仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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EPISODE21 告白

修行初日の深夜、アーシアの眠る寝室の扉が静かに開いた。

慣れないことをしたせいか、すやすやと寝息を立てている。

そんな彼女に足音を立てることなく、人影が忍び寄る。

その人物はゆっくりとアーシアに手を伸ばし、肩をゆすった。

 

「アーシア、アーシア」

 

名前を呼ばれ、アーシアが目を覚ました。

 

「イッセーさん?」

 

寝ぼけ眼をこすりながら起き上ると、目の前に一誠がいた。

思わず声をあげそうになったが、咄嗟に一誠が人差し指を立てて沈黙を促す。

 

「こんな時間にごめん。アーシア、こんな時間にごめん。こんなこと頼めるのアーシアしかいなくて…。アーシア、服を貸してほしいんだ」

 

「…はい?」

 

戸惑うアーシアに対し、小声で語る一誠の顔は真剣なものだった。

 

          ☆

 

アーシアから服を借りた一誠は暗い森の中で自主練を始めていた。

 

「できる…絶対にできるはずだ!」

 

今日の修行で何かを掴んだのか、そのイメージを確実なものにするために奮闘する。

全ては己が望みのために。

今もこうして一誠の放つ魔力が風となり、目前のアーシアの服を被せた丸太を吊るしたものに向かっていく。

だが、結果は服がわずかに揺らめく程度で終わってしまう。

それでも諦めず、何度も魔力を放つ。

アーシアは居ても立ってもいられず、一誠の元に向かっていた。

 

「イッセーさん。あんな真剣な顔で一体何を?」

 

アーシアには一誠が何やら切羽詰っているようにも見えていた。

湧き上がる不安感を抑えきれず彼女は既に日にちが変わった真夜中の山道を駆ける。

そして、アーシアはやっと一誠の姿を見つけることができた。

しかし、一誠の元に行こうと草陰から飛び出した時、丁度一誠の魔力がアーシアを巻き込んでしまった。

 

                      ☆

 

「我々悪魔と堕天使、そして天使を率いる神の軍団は大昔、永久ともいえる時間の中で三つ巴の大きな戦争をしたの。結局、勝利も敗北もないまますべての勢力が激減しただけで戦いは終結したわ」

 

修行2日目の午前はみんながリビングに集まり悪魔事情に疎い雄介と一誠、アーシアが悪魔についての知識を教わっていた。

今、前ではリアスが悪魔の歴史について語っている。

悪魔は永遠に近い寿命を持つ代わりに、出生率が非常に低いため大戦の影響で種そのものが存続の危機にあるらしい。

大戦後は純血の上級悪魔が連なる“72柱”と呼ばれる名門の家系のほとんどが断絶してしまった。

その中で、リアスのグレモリー家、ソーナのシトリー家、ライザーのフェニックス家は72柱の生き残りというわけだ。

 

「これが悪魔が人間を転生させて眷属を増やす理由。レーティングゲームはそんな中で生まれてきたの。ゲームで眷属に実戦経験を積ませ、その主である悪魔自身も実力を示すことができるから。今ではゲームの成績が爵位や地位にも大きく影響するようになってるの」

 

雄介たちは難しい事柄に頭がパンクしそうになったがそれでも真剣に話を聞いている。

そしてある程度教わった後で、リアスが改めて一誠に問題を出した。

 

「私たちの仇敵、神が率いる天使。その天使の最高位の名とそのメンバーは?イッセー」

 

「はい。えっと、確か“熾天使(シラフ)”で、そのメンバーは…ミカエル、ラファエル、ガブリエル、それと…ウリエルです」

 

「正解」

 

戸惑い混じりだったので一誠は安心したようにため息をこぼした。

 

「次に私たちの王、魔王(サタン)。その四大魔王の名前はどうかしら」

 

「それならバッチリです!いずれ、出世してお会いする予定ですからね!ルシファー様、ベルゼブブ様、アスモデウス様!そして憧れの女性魔王様であらせられるレヴィアタン様です!」

