東方混沌記   作:ヤマタケる

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守矢神社に置かれた岩をクレイジーハンドを呼び寄せて破壊したユニ。そんな中、ある侵略者が幻想郷に入り込んできていた。


第7話 微笑む男と蛇人間

「紫様、もう一つの世界とは一体何処なのです?幻想郷以外の世界と言ったら現実世界しか浮かばないのですが・・・」

 

「それが私にも分からないのよ。だから今橙に見に行って貰ってるわ。恐らくそろそろ戻ってくる筈よ。」

 

彼女がそう言った瞬間、スキマの中の目玉が一斉に怪しく光りだした。それを見た紫はすぐにスキマを展開する。そこから出てきたのは先程紫の命令を受けて偵察に行った橙だった。彼女は荒い息づかいをしていた。そんな彼女に藍が言う。

 

「大丈夫か、橙。今休ませるからな。」

 

「藍しゃま・・・私、疲れました・・・。」

 

橙は相当体力を使ったのか、かなり疲れきった表情をしていた。そんな彼女に紫が言った。

 

「橙、私が言った侵略者は見つかった?」

 

「はい・・・・白髪の男と、リーゼントの蛇男が、いました・・・」

 

「・・・紫様!!」

 

橙の言葉を聞いた瞬間、藍はあることを察し、紫の方を見ながら言った。そしてそれに答えるかのように紫も口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違いないわ、これは新たな異変よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満月が昇る夜、そんなことが今起こっているのに気がついていないユニは竹林で慧音、妹紅、霊夢と共に散策をしていた。ユニもまだ幻想郷について分からない点が数多くある。それを教えてもらうために彼女は三人と散策をしているのである。そんな中、慧音がユニに言う。

 

「いや、あの時はすまなかったな。妹紅がユニに迷惑をかけたみたいだから。」

 

「お、おい慧音。まだそんなこと言ってるのか?もう勘弁してくれよ。」

 

「いやいや、別に問題ないわよ。エンダードラゴンも満足してたしね。」

 

三人が話している中、何故か霊夢だけ話に入ろうとしなかった。そんな彼女にユニが言う。

 

「霊夢、どうしたの?さっきから何も話してないようだけど・・・」

 

「別に、何でもないわよ。ただ、悪夢のことが気になってぼんやりしてしまうだけなの。」

 

「悪夢?一体どんな悪夢を見たんだ?」

 

霊夢の言葉を聞いてすぐに首を突っ込んできたのは妹紅だった。そんな彼女に霊夢はすぐに答えた。

 

「その悪夢は、紫がなんかよく分からない男の人にやられてて、そこで私が助けようとしたら舌の長い男が目の前に現れて悪夢が終わったわ。」

 

「不思議な夢を見たんだな・・・」

 

「慧音だってそんな時もあるでしょ?」

 

「うーん、あまりないな。」

 

妹紅も悪夢があるか首を傾げながら考えていたが、何も浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフフ~ン♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として何処からか男の鼻歌が聞こえた。それを聞いた瞬間、ユニ達は躊躇うことなく鼻歌の聞こえた方向へ走った。そして鼻歌を歌っていた人物へ目を向けた。そこには白髪に青白い素肌、耳に青いクリスタルのピアスをつけている男がいた。

 

「ん?君達は・・・」

 

四人の存在に気がついた男は四人の方へ顔を向ける。男の顔を見た瞬間、霊夢は言葉を失い、体が震え始めた。何故なら男の顔は悪夢に出てきた男と瓜二つだからである。震える霊夢とは別に男が口を開く。

 

「私の世界では中々見ない女の子達だね。まあ、しかしどうでもいいんだよ、君達なんぞは。私が用があるのはこの幻想郷に眠るもう一つのトライフォース、『召喚のトライフォース』に用があるんだよ。」

 

「召喚のトライフォース?あいつは何を言っているんだ?」

 

「ユニ!あれはお前が呼び寄せたのか?」

 

「違うわ、慧音。私はあんな人を呼んだ覚えはない。」

 

「ああ、自己紹介がまだだったね、失礼した。私は現魔族長ギラヒム。気さくに『ギラヒム様』と呼んでくれても構わないよ。」

 

「・・・なんだそりゃ。」

 

「そのギラヒム様がここへ何しに来たんだ?」

 

「そう呼んでくれれば光栄だよ、人間。」

 

ギラヒムが声を発した時には彼は妹紅の目の前まで来ていた。それに反応出来ず四人は驚くしか出来なかった。そんな彼女らとは別にギラヒムは妹紅から離れて話を続けた。

 

「実はね、私は主のためにあることをしようと思ったんだけど、邪魔が入ってしまってね・・・どうも私は先程から機嫌が悪いんだ。」

 

「邪魔する人?それは誰のことよ!」

 

「それは現実世界からやって来た覇王率いる軍勢だよ。我々はたったの三人だけだと言うのにあちらは大勢でやって来たんだよ?無慈悲だとは思わないかい?」

 

「お前が何か企んでるからその覇王らがお前達の計画を止めるためにやってるだけじゃないのか?」

 

「それは違う。」

 

慧音の言葉にギラヒムは即答だった。そして再びギラヒムは口を開いた。

 

「彼らの目的は私達を倒すことじゃない。幻想郷を完全に支配することが目的なんだ。」

 

「なんですって!?」

 

「まさか、そいつらも帝王の仲間なのか?」

 

「君達は一つ誤解をしていないかい?」

 

ギラヒムの言葉で辺りは静まり返った。そんな中、ギラヒムが言う。

 

「君達は覇王は帝王の仲間だと思っている。だけどそれは違う。覇王は帝王の味方ではなく敵、彼らの仲間も帝王に殺されてるからね。」

 

