猛襲をタイタンソードで冷静に受け止め、払い、弾き返していく。

 

ガキィイイインッ!

 

一際大きく甲高い音を鳴り響かせ、競り合う大剣と棍が火花を散らす。

このまま一気に追い込みをかけようとするが、美猴もまたタイタンフォームのパワーにも劣らない力で押し返してくる。

 

「さっき自分は部外者と言ってたけど、ならお前は何しに来たんだ!?」

 

一進一退の競り合いの中、雄介の問いに美猴は答える。

 

「言っただろ?迎えに来たんだよ、俺っちの仲間をねぃ!」

 

そして、美猴が口にした名前に雄介は耳を疑うことになる。

 

                      ☆

 

「ドラゴンショット!」

 

丁度その頃、ギャスパー救出に向かっていた一誠たちが祐斗たちと合流していた。

 

「イッセーくん!」

 

一誠とリアスとともに現れたギャスパーの無事な姿に祐斗たちは安堵の笑みを浮かべていた。

 

「またせたな、みんな!」

 

状況を把握し、サーゼクスにギャスパーを預けて一誠とリアスも殲滅戦の加勢に加わる。

眼下の戦闘に潮時を感じつつアザゼルは不敵な笑みを浮かべる。

 

「さて、そろそろ遊びは終わりにしようかね」

 

「それは……」

 

アザゼルが取り出したものにカテレアは怪訝な表情を見せた。

 

「戦争なんかよりよっぽどマシな俺の趣味だ」

 

アザゼルが手にしているのは手のひらサイズの黄金の槍。

 

「こいつは“堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴンスピア)”。俺が開発した人工神器だ」

 

予想外の言葉を口にし、自慢げに口角を上げるアザゼルは黄金の槍の切っ先を天に向けてある言葉を発した。

 

「―――禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

次の瞬間、槍から放たれた閃光がアザゼルを包み込む。

やがて光が止んだ後、そこにいたのはドラゴンを模した黄金の全身鎧(プレート・アーマー)を身に着けたアザゼルの姿だった。

背中から広がる十二の翼の漆黒が黄金に映える。

彼の手には二又の黄金の槍が握られていた。

 

「これが俺の最高傑作、“堕天龍(ダウン・フォール・ドラゴン・)の鎧(アナザー・アーマー)”だ」

 

鎧越しに感じるドラゴンの圧倒的な波動に、カテレアは無意識のうちに息をのんでいたことに気付いた。

カテレアの緊張を察したのか、アザゼルは軽く手招きの仕草を見せる。

 

「さ、来いよ」

 

「なめるなあッ!」

 

挑発されている理解しつつも、本能で吠えるカテレアは特大のオーラを身に纏い、アザゼルに向けて勢いよく突っ込んだ。

アザゼルもまた二又の光槍を構え、猛スピードで飛び出す。

 

ザシュッ!

 

それは一瞬の出来事。

気づいた時にはカテレアの身体は鮮血を吹きだしていた。

堕天使総督と旧魔王の末裔による激戦に決着がついた瞬間。

だが、カテレアの目はまだ死んではいなかった。

 

「新世界の創生……そこにあなたは必要ない!」

 

気力を振り絞り、カテレアは触手のように変化させた自身の腕をアザゼルに伸ばす。

さすがのアザゼルも反撃は予想外だったのか、よける間もなくカテレアの触手が左腕に巻き付かれてしまっていた。

急いで触手を引きはがそうとするが、剥がれるどころか見る見るうちに左腕と同化していく。

 

「三大勢力の一角を道ずれにできるのならこの身が滅びようとも意義がありましょう!」

 

怪しげな紋様を全身に浮かび上がらせるカテレアの整った貌は、おぞましいほど醜く歪んでいる。

憎しみと復讐の炎を瞳に燃やす彼女の姿に、アザゼルは諦めたように肩をすくめた。

 

「自爆か?ハ、御免こうむりたいね。取引としちゃぁ安すぎる」

 

面倒くさそうに嘆息したかと思えば次の瞬間―――

 

ザグン!

