なんだ、この感覚は・・・。
頭に、何かが浮かんでくる・・・
これは・・・屋敷?そしてその奥にいるのは・・・。
あぁ、これか。だが、何故今になって、これを思い出すのだ?
分からない・・・。何故なんだ・・・。
時は数千年前、まだコンクリート、機械などといった現代のものが無かった頃の時代。突如屋敷に火がつき、貴族達は慌てていた。
「何故だ!何故火が屋敷に引火したんだ!」
「そんなことはどうでもいい、急いで上様や娘様を外へ避難させるんだ!!」
「分かった、お前はそっちを頼んだぞ!」
多くの貴族が慌てている中、火が燃え広がる屋敷の中で一人、冷静で屋敷内を歩く一人の貴族・・・いや、貴族の服を着た男がいた。男はしばらく歩いていると途中で足を止めた。そして目の入った部屋に入る。
「オギャア、オギャア。」
そこには泣き叫んでいる赤子を優しく抱く女性がいた。彼女の肩には焼けて落ちた天井の破片が刺さっていた。そんな彼女を見て男はゆっくり近づく。男に気づいた女性は男に笑みを浮かべ、口を開く。
「あぁ、神様。どうか・・・。」
「お前、何故余が普通の人間ではないことに気づいた?」
「この子から、教えてもらっているのです。この子は、人間と人間でない存在を、区別出来るゴホッ!」
続きを言おうとした瞬間、女性は赤子にかからないように吐血した。そんな彼女とは別にガイルゴールは言う。
「言うのならば言え。お前の望みはなんだ?」
「はい、私の望みは・・・この子を・・・この子を我が当主である夫に渡してほしいのです。私の体はこのようになっておりまして、もう生きる道などないのです。」
女性が言った瞬間、ガイルゴールは女性の体を再び見る。女性の足には木片がのし掛かっていて身動きが取れない状況にあった。そんな中、ガイルゴールは言う。
「・・・何故だ?お前は今生死の狭間をさ迷っている。なのにお前は何故、自分の命よりもその赤子を優先する?」
「それは・・・我が当主である夫との約束なのです。たとえ私めが死のうとも、愛しきこの娘を亡くす訳にはいかないのです。」
「・・・。」
彼女の言葉を聞いてガイルゴールは黙ってしまう。そんな中、女性が赤子をガイルゴールに差し出し、言う。
「ですから・・・どうか、この子を夫に届けてください。」
それを見たガイルゴールは微笑を浮かべ、口を開く。
「自らの子のために命を捨てるとは。面白い、気に入ったぞ人間。名を聞いておこう。お前とこの赤子の名は?」
「私は、
「ふむ、娼子に妹紅か。覚えておくぞ、余が気に入りし人間よ。」
そう言うとガイルゴールは赤子の妹紅を受けとると部屋を出ていった。
一方、外では藤原不比等達が慌てながら話していた。
「おい、娼子と妹紅はどうなったんだ!!」
「分かりません!!屋敷内を探しても見当たらないんです。」
「ええい、とにかく二人を探し出せ!」
不比等が言った時だった。突如焼け落ちていく屋敷の中から一人の長身の男が赤子を抱いてやってきたのだ。そして口を開く。
「娼子から子を授かってきた。」
そう言うと男、ガイルゴールは泣く赤子、妹紅を不比等に渡した。彼女を受け取った不比等はガイルゴールを見て言う。
「娼子は・・・私の妻の、娼子は?」
「残念ながら、助けられる状況ではなかった。」
その言葉を聞いた瞬間、不比等は涙を流しながら膝をついた。それを見たガイルゴールは心の中で語る。
(何故人が死んで泣いているのだ?あぁ、そうか。大切な存在を失ったからか。)
そう語った瞬間、ガイルゴールは不比等達に背を向けて歩き始めた。ガイルゴールを見た瞬間、不比等が言う。
「ま、待ってくれ!!1つ聞かせてくれ。お前の名前は何と言うのだ?」
「・・・余の名を聞いてもいずれお前達は後に余の名を忘れるだろう。」
そう言うとガイルゴールは名前を名乗らずに何処かへ消えていった。
時は戻って現在。過去の出来事を不意に思い出したガイルゴールはユニのスペルカードをくらって倒れていた。そんな中、力を出し尽くしたユニがフラッとなり、そのまま地面に落ちていく。
