仮面ライダークウガ 青空の約束   作:青空野郎

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EPISODE01 復活

はるか昔から天使、堕天使そして悪魔と呼ばれる種族たちは争いを繰り返してきた。

この三つ巴の戦いはやがて種族の激減、戦力の疲弊を理由に勝者の生まれないまま終結を迎えた。

 

…しかし、それは真実ではなかった。種族の激減、戦力の疲弊を招いた原因は一人の“戦士”の存在だった。

その“戦士”は闇色の瞳を持ち全身に金色のラインが走る漆黒の鎧を纏い4本の金角を携えていた。

“戦士”が手をかざすと神の僕の天使の体が燃え上がり、身についた棘は刃となり堕天使を斬り裂いた。そして手にした物質を己の武器へと変換させる能力を併せ持ち武器に拳や蹴りの一撃は悪魔の体を簡単に消し飛ばしてしまう。

この“戦士”の暴走は敵対していたはずの3大勢力が力を合わせることで静めることで成功した。

役目を終え、再び暴走することを恐れた“戦士”は自らを封印するのであった。

以後この“戦士”のことは「黒き闇」、「究極の闇をもたらすもの」または「凄まじき戦士」として憎しみの化身、恐怖の象徴として語り継がれていった。

しかし長い年月を経ていくうちに“戦士”の存在は彼らの中から消え去ってしまうのであった。

 

 

 

          ―――――古の、闇より、目覚めし、ものは、正義か、悪か―――――

 

                 仮面ライダークウガ 青空の約束

 

 

私立駒王学園

女子高から共学になって間もない学園の廊下を一人の少年が歩いていた。

やがて少年は隅に位置している教室の前まで来るとその扉をノックした。

 

「桜子さーん、五代です。入ります」

 

少年の名前は“五代雄介”駒王学園に通う数少ない男子生徒の一人である。

 

「どーぞ」

 

扉の向こうから声を聞いた雄介は教室の中へと入っていった。

 

「失礼します」

 

そこには一人の女性がパソコンを操作していた。

“沢渡桜子”。駒王学園の歴史教師であり、考古学の世界でもかなり有名な女性学者である。雄介とは家が近所で小学校からの付き合いである。

 

「いらっしゃい、五代君。ごめんね、いきなり呼びつけちゃったりして」

 

「いえ、気にしないでください。で、用件ってなんですか?」

 

「うん、まずは長野県の九郎ヶ岳で古代遺跡が発見されたのは知ってるよね?」

 

「はい、今朝も新聞で見ました。かなり騒ぎになってますよね」

 

「そうなの。それで実はねその遺跡で使われていたと思われる古代文字の解読を依頼されたの」

 

「そうなんですか?すごいじゃないですか!」

 

「でもね、やっぱりこれが予想通りというかなんというか解読が難しくてね。他にもやらなくちゃならないこともあるから家でも作業を進めようかと思ってね。それで悪いんだけど途中まででいいから荷物運びをお願いできないかなって思ってね」

 

確かに桜子の机の周りには山のように積まれた資料でいっぱいだった。

さすがに女性一人でこの量は厳しいだろうと思った雄介はサムズアップをしながら

 

「そう言うことでしたら任せてください。」

 

「本当!?ありがとう五代君。じゃあすぐに荷物まとめるからちょっと待ってて」

 

そういうと桜子は立ち上がり荷物の整理に取り掛かった。

すると雄介の視線はひとつのアタッシュケースにとまった。

 

「桜子さん、これってなんですか?」

 

「ん?あぁ、それはね遺跡で発掘されたものなんだけどね。多分当時の貴族の人がつけてた装飾品の類のものじゃないかな?」

 

「へぇ~」

 

