場所は魔法の森。そこでは突然駆けつけた楓とクレイジーハンドが睨みあっていた。と、ユニが言う。
「啓介君、楓ちゃんは勝てると思う?相手は神の手下の化身だよ。」
「なんだユニ。お前、楓の実力を疑うのか?あいつの強さなら俺達よりはやれるさ。」
二人が話している中、クレイジーハンドが楓に言う。
「私はこの殃禍であまり戦いたくない者達がいた。それは出野楓、お前と西田悠岐だ。最もあの五大王に近いお前達は非常に厄介だ。」
「お前の言葉、褒め言葉として受け入れよう。」
そう言うと彼女は刀を構える。それと同時にクレイジーハンドも剣を構える。そして楓に言う。
「来い、小娘。」
その瞬間、楓とクレイジーハンドの攻撃が同時に衝突した。その勢いで二人が吹っ飛ぶ。そのまま楓は着地し、クレイジーハンドは木に叩きつけられる。それを見た魔理沙が呆然となりながら口を開く。
「す、すげぇ。あの化身と力が互角だぜ・・・」
「流石楓だ。最も王に近い野郎だ。」
「ドウヤッタラアンナニタタカエルンダロウ?」
「楓ちゃん・・・。」
四人が話している中、楓とクレイジーハンドは刀と剣を打ち合う。と、クレイジーハンドが言う。
「流石だな、出野楓。やはりお前は厄介だ!!」
「それはどうも!!」
そう言った瞬間、楓はクレイジーハンドの腹を蹴りつけた。
「ぐっ・・・。」
空いている右手で腹を押さえながらクレイジーハンドは後退する。そんな彼とは別に楓は休む暇を与えずに攻める。クレイジーハンドは攻撃を防ぎながら心の中で語る。
(マズイ、このままでは私の体力が持たない。まさかこの私が悪魔に似た小娘に押されるとはな。仕方ない、マスターの力を借りよう。)
その瞬間、クレイジーハンドはマスターハンドのいる博麗神社の方へ腕を伸ばした。そして指を鳴らした。その瞬間、楓が彼の右腕を斬りつけた。
「ぬぐっ!?」
声を上げる彼とは別にさらに楓はクレイジーハンドの腹を斬りつけた。
「何ッ!?」
連続攻撃を食らった彼はヨロヨロになりながら後退する。それを見たユニが声を上げる。
「すごい、すごいよ楓ちゃん!!私達でダメージを与えられなかったあのクレイジーハンドに無傷でダメージを与えるなんて。」
「フッ、流石だな楓。」
「お前のお陰だな、啓介。」
そう言うと楓は傷を押さえるクレイジーハンドの元へ歩み寄る。それに気づいた彼は黙って彼女を見る。と、楓がクレイジーハンドに刀の先を向けて口を開く。
「これで終わりだ、クレイジーハンド!!」
そう言った瞬間、彼女は刀を振り下ろす。しかし彼女の攻撃はクレイジーハンドには当たらなかった。いや、当てられないのだ。クレイジーハンドに当たる寸前で彼女の動きが止まっていたのだ。それを見た啓介が楓に言う。
「おい楓、何してるんだ!!速く止めを刺せ!!」
しかし彼が言っても楓は言葉を発さなかった。そんな中、クレイジーハンドが笑みを浮かべながら言う。
「感謝しているぞ、マスター。お前のお陰で助かった。」
クレイジーハンドが言った瞬間、楓は刀を地面に落とし、頭を抱えながら膝をついた。
「あぁ、やめろ・・・やめろ!!」
突如楓は何かに怯えるかのように叫び始めた。彼女の頭の中には両親が自分の目の前で殺される様子、謎の組織に目の手術を受けられる、自分を馬鹿にする同級生達の姿・・・。どれも楓にとってはトラウマだった。と、クレイジーハンドが楓を見て言う。
「マスターに頼んだこと、それはお前の過去のトラウマを思い出させることだ、出野楓。」
そう言うと彼はゆっくりと楓の元へ歩み寄る。それを見ていたピンが楓に叫ぶ。
「カエデチャン、ショウキニモドルンダ!!」
「・・・ハッ!!」
ピンの言葉を聞いた瞬間、楓が正気に戻った。だがその瞬間、クレイジーハンドの刀が彼女の両目を捉えていた。
「あああああああ!!」
斬られた目を押さえながら楓は地面にうずくまる。そんな彼女とは別にクレイジーハンドは楓の腹を踏みつけた。
「ガハッ・・・。」
視界が見えない彼女はそのまま吐血する。と、クレイジーハンドが楓に言う。
「お前は私に散々やってくれたな。次は私がやる番だ!!」
「させるかよ!!」
その瞬間、啓介が楓を斬ろうとしたクレイジーハンドの腹を蹴りつけた。
「ぬおっ!?クソッ、邪魔をするな!!」
そう言うと彼は啓介に向かって刀を振り下ろす。それに対抗して啓介はクレイジーハンドの攻撃を弾き、言う。
「こいつはおまけだ!!」
そう言った瞬間、啓介は服の内側のポケットの中に入っていた拳銃を取り出した。それを見たクレイジーハンドが目を見開きながら言う。
「拳銃を、いつのまに!?」
声を上げるクレイジーハンドとは別に啓介は彼の胸部を3発撃ち抜いた。
「ガハッ・・・。」
撃たれたクレイジーハンドはそのまま地面に倒れる。それを見た啓介が口を開く。
「俺の仲間に手出ししてんじゃねーよ、クソ野郎が。」
「啓介君、こっちよ!!」
「イソゲ、ケイスケクン!!」
「急げ!」
「あいよっと。」
ユニとピン、魔理沙に呼ばれた彼は倒れる楓を背負い始めた。と、楓が弱々しい声を出す。
「け、啓す・・・け?」
「喋んな、お前は怪我人なんだ。」
そう言うと彼はゆっくりと歩き始めた。歩く度に彼の腹部から血が垂れる。それを見たユニが心の中で語る。
(啓介君の出血量が酷いわ。早く手当てしてあげないと。無理にでも楓ちゃんを助けようとしているんだから。私だって他人を助けないと!)