 

「正解」

 

今度は自信満々に答えてガッツポーズを見せた。

 

「なら、今度はイッセーが一番苦手な堕天使の幹部の名前を全部言ってもらおうかしら」

 

それを聞いて、苦虫を噛み潰したような顔になる。

堕天使は他の勢力より数が多い上に、名前も複雑だからだ。

 

「えー、堕天使中枢組織を“神の子を見張るもの(グリゴリ)”といって、総督がアザゼル、副総督がシェムハザ。で、幹部連中は…。アルマロス、バラキエル、タミエル…。あー、えーと、アレ?ベネなんとかと、コ、コ、…コカイン?」

 

「ベネムエ、コカビエル、そしてサハリエルよ。ちゃんと覚えないと。一応これは基本よ」

 

リアスは一区切りつけるように溜息を吐いた。

 

「この辺で少し休憩にしましょうか。さすがにみんなも疲れたでしょう」

 

それから少し時間をおいて、アーシアが緊張な面持ちで授業を始めた。

 

「コホン。では、僭越ながら私、アーシア・アルジェントが悪魔祓いの基本をお教えします」

 

前に出たアーシアに一誠はパチパチと拍手でエールを送った。

すると、アーシアは途端に赤面するというかわいい反応を見せてくれた。

 

「えっと…エクソシストたちの持つ必携のアイテムは2つあります」

 

まずは慎重に置いてあった小瓶を持ち上げた。

 

「ひとつはこれ、聖水です。悪魔の皆さんは絶対に触れないようにしてください」

 

「触れるとどうなるの?」

 

「大変なことになります」

 

手を挙げて質問する一誠にシンプルに返した。

 

「大変って、曖昧な言い方が逆に怖いんですが…」

 

「アーシア、あなたもそうなのよ。悪魔なんだから」

 

「うぅ…。そうでした」

 

リアスの言葉にアーシアはショックを受ける。

元シスターである彼女にとっては複雑なものがあるのだろう。

 

「役に立つかどうかはわかりませんけど製法も後でお教えします。それともうひとつは、聖書です」

 

気を取り直し、次に取り出したのは少し古ぼけた本だった。

 

「小さいころからずっと読んできました。でも今は、一説でも読むと凄まじい頭痛がするので困ってます」

 

「悪魔だもの」

 

「悪魔だからね」

 

「…悪魔」

 

「うふふ、悪魔は大ダメージ」

 

「悪魔なんだねぇ」

 

一誠以外の部員からツッコまれ、アーシアは涙目になってしまう。

 

「でもでも、ここの一説はとても素敵なんですよ!」

 

そういうなり、アーシアは聖書を開き、内容を黙読し始めた。

案の定、襲い掛かる頭痛に顔を顰めてしまった。

 

「あうぅっ!頭痛が…。主よ。聖書を読めなくなってしまった私をお許し…あうぅっ!」

 

学習能力がないのか、再びお祈りのダメージに苦しむアーシア。

一同はしばらく、本気なのかボケてるのか判断に非常に困る光景を眺めていた。

 

「さて、今度は雄介の番ね」

 

「はい」

 

リアスに促され、雄介が前に出る。

 

「五代が出るってことはやっぱり…」

 

「そう。彼もいっしょにゲームに参加するんだもの。改めてクウガについて知っておいたほうがいいでしょう?」

 

雄介が今回使う資料を全員に配った後、どこからかホワイトボードを運び込み、いつの間に用意したのか、古代文字と訳が書かれたプリントを張り出しながら説明を始めた。

 

「古代文字には、これらように共通の記号で挟まれた文字を表音文字。つまり、今でいう五順音のような文字と、ひとつで様々な意味を持つ、漢字のような役割を果たす表意文字の2つに分かれます」

 

みんなそれなりに真剣に雄介の話を聞いている。

すると、古代文字の中からリアスは一番見覚えのある古代文字を見つけた。

 

