天使、堕天使、そして悪魔の3すくみの陣営による会談の準備がいよいよ佳境に差し掛かるであろう頃合いのある日の夕刻、雄介は町外れに建つ神社に足を運んでいた。
裏で特別な約定が執り行われていたため悪魔でも入ることができるらしい。
先代の神主が亡くなり、無人になったこの神社をリアスが確保してくれたという。
「朱乃さん。これはどうすればいいですか?」
夕日が差し込む境内の中で木霊する雄介の声にいつか見た巫女服姿の朱乃が振り向く。
「ああ、それでしたらそちらの壁の方に置いておいてください」
言われたとおりに雄介は幾何学模様が書かれた謎のお札やらなんやら、何かの儀式に使うであろう代物を指示された場所に設置するという至極単純な作業を繰り返していく。
最終的な術式の発動をすべて朱乃が請け負っている間も、軽く拭き掃除で時間をつぶした。
「さて、雄介くん。私はイッセーくんを迎えに行ってきます。雄介くんは奥の部屋で休んでてください」
朱乃の言葉通り、儀式場となった境内は一誠のために用意された舞台である。
そして、もう一人ここに訪れるとある重要人物を迎えるための準備に、人手の追加として雄介に指名が入ったのだ。
それだけ言い残し、実に優雅な歩きで朱乃は境内を後にする。
朱乃を見送る雄介は素直に彼女の好意に甘えることにした雄介はとりあえず後片付けに取り掛かった。
☆
縁側沿いに面する和室に入った雄介は適当な場所に腰を下ろし、足を伸ばす。
遥か彼方で沈み行く夕日が雄介を朱く照らす。
靴下を脱いで素足になった足の指を曲げるとポキポキと骨が音を立てた。
自由になった両の足ををぷらぷらさせながら何を思ったのか、なんとなく腕を伸ばしてみるが、当然その手が届くわけもない。
意味のない自分の行動に失笑してしまう。
夕日に照らされる世界にカラスの鳴き声が耳朶を打つ。
空を切る腕を見つめながら、そういえばこうしてのんびりと夕日を眺めたことはなかったなあ、と柄にもなく物思いに耽ってみる。
今年の春先から今までの短い間に本当にいろいろなことがあった。
クウガの力を手に入れて雄介の日常は大きく変わった。
はぐれ悪魔や堕天使をはじめ、ライザー・フェニックス、コカビエル、そしてグロンギとの数々の戦いを繰り広げてきた。
常に命懸けで、実際に大怪我を負ったことだってある。
だが、つらいことばかりというわけではない。
リアスと朱乃と知り合い、小猫と祐斗とともに戦い、一誠とアーシアと友達になり、ゼノヴィアとギャスパーという仲間ができた。
そして今、敵対関係だった3大勢力が手を取り合おうとしている。
改めて、決して平穏とは言えない非日常を思い返すと本当にあっという間の出来事だった。
「―――!」
その時、雄介は悪魔や堕天使とは違う巨大な気配を感じた。
これもアマダムの影響なのだろうか、雄介も戦いに身を置いてきたことである程度の力の流れというものを感じ取ることができるようになっていた。
外に出て辺りを見回すとそれは本殿の方角、茜色に染まる空の一部が金色に輝いていた。
手筈通り、とある重要人物が御出でになったようだ。
顔を出そうかと思ったが、もしも自分が出ていくことで儀式が失敗でもしたら立つ瀬がなくなってしまう。
さらにそれが原因で塞がりかけている3大勢力の間の亀裂が広がってしまったなどという最悪の事態になったりでもすれば目も当てられないことになる。
そう結論付けた雄介は、また夕焼けの空を静観しながら様子を窺うことにした。
すると、しばらくして肌で感じていた金色の力の波動とはまた別の力がうねりに変化が起こした。
それは緩やかな水の流れが投じた一石によって生み出された波紋に阻害されたかのような感覚だった。
一体何が行われているのだろうという好奇心を抑えつつも、静観に徹していると程なくして金色の波動を放つ主の気配が消えた。
どうやら儀式は成功したみたいだと判断した。