そんな中、啓介も心の中で語っていた。
(さっき奴にやられた箇所からの出血がマズイな。このまま歩き続ければ多量出血で死んでしまうな。急がねぇと。だが何でだ・・・。何故あの時のことを今思い出してしまうんだ・・・。)
時は13年前の現世。大雨の降る夜、二人の少年が傘をさしながら街中を歩いていた。
「こんなに雨が降るなんて珍しいね、啓介。」
「本当だな、悠岐。この国で豪雨なんてな。」
二人が路地裏に入った時だった。突然悠岐が足を止めた。それを見た啓介が彼に言う。
「どうした悠岐?」
「いや、そこに女の子がいるからどうしたのかなって思って。」
そう言うと彼は路地裏の奥を指差した。啓介はその場所を見る。そこには背丈は悠岐ほどで腰まで伸びる黒髪、赤い目の少女がいた。彼女を見た啓介が悠岐に言う。
「こんな豪雨でこんな夜でこんな所に一人でいるなんておかしいな。」
啓介が言った瞬間、悠岐が少女に近寄り、口を開く。
「君の名前は?家族は?」
「・・・。」
彼女を見てあることに気づいた悠岐は啓介を見ながら言う。
「この子、何かに怯えてるみたい。体が凄く震えてるよ。」
「余程怖いことにでも起こったんだな。」
「・・・私は、出野楓。お母さんとお父さんは・・・殺された。」
時は戻って現在。負傷した楓を血を垂らしながら運ぶ啓介は我に返る。そして心の中で語る。
(よし、もう少しだ。)
啓介がそう思った時だった。突如グサッという鈍い音が辺りに響いた。その瞬間、ユニとピンは目を見開いてしまう。そんな中、胸に痛みを感じた啓介が自分の胸を見る。自分の胸を見覚えのある刀が貫いていた。
「ガハッ!!」
吐血した啓介は楓を放してしまい、倒れる。
「楓ちゃん、啓介君!!」
そんな啓介の後ろには先程拳銃で撃たれた筈のクレイジーハンドが立っていた。そして口を開く。
「拳銃程度で私を倒せると思うな。」
「オマエ!!」
それを見たユニとピン、魔理沙がクレイジーハンドの元へ向かっていった。そんな中、楓はゆっくりと体を起こし、口を開く。
「啓介・・・啓介!!」
目の見えない彼女は地面を這いながら彼を探す。そんな彼女とは別に啓介は木に寄りかかり、煙草を吸う。
「啓介・・・。」
煙草の臭いを頼りに彼女は啓介を探し当てた。そして彼女は彼の膝のズボンを握る。その時、啓介は彼女の頭を抱え、抱き締めた。
「!!?」
突然の啓介の行為に楓は声を上げる。そんな中、啓介はすぐに彼女を放し、口を開く。
「ハ、ハハハ。ボケッとしてんのが悪いんだぜ、楓。やっとお前を抱き締められた。」
「啓、介・・・。」
「俺がお前と出会った時からの夢が叶えられた。俺はそれで嬉しいさ。」
「啓介・・・。」
「あぁ、分かってるさ。こいつを飲みな。飲んで、奴をやっつけてくれよ。」
そう言うと彼は目の見えない彼女に薬のようなものを飲ませた。それを飲んだ瞬間、楓の目が、体の傷が回復していった。目が見えるようになった瞬間、啓介は地面に倒れていった。
「啓介?」
それを見た楓の声が涙ぐんだ。そんな中、啓介は心の中で言う。
(泣いてんじゃねぇよ、悠岐みたいに強く生きるんだろ?)
倒れていく中、彼は楓の涙ぐむ目を見て再び心の中で語る。
(あぁ、綺麗な瞳だな。最後にお前の瞳を見れて嬉しいぜ、楓。本当にこいつはいい奴だな。こいつの為に死ねるなら、それでいい。)
その瞬間、啓介の意識が途切れた。
「啓介!!」
そんな中、楓は彼の頭を抱え、声を上げながら泣き始めた。
悠岐、楓、啓介の過去。啓介の死。
次作もお楽しみに!