エクスカリバーの破壊に協力したい。
一誠の発した一言によって、どこにでもあるファミレス店内の一角がシンと静まり返った。
緊張のためか、ごくり、と生唾を飲む音が妙によく聞こえた気がした。
一誠が持ちかけたのはエクスカリバーの破壊許可をイリナとゼノヴィアからもらうというものだった。
これなら、祐斗が聖剣を破壊することで自分と同志の復讐を果たし、イリナとセイノヴァは堕天使たちの手から奪還できると考えた一誠は彼女たちと接触を図ろうとしていたのだった。
ただ、一誠は今になって
そして一誠と同席する雄介、小猫、匙は黙ってゼノヴィアとイリナの反応を伺っていた。
先に静寂を破ったのはゼノヴィアだった。
「そうだな。キミたちに破壊できるのであれば一本ぐらい任せてもいいだろう。ただし、そちらの正体がバレないようにしてくれ。一時的にとはいえ、こちらとしてもできれば悪魔と手を組んだなんてことは上に知られたくはないからな」
「…へ?」
意外とあっさりと許可が下りたことに一誠はポカンと口を開け、間抜けな声を漏らした。
「ちょっと!いいの、ゼノヴィア?相手はイッセー君とはいえ、悪魔なのよ?」
ゼノヴィアの返答に隣に座っていたイリナが慌てたように異を唱えた。
「イリナ。正直言って私たちだけで聖剣3本全て回収とコカビエルとの戦闘は厳しい」
「それはわかるわ。けれど…」
「最低でも私たちは3本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ればいい。私たちのエクスカリバーも奪われるくらいなら自らの手で壊せばいい。それで奥の手を使ったとしても、任務を終えて無事帰れる確率は3割以下だ」
「それでも高い確率だと覚悟を決めてここに来たはずよ。それこそ、私たち信徒の本懐じゃない」
「気が変わったのさ。生憎、私の信仰は柔軟でね。いつでもベストなカタチで動き出すことに越したことはないだろ?」
開き直るような言い方をするゼノヴィアにイリナはさらに声を上げた。
「前から思っていたけれど、あなたの信仰心は微妙におかしいわよ!?」
「否定はしない。だが任務を遂行して無事に帰ることこそが、本当の信仰だと信じている。生きて、これからも主のために戦う。違うか?」
「違わないわ。…でも!」
食い下がるイリナをゼノヴィアはさらに遮った。
「だからこそ、悪魔の力は借りない。代わりにドラゴンの力を借りる。上もドラゴンの力は借りるなとは言っていない」
ゼノヴィアの視線が一誠の、彼の中に宿る赤龍帝に向けられ、彼女は嬉々として語る。
「悪魔になったとはいえ、ドラゴンの力は健在と見ているよ。伝説通りならキミの力は最大にまで高めれば神すら超えられるんだろう?それだけの力ならエクスカリバーエクスカリバーも破壊できるだろう。この出会いも主のお導きだと考えるべきだね」
「確かにあなたの言う通りかもしれないけど…、どう考えても詭弁よ!やっぱりあなたの信仰心は変だわ!」
「変で結構。しかしイリナ。彼はキミの幼馴染なんだろう?なら信じてみようじゃないか。彼の、ドラゴンの力を」
自信に満ちたその言葉に、とうとうイリナは沈黙し、静かに頷いた。
「OK。交渉成立だ。んじゃあ、さっそく今回の俺のパワーを呼んでもいいか?」
心の中で安堵を噛みしめながら、一誠は携帯を取り出した。
☆
「…話は分かったよ」
一誠から連絡を受け、ファミレスに顔を出した祐斗は説明を受けた後、嘆息しながらコーヒーを口に含んだ。
「正直、キミたちにエクスカリバー破壊を承認されるというのは遺憾だけどね」
「ずいぶんないいようだな。そちらが『はぐれ』だったら問答無用で斬り捨てるところだ」
ゼノヴィアと睨み合う祐斗にイリナが訊ねる。
「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね?エクスカリバーと、教会に」