静寂に戻った茜色の世界に、カラスの鳴く声がこだまする。
それから特に何をするわけでもなく、気がつけばすでに顔だけ残して沈む夕日を見送る雄介。
間もなくして、背後で襖が開かれた。
「お待たせしました」
振り向けばいつもの笑顔を浮かべる朱乃の姿があった。
☆
「どうぞ、お茶です」
「ありがとうございます。」
向かい合うように座る朱乃が出してくれたお茶を一服するとほう、とため息が出た。
「今日は雄介くんのおかげで助かりました。本当にありがとう」
「いえいえ。気にしないでください」
それからもお互いの様子を探るような言葉数の少ない会話が続いていく。
しかし、そんな会話にも限界が近づいてくる。
せっかく朱乃と2人きりになったのだ。
これ以上の回り道は不毛なだけだ。
覚悟を決めて雄介は朱乃に視線を向けた。
「朱乃さん。ひとつ訊いてもいいですか?」
「はい、なんでしょう?」
雄介の声音のわずかな変化を察したのだろうか、その時の朱乃はどこか悟ったような微笑を浮かべていた。
意を決して雄介は前々から訊こうと思っていた疑問を朱乃に投げかけた。
「朱乃さんは、堕天使の幹部の………」
予感はしていたのだろう、雄介の問いに朱乃は妙に落ち着いていた。
だがお茶の水面が表情に陰りを帯びる朱乃を映していた。
永遠と錯覚してしまう沈黙は長くは続かない。
小さく息をこぼした後、ゆっくりと朱乃は口を開いた。
「………ええ。私はもともと堕天使の幹部バラキエルと人間との間に生まれた娘です」
バラキエルの力を宿すもの。
以前にコカビエルが朱乃に向けて放った言葉だ。
朱乃もこの一言に過剰に反応を見せていた。
「私の母はこの国のとある神社の娘でした。ある日、傷つき倒れていた堕天使の幹部であるバラキエルを助け、その時の縁で私を身に宿したと聞きいています」
朱乃の話を聞いて心の内で納得する。
様子から察するに、朱乃とバラキエルとの関係は険悪なものと推測できる。
予想通りだったとはいえ、雄介は反応に困ってしまっていた。
かけるべき言葉を模索しているとおもむろに朱乃はその場で立ち上がった。
視線で追いかける雄介に背中を向け、そして翼を広げた。
「―――っ」
眼前の光景に雄介は言葉を失った。
それはいつも見る悪魔の両翼ではなく、片翼は悪魔のコウモリのような翼。
そしてもう片翼は、カラスの如き堕天使の漆黒の翼だった。
「汚れた翼……。悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています」
堕天使の羽を手に持つ朱乃は憎々しげにそう呟いた。
「この羽が嫌で私はリアスと出会い、悪魔になったの。――でも、生まれたのは悪魔と堕天使、両方を持ったさらにおぞましいバケモノ。汚れた血を身に宿す私にはお似合いかもしれません」
振り返り雄介を見つめる朱乃は自嘲の笑みを浮かべていたが、その瞳は今にも泣いてしまいそうなほどに悲痛で歪んでいた。
「……雄介くんはどう思います?一誠くんとアーシアちゃんの心を弄んで挙殺した挙句、さらにはこの町を破壊しようとした堕天使は嫌いよね」
朱乃の口調は問いかけるものではなく断定を決めてかかるものだった。
どうしてあげればいいのか、正解なんてわからない。
だが、自分で訊いたからこそ、ここで引き返してはいけないと思った。
中途半端な同情で彼女を傷つけてはいけない。
上辺だけの慰めの言葉でごまかしてはいけない。
だから―――。
心を決めた雄介はまず―――湯飲みを掴んだ。
一気に湯飲みを傾ければ、独特の苦みが口の中に広がっていく。
だが逆にそれが緊張で乾いた喉にちょうど良かった。
喉も潤い、ぷふぅと息をこぼした雄介は空になった湯呑を置いて、ゆっくりと口を開いた。
「確かに、俺は堕天使にいい印象は持っていません」
雄介の言葉を聞いて、やはり朱乃はさらに顔を曇らせた。
だが、構わず雄介は偽りのない想いを言葉に乗せる。