桜子の話を聞きながら雄介は興味本位でケースのふたを開けた。

中にはベルトのようなものが入っていた。

それは全体が石化してしまっているが一般的なベルトとは形状が大きく異なり少なくとも材質は皮ではないと判断できる。

そしてその中心部には宝石のようなものが埋め込まれていた。

ベルトを見つめていると突然宝石が輝きを放った。

すると雄介の頭の中で同じベルトを身に着けた戦士が何かと戦うイメージが浮かんだ。

だがそれは一瞬の出来事で気が付くと宝石は沈黙していた。

 

「何だったんだ、今の…」

 

「ん?どうかした、五代君?」

 

「あ、いえ、何でもありません」

 

そう答えた雄介は確認のためベルトをケースから取り出した。

 

「おっかしいなー。今、確かに…」

 

様々な角度からベルトを眺めていると側部に紋章のような印が刻まれているのに気付いた。

 

「桜子さん、もしかしてこれが例の古代文字なんですか?」

 

雄介は桜子にその紋章を向ける。

 

「えぇ、そうよ。他にも似たようなものが発見されてるから間違いないと思うわ」

 

「へぇ~、これが。じゃあこれってどういう意味なんですか?」

 

「えっとそれは…“力”」

 

「“力”か…」

 

雄介は桜子が準備を終えるまでベルトを見つめていた。

 

                      ☆

 

校舎を後にした二人は校門に向かっていた。

 

「本当にごめんね、五代君。こんな雑用みたいなこと頼んじゃって。今度お礼はちゃんとするから」

 

「大丈夫ですよ。これぐらいのことなら任せてください」

 

歩きながら雄介は校門から出ようとしたが

 

ゴンッ!

 

「痛っ!?」

 

「五代君、大丈夫!?」

 

「えぇ、一応大丈夫です。けど、これって…」

 

雄介は校門の外に向かって手を伸ばすが見えない壁のようなものに遮られてしまった。

どうやらさっきはこの壁に頭をぶつけてしまったようだ。

ためしに壁を叩いてみるが叩いた部分から衝撃が波紋上に広がるだけでやはり簡単に突破できそうにないと分かる。

 

「一体どうなってるんだ、これ。今までいろんな所を冒険してきたけどこんなのは初めてだ」

 

「これって…!もしかして!?」

 

「?桜子さん、どうしたんですか?」

 

雄介が尋ねると、

 

「クックックック…ようやく今夜の獲物がかかったか」

 

背後から不気味な声が聞こえたので振り返ると全身に悪寒が走った。

何故ならその声の主の身体の大きさは人間と大差はないが全身は一目で人間とは違う存在であると分かる。

おまけに顔には8つの複眼があり側頭部には蜘蛛の足のような飾りがついている。

そうしているうちにいきなり蜘蛛の怪人が襲い掛かってきた。

 

「桜子さん、危ない!!」

 

「キャッ!?」

 

咄嗟に桜子の身体を突き飛ばした雄介はその反動を利用し海神の攻撃をかわす。

五代の手から離れたケースは地面に落ちるとふたが開き中のベルトがこぼれ出た。

すると再びベルトの宝石が輝きを放った。

 

「くっ!?」

 

再び雄介の頭の中に、しかし今度は先ほどよりも鮮明に“赤い戦士”のイメージが浮かんできた。

 

「また?なんなんだ!?」

 

だが雄介は今、自分が何をするべきかが分かったような気がした。

 

ドックン…ドックン…ドックン…

 

まるで何かに反応するかのように雄介の心臓が鼓動する。

 

「桜子さん、隠れてて!」

 

「五代君!?」

 

桜子の叫びを背に雄介はベルトを掴んだ。

 

「着けてみる!」

 

また蜘蛛の怪人が飛び掛かってくるが、雄介は体を回転させて避ける。

そして、ベルトを腹部に押し付けた。するとベルトの宝石が今まで以上の輝きを放ち辺りを照らす。

 

「ぐっ、くぅぅぅぅぅっ!?」

 

直後に腹部に激しい痛みが走る。

 

「うそっ!?ベルトが、五代君の体に吸い込まれて…」

 