「帝王に殺された?それは一体どういうことだ!?」

 

「後は直接本人らに聞くといい。さて、私はここで失礼させてもらうよ。君達は女の子だから一回目は許してあげるけど、二回目はないからね。それじゃあね。」

 

そう言うとギラヒムは指を鳴らし、その場から消えた。ギラヒムが消えた瞬間、ユニは三人を見て言った。

 

「急いで紫に知らせましょう。これはマズイことになるわ。」

 

そのまま三人は紫らがいるマヨヒガへ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森でも同じようなことが起こっていた。今夜の満月はきれいだし、折角だから探検しようという気分で妖精のサニー・ミルク、ルナ・チャイルド、スター・サファイアの三人が探検していた。そんな中、ルナがサニーに言う。

 

「で、サニー。何を探すって言うの?」

 

「決まってるでしょ、この魔法の森に隠されているお宝よ!」

 

「全く、サニーはそんなのを信じてるの?」

 

「当たり前でしょ?見つけたら私達は一躍有名になれるのよ!」

 

そしてサニーが後ろ向きのまま前へ進んだ時だった。突然誰かにぶつかり、サニーはしりもちをついてしまう。

 

「いてて、何でこんなところに壁があるのよ!」

 

「サニー大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、誰が壁だテメェら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前から男の声がし、三人は同時に顔を前に向ける。そこには白い肌に細長い首、リーゼントの髪に青いコートに鋭利な刃を持つ刀を持っている長身の男がいた。そして男は三人を見ながら言った。

 

「テメェらのようなガキに用はねぇんだよ。とっとと俺の前から消えな。」

 

「ガキって何よガキって!!」

 

すかさず男に言い返すサニー。そんな彼女に男は笑みを浮かべながら言った。

 

「ほう、いい度胸じゃねぇか。この覇王である俺に歯向かうなんてな。」

 

「は、覇王!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、三人は腰が抜けてしまった。そして逃げようとする。そんな三人を見て男は鼻で笑い、近づき始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然聞こえた少女の声に男はピクリと反応し、すぐに目を向ける。そこには人形使いの少女、アリスがいた。それを見た三人は同時に声を発した。

 

「アリスさん!」

 

「三人とも逃げなさい。こいつは私に任せて。」

 

「は、はい!」

 

そう言うとそのまま三人は走って逃げていった。それを呆然と見ていた男はアリスを見ながら言う。

 

「テメェ、何者だ?突然来て随分と余裕そうな表情じゃねぇか。」

 

「私は別にあなたを倒すことを考えてないわ。あなたを追い払うことだけを考えてる。」

 

「ほう、面白いじゃねぇか。おおっと、まずは自己紹介しないとな。俺の名前はクリーフル、現実世界の覇王だ。」

 

「覇王ね・・・帝王や魔王が来たりと・・・」

 

「ん?テメェ今何て言った?」

 

「はあ?一度言ったことなんて二度も言わないわ。」

 

「テメェ・・・」

 

完全に頭に来た。そう感じたクリーフルは刀から炎をアリスに噴射した。それに気づいたアリスはすぐに避け、スペルカードを発動する。

 

「魔符アーティフルサクリファイス。」

 

アリスの攻撃はクリーフルには命中せず、命中したのは彼の着ているコートの一部だった。立て続けにアリスは上海人形と蓬莱人形を操り、弾幕を放った。彼女が続けに放つ弾幕をクリーフルは意図も簡単に避ける。そんな中、クリーフルはあることを思っていた。

 

(人形を操り、攻撃してくるか。成程、奴と似通った能力か。ならその分、自分にも負担がかかるということか。)

 

そう考えたクリーフルはアリスが疲れるのを待って彼女が放つ弾幕を避け続けた。それを見ていたアリスはこう思っていた。

 

(まさかあの人は攻撃しないの?いや、もしかすると私を弄んでるのかもしれない。)

 

そう感じた彼女は再びスペルカードを発動した。

 

「魔光デヴィリーライトレイ!」

 

彼女が攻撃を放った時だった。最悪のタイミングで人形を操っていた負担が彼女の体に降り注いだ。

 

「くっ、・・・」

 

アリスはそのまま膝を地面につけた。そして再び立ち上がろうとするが負担が重いため、立ち上がれなかった。

 

(フフフ、作戦通り。)

 

そう思ったクリーフルは先程彼女が放った攻撃を全て避けるとアリスを心配する上海人形と蓬莱人形を真っ二つに斬った。そして空いている左手で地面に座り込むアリスの首を掴み上げた。片手でアリスの体を持ち上げたクリーフルは苦しみながら抵抗するアリスに言う。

 

「言え、黒田輝宗はどこだ?」

 

「なん・・・・の、こと・・・・・よ・・・」

 

「惚けるな!!一度この幻想郷を闇に覆おうとした大魔王黒田輝宗に覚えがないやつなんて、いない筈だ!」

 

「知ら、ない・・・・わよ・・・」

 

「チッ!」

 

激しく舌打ちするとそのままアリスの首を絞めている左手を放した。

 

「けほっ、けほっ。」

 

激しく咳き込むアリスとは別にクリーフルはアリスを睨みながら言った。

 

「俺達はガノンドロフの撃破に専念するからな。絶対に邪魔すんじゃねぇよ。これは俺達と奴らの戦だからな!」

 

そう言うとクリーフルは霧のように消えていった。彼が消えた後、アリスは彼が言った人物の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガノンドロフ。」

 

 




幻想郷に現れた魔族長ギラヒムと覇王クリーフル。二人の目的とは!?
次作もお楽しみに!

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