「でも、朱乃さんのことは好きですよ」
「―――ッ」
雄介の一言に、驚いた面持ちで朱乃の視線が雄介をとらえた。
「踏み込んだことを訊いちゃいました。本当に、すいませんでした」
膝に手を置いて頭を下げてまずは謝罪した。
雄介の行動に泡を食った様子で朱乃の言葉が飛んできた。
「そうではなくて、私は堕天使の血を引いてるのよ?私はあなたに嫌われまいとしてあなたに親しく近づいたのかもしれない。……いいえ、きっとそう。私は……最低の女だわ…」
とうとう自分を追い詰め始めてしまった朱乃。
膝から崩れ落ちるようにその場に座り込み自身の両肩を強く掴む朱乃の身体は小さく震えていた。
朱乃の心が不安と恐怖に押し潰されそうになったその時だった。
「朱乃さん、生きてますか?生きてるなら、生きてることを自分で楽しくしたほうがいいと思うけどな」
意想外の雄介の言葉に半分理解が追い付かないまま朱乃は顔を上げた。
いつの間にか、少し近寄れば鼻先がぶつかってしまいそうな至近距離に雄介の笑顔がある。
ダメっすか?とあどけなく笑む雄介に朱乃はただただ唖然とするだけだった。
「雄介くん……」
「大丈夫です。朱乃さんは汚れてなんかいません。まして、決してバケモノなんかじゃありません。何があっても朱乃さんは朱乃さんなんです。だから、たとえ朱乃さんが堕天使の血を引いているなら、それもひっくるめて俺は朱乃さんのすべてを受け入れます」
最初は困惑する朱乃だったが、雄介の言葉を理解した途端に涙の雫が頬に一筋の軌跡を画い
た。
感情が制御を忘れてしまったのか瞳から涙がとめどなく溢れてくる。
だが、涙が伝う表情はとても穏やかな微笑を浮かべていた。
自身を縛り付ける枷が砕けるかのように、朱乃の堕天使の翼が散り消える。
「…………殺し文句、言われちゃいましたわね。……そんなこと言われたら本当の本当に、本気になっちゃうじゃない……」
涙を拭いながら小さく呟く朱乃。
そして雄介はというと―――。
「あ、朱乃さん……?」
見事なまでに当惑していた。
まさか泣かれるまでとは予想外だったらしく、完全に狼狽してしまう。
「朱乃さん?」
もう一度窺うように名前を呼ぶと、朱乃につと飛びつかれた。
そのまま押し倒され、気づいた時には朱乃に抱きつかれる形になってしまっている。
ふいうちのような朱乃の行動に慌てふためく雄介の視界の隅で湯呑が倒れていたが元に戻す余裕はなかった。
「決めました。雄介くん。私、決めましたわ」
しどろもどろな状態で反応に困る雄介の耳元で朱乃が囁く。
「うふふ、雄介くん。―――2番目で構いませんわ」
「に、2番目?」
なんのこっちゃと目を白黒させる雄介に朱乃はこくりと頷く。
「ええ、2番目です。割といいポジションかもしれません。――何より、浮気って感じで燃えますもの」
ひとりで自問自答し結論を下す朱乃。
なにか不穏な単語が聞こえた気がしたが、雄介が言うよりも早く朱乃の妖艶な唇が開かれる。
「雄介くん。私のこと『朱乃』って呼んでくれる?」
「え?あ、いや、先輩を呼び捨てにするのはいかがなものかと……」
「一度だけでいいから、お願い」
わかっててやっているのか、朱乃が潤んだ瞳で懇願する。
結局断りきれず、雄介は一度深呼吸で心を落ち着かせて腹を括った。
「………………あ、朱乃」
うまく言えた自信はない。
発音事態うまくいったか怪しいレベルだ。
果たして朱乃の反応やいかに………。
「うれしい!」
笑顔を輝かせながらいつもの凛としたものではなく年相応の女の子らしい声音をあげて、さらに抱きしめる腕に力を込められた。
よくよく思い返せば、朱乃は翼を広げるために巫女服をはだけさせていた。
そんな格好で抱きつかれたものだから、直に押し付けられる豊かに実った両の胸の感触に雄介の平常は盛大にかき乱されてしまう。
頭の中が真っ白になる矢庭、朱乃が膝に誘導し、雄介は膝枕の体勢を取らされていた。
エ?ナニコレ?ドユコト?