驚いている桜子を前に痛みに悶絶している雄介の腹部は制服が消滅し赤くなっていた。

その隙をついた怪人は雄介の身体を投げ飛ばした。

続けて雄介の首を締め上げながら雄介の体を何度も校門の壁に叩きつける。

体を放り投げられ怪人の猛攻から解放された雄介だが、

 

「ハァ、ハァ、やられる…。このままじゃぁ、死ぬぅ…!」

 

半ば死を覚悟した雄介は咄嗟に拳を怪人の腹に叩き込んだ。

 

「ああああああああああああああっ!!!」

 

その瞬間雄介の腕に白い籠手が出現し怪人を殴り飛ばした。

 

「ハァ、ハァ、…変わった!」

 

雄介は立ち上がりもう片方の腕で怪人の顔を殴りつけた。

次に蹴りで脇腹を、さらに攻撃を続けていくうちに雄介の体は変わっていく。

そしてついには気が付くと雄介の姿は完全に変わった。

今の雄介は炎のように赤い瞳に白い装甲を纏い、頭部には小さな角が飾り程度についていた。腹部には石化から解き放たれたベルトが装着され、埋め込まれた宝石は赤く輝いていた。その光景を目撃した桜子は驚きの表情を浮かべている。

そして怪人も似たような表情をしていた。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

雄介は拳を握りしめると怪人に向かって走り出した。

 

                      ☆

 

一方その頃駒王学園の校庭を一人の女性が美しい紅い髪をなびかせながら歩いていた。

 

「全く、まさか私の縄張りに土足で踏み込んでくるだなんていい度胸してるわね」

 

彼女は学園内ではぐれ悪魔が出没しているという情報を聞きつけ捜索の最中であった。

 

「にしても…妙ね」

 

彼女がはぐれ悪魔の退治に赴くのは1度や2度ではない。

そしてその度に戦闘に入るまでの間は不気味なくらい辺りは静けさで満ちていた。

しかし、今回は妙に騒がしい。周辺を警戒しながら歩いていると

 

「グァァァァァァァッ!!?」

 

突然目の前に標的のはぐれ悪魔が転がり込んできた。そしてそのはぐれ悪魔は一目見ただけでもわかるくらいボロボロの状態だった。はぐれ悪魔は驚いている彼女に目もくれずに立ち上がると

 

「この糞餓鬼がぁぁぁぁぁっ!!」

 

怒りに染まった顔で飛び上がった。しかし

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

逆に同じように飛び上がった白い鎧を纏った存在の返り討ちにあってしまった。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…やった?」

 

彼女はそう呟きながらはぐれ悪魔をにらみつけている白い存在に声をかけた。

 

「見かけない顔ね。あなたも悪魔?それとも堕天使かしら?」

 

「!」

 

白い存在は彼女のほうを向くと驚いたような声を上げた。

 

「!あなたは…」

 

                      ☆

 

雄介はどうして彼女がここにいるのかが分からなかった。雄介は彼女のことを知っている。いや、おそらくは駒王学園の関係者全員が彼女のことを知っているはずだ。

 

「グレモリーさん!?」

 

“リアス・グレモリー”それが彼女の名前だ。学園のマドンナ的存在であり一学年上の先輩だ。話こそしたことはないが、彼女に関する噂や情報は何度も聞いたことがある。そんな人物が今、雄介の目の前にいるのだ。

 

「あら?どこかで会ったことがあるのかしら?」

 

雄介はリアスの質問にどう答えればいいのか分からず戸惑っていると突然胸部に衝撃が走った。

 

「がぁぁっ!」

 

「図に乗るなよ、クソガキが…!!」

 

はぐれ悪魔は手の甲から爪のようなものを伸ばし油断していた雄介を切りつけたのだ。倒れながらも肩で息をしながら立ち上がった雄介は庇うようにリアスの前に立った。

 

「はやく逃げて下さい…。ここは俺が何とかしますから…!」

 

雄介が彼女に避難を促すが

 

