一誠とアーシアの前に現れた堕天使レイナーレ。
彼女は悪魔とは違う黒翼を広げ水面に降り立った。
「アーシア、逃げても無駄なのよ」
「嫌です。人を殺めるような所には戻れません」
レイナーレも言葉に明らかに嫌悪の反応を見せるアーシア。
やはり、アーシアははぐれ悪魔祓いの組織から逃げてきたようだ。
「ごめんなさい、イッセーさん。私、本当はあの教会から逃げ出して…」
「分かってるよ」
「え?」
「ア―シアがこんな、ろくでもない連中と一緒なわけがないもんな!」
背後に隠れ恐怖するアーシアを安心させるように一誠は強気の態度で接する。
「悪いけどその子、アーシアは私の
「ふざけんな!どう見ても嫌がってるだろ!あんたこそ、この子を連れて帰って何をたくらんでんだ?レイナーレさんよぉ」
「汚らしい下級悪魔の分際で私に話かけないでくれるかしら」
こちらに近づいてくるレイナーレは心底汚らしいものを見るかのような侮蔑的な目で一誠を睨む。
「邪魔をするなら、今度こそ完全に消滅させるわよ?」
レイナーレが一度、一誠を殺した光の槍を形成する。
「こっちだって…セイクリット・ギア!」
負けじと一誠が叫ぶと、左腕を覆う光が赤い籠手へと変貌する。
「できた…」
初めての発動に成功する一誠。
そして一誠の神器を見たレイナーレは一瞬虚を衝かれるが、すぐに哄笑をあげた。
「何かと思えば、ただの“
心底おかしそうにレイナーレが嘲笑う。
「トゥワイス…?」
「別名、龍の手。力を一定時間倍加する能力しかない下級悪魔にはお似合いの有り触れたシロモノよ。上からあなたの持つ神器が危険だからと言われて、あんなつまらないマネまでしたのに…好きです。付き合ってください。なんてね。あの時のあなたの鼻の伸ばしようと言ったら、アハハハ」
「うるせえ!」
「そんなものでは私にかないわしないわ」
レイナーレのおちょくるような態度に声を荒げる一誠に今度は見下すような視線を向ける。
「素直にアーシアを渡して立ち去りなさい」
「断る!友達くらい守れなくてどうするんだ!動け、神器!力を倍にしてくれんだろ!」
【BOOST!!】
一誠の叫びに応えるように神器の甲部分にある宝玉が光りだし、音声が発せられた。
「力が、流れ込んで…」
瞬間、一誠は体に力が流れ込んでくるのが分かった時だった。
ズンッ!
鈍い音とともにあの時と同じようにレイナーレの光の槍が一誠の腹部を貫いた。
「イッセーさん、イッセーさん!」
衝撃により吐血しその場で倒れ込む一誠にアーシアが駆け寄る。
「わかった?“1”の力が“2”になったところで大した違いはないのよ」
「ク…クッソ…」
皮肉をぶつけられ、悔しがる一誠。
すると、一誠はさっきまで全身に走っていた激痛が和らいでいくのを感じた。
「アーシア?」
見れば、一誠の体は緑色の光に包み込まれていた。
アーシアが神器の力で治療してくれているのだ。
「大丈夫ですか、イッセーさん?」
「あ、ああ…」
アーシアの温かさがだんだんと腹部の傷口を塞いでいく。
「すげえ、光の痛みが消えていく…」
やがて、一誠が感じていた痛みはきれいさっぱり消えていった。
「アーシア。おとなしく私とともに戻りなさい。あなたの“
黙ってその光景を見つめていたレイナーレが冷酷に提示してくる。
「やはりあなたがたは私の力が必要なだけだったのですね?」
「言うことを聞けば、その悪魔の命だけは取らないであげるわ」
「ふざけんな!誰がお前なんかに…」
「わかりました」
一誠の言葉を遮ってアーシアはレイナーレの提示を受け入れた。
「アーシア!?」
「イッセーさん。今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
満面の笑みを浮かべたアーシアがいやらしい笑みを浮かべるレイナーレのもとに歩いていく。
「いい子ね、アーシア。それでいいのよ。今日の儀式であなたの苦悩は消え去るのだから」「行っちゃダメだ、アーシア!アーシア!」
しかし、必死に叫ぶ一誠だが返ってきたのは、
「さようなら」
涙を流しながら笑みを浮かべるアーシアの別れの言葉だった。
「命拾いしたわね次に邪魔したら今度こそ本当に殺すわ。じゃあね、イッセーくん」
アーシアの体を黒い翼で包んだレイナーレはそれだけ言い残し、そのまま空の彼方へと消えて行った。
後に残ったのは黒い羽と、地面に転がるラッチューくんのぬいぐるみ。
そして、悔し涙を流す一誠だけだった。
自分の非力を呪っても呪い足りない。
「ちくしょう…何が、守るだよ」
今の一誠には神器を纏った拳で地面を殴ることしかできなかった。
☆
パン!
