永遠亭に着いたユニ達は中へ入っていった。そこは和風な様式の部屋がいくつかあった。ユニは呆然としながら部屋中を見ていた。そんな彼女に永琳が言う。
「今日はもう遅いからここで泊まっていきなさい。幻想郷巡りはいつだって出来るんだから。」
「うん、ありがとう永琳。」
永琳にお礼を言うとユニは霊夢と魔理沙が座ってるテーブルに腰をおろした。と、ユニは霊夢がある方向を見ているのに気づき、その方向を見る。そこには永琳の治療を受けている妹紅と輝夜がいた。それを見た彼女は苦笑いした。そんな彼女に魔理沙が口を開いた。
「なぁ、ユニ。さっきの話の続きなんだが、お前の兄様って誰なんだ?」
「ああ、言ってなかったわね。じゃあまず始めに聞くけど・・・」
魔理沙と霊夢は唾を飲み込み、彼女が言う言葉を待つ。二人が唾を飲み込んだ瞬間に慧音と鈴仙もやって来た。そしてユニは口を開いた。
「闘王アイアルト・モルトって知ってるかしら?」
彼女の言葉を聞いた瞬間、四人はピクリと反応した。ユニが言った人物、アイアルト・モルトはかつて幻想郷へ訪れて異変解決を手伝ってくれた五大王の一人である。と、何かを察した魔理沙がユニに言った。
「なぁ、ユニ。まさかお前の兄様って・・・」
「そう、私の兄様はアイアルト・モルトなの。だから私の本名はアイアルト・ユニよ。」
それを聞いた一同は驚きを隠せなかった。ユニがモルトの妹だということを知った霊夢はユニに問う。
「じゃあどうしてあの人は幻想郷の人じゃないの?」
「紫から聞いた話なんだけど、兄様は私が生まれる前に家を出たのよ。そして現実世界へ行ったの。」
「モルトさんって元々は幻想郷のお方だったんですね。」
思わず鈴仙も声を発してしまう。ちょうど二人の治療を終えた永琳がユニに言った。
「ユニは帝王異変や魔王異変の時に彼に会おうと思わなかったの?」
「思ったわよ。でも、紫にあまり動かないでって言われてたから。」
「どうして行かなかったのですか?行って会いに行けば良かったのに・・・」
「私も会うことを断念したの。なんせ、『あれ』がやって来ちゃったからね。」
「ユニ、『あれ』って?」
終わります思わず霊夢が口を開いた。そんな彼女にユニが答えようとした時だった。突如ユニの背後から一人の少女がユニに乗っかってきたのである。
「わぁ、人間を見るのは久しぶりウサ。」
「え?誰?」
ユニは後ろを振り返る。そこには兎の少女、因幡てゐがいた。それを見た永琳は立ち上がり、てゐに近づきながら言った。
「お客さんに失礼でしょ?」
「ご、ごめんなさいウサ。」
謝るてゐとは別にユニは笑みを浮かべながら言った。
「別に大丈夫よ。あ、ところであなたの名前は?」
「私は因幡てゐって言うウサ。よろしく。」
そう言うとてゐはユニの隣に腰をおろした。そして霊夢の問いに答えた。
「ガイルゴールよ。ガイルゴールが来ては私もどうすることも出来なかったわ。」
ユニが言った瞬間、霊夢達の頭の中にある魔獣の姿が頭に浮かんだ。全てを作ったとされる神、ガイルゴールである。神の力は想像を絶するものだったのを霊夢達はしっかり覚えている。そんな中、永琳が口を開いた。
「さ、話はおしまいよ。今日はもう寝ましょう。」
「そ、そうね。」
そして霊夢達は布団を鈴仙に敷いてもらい、布団の中へ身を入れた。
「みんな、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
その夜、霊夢は突然として目が覚めてしまった。目が覚めるとそこは全く見覚えのない場所にいた。そして彼女の目線には身体中傷だらけの紫と右手に長い剣を持つ謎の大男がいた。
「ゆ、紫?」
霊夢は紫に話しかけるが彼女の耳には聞こえていなかった。そんな彼女とは別に大男は紫に歩み寄った。そして空いている左手で紫の首を掴み、宙吊りにした。片手で紫の体を持ち上げた大男は右手に持っていた剣を構えた。
「やめて!」
霊夢は止めようとするが大男には聞こえていなかった。むしろ、霊夢の言葉を無視しているように見えた。彼女は動こうとするが、思うように体が動かなかった。
「フフフフフ。」
突然として霊夢の目の前に左側に伸びる白髪に青白い肌、両耳に青いクリスタルのピアスをつけている謎の男が現れた。そしてその男は長い舌を出しながら霊夢に近づいた。
「いやっ!!」
「ハアっ!!」