「当然だよ」
鋭さを宿らせる瞳を細めながら冷たい声音で肯定した。
「でもね、木場君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生できたの」
「だからと言って、計画失敗と断じて被験者全員を始末していい理由になると思っているのか?」
祐斗に憎悪の眼差しを向けられ、イリナも反応に困っていた。
「その件に関しては私たちの間でも最大限に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」
「堕天使側に?その者の名は?」
ゼノヴィアの言葉に興味を惹かれたのか祐斗が訊ねた。
「“バルパー・ガリレイ”。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」
その名前に雄介は聞き覚えがあった。
『とにかく、一度戻れ。ガリレイ殿がお待ちだ』
確か、フリードのもとに現れた堕天使のひとりがそんなことを言っていたような気がする。
おそらくその人物が祐斗の仇敵なのだろう。
横を見れば、祐斗の瞳に決意の光が宿っていた。
「なら、僕も情報を提供したほうがいいようだね。先日、エクスカリバーを持ったエクソシストに襲撃された。その際、新譜を一人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」
祐斗の言葉に雄介と匙以外の全員が驚いた。
「それ本当なのか、木場!?」
思わず一誠が訊いてきた。
「まあね。その時雄介君も一緒にいたよ」
全員の目が雄介に集中した。
その時、なぜか雄介はおもむろにテーブルに置いてあった塩を手に取って、舐めていた。
「「「「「「……」」」」」」
一瞬、緊迫した空気がぶち壊れたような感じがした。
「?…ああ、ゴメンゴメン。続けて」
しょっぱそうに顔をしかめた後に一誠達の視線に気づいた雄介は謝罪を入れ手続きを促した。
祐斗は気を取り直したようにコホンと咳払いをして、話を再開させた。
「名前はフリード・セルゼン。この名前に覚えは?」
それを聞いた匙を除く全員がわずかに顔をしかめた。
やはり、あまり関わり合いになりたくない人物なんだろう。
それは数分対峙しただけの雄介でも感じ取れたことだ。
祐斗の言葉にセゼノヴィアとイリナの2人は同時に目を細めた。
「なるほど、奴か…」
「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。13歳という若さでエクソシストになった天才だ。次々と悪魔を滅していくその功績は大きなモノだったわ」
「だが、奴はあまりにもやりすぎた。奴には信仰心なんてものは最初からなかった。あったのはバケモノに対する敵意と殺意。そして同胞にすらも手をかける異常なまでの戦闘への執着心。異端にかけられるのも時間の問題だった。なるほど。奴は奪った聖剣を使って同胞に手をかけていたか。あの時、処理班が始末できなかったツケを私たちが払うことになるとはね」
忌々しげに呟くゼノヴィアの言葉に雄介は内心で納得した。
「まあいい。エクスカリバーの破壊の共同戦線といこう。何かあったらここへ連絡をくれ」
ゼノヴィアはテーブルに置いてあった紙ナプキンを一枚取り出し、ペンを走らせた。
そして、連絡先が書かれたモノを一誠に渡した。
「サンキュー。じゃあ、俺たちのほうも―」
「イッセー君の携帯番号はおばさまからいただいてるわ」
あっけらかんとした言葉に思わず一誠は耳を疑った。
「ウソん!?マジで!?なんで!?」
「では、そういうことで。この礼はいつかさせてもらうぞ。赤龍帝、兵藤一誠」
席を立つゼノヴィアにイリナも続いた。
