東方混沌記   作:ヤマタケる

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計画を企み始めるガイルゴール。


第69話 謁見の邪魔をする者

場所は現世のとある都会。そこでは一人の大学生がある人物に謁見を許可されたのである。そして彼女は友達を待っていた。

 

午前8時5分。待ち合わせ場所へ来た友達を見て少女は言う。

 

「5分しか遅刻してないわね、進歩したじゃない。」

 

「ごめん、ごめん。女王さんに会えると考えてたら夜もぐっすり眠れなくて。」

 

「フフッ、でも女王様に会えるなんて嬉しいわよね。よく女王様が認めたわよね、私達が謁見に行くこと。」

 

「私とメリーが謁見に?まぁ、一般の市民が女王様や帝に会うっていうのはあり得ない話だし、そう考えるとこの時ってかなり貴重じゃない?」

 

「確かにね。とゆうか、女王様に会いたいって言ったのって私と蓮子、どっちだっけ?」

 

「私よ!メリー、まさか昨日お酒飲んだでしょ?」

 

「飲んでないよ!少し忘れてただけよ。」

 

「アハハッ、さぁて。行きましょう。」

 

そう言うと二人は肩を並べて御所へ歩き始めた。そんな二人の様子をビルの上から観察する二人の影があった。と、影の一人が口を開く。

 

「あれだな。マスター、目標は右の女か、左の女か、どっちなのだ?」

 

「両方の女の子だよ。見て分からないのかい?宇佐見蓮子も、マエリベリ・ハーンも不思議なオーラを感じる。」

 

「ガイルゴール様が言っていたのはマエリベリ・ハーンと宇佐見蓮子だと言うのか?」

 

「その通りだよ。でも、僕の推測だけれど恐らく宇佐見蓮子の方はマエリベリ・ハーンを拐われないように僕達に抗う気だ。」

 

「・・・そこをお前がなんとかするのか?」

 

「勿論、策はあるとも。まずは僕が彼女に近づき、油断したところを襲い、宇佐見蓮子を少し痛めつけてマエリベリ・ハーンを拐う。もしマエリベリ・ハーンの方が抗ってきたら君が彼女を押さえてくれ。クレイジー。」

 

「分かった。」

 

「なるべく、このことはセコンドやビオラに知られないようにしないといけないんだ。」

 

そう言うと二人は何処かへ移動してしまった。まるで物音に驚いて飛んでいくカラスのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって御所。そこでは普通に仕事をするセコンド、ビオラ、ヴァンの姿があった。そんな中、下っ端がビオラに紅茶を渡して言う。

 

「お仕事ご苦労様です。」

 

「フフ、ありがとうございます。」

 

下っ端は紅茶を彼女に渡すとセコンド、ヴァンに一礼をして部屋から出ていった。と、セコンドがビオラに言う。

 

「そう言えばビオラ、其の方は今日はある者に謁見を許したそうだな。」

 

「はい、ただ今こちらの御所へ向かっていると思います。」

 

「そうか。ヴァンはビオラの手伝いをするのかな?」

 

「えぇ、勿論ですとも。陛下のお側にいるのが臣下の役目なのですから。」

 

「ハッハッハッ、それはそれは熱心だな。」

 

声を上げながら笑うビオラとセコンド。と、ヴァンが何かを思い出したかのように二人に言う。

 

「ちょっとお待ち下さいお二方!!今日は確か、千年殃禍だった筈・・・。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ビオラとセコンドはすぐに笑うのを止めた。と、ビオラが口を開く。

 

「もしかしてヴァン、あの二人が拐われると推測するのですか?」

 

「はい!先程二体の化身の気配を感じたので。」

 

彼が言った瞬間、セコンドは立ち上がり、大きな声で二人に言う。

 

「急いであの二人の元へ向かうんだ!!ビオラ、ヴァン!!」

 

彼が言った瞬間、ビオラとヴァンはすぐに外へと飛び出していった。それを見届けたセコンドは頭を抱えて言う。

 

「クソッ、なんてことだ・・・。まさかこの時に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方蓮子とマエリベリ・ハーンことメリーは。何も知らないで御所へと向かっていた。

 

「それでね、啓介先輩ったら最近姿を見せないのよ。」

 

「え、あの啓介先輩が?どうして?」

 

「分からないわ。多分体調不良じゃない?」

 

「そうね、そう信じよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、どうもお嬢さん達。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が話していた時だった。突如路地裏から長身で白のハット帽を被っていて白のスーツに白いジーンズを履いている紳士の男が現れた。彼を見た蓮子が口を開く。

 

「・・・何ですかあなたは。変態ですか?」

 

「違ぁう!私はただの風変わりな紳士さ。君達に手伝ってもらいたいことがあるのさ。」

 

「風変わりなんてただのとは言いませんよ。それに私達は女王様の元へ行くんです。邪魔しないで下さい。」

 

「ゲッ、細かいことを突っ込まれるとはね。まぁまぁ、すぐ終わることだから頼むよ。」

 

「嫌です!!しつこいと警察に通報するわよ。」

 

「・・・。」

 

メリーが言った瞬間、紳士は黙り混んでしまった。そんな中、蓮子が口を開く。

 

「今の内に行こう。」

 

「そうだね。」

 

そう言うと二人は路地裏を通る。と、紳士の男が笑みを浮かべて言葉を発する。

 

「やれやれ、君達は所詮警察にしか頼らないのか。考えが甘いよ。」

 

「な、何を言ってるの?」

 

メリーが言った瞬間、紳士の男はメリーの頬を叩いた。その衝撃でメリーが地面に倒れる。

 