気がつくととそこは見覚えのない場所ではなく、永遠亭だった。状況が把握出来ない彼女は辺りを見回す。そこにはぐっすりと眠っている魔理沙達がいた。
「何なのよ、今の・・・」
霊夢は頭を抱えながら再び布団に潜った。だが紫が謎の大男にやられていたことが彼女に影響を与えたため、霊夢は寝ることが出来なかった。
「?」
と、霊夢はある方向を見てある人物がいることに気がついた。彼女が見つめる方向、そこには腰をおろして空を見上げているユニがいた。
「・・・ユニ?」
霊夢の声を聞いてユニは彼女の方を見る。ユニは笑みを浮かべながら霊夢に手招きをした。霊夢は布団から出るとユニの隣まで来て腰をおろした。そして彼女に話しかける。
「あんた、寝ないの?」
「生憎、眠れなくてね。」
「そ、そうなの。まあ、何だっていいけれど。」
「そう言う霊夢は眠らないの?」
「うん、まあね。」
霊夢はユニに紫が謎の大男に殺されかけたことを話さなかった。そのままユニは話を続けた。
「ねぇ、霊夢。あなたは現実世界の人達で出会って良かったって思ってる人いる?」
「ど、どうして急にそんなことを?」
「いや、何となく聞いてみたかっただけよ。誰かいるかなぁって。」
「私はね、帝王梟雄や悠岐に感謝してるわ。帝王梟雄は私を育ててくれたし、悠岐は一緒に異変解決を手伝ってくれたからね。」
「メルト・グランチ様と悠岐君にね。あの二人はいい人よね。」
「でも、帝王梟雄の方は一度幻想郷を壊そうとしてたわ。何とか止めたけれど、どうしてあの人は・・・」
「紫から聞いた話なんだけど、帝王梟雄は先代巫女のいない幻想郷が嫌いだったみたい。だから幻想郷を破壊しようとしてた。そして霊夢も魔理沙も殺そうとしていた。けど、彼は違ったみたい。聞いた話なんだけど、帝王梟雄は霊夢達を壊すつもりはなかったみたい。」
「・・・私も分かってたわ。メルト・グランチはそんなことをしない人だって。」
「私は阿求の書物を見たんだけど、先代異変で幻想郷で有名になった人がいたのを知ったわ。」
「有名になった人って?」
「悠岐君と麗夜君。」
霊夢は過去に起こったことを振り返ってみた。確かにこの二人は幻想郷のために力を出し尽くした。現在悠岐は現実世界で自分のありのままに過ごしており、麗夜は幻想郷のために別の世界へ足を踏み入れていった。と、霊夢がユニに言う。
「ユニはあの二人に会おうと思うの?」
「勿論、会ってみたいわよ。なんせ、幻想郷を救ったって言われてるんだから。」
「今ここに呼び寄せられる?」
「呼び寄せられるけれど、今はあの二人に用がないから呼ぶつもりはないわ。」
「そうなのね・・・」
二人が話している内に夜が明け、辺りは少しずつ明るくなっていた。そして永琳達が起きてきた。ユニは立ち上がり、永琳の元へ行った。そして言う。
「ありがとう永琳、お世話になったわ。」
「いやいや、これくらいどうってことないわ。」
二人が話している時に輝夜がドタドタと足音を立てながらユニの元へ寄った。そして言う。
「あんたの名前を聞いておくわ。あんたの名前は?」
「私の名前はユニよ。あなたは蓬莱山輝夜ね。覚えておくわ。」
ユニがそう言った瞬間、妹紅がドタドタと足音を立てながら走ってきて輝夜を蹴り飛ばした。そのまま輝夜は壁に衝突した。そしてユニを見ながら言った。
「私は藤原妹紅。お前はユニだよな、よろしく。」
「あ、よろしく妹紅!」
何故か妹紅とは馴れ馴れしくなった。そしてユニは右手を妹紅に差し出した。それを見た妹紅は笑みを浮かべながらユニと握手した。そんな彼女に魔理沙が言う。
「さて、そろそろ行こうぜ!」
「そ、そうだね。」
そして霊夢、魔理沙、ユニの三人は永遠亭の外へ出た。そのまま霊夢は宙に舞い上がった。ユニは魔理沙の箒にまたがった。そのままユニと魔理沙を乗せた箒は宙に舞い上がった。ユニは永琳達に手を振った。永琳達も霊夢達に手を振った。そのまま三人の姿は見えなくなった。
空を飛んでいる三人は次は何処へ行くかを話し合っていた。そんな中、魔理沙が口を開いた。
「なぁ、妖怪の山はどうだ?」
「いいね!そこへ行きましょう!!」
「めんどくさいやつもいるけど、まあいいわ。」
霊夢は少し拒絶したが魔理沙とユニのノリに乗った。そしめ三人は妖怪の山へ向かった。
妖怪の山へ向かったユニ達。だがそこではある出来事が起こっていた。
次作もお楽しみに!