東方混沌記   作:ヤマタケる

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ガイルゴールを倒したユニ達。いよいよ宴会が始まる。


第95話 再会の喜びと異変の予感

「あれ、ここは・・・。」

 

目を覚ますとユニは見覚えのある場所で寝ていた。そんな彼女を楓が笑みを浮かべながら見ていた。と、楓が口を開く。

 

「おはよう、ユニ。随分と寝ていたな。」

 

「お、おはよう楓ちゃん。私、確かガイルゴールの世界にいた気が・・・。」

 

「もうガイルゴールが幻想郷にみんな戻してくれたよ。さ、起きるんだ。宴会が始まってしまうぞ。」

 

「宴会!?こ、こうしてはいられないわ。急いで準備しなくちゃ!!」

 

そう言うとユニは速攻で起き上がった。その瞬間、ユニは辺りを見回しながら楓に言う。

 

「ねぇ、楓ちゃん。みんなは?」

 

「あそこで待ってるよ。」

 

そう言うと楓はある方向を指差す。そこには霊夢、魔理沙、悠岐、ピンの姿があった。と、悠岐がユニに言う。

 

「ようやっと起きたか!恐らくだがもう少しで陛下がいらっしゃるぞー。」

 

彼の言葉を聞いたユニは笑みを浮かべて楓を見て言う。

 

「行こう、楓ちゃん。」

 

「あぁ、行こう。」

 

その時、霊夢達の前にネザーゲートのような形をしたものが現れ、その中からビオラとヴァンが現れた。そして言う。

 

「みなさん、お待たせいたしました。宴会の準備で出来ましたのでどうぞ御所へ。」

 

そう言うと二人はゲートの中に入って行った。二人に続いて霊夢達もその後に行く。そしてユニと楓がゲートの中に入った瞬間、ゲートが消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ・・・。」

 

ゲートを抜けた光景を見てユニ達は思わず声を上げてしまう。そこには豪華な料理がたくさん並んでいて5、6人ほど座れるテーブルが数十台用意してある部屋が広がっていた。と、セコンドがユニ達に言う。

 

「ようこそ幻想郷の友達よ!今夜は宴だ。そこにある器に好きな食べ物をよそり、好きな場所で好きなだけ食べ飲みするがよい!!」

 

「ヨッシャアアアアア!」

 

そう言った瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙、ピンの四人は一斉に食べ物をよそり始めた。それを見た悠岐と楓は少し唖然となるものの、ユニ達同様に食べ物をよそり始めた。食べ物をよそった悠岐はユニの肩を軽く叩いた。それに気づいたユニは悠岐と楓の後についていく。悠岐は男二人、女二人が座っているテーブルに向かっていく。そして黄色の髪の少年の肩を叩き、言う。

 

「よぉ、久しぶりだな隼人。」

 

「ゆ、悠岐!!お前いつまで幻想郷にいるつもりだよ。」

 

「ハハハ、悪い悪い。セコンドの命令でな、もうしばらく幻想郷にいなきゃならなくなったんだ。」

 

「そうか・・・って!!」

 

「?」

 

そう言った瞬間、黄色の髪の少年、隼人は楓を凝視する。そして言う。

 

「お前、まさか楓か?」

 

「あぁ、そうだ。私は出野楓だ!そしてお前は隼人、鈴木隼人なんだな!」

 

「そうさ。俺は隼人、鈴木隼人だ!」

 

そう言った瞬間、二人は目を輝かせながら見つめ合う。と、隼人が笑みを浮かべて言う。

 

「久しぶりだな!見ない内にでかくなりやがって。」

 

「お前も前よりは男らしくなってるじゃないか。」

 

二人が話している中、一人の少女が楓の元に寄る。彼女を見た楓は笑みを浮かべて口を開く。

 

「久しぶりだな、ミク。」

 

「あなたとまた会えて嬉しいわ。」

 

緑色の髪に青い瞳の少女、ミクは笑みを浮かべて言葉を発した。そんな中、一人の少女が楓に飛びついた。

 

「なっ!?」

 

突然だったため、楓は驚くしか出来なかった。楓に飛びついたのは緑色の髪を後ろに縛っていて黒い瞳の少女だった。少女は楓を見ながら言う。

 

「楓、久しぶり!全く、私が見ない内に私より大きくなるなんて!!」

 

「フッ、人とは成長する生き物なんだぞ、麻里。」

 

楓に飛びついた少女、麻里は楓を見ながら溜め息を吐いた。そんな彼女とは別に麻里の後ろから長身で黒い瞳に銀髪の男が現れた。男は楓を見て言う。

 

「久しぶりだな、随分と成長したらしいな、楓。」

 

「あぁ、成長したさ。悠岐と同じくらい強くなって見せたぞ、ウロボロス。」

 