柔らかな感触を楽しむ余裕もなく疑問符が吹き荒れる雄介に朱乃が微笑む。
「リアスの特権、ひとつ奪ってしまいましたわ。うふふ、なんだかいけないことをしている気分。雄介くん、気持ちいい?」
わずかに残存する理性をフルに働かせて雄介が慎重に言葉を選ぼうとしたときだった。
「―――何をしているのかしら、雄介?」
突如聞こえた全身が凍りつくかと思うぐらいのドスの効いた声。
刹那に雄介の本能が警鐘を鳴らしてから正座するまでわずか0.3秒。
油の切れた機械のように硬直する首を向ける先にいたのは、やはり紅色のオーラを全身ら解き放つリアス・グレモリーさまだった。
仁王立ちするその姿は見るからに怒り心頭のご様子。
突き刺さる絶対零度の視線に雄介は目を合わせられないでいる。
「まったく、油断も隙もあったものじゃないわ。私以外の膝で膝枕だなんて………ッ!」
額に手を当てながらリアスが怒りを感じさせる歩みで近づくと、
むんず!
頬を思い切り引っ張られてしまった。
「リアスさん、いたいれす……」
頬を引っ張られるなんて人生初の経験であったが、なるほど、グレイフィアに頬を引っ張られていたサーゼクスの気持ちが少しわかったような気がした。
しかしそんな雄介の気持ちを知る由もなく、リアスは低く迫力のある声で問う。
「もう用事は済んだのよね、雄介?」
「そうですね…」
「ならもうここに用はないわ!帰るわよ!」
半ば強引に雄介の腕を引きながらリアスが踵を返す。
「それじゃあ朱乃さん、また明日!」
雄介は咄嗟に頭を下げてリアスの後に続く。
「―――1番候補のリアス部長がうらやましい限りですわ」
その時後ろから聞こえた朱乃の声はいつもの彼女のものに戻っていた。
雄介にはその内容の意味を理解することはできなかったが、リアスはその言葉に一度足を止めてしまった。
だがそれも束の間、リアスは苛立ちに満ちた足取りで、さらに強く雄介の腕を引いていく。
それはまるで、一刻も早くこの場から離れようとしているかのようだった。
ほんの一瞬だったが、その時のリアスはとても寂しげな表情を浮かべていたのをはっきりと見た。
☆
……さて、その後2人の行方を知る者はいない。
雄介がどんなお仕置きを受けたのかは皆様のご想像にお任せします(笑)
☆
「アザゼル、明日の会談はやはり俺も出席しなければいけないのか?」
「当然だ。お前は白龍皇なんだからな」
堕天使総督アザゼルと白龍皇ヴァーリが建設途中の高層ビルの上から夜の町を見下ろしながら会話をしていた。
「…………なあ、アザゼル。本当にもう戦争は起こらないのか?」
わずかに憂いを含んだヴァーリの言葉にアザゼルは呆れ笑いで返す。
「ただ戦いを求める、か。ドラゴンに憑かれた典型的なタイプだな。長生きできないぜ?」
「いいさ。そんなものに興味はない。俺はこの時代に生まれたことを残念に思うよ。神がいない世界。……神は、俺が倒してみたかった」
「白龍皇らしい限りで何よりだよ。で、裏腹にそのまんざらでもない笑みをはどういう了見だい?」
「そうだな。神がいないのなら―――」
「言っておくが、間違っても“神殺し”に挑もうなんて馬鹿な考えは勘弁してくれよ?」
ヴァーリの発言を遮ったアザゼルの口調はいつもと変わらない飄々としたものだったが、ヴァーリを捉える眼は笑ってはいなかった。
「今奴が
だがアザゼルの断定的な物言いはヴァーリの興味心を刺激するだけだった。
「参考までにどんな奴だったのか聞いてもいいか?」
「お前は人の話きいていないのか?」
「なに、あくまで参考までにだよ」
「………………はぁ」
心の中でヴァーリの性格に呆れながら大きく嘆息をこぼすアザゼル。
