東方混沌記   作:ヤマタケる

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妖怪の山を守り抜いた死神達。そんな中、青き稲妻が走る。


第56話 紅き悪魔と黒い梟

「こ、ここは・・・。」

 

目を覚ますとレミリアは薄暗い部屋の中にいて壁には蝋燭が並べられている。

 

「・・・ここは一体・・・!?」

 

気になった彼女が動こうとしたが、ジャラという音が響き、動けなかった。

 

「・・・?」

 

よく見ると彼女の両腕は鎖で縛られている。それに気づいた彼女が口を開く。

 

「アヌビスめ・・・随分と派手にやってくれたわね。次会ったら絶対に殺してあげ・・・!!」

 

続きを言おうとした瞬間、彼女はある音を察知し、思わず声を止めてしまう。彼女が察知した音はコツン、コツンという足音を立ててこちらに向かってくる。と、レミリアは心の中で言う。

 

(ヤバイ、殺される。今ここに来る奴は私を殺すためにやって来ている。私には分かる。なんだろう・・・一度こんな経験をした気がする。)

 

足音は次第に彼女に近づいてくる。そんな中、レミリアは体を震わせながら言う。

 

「わ、私を・・・殺さないで。なな、何でもしますからぁ・・・。」

 

あまりの怖さに思わず彼女は涙を流してしまう。そんな中、遂に彼女の前で足音が止んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!?」

 

聞き覚えのある男の声を聞いて思わずレミリアは目を見開く。そんな彼女とは別に男は彼女の前までやって来る。その男は長身で後ろ髪を縛っていて悠々とした歩き方に両腕を背に回していて腰には刀を描けている男だった。

 

「あ、あなたは!!」

 

「まさか久しき再開がこんな風になるとはね、レミリア・スカーレット。」

 

「メ、メルト・グランチ!?」

 

メルト・グランチ。レミリアにとって宿命の敵でもあり、恐怖の対象の一つである。そんな彼がここにいることがあまりにも以外だったため、レミリアは驚くことしか出来なかった。そんな中、メルト・グランチが笑みを浮かべて言う。

 

「さて、どうしたものかな?私とは一度、いや二度戦っている筈なのだがまるで初対面のような反応だな。」

 

「どうしてあなたがここにいるの?いや、そんなことより・・・ここは何処なの?」

 

レミリアが言った瞬間、彼は不気味な笑みを浮かべる。そんな彼とは別にレミリアは再び口を開く。

 

「あなたがここにいるということはここは紅魔館ではないのは事実。故にカオスの場所でもない。まさかここは帝王城とは言わないでしょうね?」

 

「やれやれ、そこまで私を警戒するのかね?まぁ、嘗ての戦いを振り返ればそうなるのも無理もないな。」

 

そう言った瞬間、彼は右手をあげ、パチンと指を鳴らした。その瞬間、辺りの蝋燭が消え、変わりに電気が付いた。

 

「こ、これは!!」

 

部屋の中を見た瞬間、レミリアは思わず声を上げてしまう。何故なら部屋の中には壁や天井などが無惨に壊されていたからだ。そんな中、メルト・グランチが言う。

 

「ここは紅魔館。卿の父親が卿の妹を閉じ込めていた部屋だ。」

 

「た、確かここは・・・。」

 

「そう、ここは最も外からの気配を感じにくい場所だ。卿の仲間達も気がつかなかったようだがね。」

 

「私の仲間?まさかフラン達はここに!?」

 

「勿論いるとも。黒き刀や氷の悪魔、藤原妹紅に上白沢慧音が救出したよ。」

 

「良かった・・・。そう言えばアヌビスは!?」

 

「話によれば、黒き刀の堕天(モードオブサタン)に敗れ、カオスに喰われたらしいな。」

 

「フフッ、無様ね。」

 

「いやしかし、話が変わるのだがウロボロス・サーカリアスにはやられたものだな。」

 

「ウロボロスにやられた?何を言っているの?」

 

「2年前のことだよ。私の計画が彼の手によって全て水の泡となった。」

 

「彼はあなたによって一度殺されているわ。彼が何か出来る筈ないわ!」

 

「私も思っていたよ。だが私はうっかりしてしまったのか、彼の種族を忘れていたのだよ。」

 

「ウロボロスの種族?」

 

「言っておくが、彼は半獣ではないよ。彼は少数しか飲んだことがないモノを飲んでしまった者の一人だからねぇ。」

 

「飲んでしまった?まさか・・・。」

 

「そう、彼は蓬莱人。死ぬことも老いることもない存在だ。」

 

「そんな、彼が・・・。」

 

「彼は魂を人里の者に入り込み、私の計画を観察していた。非常に残念だよ。」

 

「・・・・。」

 

「さて、話が変わるのだが卿は博麗の巫女達がカオスに勝てるとは思うかね?」

 

そう言うと彼はレミリアの顎を左手でくいっと摘まみ上げ、自分の目線に合わさせる。そして口を開く。

 

「私の予想では、勝つと思う。いや、勝ってほしいのだよ。この幻想郷のために、全ての世界のために!!」

 

そう言うと彼は再び笑みを浮かべるとそのまま彼女の顎を放し、鎖を指で挟む。そして指に力を込める。その瞬間、レミリアの両腕を縛っていた鎖が砕ける。

 

「なっ!?」

 

それを見たレミリアは思わず驚いてしまう。そんな彼女とは別にメルト・グランチは言う。

 

「生きたまえ。今卿に死なれては私が困るのでね。」

 

「ど、どうしてあなたがこんなことを・・・。」

 

「言っただろう?幻想郷のために、全ての世界のためにとね。私は私が愛した世界を壊されるのは嫌いなのでね。」

 

「そ、そうだったんだ・・・。」

 

「さぁ行きたまえ。卿が今するべきことはここで縛られているのではない。仲間と合流し、カオス軍と戦うことだけだ。」

 

そう言うと彼はレミリアに背を向けて歩き出し、部屋から出ていった。

「あ、待って!!」

彼の後を追うようにレミリアも部屋から出る。しかしそこには彼の姿はなかった。




レミリアを助けた帝王メルト・グランチ。一体何故!?
次作もお楽しみに!

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