場所は幻想郷の無縁塚。そこでは映姫に手紙を届けるために彼女の元へと向かう悠岐の姿があった。彼はあることを思いながら向かっていた。
(ルシファーがどうしてガイルゴール側に・・・。いいや、今は華扇に頼まれたことをしないとな。)
そう言うと彼は冥界の方へと向かっていく。しばらく走っている内に彼は川の前までやって来た。と、悠岐が口を開く。
「三途の川だ・・・この辺りに小町か妹子がいればいいんだが・・・。」
そう言うと彼は妹子か小町がいないか辺りを見回し始めた。
「ん?あいつは・・・。」
彼が見つめる方向には長身で腰まで伸びる赤髪に目は赤く、左目には眼帯をつけていて袖の広い青い長袖に白い長ズボンを履いていて右手には先端に鎌の刃が二つあり、下の部分には2mを越えている長さの鎖がついていて鎖の先には小さな鎌がついている、所謂『鎖鎌』を持っている男が悠岐の元へとやって来たのだ。それを見た悠岐が男に言う。
「お前は・・・。」
「お初にお目にかかる。
「
「あぁ、すまん。
「そうなのか。あ、忘れてたな。俺は西田悠岐だ。」
「テメェ、まだ生きてるじゃねぇか。三途の川を渡ったら死んじまうぞ。」
「そう、だな。あ、そうだ篁。お前に頼みたいことがある。」
「なんだ?」
篁が言った瞬間、悠岐はポケットの中から手紙を取りだし、篁に渡した。それを見た篁が言う。
「こいつは?」
「華扇が黄泉に送って欲しい手紙だ。もしお前が黄泉の元へ行けなかったら映姫に渡して欲しい。」
「あの仙人が黄泉に?こりゃ、とんでもねぇことになりそうだ。」
「それじゃあ俺はここで失礼させてもらうよ。」
そう言うと彼は無縁塚の外へと向かっていく。
「待ちな。」
外へ行こうとする悠岐を篁が呼び止めた。彼に呼ばれたため、足を止めた。
「ちょっと俺と遊ばねぇか?」
悠岐が振り返った瞬間、突如篁が鎖鎌を彼目掛けて振り下ろした。
「!!?」
突然の攻撃だがなんとか悠岐は彼の攻撃を漆黒の刃で防ぎ、後退する。そして口を開く。
「てっ、テメェ何しやがる!!」
「何しやがる?決まってんだろ?俺と遊んでもらうんだよ。」
「お前、今の状況を分かってないのか?今幻想郷は、ガイルゴールの軍勢が押し寄せていて奴らと戦わなければならないんだぞ!!」
「ガイルゴールの軍勢が押し寄せている?どうでもいいな。俺は生きている野郎と戦うのが好きなのさ。」
「テメェ・・・。」
「俺は悪の魂を狩る仕事を務めている。時に抗う者も多くいた。そのため、俺はこの左目を失った。だから俺は、亡者達には絶対に負けない。妹達を必ず守る。」
「・・・だからって俺と戦う必要なんてねぇだろ。」
「俺がお前と戦う理由、それは俺は一人の男に出会ったからだ。」
「一人の、男?」
「伊吹百々という野郎だ。あいつには戦いの意味を教えてもらった。だからそれをテメェに教えてやるぜ、西田悠岐!!」
彼の言葉を聞いた瞬間、悠岐は持っている刀に力を入れた。そして口を開く。
「いいだろう。テメェの相手をしてやる、小野塚篁。」
「ほう、やる気になったか。それだ、それでいい。」
そう言うと篁は鎖鎌を構え、後ろを見ながら口を開く。
「妹子、小町。いるんだろ?手出しは許さねぇからな。」
篁の背後の岩影に隠れていたのは彼の妹である妹子と小町であった。篁の言葉を聞いた二人は黙って頷く。それを見た篁は悠岐を見る。
「遅いぜ、死神。」
その声が響いたかと思うと悠岐は既に篁の背後に移動していた。
「なっ!?」
それを見た篁は声を上げることしか出来なかった。そのまま悠岐は篁の頭を蹴り、彼を吹っ飛ばした。そのまま篁は地面を転がり、うつ伏せになって倒れる。それを見た妹子が思わず言葉を発する。