「フフッ。お気遣い感謝するわ。でも生憎“グレモリー家”の悪魔はこの程度の雑魚に手こずることはないわ」

 

リアスは雄介の肩に手を置くと堂々と雄介の前に立ちふさがった。

 

「え?」

 

「“グレモリー”だと!?」

 

何のことか理解できていない雄介に対し、はぐれ悪魔は明らかにリアスに怯えた反応を示していた。

 

「私の縄張りを荒らしたこと後悔しなさい」

 

するとはぐれ悪魔を一瞥するリアス右手に黒い塊のようなものが現れた。

 

「ひぃっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

はぐれ悪魔は背を向けてその場から逃走を図ろうとしたが

 

「消えなさい」

 

リアスの手から放たれた黒い波動が逃げ惑うはぐれ悪魔に迫る。

 

「アアアアアァ…」

 

はぐれ悪魔はリアスの一言とともにに放たれた黒い波動に飲み込まれてしまった。そして後にはえぐれた地面だけが残っていた。

 

「ハァ、ハァ、すごい…あれ?」

 

気が付いたら白い鎧は消え、五代雄介の姿に戻っていだ。

 

「あら?その制服、あなたここの生徒だったのね」

 

「え?あぁ、はい。俺、五代雄介って言います。えっと、ありがとうございましたグレモリー先輩。おかげで助かりました」

 

「気にしなくていいわ。あと名前でいいわよ。名字で呼ばれるのはあまり好きじゃないの。そんなことより一つ確認させて頂戴」

 

リアスは髪をかきあげ雄介を見つめる。

 

「あなたも悪魔なの?」

 

「悪魔?いや俺は―」

 

「五代君!」

 

雄介とリアスが話しているとそこに桜子の声が割り込んできた。

 

「桜子さん!大丈夫でしたか!?」

 

「ハァ、ハァ、私は大丈夫よ。それよりも五代君の方は?今は元の五代君に戻ってるみたいだけど…」

 

「はい。生まれて初めて体力消耗したぁって気がしたけど、この通りだいじょうぶです!」

 

と、雄介はサムズアップで答える。

 

「もう気楽すぎ!いきなり姿変わっちゃってもう五代君じゃなくなるのかと思ってすごい心配したんだからね!!」

 

「本当に大丈夫ですって!それに、リアス先輩が助けてくれましたし」

 

「え?」

 

雄介と桜子がリアスの方に顔を向けると

 

「ご無沙汰しております、沢渡先生」

 

「グレモリーさん!そっか、あなたが…本当にありがとね」

 

「いえ、これが私の仕事ですから。ところでそちらの彼とは知り合いのようですが、彼も悪魔なのですか?」

 

「いや、俺は普通の人間ですけど?」

 

「そう。ということは今のは“神器(セイクリット・ギア)”の力ってことになるわね」

 

「“神器”?」

 

「いいえ、それは違うと思うわ」

 

「どういうことですか?」

 

「五代君の姿を変えたベルトは先日長野の遺跡で発掘されたものなの。本当はもっとちゃんと調べたかったんだけど、今は五代君の体内にあるみたいだし。でも少なくともあのベルが“神器”である可能性は低いと思うわ」

 

「そうなんですか?」

 

神器?悪魔?…ナニソレ?

今まで様々な場所を冒険し、いろいろと体験してきた雄介だが今回ばかりは話し込んでいるリアスと桜子を見つめながら置いてけぼりを喰らっていた。

 

「あのー、すいません」

 

「ん?」

 

「え?」

 

「話の腰を折る様で申し訳ないんですけど結果的にどういうことなんですか?というか、桜子さんは何か知ってるんですか?さっきの怪物のこととか、悪魔とか、リアス先輩のこととか…」

 

「あっ!ごめんね、五代君。そうだよね。やっぱりちゃんと説明しなきゃだめだよね。でも今日はもう遅いし、明日もやらなきゃいけないことで山積みだし。どうしよう…」

 

「なら私が説明しますよ」

 

ここで慌てる桜子にリアスが助け舟を出した。

 