「メリー!!あがっ!?」

 

メリーの元へと行こうとする蓮子だが紳士の男は左手で蓮子の首を掴み上げ、壁に叩きつける。蓮子はすぐに紳士の左手首を掴み、空中に浮いている足をばたつかせながら抵抗するも細い体とは裏腹に紳士の力は強く、蓮子の力では放れなかった。と、メリーが紳士の男を殴りつけながら言う。

 

「蓮子を放せっ!蓮子を放せ!!」

 

「フフフ、可愛いねぇ。女の子が必死に助けようとする姿、素晴らしいよ。でも、君じゃあ何も出来ないよ。クレイジー、出番だ。」

 

紳士が言った瞬間、上からもう一人の銀髪の紳士がメリーの背後に降りてきた。そして紳士の男は蓮子の首を絞める紳士を殴るメリーの首を腕で絞めた。

 

「かはっ!」

 

メリーは思わず紳士の腕を掴む。男の腕はメリーの首を絞めるほど強く絞めてはいなかったが逃げられないようにしているだけだった。つまり、押さえつけているだけである。と、帽子を被った紳士がメリーに言う。

 

「さぁどうする?マエリベリ・ハーン。彼女の生死は君がこのマスターハンドとクレイジーハンドに着いていくかいかないかにかかっているよ。」

 

「やめて!蓮子を放して!!」

 

「そんな選択肢はない。僕に言っても無駄だ。」

 

「メ、メリー・・・。」

 

「蓮子!?」

 

蓮子はマスターハンドに首を絞められているというのに言葉を発した。それを見たマスターとクレイジーは少し驚いたような表情を浮かべた。そんな二人とは別に蓮子が再び言う。

 

「わ、私のことはいい・・・から。一人で、逃げて・・・。」

 

「そんな!蓮子を放置して逃げることなんて出来ないよ!!」

 

「おね・・・がい・・。メ、リー・・・。」

 

「これは驚いたね、まさか人間ごときが僕に殺されそうになっているというのにそんな台詞を言えるなんてね。なら、もっと痛めつけるしかなさそうだ。」

 

そう言うと彼はさらに蓮子の首を絞める力を強くした。

 

「あがぁっ!かはっ・・・。」

 

「蓮子!!」

 

「さぁ、どうするマエリベリ・ハーン!!選択は君が選ぶと言っただろう!!」

 

「つ、着いていく!!あなた達に着いていくから!!蓮子を・・・助けて。」

 

メリーは涙声で言った。彼女の言葉を聞いたマスターとクレイジーは笑みを浮かべた。その瞬間、マスターは蓮子の首を絞める絞めていた手を放した。クレイジーも押さえつけていたメリーを放した。

 

「ゴホッ、ゴホッ。」

 

「蓮子!!」

 

メリーはすぐさま蓮子の元へと駆け寄る。そんな中、マスターは蓮子の背後に移動し、言う。

 

「実を言うと君も拐う対象なんだ、宇佐見蓮子。」

 

そう言った瞬間、マスターは蓮子のうなじにチョップをした。その瞬間、彼女は地面に倒れる。

 

「蓮子!!」

 

メリーに蓮子の元へと行かせる暇を与えず、クレイジーがメリーを右腕だけで抱える。

 

「ちょっと放しなさいよ!」

 

クレイジーに言うメリーだが両腕を押さえつけているため、何も出来なかった。そんな中、マスターは蓮子を右腕で抱えた。と、その時だった。突如誰かが路地裏に走り込む音が響いた。そしてマスターとクレイジーの前に白い肌に赤い瞳、銀髪を黒いリボンで束ねている男、ヴァンが現れた。マスターとヴァンの目が合った瞬間、マスターはヴァンに背を向ける。それを見たヴァンは言葉を発する。

 

「逃がすか!!マスターハンド!!」

 

そう言うとヴァンは右手に拳銃を生み出した。そしてマスターに発砲する。彼が撃った銃弾はマスターの肩を撃ち抜いた。

 

「ぬぐっ!?」

 

マスターの肩から鮮血が流れる。そんな彼にクレイジーが言う。

 

「大丈夫かマスター!!」

 

「あぁ、問題ないとも。撃ち抜かれたのは左肩だ。幸い右肩じゃなくて助かったよ。」

 

「しまった!!」

 

ヴァンが再び発砲しようとした瞬間、一瞬にしてマスターとクレイジー、そして蓮子とメリーの姿が消えた。

 

「ヴァン!!」

 

彼の後を追ってきたビオラが彼に言う。ヴァンは悔しい表情を浮かべて口を開く。

 

「申し訳ございません、陛下。あと一歩のところで逃げられてしまいました。」

 

「蓮子とハーンは!?」

 

「・・・拐われました。」

 

「・・・分かりました。すぐにセコンド様に連絡しましょう。」

 

そう言うとビオラはポケットからスマートフォンを取りだし、セコンドに電話をかけた。彼は2秒もせずに電話に出た。

 

「もしもし?ビオラか。謁見の者はどうなった?」

 

「申し訳ございません。拐われてしまいました。」

 

「そうか・・・。それで、誰が拐っていったのだ?」

 

「マスターハンドとクレイジーハンドです。」

 

「マスターハンドとクレイジーハンドか・・・。千年殃禍の始まりだなこれは。ビオラにヴァン、一時御所に戻ってくるがいい。余は五大王を呼ぶ。緊急会議を開講するぞ!!」

 

「「はっ!!」」

 

そう言うとビオラはセコンドが電話を切ったのを確認するとヴァンと共にそのまま御所へ走っていった。




拐われる蓮子とメリー。一体どうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!

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