部室に乾いた音が響いた。
音がしたほうを向くと険しい顔をしたリアスと、頬が赤く腫れた一誠が向かい合っていた。
あの後、一度部室に赴いた一誠は事の詳細を報告した。
その上で一誠は教会に行くことを提案したのだ。
しかし、リアスが一誠の提案を受理することはなかった。
もちろん、その答えに納得できなかった一誠が詰め寄り、そして叩かれたのだ。
「何度言えばわかるの?ダメなものはダメよ。彼女のことは忘れなさい。あなたはグレモリー家の眷属なのよ」
リアスの言い分は理解できる。
しかし、それでも今の一誠には譲れないものがあるのだ。
「なら俺を眷属から外してください。そうすりゃあ、俺一人で」
「できるわけないでしょう」
リアスは冷静を装いながら一誠の言い分を掻き消す。
「俺ってチェスの“兵士”なんですよね?兵士の駒くらい一個くらい消えたって…」
「おだまりなさい!」
しかし、なおも食い下がる一誠にとうとう激昂してしまった。
「イッセーは兵士、一番弱い駒だと思ってるわけ?」
「…」
一誠はリアスの問いを肯定するように静かに頷く。
「それは大きな間違いよ。前に“悪魔の駒”は実際のチェスの駒と同様の特徴を持つと言ったはずよ」
一誠は以前にはぐれ悪魔バイザーの討伐時にリアスの言っていたことを思い出す。
「実際の兵士の特徴って…」
「“
「俺が、他のみんなの力を持てるってことですか?」
「主である私がその場所を敵陣地と認めればね。そう、例えば教会のようにね」
一誠は自分の中で希望が生まれるのを感じ、僅かだが表情に生気が戻った。
「それともうひとつ。神器を使う際、これだけは覚えておいて」
リアスが一誠の頬を撫でる。
「想いなさい」
ただ一言、諭すように呟いた。
「神器は持ち主の思いの力で動くの。その思いが強ければ強いほど、必ずその想いに応えてくれるわ」
「想いの…力」
すると、そこへそそくさと現れた朱乃がリアスに近づき耳打ちする。
耳打ちをする朱乃の表情が険しい。
そして、朱乃の報告を耳にしたリアスの顔も一層険しくなった。
リアスはちらりと一誠を見た後、今度は部員を見渡すように言った。
「急用ができたわ。私と朱乃は少し外出します。雄介、あなたもついてきなさい」
「え、俺もですか?」
突然名指しされた雄介が素っ頓狂な声を上げた。
「でも、俺って魔法陣のジャンプはできないんじゃ…」
「そのことについては問題ないわ。そろそろあなたの体がこの部室に漂う魔力に慣れたころだし、何より以前あなたに渡した拳銃には私の魔力が込められているの。それがあれば私がいればあなたも魔方陣の移動が可能になるわ」
「いや、でも…」
雄介の性格上、この状況を放っておくことに抵抗があった。
しかし、雄介がいつものスマイルを浮かべる裕斗といつもの無表情を浮かべる小猫の顔を見つめていると、何かを察したのか一度一誠に視線を向けた後2人に無言で頷いた。
「わかりました」
そう言って雄介はリアスと朱乃が立っている魔方陣に足を向けた。
「部長!まだ話は終わって」
「いいこと?昇格を使ったとしても駒ひとつで勝てるほど堕天使は甘くないわ」
一誠の言葉を遮ったリアスはそれだけ言い残し朱乃と雄介と共にどこかへ跳んで行った。
部室に残ったのは一誠と祐斗と小猫の3人だけとなった。
「そのくらい、わかってますよ」
それだけ呟くと一誠はその場から去ろうと足を動かしたときだった。
「行くのかい?」
部室を出ようとする一誠を祐斗が呼び止めた。
「ああ。止めたって無駄だからな」
「殺されるよ」
正論をぶつけられても一誠の意志が揺らぐことはなかった。
「たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」
「いい覚悟、と言いたいけどやっぱり無謀だ」
「うるせえ!」
一誠が怒鳴りながら振り向くと、目の前には剣を携えた祐斗の姿があった。
「僕も行くよ。部長は君にたとえ昇格を使ってもっておっしゃってたろ?」
「ああ…」
予想外の言葉に一誠は一瞬言葉を失った。