「本当!?でもいいの、そんなこと頼んじゃって?」

 

「もちろん構いません。佐渡先生にはお世話になってますし、それに彼には知る権利があります。というわけで五代君…だったかしら?今夜のことを知りたければ明日の放課後、旧校舎まで来てくれるかしら?」

 

「はい、分かりました!」

 

と、再び笑顔でサムズアップをする雄介であった。

 

「フフッ、いい返事ね」

 

「ありがとね、リアスさん。それに五代君も。ベルトについて分かったことがあったらすぐに知らせるから」

 

「よろしくお願いします!」

 

こうして一先ず雄介たちはその場で解散したのであった。

…これが五代雄介の壮絶なる戦いの幕開けであった。

 

                      ☆

 

「旧校舎は…ここだな」

 

次の日の放課後、雄介は昨晩言われたとおりに駒王学園の旧校舎へ足を運んでいた。

そして現在、雄介の目の前には普段から通っている新校舎とは違う古ぼけた洋館のような建物がそびえたっている。

雄介は特におびえた様子もなく旧校舎に足を踏み入れた。

木製の廊下を進む雄介はある一室の前で足を止めた。プラカードには“オカルト研究部”と書かれていた。

そして扉をノックした。

 

「五代です。失礼します」

 

「どうぞ」

 

中から返答がかえり雄介は扉を開けた。

 

「お邪魔しまーす。」

 

室内はろうそくの明かりで照らされ、床には複雑な魔方陣が目立ち、黒板にはわけのわからない記号や数式が書き殴られていた。

そして隅には小さなバスルームが設置されていた。

 

「いらっしゃい。待ってたわよ、五代君」

 

振り向くと部長席には雄介を呼びつけた張本人であるリアス・グレモリーが座っていた。

 

「どうも…」

 

「フフッ、そんなに緊張しなくてもいいわよ。適当な場所に座って頂戴」

 

「はい」

 

雄介が室内を見回すと見知った顔を見つけた。

 

「あれ、小猫ちゃん?それに祐斗君も…!」

 

塔城小猫。小柄な体にきれいな銀髪をショートカットにして、雄介の後輩にして学園のマスコット的存在の女の子である。

木場祐斗。雄介と同学年ながら別クラスの男子生徒であり、こちらはさわやかな性格で女子生徒の憧れとも言われているイケメン少年だ。

 

「どうも、五代先輩。」

 

「やあ、こんにちわ、雄介君。」

 

小猫と祐斗は挨拶を返してきてくれた。

 

「あら、あなたたち知り合いだったの?」

 

「はい、2人とも俺が働いてる洋食店の常連さんなんです」

 

「そうなの?」

 

「はい」

 

「えぇ」

 

リアスの疑問に小猫は首を縦に振り肯定し、祐斗はさわやかな笑顔で答える。

 

「よかったらリアス先輩も来てください」

 

そう言って雄介は懐から1枚の名刺を取り出してリアスに渡した。

 

「そうね、気が向いたら行かせてもらうわ」

 

「はい!」

 

雄介が答えると彼のもとに別の女性が歩み寄ってきた。

 

「あなたが五代雄介君ね。初めまして姫島朱乃と申します」

 

姫島朱乃と名乗った女性もまた、学園で有名な人物である。

長く美しい黒髪をひとつに束ね、リアスとともに“駒王学園の二大お姉さま“と称されている。性格も外見と違わず落ち着いた物腰は大和撫子を体現している。

 

「あ、どうも初めまして。五代雄介です。」

 

「朱乃、彼に紅茶でも出してあげて」

 

「かしこまりました」

 

そして一度朱乃は教室の奥に引っ込んだ。

 

「でもびっくりしたよ。部長からお客さんが来るって聞いてたけどまさか雄介君だっただなんてね」

 

「うん」

 

祐斗に同意するように小猫も首を縦に動かす。

 

「俺も同じだよ。まさかここに2人がいるだなんて。2人はここの部員なの?」

 