楓に言われて長身の男、ウロボロスは笑みを浮かべる。と、ウロボロスが暗い表情になり、口を開く。

 

「お前と久しぶりに会えたのは嬉しいが、悲しいこともあったな。」

 

ウロボロスが言った瞬間、悠岐はよそった食べ物を置き、隼人達を見る。ユニはそれを唖然となりながら見る。そして悠岐は口を開いた。

 

「あいつが死んでしまったのは俺の責任だ。影舷隊団長としての恥だ。どうかこの場で謝らさせて欲しい。」

 

「よせ悠岐。」

 

そう唐突に口を開いたのはウロボロスだった。そのまま彼は話を続ける。

 

「啓介が死んだのはおまえのせいじゃない。あれは啓介が俺達へ意思を受け継いだだけだ。」

 

「・・・すまねぇ、ウロボロス。」

 

そう言った瞬間、ウロボロスは笑みを浮かべて口を開く。

 

「さ、今はそんなことを忘れて宴を楽しもうぜ。それと悠岐、聞きたいことがあるんだが・・・。」

 

「なんだ?」

 

「悠岐の後ろにいる女の子は誰だ?」

 

そう言うと彼は悠岐と楓の後ろにいたユニを指差して言う。それをみた悠岐が口を開く。

 

「あぁ、紹介し忘れてたな。こいつはモルトの妹のユニだ。幻想郷の守護者やってる。」

 

「あ、初めまして影舷隊のみなさん。私はアイアルト・ユニと言います。」

 

「モルトさんと違って礼儀正しいわね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

照れるユニとは別に悠岐は麻里を見ながら言う。

 

「麻里、じ久の奴はどうした?」

 

「あぁ、じ久のことなんだけれど・・・彼、ドールクが死んだことがあまりにもショックだったからずっと引きこもってる。」

 

「ドールクはじ久にとってかけがえのない存在だったからな。無理もないだろう。」

 

影舷隊が話している中、楓が口を開く。

 

「私達は少し話したいことがあるからまた後でな、みんな。」

 

「あぁ、分かった。」

 

そう言うと悠岐、楓、ユニの三人は別のテーブルに移動し、席に座る。と、ユニが辺りを見ながら言う。

 

「ちょっと、なんで呼んだ覚えのない紅魔組が宴会に来てるのよ!それに、今回の異変で紫は現れるどころか姿を見かけないのよ。一体どうしたのかしら?」

 

「仕方ねぇさユニ。今八雲さんは冬眠中だからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隣いいかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ。別に構わ、なっ!?」

 

「なっ!!」

 

言葉を発しようとした瞬間、二人の言葉が詰まってしまう。

 

「どうしたの?悠岐君に楓ちゃん。」

 

そう言うと彼女は二人が呆然と見ている方向を見る。そこには長身で後ろ髪を束ねていて片腕を背に回している男、メルト・グランチ・・・だけではなかった。彼の隣には悠岐と同じくらいの身長に腰まで伸びる鮮やかな黒髪、そして青い瞳の美しい女性がいた。その姿を見たユニは言葉を失った。と、メルト・グランチがユニに言う。

 

「そうだな、君にはまだ話していなかったな。優理花、自己紹介してはどうかね?」

 

「そうですね、初対面ですし、しておきましょう。」

 

そう言うと優理花という女性はユニを見つめ、言う。

 

「初めまして、ユニちゃん。私は帝王メルト・グランチ・エンペラーの妻の上山優理花と言います。」

 

「あ、初めまして!!私は、闘王アイアルト・モルトお兄様の妹、アイアルト・ユニです。」

 

「フフ、よろしくねユニちゃん。」

 

その時、『優理花』という名前を聞いた霊夢と魔理沙は思わず持っていたスプーンを落としてしまう。そして霊夢が言う。

 

「あ、あれがメルト・グランチの妻!?」

 

「間近で見ると美人だぜ・・・。」

 

あまりの美しさに呆然となってしまう二人。そんな中、メルト・グランチと優理花の二人がユニ達の座っているテーブルに腰を下ろした。と、優理花がユニを見て言う。

 

「私は普段、グランチさんの手伝いをしたり指紋検証を行っているんです。」

 

「へぇ、帝王軍ってそんなことをするんですね。」

 

「昔は野蛮な方々がたくさんいらっしゃいましたからね。今では警備は厳重ですよ。」

 

「昔の現世は恐ろしいものだよ。性欲を満たせない野蛮な男共がそこらにいる女を拐っては・・・。」

 

「さ、拐っては?」

 

「女の意志に反し、子作りを行った。」

 

そう言った瞬間、楓の顔色が一瞬にして青くなった。それを見た悠岐が口を開く。

 

「おいおい、大丈夫かよ楓。少し話が過激過ぎたか?」

 

「あぁ、少々過激過ぎた。食欲が失せてしまった。」

 