「これって雄介が気に入ってるマークよね?」

 

「はい。これで“戦士クウガ”って意味みたいです」

 

「やはりどの文献でも見たことのない文字ばかりですわね」

 

朱乃が興味深げに古代文字を眺めている。

 

「桜子さんによるとこの古代文字を使い、当時の三つ巴の戦いに巻き込まれ、クウガのベルト、アークルを作った民族を“リント”って言うそうです」

 

「リント…」

 

一誠が目の前の3つの表音文字を見ながら呟いた。

 

「そしてこのリントに牙をむいた一部のはぐれ悪魔の集団を“グロンギ”と呼んでいたそうです」

 

「一部、ってことは全員じゃないってことかな?」

 

「恐らく、天使と堕天使を区別するように、独自の解釈ではぐれ悪魔を区別する呼び方のようね」

 

「だと思います」

 

祐斗の疑問に対するリアスの推測に雄介も同意する。

 

「そしてこれがクウガの姿に関する解読結果です」

 

雄介が新たに張り出だしたのは、クウガの4種類の姿を示唆する古代文字を訳した4つのアイデンティティワード。

最初に反応したのはリアスだった。

彼女に続いて他の皆がそれぞれの反応を示す。

“邪悪なるものあらば希望の霊石を身につけ炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり”

 

「おそらく“赤いクウガ”のことね」

 

「はい。攻・守・速のバランスが取れた格闘形態で個人的に一番使いやすいですね」

 

次は一誠と祐斗。

“邪悪なるものあらばその技を無に帰し流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり”

 

「これは跳躍力と俊敏さに優れた“青いクウガ”だったな」

 

「そして低下した攻撃力と防御力を補うために棒術で戦う姿だね」

 

続いてアーシアと小猫。

“邪悪なるものあらばその姿を彼方より知りて疾風の如く邪悪を射ぬく戦士あり”

 

「確か“緑のクウガ”の特徴は制限時間つきの極限まで研ぎ澄まされた超感覚、でしたね」

 

「それに唯一の射撃型です」

 

最後にリアスと朱乃。

“邪悪なるものあらば鋼の鎧を身につけ地割れの如く邪悪を斬り裂く戦士あり”

 

「“紫のクウガ”は“青いクウガ”と真逆で小猫と同じ圧倒的な攻撃力と防御力を誇る“戦車”のような形態ね」

 

「それを生かして剣を使った至近距離からの一撃を繰り出す。ある意味捨て身の戦い方ですわね」

 

「戦況によって戦略を変えられる所を見ると、クウガは“兵士”に近い戦士みたいですね」

 

クウガについて一通り確認した祐斗の言う通り、クウガの形態変化は“兵士”の昇格と似通っている部分が見受けられる。

 

「他には周りの物質を自分の武器に作り変える能力が特徴的です」

 

小猫が思い出したかのように続く。

すると、そこに何を思ったのかリアスが口を開いた。

 

「ねえ、せっかくだからクウガの姿に名前を付けないかしら?」

 

「名前、ですか?」

 

思わず雄介が聞き返す。

 

 

「ええ。赤や青で言い分けるのは味気ないでしょう?」

 

それを聞いて一誠が最初に案を出した。

 

「例えば、レッドやブルー。みたいな感じですか?」

 

「色以外にもファイヤーやアクアのような呼び方もできますね」

 

「そうね。そんな感じよ」

 

相槌を打つリアスは実に楽しそうに笑っていた。

 

「それなら、これを参考にするのはどうですか?」

 

以外にも食いついてきたのは朱乃だ。

彼女が示すページには、クウガが作り出す武器に刻まれた古代文字が並んでいた。

ドラゴンロッドには“来たれ海原に眠る水竜の棒よ”

ペガサスボウガンには“来たれ天高く駆ける天馬の弓よ”

タイタンソードには“来たれ大地を支える巨人の剣よ”

 

「水竜からドラゴン、天馬からペガサス、巨人からタイタン、というのはどうでしょう?」

 