「つまり、部長は教会を敵陣地と認めたんだよ」
「あ…」
「もちろん僕らで兵藤君をフォローしろって指示でもあるからね。じゃなければ部長はキミを閉じ込めてでも止めていたはずだからね」
すると、苦笑いを浮かべる祐斗の横で小猫が一歩前に出た。
「もしかして小猫ちゃんも?」
「2人だけでは不安です」
一誠は心の中でリアスと目の前の2人の優しさに深く、猛烈に感謝した。
こうして一誠たち3人は教会に向かって動き出すのだった。
☆
空はすでに暗く、街灯の明かりが道を照らす時間となっている。
一誠、祐斗、小猫の3人は教会の入り口が見える位置で様子をうかがっていた。
「なんつー殺気だよ…」
一誠は全身に悪寒が走ること感じることでここに堕天使がいることを確信していた。
「神父も相当集まってるようだね」
「マジか。来てくれて助かったぜ」
「だって仲間じゃないか」
祐斗は照れ臭い言葉を満面の笑みを浮かべながら口にした。
しかし、次の瞬間には笑顔が完全に消えうせていた。
「それに、個人的に堕天使や神父は好きじゃないからね。憎いといってもいい」
「木場?」
彼の過去にいったい何があったのだろうかと考えていると、いつの間にか小猫が教会の扉
の前に立っていた。
「あれ、小猫ちゃん?」
「向こうも私たちに気づいてるでしょうから。…えい」
そして、何の躊躇もなく扉を蹴り飛ばすのだった。
窓から差し込む月明かりに照らされた聖堂の内部は長椅子と祭壇が設置された、いたって普通のものだ。
ただひとつ、祭壇に位置する十字架に磔にされている聖人の彫刻、その頭部が破壊されていることを除いては。
内部の雰囲気に不気味がっていると、
パチパチパチ…
突然、聖堂内に拍手の音が鳴り響いた。
そして、柱の物陰から現れた人物の登場に一誠は顔を顰めた。
「やあ、やあ、やあ。再会だねぇ。感動的ですねぇ」
何食わぬ顔で現れたその人物の名を一誠が叫んだ。
「フリード!」
「俺としては2度会う悪魔なんていないと思ってたんすよぉ。ほら、俺ぇ、滅茶苦茶強いんでぇ、一度会ったら即チョンパ、でしたからねぇ。だからさぁ…むかつくんだよぉ。俺に恥かかせたお前らクソ悪魔のクズどもがよぉ」
気味の悪い笑みを浮かべたフリードは懐から光の拳銃と光剣を取り出した。
「アーシアはどこだ!」
「あぁ、悪魔に魅入られたクソシスターならこの祭壇から通じてる地下の祭儀場におりますですぅ。まぁ、行けたらですけど?」
あっさりと儀式場の隠し場所を吐いたフリード。
刺客の自覚がないのか、あるいはこの場で一誠たちを殺す自信からくるものなかはわからない。
しかし、そんなことを考える暇もつもりも一誠たちにはなかった。
「セイクリッド・ギア!」
一誠の叫びに呼応して、左腕に赤い籠手が装着された。
祐斗も鞘から剣を抜き放ち、小猫は近くの長椅子を持ち上げていた。
「潰れて」
そのままフリードに向けてぶん投げた。
しかしフリードは投げ飛ばされた長椅子を光剣で両断してしまう。
「しゃらくせぇんだよ!このチビ!」
「チビ?」
その一言が小猫の機嫌を損ねてしまった。
その証拠に小猫は手当たり次第に大量の長椅子を投げまくる。
そのペースが半端じゃない。
にもかかわらずフリードは小躍りしながら長椅子を次々と両断していく。
しかし、長椅子の雨の中を掻い潜る影がもうひとつ。
「しゃらくせぇ!しゃらくせぇ!とにかく!うぜぇ!」
祐斗だ。祐斗の剣とフリードの剣が火花を散らす。
たまに音もなく発射される銃弾を自慢のスピードで躱しながら、祐斗は攻撃の手を緩めない。
しかし、そのすべての攻撃をあしらうフリードの戦闘力も相当のものだ。
そうこうしているうちに、ついにつばぜり合いにまで至った両者が睨み合う。
「やるね」
「あんたも最高。本気でぶっ殺したくなりますねぇ」
そしてまた一発放たれた光の銃弾を祐斗は紙一重で躱し距離を取った。
「あいつ顔がいいだけじゃねぇな」
一連の攻防に思わず感嘆の声が漏れた。
「じゃあ、僕も少しだけ本気を出そうかな?」