「食事ありがとうね、イッセー君!よかったらまた奢ってね!悪魔だけど、イッセー君の奢りならアリだと主も許してくれるはずだから!ごはんならいつでもOKなのよ!」
その時、2人を見送る一同の中で雄介はゼノヴィアから向けられた視線に気づいた。
その視線に何かを察した雄介は2人が店から出るのを確認して、おもむろに立ちあがった。
「ゴメン。そろそろ店番の時間だから、俺も失礼させてもらうね」
「そっか。悪かったな、つき合わせちまって」
「ううん。俺から頼んだことだから気にしないで。それじゃ、また明日」
代金を置き、速足で店を出ると、丁度一誠たちの席から死角になる位置に視線を向けた。
そこには目を細めるゼノヴィアと、柔らかな笑みを向けるイリナがいた。
☆
雄介はゼノヴィアとイリナの2人に連れられて、近くの歩道橋の上を歩いていた。
ファミレスからここまで誰も口を開くことはなかったが、歩道橋の真ん中に差し掛かったところでゼノヴィアは歩みを止め、後ろにいる雄介に振り返り訊いてきた。
「私は回りくどいはあまり好きではないからね、単刀直入に聞かせてもらうよ。キミはリアス・グレモリーの眷属でもなければ悪魔ですらない。最初はまさかと思っていたけど、今、確信した。…キミは人間だろ?」
自分の言葉に絶対の自信を持つゼノヴィアは射るような視線を雄介に向けた。
「そうだよ。俺は人間で、今はリアスさんたちに力を貸してるんだ」
ゼノヴィアの疑問に対し、否定する理由もないので雄介は即答した。
「やっぱりね。昨日初めてあなたを見かけた時、あなただけ彼女たちと雰囲気が違っていたからね。でも、ならあなたは何が目的で悪魔なんかと一緒にいるの?木場君っていうこと同じ復讐?あ、もしかして脅されてるとか?」
今度はイリナが人差し指を顎に当てながら訊ねた。
「別にそんなんじゃないよ。俺は、俺がやりたいことを、俺にできることをしてるだけ。誰かに言われたからじゃない。俺自身の意志で協力してるんだよ」
「もしかして、リアス・グレモリーとの間で何か契約でも交わしてるのかい?」
ゼノヴィアの問いに雄介は静かに首を横に振りながら答えた。
「契約というより…誓い、かな?」
「誓い?」
「うん…」
雄介は歩道橋の手摺に腕を置き、晴れ渡る青空を仰ぎながら語り始めた。
「俺には守りたいものがあるんだ。けど、どんなに頑張っても俺ひとりの力じゃ限界があるんだ…。キミたちは俺が力を貸してるって言ってるけど、それは違う。俺もリアスさんや他のみんなの力を借りてるんだよ」
「どうしてそこまで…?」
2人は悪魔はという存在は邪悪で汚らわしいものだと認識している。
そんな彼女たちにとって、雄介の言葉は遺憾以外の何物でもなかった。
「理由なんてないよ」
雄介は自身の拳を静かに、そして力強く握りしめた。
「キミたちだって神様のために戦ってるんでしょ?それと同じだよ」
穏やかな笑みを浮かべて雄介は言う。
だが、その言葉にゼノヴィアは静かな怒りを表した。
「まさかキミはそんな理屈で私たちの信仰と同類扱いする気かい?詭弁もいいところだよ。悪魔なんて所詮は淘汰されるべき存在だ」
「それでも、やっぱり俺はそうは思わない」
臆することなく雄介はゼノヴィアの言葉を否定した。
自信に満ちたもの物言いをする雄介の言葉にイリナは聞き返さずにはいられなかった。
「そこまであのヒトたちに肩入れして、あなたに何かメリットでもあるの?」
「損得の問題じゃないよ。大切なのは何が正しくて、何が間違ってるかだから」
その瞳には何事にも揺らぐことのない強い意思が宿っていた。
しかし、その言葉にゼノヴィアは呆れ半分で嘆息気味な呟きで返した。
「なるほど。キミの言いたいことは分かった。でも、やはり私たちはキミの正義を理解することはできない」
「それでいいんじゃないかな?」