「いいですね。なんかかっこいいです」

 

朱乃の案に魅かれる雄介。

そこに異議を唱える代わりにアーシアが尋ねる。

 

「でも、赤いお姿は何と呼べば…」

 

「そうね、赤のクウガはバランスのとれたオールマイティな形態。そこから取って“マイティフォーム”ってのはどうかしら?」

 

確認するリアスに同意するようにみんなが頷いた。

これを機にクウガの形態は次のように命名された。

白→グローイングフォーム

赤→マイティフォーム

青→ドラゴンフォーム

緑→ペガサスフォーム

紫→タイタンフォーム

とにかく、そう決まった。

こうして、午前の勉強会を終えた一同はそれぞれの修行に移って行った。

 

                      ☆

 

修行開始から一週間が経った深夜にふと、雄介は目を覚ました。

二段ベッドの上でむくりと体を起こし、辺りを見回す。

雄介の下では祐斗がすやすやと眠っている。

次に隣のベッドを見ると、一誠の姿がないことに気付いた。

もしかしたらいつもの自主練に出ているのだろうと思いながら、なんとなく部屋を出た。

目が光に慣れていない所に月光が突き刺さる。

しばらくしてようやく眩しさに慣れてきて視線を上げると、

 

「あら?まだ起きていたの?」

 

声がしたほうを向くと、窓際に腰掛けるリアスがいた。

珍しく、いつかのように眼鏡をかけていた。

 

「はい。なんか目が覚めちゃって」

 

「そう、丁度よかったわ。少しお話しましょう」

 

誘いを断る理由もなかったので、雄介はリアスに近づいて行く。

 

「それで、特訓の方は捗っているのかしら?」

 

「はい。大体のイメージは掴みました。後はタイミングの問題ですね」

 

「そう。それはよかったわ」

 

近づいて分かったのだが、今のリアスはネグリジェを着ている。

下着越しの艶めかしい彼女の肢体を直視できずに雄介が視線を落とすと、窓際の机のテーブルの上に地図らしきものやフォーメーションなどが書き込まれたノートが重なっていた。

 

「今まで作戦を練っていたんですか?」

 

その中の一冊を手に取る雄介の問いにリアスは微笑みながら答える。

 

「まあね。でも…正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」

 

リアスはため息交じりに手にしていたノートを閉じた。

 

「もしかして、相手がライザーさんだからですか?」

 

疑問に答えるように一冊の書物を開き、雄介に手渡した。

開かれたページには雄々しく炎の翼を広げる火の鳥が描かれていた。

 

「その昔、フェニックスは命を司りし聖獣として人々に崇められていた。流す涙はいかなる傷をも癒し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手に入れられると人間界の国々に伝説を残すほどだったわ」

 

しかし、聖獣であるフェニックスにはもう一つ、別の一族が存在する。

侯爵の地位を持ち、七二柱にも数えられた悪魔側のフェニックス。

 

「人間たちは聖獣フェニックスと区別するために悪魔のフェニックスを『フェネクス』と呼ぶようだけれど、聖獣と称されるフェニックスとライザーの一族は能力的にはほとんど一緒。つまり、不死身。私たちはそんな奴と戦わなければならないの」

 

「…方法はないんですか?」

 

「ないわけじゃないわ。ひとつは圧倒的な力で押し倒すか、もうひとつは起き上がる度に何度も倒して相手の精神を潰すか。前者は神クラスの力が必要。後者はライザーの精神が尽きるまでこちらのスタミナを保つこと。身体は不死身で、精神までは不死身ではないから。最も、神みたいに一撃で相手の精神も肉体も消し飛ばす力があれば一番楽なんでしょうけどね…」

 

ため息をつきながら月を見上げる彼女の瞳には僅かにあきらめの色が見えた気がした。

 

「リアスさん。訊いてもいいですか?」

 

「何かしら?」

 

「リアスさんは何で今回の縁談を、その…拒否するんですか?」

 