 

何の躊躇いもなく、アザゼルは光槍で自分の左腕を斬りおとした。

 

「そんな―――」

 

「お前程度、せいぜい腕一本がいいとこだ」

 

相変わらずの軽口をたたきながらアザゼルは槍を放る。

黄金の軌跡が眼前の現実に表情を愕然に染めるカテレアを貫くや否や、彼女は断末魔の叫びとともに塵となって虚空に消えた。

さして驚くことはない。

魔王の血族と言えど悪魔であることには変わりなく、カテレアもまた『悪魔にとって光は猛毒』という原則の中の存在だっただけのこと。

カテレアの消滅と同時に転送魔方陣が停止した。

禁手が解除され素顔を表に表すアザゼルは少なくとも、失った左腕に未練を感じている様子はなく、その手に持つのは人工神器の核の宝玉。

 

「まだ改良の余地がありそうだな。もう少し俺に付き合ってもらうぜ、ファーブニル」

 

そう言って、宝玉に軽くキスをした。

そうこうしている内に、眼下の戦いもまた終局に向かいつつあった。

敵の転送魔法陣が停止したことに加えて、一誠とリアスの加勢に一層勢いを増すグレモリー眷属+イリナ勢。

そして、とうとうすべての魔術師の姿が駒王学園の敷地内から消滅した。

 

「ほお、全滅させたか」

 

その光景に顎に手を添えながら感嘆するアザゼル。

しかし、突如その背後から予想外の一撃が彼を襲った。

 

ドッガアアアアアアアンッ!

 

戦闘を終え、一息ついた一誠たちの目の前で、アザゼルが墜落した地点が大きく陥没した。

何事かと驚く三大勢力の面々。

 

「てってって……俺もヤキが回ったもんだ」

 

立ち込める砂煙が消えた後、片腕で這い上がるアザゼルの口調や表情からはなぜか怒りや驚きの類の感情は感じられなかった。

地面に肘をつきながらアザゼルは視線を上空に向け、悟った様子で自分を襲った人物に投げかけた。

 

「―――なあ、ヴァーリ?」

 

「悪いなアザゼル。こちらのほうが面白そうなんだ」

 

白龍皇・ヴァーリが静かに舞い降りた。

 




鎧武、最高でした!

どうも、最近面白い作品はないかサイト内を転々としていたら、いつのまにかラブライブにハマりつつある自分がいました、青空野郎です。
自分もラブライブを原作にしたクロス作品を書くとしたら何がいいかと思案していたら思いついたのはガッシュ×ラブライブ!…………まさかの仮面ライダーじゃねぇ(笑)
でもけっこういけんじゃね?
これをきっかけに久しぶりにガッシュの漫画を引っ張り出してみたらもうww(笑)
思えばガッシュはサンデーの中で一番好きなマンガでしたからね。
個人的に至高の作品です。
なんとなくですが、本当になんとなくですが、新作出すとしたら何にしようか考えていたらふと出てきた一作です。
新作として投稿してるんでよかったら読んでみてください。

あと、DXDは「原作」、クウガは「本編」と呼び分けるという、作者のどうでもいいこだわりがあったりなかったり。
最近になってクウガについて気づいたこと………………タイタンフォームって走れるんですね(焦)
クライマックスヒーローズとかバトライドウォーとかでプレイすると普通に走れるんですよ。
んで、よく考えたらあれが走らないのはあくまで雄介の戦術であって、スペック調べてみると100メートルを7.2秒とそこそこ速いんですよね(笑)

そんでこの作品のペガサスフォームについてひとつ。
今話の中にペガサスボウガンを使う場面がありましたが、魔術師への攻撃はブラストペガサスではありません。
あれはただの空気を圧縮して固めた特殊な空気弾であり、クウガの封印エネルギーは込められていないという解釈でお願いします。
個人的な好みの話になるんですが、僕はライジングでもない限りブラストペガサスの連射はあまりピンとこないんですよね。
設定では連射はできないとか言いながらクライマックスヒーローズでは普通に連射とかしてましたけど……。
さすがに放つ弾が一撃必殺のブラストペガサスだけではペガサスフォームの見せ場がワンパターンになりそうで考えた案です。
一応タグにオリジナル設定とつけてますし、聖剣編でも一度ドラゴンフォーム(『EPISODE27 聖剣』参照)でも入れてますし……オリジナルかどうかはさておき。

そんでそんで………やっちゃいましたね(笑)
今回の最大の見せ所、美猴の登場です。
すでに内側に潜んでいたという、土壇場で原作ガン無視展開です!
イッセーvsヴァーリと並行して美猴登場案は割とこの作品制作の初期段階から考えていた内容です。
なんかあいつライバルにしたらわりとおもしろいんじゃね?という出来心から生まれた展開です。
別に雄介と孫悟空に何かしらの因縁があるわけでもなく、ホント悪ノリ100%でそれ以外に特に深い意味はないんですハイ。
果たして、雄介と関わることで美猴に何かしらの変化が訪れるのか……アドリブ全開で頑張ります!
原作4巻はもう少し続きます。
ではでは。

ガッシュ×ラブライブ………やっぱいけんじゃね?

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