雄介の躊躇いのない肯定する刹那の返答にゼノヴィアとイリナはそろって目を見開いた。
まるで信じられないという風な視線だった。
しかし、雄介は構うことなく士が教えてくれたことを思い出しながら語り始めた。
「もしそんな簡単に分かり合えたら最初から争いなんて生まれなよ。俺の正義と、キミたちの正義が違うように、みんなそれぞれが違う正義を持ってるんだ。俺たちが戦ってる、悪と思ってるそれは結局、相手にとっての正義でしかないんだ。戦争なんて、正義の擦れ違いでしかないんだ…」
☆
静かに語りながら雄介は思い返した。
雄介は自分に与えられたクウガという力を悪魔や堕天使から『人』々を守るために使ってきた。
それが正しいことだと考えたからだ。
では、なぜその考えが正しいと思ったのか。
それは、雄介は『人』で、常に『人』の立場で考えていたから。
「でも、だから俺たちはその正義って奴をぶつけ合って、初めてお互いを知ることもできるんだよ」
ならば、何故『人』ではないリアスたちも守りたいと思ったのか。
友達だから。
同じ時間を過ごしたから。
優しい笑顔を向けてくれるから。
それもある。
でも、それだけではない。
「と言っても、人からの受け売りなんだけどね…」
常に強者に襲われるのは罪のない弱者である。
そんな一方的な関係性を雄介は嫌悪した。
「とにかく!俺が言いたいのは、俺は俺の守りたいものを守りたいってこと。それが、俺の正義だから」
ならば、もしもその立場が逆転したらどうなるのか。
「それじゃ、しばらくの間、同じ目的を持つ者同士よろしくね」
もし、圧倒的に強い力を持った『人』が何の罪のない悪魔や天使、堕天使を襲うとしたら自分はどうするのか。
「待て。最後にひとつだけ教えてほしい」
雄介は迷わず、自分の持てる全力を尽くして彼らを助けたいと思った。
「何かな?」
誰かが誰かを殺すという行為に種族など関係ない。
「キミの言う守りたいものとは一体なんだ?」
たくさんの『ヒト』たちの笑顔と、みんなが笑顔でいられる明日を守ること。
それが、雄介が本当にしたかったこと。
「みんなの笑顔だよ」
それが、力を与えられた雄介の正義なのだ。
☆
ほとんど照れ隠しではにかんだような笑みを浮かべ雄介が話を締めた雄介は彼女たちに背を向けた。
「そうだ。俺からも最後にひとつだけ」
再び両者の間に沈黙が流れていたが、何かを思い出したように雄介が振り返った。
「俺は昨日、キミたちがアーシアちゃんに言ったことを忘れたわけじゃないから。もしキミたちがみんなに手を出すようなことがあったら…その時は容赦しないから」
穏やかな笑みを浮かべる雄介の視線はしっかりとゼノヴィアとイリナの2人をしっかりと捉えている。
そして、内に秘めた感情を乗せた口調で告げたのを最後に歩道橋の階段を下りて行った。
☆
雄介が去って歩道橋に残された2人はしばしの間、その場から動かなかった。
いや、動けないでいた。
ふとゼノヴィアは、自分の掌に視線を落とした。
いつの間にか、その掌は汗でぐっしょりと濡れていた。
「ねえ、ゼノヴィア…」
「ああ…」
イリナに呼ばれ返事をするゼノヴィア。
ただ、2人ともその声が少しばかり震えていた。
いくら頭の中で言い訳を並べようとしても、心が、本能がそれを否定してしまう。
もはや、認めざるを得ない。
あの瞬間、ゼノヴィアとイリナは五代雄介に恐怖心を抱いていたということを…。
☆
それから数日後、事態は動き始めた。
放課後になると教会信徒の一団に変装した雄介、一誠、小猫、匙、そして祐斗の『エクスカリバー破壊団』は人気のない場所を中心にエクスカリバーを捜索していた。
「ふぅ、今日も収穫なしか」
気落ちするように匙がため息を吐いた。
何気にエクスカリバー破壊団を結成してから今まで、積極的に協力してくれていた。