雄介の問いに、三度嘆息したリアスが静かに口を開いた。

 

「…私は『グレモリー』なのよ」

 

「え?まあ、確かに…」

 

「改めて名乗ったわけじゃないのよ。私はあくまでもグレモリーの一族で、どこまで行ってもその名が付き纏ってしまうってこと」

 

「…嫌なんですか?」

 

リアスは首を横に振った。

 

「誇りに思っているわ。けれど、私個人を殺しているものでもあるの。誰もが私のことを『グレモリーのリアス』として見るわ。でも、私は『リアス』個人として認識してほしいの。だから、人間界での生活は充実していたわ。皆、私を私としてみてくれたから。それがたまらなくうれしかったわ。冥界(むこう)ではそれを感じることはできないし、これからも感じることはできないわ。私が私としていられるのは人間界(ここ)にいる時だけだから…」

 

リアスは寂しさを乗せた遠い目をしながら話を続ける。

 

「そう言えば、初めて会った時にも似たようなことを言ってましたね…」

 

「ええ。私はグレモリーを抜きにして、私を、『リアス』を愛してくれるヒトと一緒になりたいの。それが私の小さな夢。…残念だけれど、ライザーは私のことを『グレモリーのリアス』として見ているわ。そしてこれからも、『グレモリーのリアス』として愛すでしょうね。それが嫌なの。それでもグレモリーとしての誇りは大切なものよ。矛盾しているけど、それでもこれだけは譲れないの」

 

これが乙女の想いというやつなのだろうか。

それ以前に、雄介には名前を背負って生きる世界というものが想像できなかった。

ただ雄介に分かるのは、今目の前でリアスの笑顔が消えているということだけだ。

 

「…リアスさん。実は、クウガで別の色になる時に、こう、勢いをつけるために何か言いたいんですよ。“超変身”って良いと思いません?」

 

突然、目の前で変身ポーズを取りながら予想外のことを言い出した雄介に驚いたのか、リアスは一瞬反応が遅れた。

 

「え?…ええ。いいんじゃないかしら」

 

「ですよね?…よしっ!」

 

うれしさを噛みしめるように小さくガッツポーズをする雄介は夜空に浮かぶ満月を見上げながら口を開いた。

 

「俺はリアスさんのこと、リアスさんとして好きですよ」

 

何気なく雄介の口から出た言葉を聞いたリアスが目を丸くした。

構わず雄介は続ける。

 

「俺は人間だから、グレモリー家の事とか、悪魔の社会とかよくわかりません。ただ、俺に言えるのは…」

 

一度言葉を区切った雄介はリアスと向き合って、

 

「リアスさんは笑顔がとてもよく似合う素敵な女性だってことだけです」

 

そう、笑顔で言い切った。

すると、リアスの顔から曇りが消えた代わりに、頬が真っ赤に染まっていた。

 

「あれ?俺、何か変なこと言いました?」

 

何となく尋ねると、リアスは勢いよく首を振った。

 

「な、なんでもないわ!そんなことより早く寝なさい。夜が明けたら特訓再開よ!」

 

どこか慌てるような物言いに、思わず笑みがこぼれそうになる。

 

「はい。それじゃあ、おやすみなさい」

 

だがここで笑ってしまうとさらに怒られそうなので我慢することにした。

部屋の扉を前にして、雄介は思い出したようにリアスに声をかけた。

 

「リアスさん!」

 

「な、何かしら!?」

 

紅潮が止まないところに、不意に声をかけられ思わず上ずった返事をしてしまった。

 

「勝ちましょうね。絶対に」

 

サムズアップを掲げ、それだけ言い残して雄介は寝室の中に消えていった。

それを見送ったリアスはというと…。

 

「なんなのよ。もう…」

 

未だに紅潮する顔を隠すように膝を抱える彼女の姿を夜空に浮かぶ満月が照らしていた。

 




これから更新速度が落ちます。
週に一本投稿できればいいなと思っています。
よろしくおねがいします。

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