「おもしろい奴だったよ。これでも同じ月を見ながら酒を交わした仲なんだぜ」
初めて知る堕天使総督の意外な過去に、ヴァーリは珍しく驚いた様子を見せた。
「ほお。で、結局そいつはどうなったんだ?」
夜空にただひとつ浮かぶ満月を見上げながら、憂鬱な面持ちを浮かべたアザゼルはぽつりぽつりを言の葉を紡いだ。
「消えたよ。世界に、運命に、そして―――己自身に絶望してな」
アザゼルの言葉は頬を撫でる一陣の夜風にさらわれて、そして溶けるように夜の世界に消えていった。
☆
そして3大勢力のトップ会談の日が訪れた。
時刻は深夜、駒王学園の新校舎にある職員会議室で会談は行われる。
すでに各陣営のトップたちは待機しているらしい。
そのせいか、窓の外を覘けば、悪魔、天使、堕天使の軍勢が新校舎をぐるりと囲っていた。
肌で感じられるピリピリとする雰囲気はまさに一触即発の空気。
もしも今日の会談で協定が決裂でもすれば即戦争に発展してもおかしくないと祐斗が言っていた。
心の底から何も起こらないことを願うばかりだ。
「―――さて、行くわよ」
確認するリアスに皆が頷く。
今この場にいるのはリアスを筆頭に、雄介、朱乃、祐斗、一誠、アーシア、小猫、ゼノヴィアの8人だ。
成果は出つつあるもやはり未だに神器を使いこなせないギャスパーはお留守番である。
「失礼します」
リアスがノックした扉を開けた。
そして目に飛び込んできたのは、特別に用意させたという豪華絢爛なテーブルを囲む人物たちの真剣な面持ちだった。
静寂に包まれる空気に自然と背筋が伸び、緊張で思わず生唾をもみこんでしまった。
悪魔側には4大魔王の内の2人、サーゼクスとセラフォルー、彼女の妹にして生徒会長のソーナ。
グレイフィアがお茶用台車の脇で待機していた。
堕天使側は総督アザゼルと白龍皇ヴァーリ。
天使側は天使の長ミカエルと側近でゼノヴィアのかつての同期の紫藤イリナが傍に控えていた。
イリナの登場に意外に思う一同。
特にゼノヴィアが一番驚いていた。
しかし、事情が事情により両者とも視線を合わせないように顔を背けてしまった。
話で聞いた通り、頭上に金色の輪っかを漂わせるミカエルは優しげな笑みを向けてくれている。
サーゼクスとセラフォルーは装飾が施された衣装に身を包み、アザゼルも黒いローブ姿で愉快そうに口角を上げていた。
サーゼクスは置いておいて、やはりさすがにこの場で浴衣やコスプレ衣装は自重してくれたようだ。
「私の妹と、その眷属だ」
サーゼクスが他の陣営に紹介し、リアスも会釈する。
「報告は受けてます。改めてお礼を申し上げます」
「悪かったな。俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」
誠意を込めるミカエルと悪びれた様子もないアザゼル。
受ける印象がまるで違う両者の言葉に、リアスは口元をひくつかせながらも冷静に務めながら再度会釈をして踏みとどまる。
そのあとは促された席に移動し、全員が着席したのを確認したところでサーゼクスが口火を切った。
「全員がそろったところで今回の会談の前提状況をひとつ。この場にいる者たちは最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」
重みのある声音が静かに木霊する。
特に変化のない様子からあの場にいなかったソーナとイリナも事前に知らされていたと判断する。
「では、それを認知しているとして話を進める」
こうして、サーゼクスの一言で3大勢力の会談が始まった。
やっと40話か………。
とりあえず朱乃フラグを回収しました。
そして朱乃への殺し文句に、原作の蝶野への言葉を採用。
絶対使いたい雄介の名台詞でしたからね(笑)