小猫から話を聞くと、どうやらスケベ同士、一誠と馬が合ったようだ。
簡単に言えば、匙はシトリー眷属版の一誠だとか。
とにかく、そんな感じで彼らは毎日、敵が餌に食いつくのを根気よく待っていた。
そして、何の前触れもなくその時は訪れた。
一行の先頭を歩いていた祐斗がその歩みを止めた。
「…祐斗先輩」
小猫も何かに気付いたように辺りを警戒し始めた。
瞬間、雄介たちは自分たちに向けられているであろう殺気を感じ取った。
「上だ!」
匙の叫びに全員が夕日の沈みかけた空を見上げると、歪んだ笑みのフリードがいた。
「神父の一団にご加護あれってネ!」
すぐに魔剣を取り出した祐斗が振り下ろされるフリードの初撃を防いだ。
「フリード!」
一誠の声に気付いたフリードは視線を向けた。
「その声はもしかしなくてもイッセーくんかい?あはっ!こいつはまた珍妙な再開劇でござんすね!どうだい?あれから鍛えて少しは強くなったかい?そろそろ殺していいかい?殺していいよね?よしぶっ殺オすッ!」
すぐに雄介たちは着ていた服を脱ぎ捨ていつもの制服姿に戻り、目の前のイカレタ神父に戦闘態勢を取った。
「おお?おお?おお?さっそく戦う気満々ですかNA?いいねぇ、いいねぇ、いいよぉ。いい感じに盛り上がってきちゃいましたよぉ。ならさっそく、素敵で愉快なスペシャルゲストのみなさんにご登場願いましょうか!先生方、お願いします!」
フリードが声高らかに叫んだ刹那、雄介たちのもとに燃え盛る火山弾と5枚の鎌状の刃、青白く発光するエネルギー弾が飛来した。
「な、なんだ!?」
何とか直撃は免れたが、それでも次々と起こる爆発に煽られ地面を転がる。
すぐに起き上がり何事かと辺りを見渡すと、黄昏の世界に現れた異形たちの姿を見た。
「グロロロロロ…」
揺らめく炎のような意匠が全身に這っている超人『マグマドーパント』。
「シャァァァァ…」
拳に半ば一体化した鎌状の刃物を持ち全体的にカマキリを想わせる怪人『カマキリヤミー』。
「オオオオオオ…」
全身に埋め込まれたコアがオリオン座の配列を取る屈強な赤い甲冑が特徴的な魔人『オリオンゾディアーツ』。
そして、その後ろに頭部全体が背骨のような模様のマスクにスーツ姿の『マスカレイドドーパント』、顔の中心に拳大のレンズを覗かせ全身を包帯で大雑把に巻いている『クズヤミー』、夕日の光を怪しく反射する銀のマスクに忍者衣装を着こんだ『ダスタード』がそれぞれ5人ほど。
異形の集団の襲撃に雄介たちは戸惑いを隠せないでいた。
「待て待て待て待て!何なんだよあいつらは!どう見ても堕天使じゃないよな!?おい兵藤!これはいったいどういうことだ!?」
「俺にも分からねえ!くそ!こんなの聞いてないぞ!」
想定外の事態に動揺する匙と一誠。
「どうやら私たちが教会と手を組んだように、堕天使たちもどこかの組織と手を組んでいるみたいですね」
小猫は冷静を保とうとしているのか、いつもの無表情が少し崩れていた。
「まずいね。一気に形勢が逆転されてしまった」
苦虫を噛み潰した表情で魔剣を握る祐斗が呟いた。
全員がお互いの背中を守るように円形に集まっている。
丁度祐斗の前方にフリードが、雄介の前方に怪人軍団が立ち塞がっていた。
出方を窺うように警戒する中で雄介が口を開いた。
「あいつらは俺にまかせて。みんなはフリードをお願い」
雄介の言葉に一誠耳を疑った。
「何言ってんだよ五代!ひとりでアレを相手にする気か?無茶だ!」
「イッセー先輩の言うとおりです。危険です」
「でも俺たちの目的は聖剣の破壊だろ?大丈夫。全部倒せなくても時間稼ぎくらいならできる。頼んだよ!」
一誠と小猫の制止を振り切って、雄介は怪人たちの群れに向かって駆け出した。
なんやかんやで30話目です。
いろいろメチャクチャな感じになっているような気がしますが、後悔はしていません!