東方混沌記   作:ヤマタケる

99 / 183
九十九から話された過去の出来事。


第97話 人里の悲劇

場所は変わって人里。そこでは阿求と共にユニ、魔理沙、楓が歩いていた。と、楓がユニに言う。

 

「なんだか懐かしいな。同姓と一緒に歩くのは。」

 

「楓ちゃん、今まで女の子と関わったことないの?」

 

「あんまりないな。影舷隊はほとんど男達だったし、女はミクや麻里だけだったし。」

 

二人が話している中、魔理沙が二人を見て言う。

 

「お前ら仲良いよなー。カオスの異変の前から出会ってそんな経たないのに。」

 

「そうかしら?」

 

「人には合う人と合わない人がいるからな。」

 

三人が話している中、阿求が指を指して言う。

 

「みなさん、そろそろ着きますよ。私は先に行ってお茶を用意しておきますね。」

 

そう言うと阿求はお茶がある二階へ上がっていった。そんな中、魔理沙が楓に言う。

 

「なぁ楓。私達と出会うまで何処にいたんだ?」

 

四角世界(マインクラフト)にいた。セコンドからの命令で行っていた。思い出したくないことばかりの旅だった。」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿求!?」

 

突如二階から阿求の悲鳴が響く。それを聞いた三人は急いで彼女の元へと向かう。

 

「阿求、大丈夫!?」

 

「おい阿求、大丈夫か?」

 

二階に行くと阿求は部屋の中を見て腰を抜かしていた。

 

「阿求、一体何があったんだ?」

 

楓が阿求に言った瞬間、魔理沙とユニは部屋の中の様子を見て目を見開いた。部屋の中にあったのは壁、床、天井に散らばった血に内臓をえぐり出されて息絶えた男の姿があった。

 

「これは・・・。」

 

「ごめん、みんな。私ダメかも!!」

 

そう言うとユニは口を押さえて下に降りていってしまった。そんな彼女とは別に楓は死体に近付き、辺りの様子を見る。そして口を開く。

 

「死体慣れしていないユニにとって、これを見るのは過激過ぎたな。」

 

そう言いながらも彼女は辺りを見回す。と、魔理沙が異変に気付く。

 

「おい楓、何か変だぜ。全く阿求のものが荒らされていない。それに窓の鍵が閉まっている。」

 

「確かに変だな。この死体、殺されたのは数分前だ。」

 

「なんだって!!」

 

「魔理沙、ここに着く前に誰かがここから慌てて逃げだしたのを見たか?」

 

「いいや、私は見てないぜ。」

 

「考えられるのは二つだ。一つは念力を使って物を動かせる奴、あるいは自殺の二つだ。」

 

「自殺はないと思うぜ。なんせ、ここらに内蔵をえぐり出した刃物が見当たらないぜ。」

 

「確かに、辺りを見ても刃物らしき物は見当たらない。自殺は消えたな。」

 

そう言うと楓はユニがいる下に降りていった。しばらくして楓が何かを持って上がってきた。それを見た魔理沙が言う。

 

「楓、それは?」

 

「ブラックライト。これでこの部屋に残っている指紋を探すことが出来る。」

 

「へぇ、楓って探偵みたいなこと出来るんだな。」

 

「以前悠岐のおじいさんに教えてもらっていたからな。」

 

そう言うと楓は青紫色の光を部屋に照らしていく。と、何かを見つけた楓が魔理沙に手招きをする。それを見た彼女は楓の元へ寄る。楓が指差す場所には少し丸みを帯びている模様があった。それを見た魔理沙は楓に言う。

 

「これが・・・。」

 

「恐らくな。これがこの男性を殺した犯人だ。」

 

そう言うと楓は指紋を持っていたハンカチに取った。そして言う。

 

「魔理沙は阿求にこのことを幻想郷の人に伝えてくれ。私はユニと共に優理花さんの所に行って犯人の正体を暴いてくる。」

 

「あぁ、分かったぜ。」

 

そう言うと二人はそれぞれの役割を果たすために何処かへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって現世。そこではユニと楓が優理花の所へ訪れていた。中では既に楓が幻想郷の状況を話していた。それを聞いた優理花が口を開く。

 

「大変でしたね。まさか幻想郷でそんなことが起こってしまっただなんて。」

 

「はい・・・。」

 

「まぁ、それは後にして二人とも疲れているでしょう?そこに座っていなさい。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