すると、祐斗の剣から黒い何かが出現し、刀身を覆っていく。
そのまま黒く染まった剣を振い、再びフリードの光剣と接触する。
その刹那、見たままを言うなら闇が光を食らった。
フリードの剣の鞘から上、つまり光で構成された刀身が消滅したのだ。
「な、なんだよこりゃぁ?」
目の前の光景にフリードが驚きの声を上げた。
「“
「てめぇも神器持ちか!?」
「兵藤君!」
祐斗の合図で一誠は駆け出した。
「動けぇ!」
【BOOST!!】
宝玉から音声が発せられ、一誠の体に力が流れ込む。
「だからしゃらくせぇっつうの!」
一誠の動きに気付いたフリードがこちらに銃口を向け弾丸を連射する。
「昇格!」
すかさず“戦車”に昇格する一誠。
「“戦車”の特性はあり得ない防御力と」
弾丸は一誠の体を撃ち抜くことなく無へと還っていく。
「マジですか?」
「バカげた攻撃力!」
一誠の拳がフリードの顔面を捉えた。
「ぎゅああああああああああああっ!」
悲鳴を上げながらフリードの体が後方へ大きく吹っ飛んだ。
「アーシアにひでぇことしやがって…少しすっきりした!」
一誠は息を挙げながら笑った。
「ざっけんな…ざっけんなよクソがあああっ!」
口から血を流すフリードが怒声を張りながら立ち上がる。
懐から新たに光剣を取り出し跳びかかってくる。
しかし、
「えい」
「痛ァい!」
横から飛来してきた長椅子が直撃した。投げたのは勿論、小猫だ。
今の一撃で冷静さを取り戻したのか周りを見渡すフリードは苦笑いを浮かべながら、懐から球状の物体を取り出した。
「俺的に、悪魔に殺されるのだけは勘弁なのよねぇ。なわけで、ハイ、チャラば!」
そのまま床に叩きつけた。
瞬間、眩い光が一誠たちの目を襲った。
視力が回復するころにはすでに、フリードの姿はなかった。
「逃げやがった!」
「とにかく、先を急ごう」
逃げられたのは気に入らないが、当初の目的を果たすため一誠は祐斗の言葉に同意した。
「えい」
小猫が祭壇をおもむろに殴り飛ばすと、そこから地下へと続く階段が現れた。
一誠と祐斗と小猫はお互い頷き合うと、隠し階段を下りて行った。
☆
一誠たちの目的地である教会の裏手の雑木林。
丁度教会の屋根が見える位置の木の枝にゴスロリをまとった少女が腰かけていた。
「あ~あ、退屈ぅ~。どうしてウチが見張りなんて…ん?」
少女がぼやいていると、下の地面の一部が赤く発光した。
光はやがて、円形の魔方陣を形成するとリアス、朱乃、雄介が現れる。
「これはこれは。私、人呼んで堕天使の“ミッテルト”と申しますぅ」
ミッテルトと名乗った堕天使の少女がスカートの端を摘み上げ挨拶をする。
「あらあら、これはご丁寧に」
「下僕があなたを察知したの。どうやら私たちに動かれるのは一応は困るみたいね」
「ううん。大事な儀式を悪魔さんに邪魔されたらちょっと困るってだけぇ」
「残念だけど、今俺の仲間がそっちに向かってる頃だと思うよ」
「うえ、本当!?ヤダ、マジっすかぁ?」
雄介の言葉にミッテルトは平常を崩してしまった。
「はい、表から堂々と」
「しまったぁ!裏からこっそりやってくると予想してたのにぃ!」
ミッテルトが悔しそうに地団太を踏む。
「…まあ、三下なんざ、何人邪魔しようが無問題じゃねぇ?うん。決めた、問題なし。なんせ、本気で邪魔になりそうなのはあなた方お2人だけだもんねぇ。ウフフ。わざわざ来てくれて、あっざーす」
気を取り直したミッテルトがこちらに振り向き余裕の笑みを浮かべる。
因みに、どうやら雄介の存在は眼中にないようだ。
「無用なことだわ」
「え?」
「私は一緒に行かないもの」
リアスが自信満々にそう言い放った。
「へえ、見捨てるってわけ?」
「どう解釈するかはあなたの好きにすればいいわ。」
「まあ、とにかくあれよぉ。主のあんたをぶっ潰しちゃえば他の下僕っちはおしまいになるわけだしぃ?」
「出でよ!カラワーナ、ドーナシークぅ!」
直後、リアスたちの背後から気配を感じた。
「何を偉そうに」