「その子たちは私の下僕悪魔なのよ」

 

「下僕悪魔?」

 

「今から説明するわ」

 

雄介は近くのソファーに腰かける。

その後、朱乃が入れてくれた紅茶を飲みながらリアスの口から昨日の怪人ははぐれ悪魔だという存在だということ、そして悪魔、堕天使、神の存在、三者の関係性、“神器”について説明された。

 

「…とりあえずこれらがあなたの知りたがってたことよ」

 

ここでリアスが立ち上がった。

 

「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうわ」

 

小猫、朱乃、祐斗が横に並び立ち

 

「2年、木場祐斗。悪魔です。よろしく!」

 

「1年、塔城小猫。悪魔です…。よろしくお願いします」

 

「3年、姫島朱乃ですわ。一応研究部の副部長をやってます。これでも悪魔ですわ」

 

「そして私が彼らの主、リアス・グレモリーよ。よろしくね」

 

そして彼女たちは背中から悪魔の翼を広げた。

その光景が彼女たちは完全に人間ではないという証明になった。

しかしそれを見た雄介の反応はというと

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

と笑顔とサムズアップで答えた。

 

「「「「…」」」」

 

「?どうかしましたか?」

 

「え?あぁ、いえ。なんでもないわ」

 

「そうですか?ならいいんですけど。しかし、悪魔ですか…。なんかぶっ飛んでますね」

 

「ま、それが普通の反応よ」

 

ここでリアスは紅茶をすすり、雄介の腹部に視線を落とす。

 

「それで、今度はあなたの“神器”のことなんだけど…」

 

「あぁ、そのことなんですけど実は今朝、桜子さんからベルトの古代文字の解読結果が届いたんですよ!」

 

「あら、本当?」

 

「えぇ、ここにプリントしたものが…」

 

雄介はカバンから数枚のプリントを取出してリアスに手渡した。

リアスはプリントに目を通すと、

 

「“アークル”、“霊石アマダム”…ね。やはりあなたのベルトは沢渡先生の言うとおり神器ではないみたいね」

 

「そうみたいですね」

 

そういって雄介は自分の腹部をさする。

 

「まさか神器でもないのに悪魔と戦えるだなんて、正直驚いたわね。五代君、あなた体は大丈夫なの?」

 

「はい、何ともありません!」

 

と、笑顔でサムズアップで答える雄介。

 

「ならいいのだけれど、どうしてそんな軽率なことをしたの?」

 

「求められた気がしたんです。あの蜘蛛みたいなやつと戦えって」

 

「求められた?」

 

「やってみて、やっぱそうかってなりました。戦うための体になったんだなって」

 

「本当になんともないの?人間じゃなくなる可能性だってあるのよ?」

 

「いや、それはないと思います。ただの勘ですけど」

 

「はぁ、その理由のない自信は一体どこから来るのかしらね?まぁ、いいわ。ところで五代君」

 

「はい、なんですか?」

 

「念のために聞くけど、またあの姿になれる?」

 

「う~ん、多分無理です」

 

「それはどうしてかしら?」

 

「何というか、その気になるとあの闘う姿に変わるみたいなんですよ。で、その気がなくなったら元に戻るんです。分かりやすいですよねぇ」

 

と言い、紅茶を口に運ぶ雄介。

その光景を見ながらリアスは呆れたようにこめかみをおさえる。

 

「部長、彼は昔からこんな性格なんです。気にするだけ無駄ですよ」

 

「祐斗先輩。それ、フォローになっていません」

 

「面白いかたですね、五代君は」

 

「笑い事じゃないわよ、全く…」

 

と、リアスが紅茶をすすっていると、

 

「大丈夫ですよ」

 

「え?」

 

「大丈夫!」

 

と、笑顔でサムズアップする雄介を見つめる悪魔たちであった。




いかがだったでしょうか?
こんな感じでぼちぼちやっていきたいと思いますので、長い目でよろしくお願いします。

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