「ユニ!?」
落ちている彼女の名前を霊夢が叫ぶ。その間に悠岐が落ちていくユニを助けた。彼女を抱えた悠岐は様子を見て言う。
「寝てる。力を出し尽くしたんだな。」
彼の言葉を聞いた瞬間、霊夢達の顔に笑みが浮かんだ。そんな中、ガイルゴールがゆっくりと立ち上がる。それを見た早苗が言う。
「ま、まだ立ち上がれるのですか!?」
「・・・見事だ、幻想郷に現世の者達よ。まさか余を倒すとはな。実に見事だ。殃禍に終止符が打たれたな。定めは定めだ。これから余は2万年の眠りにつく。」
「に、2万年!?」
「殃禍に終止符が打たれた場合、ガイルゴールは眠らなければならないのですよ、ヴァン。」
驚くヴァンにビオラが言う。そんな中、ガイルゴールが笑みを浮かべて口を開く。
「お前達と戦えて本当に良かった。こんなに楽しめる戦いは初めてだ。」
ガイルゴールが言った瞬間、魔理沙が被っている帽子を整えて言う。
「これで、終わりだな。」
「えぇ、そうね。遂に殃禍に終止符が打たれたのね。」
霊夢と魔理沙が話している中、剛岐、メルト・グランチ、セコンドの三人は笑みを浮かべる。そんな中、楓が口を開く。
「辛い戦いだったな。」
「あぁ、そうだな。」
彼女の言葉に返事をする神奈子。と、悠岐が突然霊夢達を見て言う。
「なぁ、お前ら。ガイルゴールを倒せたのはいいんだがよ・・・。俺達これからどうやって帰ればいいんだ?」
彼の言葉を聞いた瞬間、霊夢達ははっとなり、頭を抱え始めた。そんな中、魔理沙が大声を上げる。
「しまったぁぁぁぁぁ!ユニ気絶してるからどうやって帰ればいいんだー!!」
みんなが慌てている中、ガイルゴールが溜め息を吐いて言う。
「余が戻そう。さらばだ、強き者達。」
そう言った瞬間、ガイルゴールは左手を上げて指を鳴らした。その瞬間、霊夢達の体が宙に浮かび始めた。そのまま霊夢達の姿が消えていった。それを見たガイルゴールが再び言う。
「また会おう、いつかの時を。」
場所は変わって幻想郷。そこではガイルゴールによって飛ばされた霊夢達がいた。と、依姫と豊姫が霊夢の元へやって来て言う。
「私達はここでお別れです。さよならは言いません。またあなた方に会える気がするのですから。それではまた。」
そう言うと二人は空へ飛んでいってしまった。二人を見送った後、魔理沙が笑みを浮かべて言う。
「さぁ、異変解決の後は、みんなお待ちかねの宴会だぜ!」
「はぁ、また私の神社でやるの?」
「今回は私が提供しよう。」
そう言ったのはメルト・グランチだった。それを聞いた瞬間、魔理沙が目を見開きながら言う。
「本当か!?」
「今回だけだとも。我々帝王軍が料理等を用意しよう。場所は帝の御所だ。」
「グランチ!!」
「ハハハ、まぁ良いではないか。今まで打たれなかった殃禍に終止符を打つことができたのだからね。今回限りは構わないだろう?」
「・・・あぁ、そうだな!」
セコンドが言った瞬間、悠岐、楓、剛岐、メルト・グランチ、ヴァン、ビオラの顔に笑みが浮かんだ。と、ビオラが口を開く。
「宴会の準備は私やヴァン、剛岐様やメルト・グランチ様が準備いたしますのでみなさんは休んだいて下さい。」
「なっ、俺も手伝うのかよ!?悠岐と楓は!?」
「悠岐と楓はあなたの倍頑張ったのであなたは手伝うべきなんですよ、剛岐様。」
「そんなぁ。」
「宴会の準備が出来ましたら私とヴァンが呼びにいきますのでよろしくお願いします。」
そう言った瞬間、ヴァンが右腕を上げる。その瞬間、ネザーゲートのような形をしたものが現れ、ビオラ達はその中に入っていった。それを見届けた悠岐は楓を見て言う。
「楽しみだな、久しぶりにあいつらに会えるんだぜ。」
「あぁ、楽しみで待ちきれないよ。」
ガイルゴールを倒し、長きに渡った千年殃禍に終止符を打つことができたユニ達。次回は異変解決の後の楽しみの宴会が!!
次作もお楽しみに!