そう言うと二人は優理花の言われた通りに少し豪華な黒い座椅子に座った。そして優理花も自分の机に腰を下ろし、カタカタと音を出しながら作業を始めた。それを見たユニが優理花に言う。

 

「優理花さん、その機械は?」

 

「これ?これはパーソナルコンピューターと言って通称パソコンと呼ばれる機械です。これで指紋の主を見つけることが出来るのですよ。」

 

「すごい!」

 

興奮するユニとは別に優理花は一度ユニに笑みを浮かべると再び作業に入った。と、ユニが楓に言う。

 

「楓ちゃんは、犯人が誰だと思う?」

 

「犯人?さぁ、それは分からない。」

 

しばらくすると優理花が頭を押さえながら口を開いた。

 

「そんな、どうして・・・。」

 

「どうかしたんですか?優理花さん。」

 

「えぇ、これを見てください。」

 

そう言うと優理花は二人を呼んでパソコンの画面を見させた。画面には『一致する人物が見つかりません』と表示されていた。それを見たユニが驚きながら言う。

 

「優理花さん、これって一体・・・。」

 

「とても不可思議なことです。このパソコンは現世、幻想郷、四角世界(マインクラフト)、月の都の人々全ての指紋のデータが入っている最先端の機械の筈なのですが・・・。」

 

「誰とも一致しないなんて・・・。」

 

「可能性として考えられるのはこの4つの世界の外の方の指紋です。」

 

「4つの世界外ってことはガイルゴール達とかしか考えられませんが?」

 

「違うのよ楓ちゃん。この指紋、ガイルゴールやマスターハンド、クレイジーハンドと比べると小さいんですよ。」

 

そう言うと優理花はパソコンをカタカタと打ち始めた。そして誰とも一致しなかった指紋の隣にさらに大きい指紋を並べた。そして再び言う。

 

「この大きい指紋はグランチさんの指紋です。これと比べるとガイルゴール達とはとても思えないのは分かりますよね?」

 

「確かに、メルト・グランチと比べると小さい。」

 

「これを見て私は仮説ですがこの指紋の主は女性だと考えています。」

 

「女性!?」

 

彼女の言葉を聞いた二人は驚きのあまりに思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別に優理花が口を開く。

 

「しかもこの指紋からただならぬオーラが漂っている感じがするんです。もしかしたらガイルゴールの時の殃禍よりも酷い戦いになると思います。」

 

「そうですか・・・。」

 

二人の声が少し暗くなったのを見て優理花は笑みを浮かべて言う。

 

「大丈夫よ、あなた達ならきっとこの戦いを終わらせてくれると信じています。なんせあの千年殃禍に終止符を打ったのだから。」

 

「ですが優理花さん。相手はガイルゴールの時よりも酷くなるんですよね?私達勝てますか?」

 

「心配ありませんよ。以前グランチさんがおっしゃっていたんです。『彼女達ならきっと数々の困難を乗り越えていける』とね。だから、私もあなた方を信じているんです。」

 

「優理花さん・・・。」

 

楓が言った瞬間、何かを思い出した優理花がちょっと待っててくださいと言うと何処かへ行ってしまった。それを見た二人は首を傾げる。しばらくすると優理花が何かを抱えて戻ってきた。

 

「優理花さん、これは!!?」

 

思わず声を上げてしまうユニ。彼女が抱えていたのは全身黒い鱗で覆われていて小さな翼に青い瞳で、大きさは30cmほどのドラゴンだった。

 

「この子はつい最近生まれた帝王龍(エンペラードラゴン)の子供です。とても可愛らしいでしょう?」

 

「た、確かに可愛い・・・。」

 

「おっと、迂闊に触ると危険ですよ。この子は帝王軍以外の人を初めて見たら噛みつく習性があるんですから。」

 

「あ、危なかったぁ。」

 

そう言うとユニは手を引っ込めてホッと溜め息をついた。そんな中、優理花が笑みを浮かべて言う。

 

「私はあなた方を信じています。相手が誰であろうと挫けずに頑張って下さい。」

 

「ありがとうございます、優理花さん!!」

 

そう言うと二人は彼女にお辞儀をして部屋を出ていった。それを見た優理花は窓の外を見ながら口を開く。

 

「・・・本当に、頑張って下さい。今回の相手は、相当危険な方です。」




正体不明の指紋の主。一体誰なのか!?
次作もお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。