「生憎、また見えてしまったなようだな、グレモリー嬢」
現れたのはコートを着込んだ男性堕天使の“ドーナシーク”。
そして、際どいタイプのボディコンを着た女性堕天使の“カラワーナ”だ。
「貴様の下僕には借りがある」
「あらあら、お揃いで」
「われらの計画を妨害する意図が貴様らにあるのはすでに明白」
「死をもって購うがいい!」
ドーナシークとカラワーナの両者が毒つく。
「朱乃、雄介」
「はい、部長」
「変身!」
リアスに促せれ、朱乃と雄介が前に出る。
まずは朱乃。
朱乃の頭上に黒雲が現れ、一筋の雷が直撃した。
すると今まで来ていた制服が消滅し、一糸まとわぬ姿となる。
しかし、それは一瞬の出来事で瞬時に巫女服へと切り替わっていた。
次に雄介。
最初に両手を腹部にかざし、アークルを出現させる。
そしていつもの動作で両手を動かし、赤いクウガに変身した。
「何?ウチと張り合ってコスプレ勝負?ここはコミケ会場じゃないっつぅの!」
しかし、朱乃はミッテルトの文句をスルーして、印を結んだ両手をそのまま天に掲げた。
「はあっ!」
すぐに異変が起きた。
無数の小さな魔方陣らしきものが周囲を覆ったのだ。
「結界だと!?」
「これって、かなりやばくねぇ?」
閉じ込められた堕天使たちが動揺の反応を示した。
「ウフフ、この檻からは逃げられませんわ」
チロリと指先を舐める朱乃の表情は嗜虐的な笑みで満ちていた。
「貴様ら最初から…!」
カラワーナが吐き捨てるように呟く。
「ええ、あなた方をお掃除するつもりで参りましたの。ごめんあそばせ」
「ウチらはゴミかい!」
反射的にミッテルトがつっこんだ。
「おとなしく消えなさい」
「ふん、せいぜい余裕ぶっているがいい」
「儀式が終われば貴様ですらかなう存在ではなくなるのだ」
「儀式?」
余裕の感情が含まれた言葉に雄介は疑問の声を漏らした。
☆
祭壇の下にあった地下へと続く階段を下りる一誠たち。
階段を駆け下りると、目の前に大きな扉が現れた。
お互いの顔を見合わせ無言で頷く。
気を引き締め直し、ゆっくりと扉を開いた。
重い音を立てながら、儀式場の内部が見えてくる。
「いらっしゃい。悪魔の皆さん」
部屋の奥からレイナーレの声が聞こえてきた。
そして周りには部屋中にひしめき合う黒装束の神父軍団。
そして、最奥部には十字架に張り付けられたアーシアの姿。
その姿を目にした一誠が叫んだ。
「アーシアァァァ!」
一誠の声に気付き、アーシアが顔を向ける。
「イッセー…さん?」
「アーシア、今いく!」
「兵藤くん!」
祐斗が闇雲に駆け出す一誠の腕を掴んだ瞬間、目の前に光の槍が飛来し、爆発した。
その衝撃で2人は壁に叩きつけられた。
「感動の対面だけど残念ね。もう儀式は終わるところなの」
直後、アーシアの体が光りだした。
「あぁ、あああああああああああっ!」
アーシアが苦しそうに絶叫を放った。
「アーシアに、何をするつもりだ!?」
「まさか、堕天使の目的は…」
☆
場所は変わって教会裏の雑木林。
リアスも祐斗と同様に堕天使の目的に察しがついたようだ。
「わかったわ。堕天使はシスターの神器を奪うつもりなのね」
「神器を奪うって…それじゃあ、彼女はどうなるんですか!?」
「元々は身体に宿る神器。それを無理矢理引き剥がすということは、それは、持ち主の死を意味します」
雄介の疑問に朱乃が冷静に答えた。
「それって…」
☆
「アーシアが、死ぬ…?」
一誠が信じられないという表情で呟いた。
「いやああああああああああっ!」
そうこうしているうちに、アーシアの絶叫が最高潮に達し、ついに彼女の体から光が飛び出した。
そして、朱乃の言葉を証明するかのようにアーシアの瞳から生気が消えた。
そんな彼女の目の前でアーシアから飛び出した光をレイナーレが掴んだ。
「“聖母の微笑”。ついに私の手に…」
レイナーレは狂気に染まった表情で光で包まれた聖母の微笑を抱きしめた。
最近、フォーゼ全話見直しました。
最近のライダーは、何度見ても泣けるのは自分だけでしょうか?