「すごい、あの百々さんでもお兄様には先にダメージを与えられなかったのに!」
「知ってるかい妹子。悠岐の武器、兄さんと違って軽いから兄さんの数倍速くは動けるんだよ。」
「で、ですがお姉様。百々さんの場合でも同じはずなんじゃあ・・・。」
「さぁ。その点に関しては分からないけれど、悠岐は明らかに百々とは全く違う戦法で兄さんと戦うだろうね。」
二人が話している中、篁がゆっくりと起き上がり、悠岐はそれを見ていた。と、篁が笑みを浮かべながら口を開く。
「やるじゃねぇか、人間。」
「テメェ、そこまでダメージを受けていないな?俺の7割程の蹴りを受けて平然と立てるなんて。」
「確かに、俺はあまりダメージを受けてねぇ。テメェが蹴る瞬間に魔力を高めてダメージを軽減したからな。」
「魔力とか、テメェは魔法使いか。」
「俺は見ての通り、立派な死神だ。魔力を扱うことの出来るな!」
(魔力を使うとすれば、恐らく奴は弾幕系の攻撃を得意とするパターンか。しかし、何故あの時弾幕ではなく鎖鎌を振り下ろした?謎が深まるばかりだ。少し攻めよう。)
そう思った瞬間、悠岐は篁に向かって刀を振り下ろす。それを見た彼も鎖鎌で対抗する。辺りには二人の打ち合う音が辺りに響く。そんな中、篁は思った。
(こいつ、あんな細い刀で俺のこの太くて固い鎖鎌と互角のパワーを持っている!?なんてパワーだ、一体そんな力がどこから・・・)
(こいつ、見た目とは違って鎖鎌の威力はさほどない。このまま攻め続ければいずれ奴は体力を使い切る。それをチャンスを踏めば!!)
そう思った瞬間、悠岐は篁に向かって刀を突く。その瞬間、篁の持っていた鎖鎌の鎖の先の鎌が悠岐の背後に移動し、そのまま彼の肩を貫いた。
「!!」
「フフフ、鎖鎌を使う者との戦いは初めてか?俺はこんな使い方をするのさ。」
少し馬鹿にするような表情を浮かべる篁。そんな彼とは別に悠岐は突如肩に刺さる鎌を無理矢理抜いた。
「バカな!?鎌を無理矢理抜いただと!?」
思わず言葉を発する彼とは別に悠岐は隙を狙って篁の左肩を斬りつけた。
「何ッ!?」
彼の攻撃をくらった彼は思わず後退してしまう。そんな中、悠岐が口を開く。
「肩に鎌が刺さる程度で俺が動揺してしまうと思ったか?相手が技を披露出来た時が最も油断する時だということを俺は知っているんだぜ、篁!!」
(こいつ、今まで戦ってきた相手の中で一番相性の悪い相手だぜ。百々とは全く違う戦法を繰り出している。
そんな中、悠岐が再び口を開く。
「俺に負けるようじゃあ、死神の特別部隊隊長として恥じゃないのかい?」
(あいつ、挑発していやがる。しかし、鎌のダメージは絶大的。奴の肩から出血が治まってない。あのまま多量出血で体力が尽きる筈だ。)
と、悠岐が空いている左手で貫かれた肩を押さえながら口を開く。
「しかし何気に痛いな、この傷。まぁ、数分経てば止血するか。悪魔って便利だな。」
「オイ、ちょっと待てテメェ。テメェ、今自分のこと悪魔って言ったよな。」
「あぁ、そうだが?」
「・・・驚いたよ。まさかテメェ、人間と悪魔よハーフだったんだな。」
「気がつくと思っていたが、案外気づかないもんなんだな。」
「悪魔と戦えるなんて、俺はなんて幸運なんだろうな。俺には昔からの夢があった。それは悪魔と戦うことだ。というわけで、テメェを倒させてもらうぜ、西田悠岐!」
「挑むところだぜ、篁。最強の
傷が深い筈の二人の顔には人の体に鳥肌をたたせるような不気味な笑みが浮かんでいた。
悠岐と篁。現世と幻想郷を代表する隊長同士が争う。二人の戦いの結末とは!?
次作もお楽しみに!