「これはすまないな、出野楓。宴会の時に話すべきではなかった。忘れてくれたまえ。」

 

「忘れろと言われてもそう簡単には忘れられん。」

 

「そ、そんな怖いことがあったんだ・・・。」

 

ユニが言った瞬間、メルト・グランチの隣から酒の入ったコップを持った剛岐、マーグル、モルトが現れた。そして優理花を見て言う。

 

「優理花さ~ん、俺と酒飲もうぜ~。」

 

「優理花さ~ん、俺も~。」

 

「優理花さ~ん。」

 

「剛岐、マーグル、モルト、いつの間に!?てゆうか酒くさっ!!」

 

悠岐とユニは鼻を押さえながら言う。それと同時に楓も鼻を押さえる。と、優理花が汗をかきながら口を開く。

 

「全く、仕方ありませんね。ほら、あそこでみんなで飲みましょうよ。」

 

そう言うと優理花は席を立ち上がり、誰も使ってない席へ移動した。彼女に続いて剛岐、マーグル、モルトもついていく。と、ユニが唖然となりながら言う。

 

「お、お兄様のあんな姿初めて見たわ・・・。」

 

「君には言っていなかったかな?幻想郷の守護者よ。優理花とあの三人は昔からの幼馴染みなのだよ。」

 

「幼馴染みなんですか!?」

 

「6歳の頃から関わってきているからねぇ、私よりも付き合いは長いよ。」

 

「でもどうしてメルト・グランチ様と結婚したんですか?あの三人の誰も選ばず。」

 

「人には合うものと合わないものがあるのだよ。恐らく優理花にとって三人は合わなかったのだろう。ただ、友達としては楽しそうだかね。」

 

そう言うと彼は優理花達の方を見る。それにつられてユニ達もその方向を見る。そこには四人で楽しそうに酒を飲んでいる姿があった。そんな中、メルト・グランチがコップを手に持ち、言う。

 

「さて、私も混ざるとするか。宴会は楽しまねばならぬもの。さぁ、盛り上がろうではないか。」

 

そう言うと彼は四人の元へ歩いていった。それを見たユニが悠岐と楓に言う。

 

「なんだか楽しそうだね、お兄様も他の五大王の方々も。」

 

「セコンドは途中で会ったらしい、今の俺らの時に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、随分と楽しそうに宴会を満喫しているじゃない、ユニ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、ユニの隣にスキマが現れ、その中から一人の女性が現れた。

 

「スパーキーング!!」

 

そう叫んだ瞬間、ユニは近くにあったパイを女性の顔に投げつけた。

 

「なっ!!」

 

「ちょっ、ユニ!?」

 

突然の彼女の行動に思わず声を上げてしまう悠岐と楓。そんな中、女性がパイを払いながら言う。

 

「ちょっ、何するのよ!!久しぶりの登場でいきなり顔にパイをスパーキーングなんて酷すぎにもほどがあるわ!」

 

「そんなことより紫、あなた何してたの?」

 

突然の質問にパイを顔にスパーキーングされた女性、八雲紫はきょとんとなりながら言う。

 

「え?いや、普通にマヨヒガに籠ってたけれど?」

 

「何が起こっていたか覚えてる?」

 

「千年殃禍だけれど?」

 

「・・・あーもう!!腹が立つからもう一回スパーキーング!!」

 

そう言うと彼女は近くにあったパイを再び紫の顔に投げつけた。そして言う。

 

「一体何してたのよ!!私達があんなに苦労してガイルゴール達と戦っていたというのにあなたは一体何をしていたのよ!!」

 

(そう言えば今回の異変に八雲さんいなかったな。)

 

怒るユニと記憶を振り返る悠岐。そんな中、紫は顔についたパイを拭きながら口を開く。

 

「私が悪かったわ。何も言わずにマヨヒガに籠ってたことは謝るわ。でもパイを2度投げつけるほどではないじゃない。」

 

「投げつけるほどよ!!それに今回の異変で大して活躍していない紅魔組もこの宴会に来てるし!!」

 

「ごめんなさいね、実は彼女達とあることを調べていたの。」

 

「あること、ですって。」

 

「そう、今後異変を起こすかもしれない奴のことをね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、神が負けた。アハハハハハハ!あの神が!絶対なる権力を持つ神が!三度目の殃禍で遂に負けた。アハハハハハハハ!」

 

とある場所で一人の女性が巨大なモニターを見て腹を抱えて笑っていた。と、突然女性は笑うのをやめると立ち上がり、口を開く。

 

「次は、私の番ね。まずはあんたからよ、蓬莱山輝夜。」

 

そんな彼女の顔には不気味な笑みが浮かんでいた。




紫から告げられる異変の予感、ガイルゴールの敗北を嘲笑う謎の女。その正体とは!?
次作もお楽しみに!

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