東方混沌記   作:ヤマタケる

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アヌビスの手によってピンチに追い込まれる悠岐達。そんな中、悠岐が・・・。


第48話 裏の力、堕天悠岐

突然として槍が刺さったため、アヌビスは思わず掴んでいた楓の首を放してしまう。

 

「あ、あ・・・。」

 

彼女が地面に落ちる前に黒い影が彼女を抱える。その瞬間、妹紅と慧音の腕を縛っていた鎖が一瞬にして切れる。

 

「え?」

 

二人は状況を掴めないまま、地面に落ちる。その瞬間、二人の目の前に楓を抱える悠岐が現れた。

 

「ゆ、悠岐?」

 

「お、お前・・・。」

 

彼の姿を見て二人は驚きを隠せなかった。何故なら先程のアヌビスの攻撃によって吹っ飛んだ筈の右腕が完全に治っているからだ。そんな二人とは別に悠岐は楓の喉に優しく触れ、口を開く。

 

「・・・まだ生きている。」

 

そう言うと彼は楓を抱えて妹紅、慧音の元へと寄る。そして二人に言う。

 

「妹紅、慧音。楓を頼む。」

 

「あ、あぁ。分かった。」

 

そう言うと妹紅は彼が抱えていた楓を優しく抱える。そのまま妹紅は彼女をそっと地面に寝かせる。そんな中、悠岐は槍を抜くアヌビスを見つめる。と、アヌビスが彼に言う。

 

「馬鹿な・・・。私はさっき、間違いなくお前の心臓を貫いたはず。何故生きている?そして、何故吹っ飛んだ筈の右腕が治っている?」

 

「お前には理解出来ぬ。我の力など、理解出来るはずあるまい。」

 

「なっ!?」

 

彼が言った瞬間、アヌビスは目を大きく見開いた。何故か彼が言葉を発するのと同時に女性の声も響くからだ。

 

「何をぼさっとしている?」

 

その瞬間、アヌビスの背後に突如として悠岐が現れた。彼の顔には何を考えているのか分からない笑みが浮かんでいた。

 

「クソッ!」

 

アヌビスは彼を斬りつけようと槍を振り回す。しかし悠岐は64倍出ているのにも関わらず意図も簡単に彼の攻撃を避け、妹紅達の前に降り立つ。と、彼が右腕を上げ、手を開いた。その瞬間、地面に刺さっていた漆黒の刃が彼の右手にやって来る。それを見たアヌビスが彼に言う。

 

「馬鹿な・・・。一体何者なんだお前は・・・!?」

 

「気がついたか?冥狼神。」

 

そう言う彼の口元には血が付着していて、余計に彼の表情が不気味になった。彼の口元を良く見ると彼は何かを食べていた。アヌビスはそれが何なのかすぐに理解した。何故なら彼の右耳の先の部分が悠岐によって食いちぎられていたからだ。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「冥狼神と言えど、中々の味だな。」

 

「貴様ァ!この私の身に傷をつけるとは!!どうやら相当死にたいようだな。ならば私が最高倍率の128倍で貴様を地獄に落としてやる!!」

 

そう言うとアヌビスは右手に全ての力を込め始めた。それを見た慧音が悠岐に言う。

 

「よせ悠岐!!例えお前であろうと128倍は敵う筈がない!」

 

「フフフ・・・。」

 

彼に言う慧音だが悠岐は謎の笑い声を上げているばかりで逃げようとしない。そしてアヌビスは口を開く。

 

「覚悟するがいい、小僧!!」

 

そう言った瞬間、アヌビスの右手から邪悪なオーラを纏った攻撃が放たれた。それを見た悠岐は笑みを浮かべながらあの言葉を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、堕天の左腕なり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、彼は空いている左手を前に出した。その瞬間、彼の回りに紫色のバリアが張られ、そのままアヌビスの攻撃を容易く防いだ。

 

「何ッ!?」

 

「そんな馬鹿な・・・。」

 

目の前で起こる光景に一同は目を見開くことしか出来なかった。と、そんな中、気を失っていた楓が目を覚ました。そして今悠岐の現状を見て口を開く。

 

「まさかあれは、悠岐の堕天(モードオブサタン)なのか!?」

 

堕天(モードオブサタン)って?」

 

初めて聞く言葉に妹紅は思わず首を突っ込む。そんな彼女に楓が答える。

 

「私と悠岐のような悪魔が使える、所謂『覚醒』と言ったところだ。」

 

「じゃあ今悠岐は覚醒しているって言うのか?」

 

「そう言っても過言ではないな。」

 

二人が話している中、悠岐は笑みを浮かべたままアヌビスに漆黒の刃を振る。そんな中、アヌビスは心の中で語る。

 

(128倍を越えている・・・。一体何者なのだあいつは!!)

 

「気になるのならば、教えてやろう。」

アヌビスの心の声を聞き取った悠岐がアヌビスにすぐさま言う。

 

「我の能力は『限界を越える程度の能力』。つまり、例えお前が最高倍率の128倍を出そうとも我はそれを越えた力を発揮出来るということだ。」

 

そう言うと彼はアヌビスに向かってパンチした。アヌビスはそれを右腕で防ぐ。だがその瞬間、彼の右腕が猛烈な勢いで吹っ飛んだ。

 

「何ッ!?」

 

目を大きく見開いているアヌビスとは別に悠岐は彼の腹を蹴りつけ、そのまま壁に打ちつける。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

その瞬間、アヌビスは大量の血を吐く。そんな彼とは別に悠岐が服の中からスペルカードを取りだし、アヌビスに言う。

 

「これで終わりだ、アヌビス!!」

 

「私は・・・私はまだ屈しない!!カオス様のお役に立てるまで!!」

 

そう言うとアヌビスは槍を持って立ち上がり、悠岐に向かっていく。そんな彼に気にせず悠岐はスペルカードを発動した。

 

「神槍ヤマトタケル・零。」

 

そう言った瞬間、彼の右手に青い炎におおわれた槍が現れた。それを手にした彼はそのままアヌビス目掛けて投げる。その瞬間、あまりにもスピードが速かったため、そのままアヌビスの腹を貫いた。

 

「ガハッ・・・。」

 

そのままアヌビスは腹を抑え、吐血しながら地面に倒れていった。彼が倒れたのと同時に悠岐は漆黒の刃を地面に刺し、膝をつく。

 

「悠岐!!」

 

その瞬間、楓、妹紅、慧音は彼の元に駆け寄る。そして言う。

 

「悠岐、大丈夫か?」

 

「あぁ、かなりの体力を消費した。」

 

「悠岐、一体どうやって堕天(モードオブサタン)を?」

 

「自分の意志を心の中で叫んだら使えた。」

 

彼が言った瞬間、倒れるアヌビスの背後に巨大な空間が現れた。その中から大きさ4mほどで黒い肌に悪魔の翼を生やしている、カオスが現れた。それを見た瞬間、楓がカオスに言う。

 

「カオス、まさかお前!!」

 

「その通りだ小娘。よく察したな。」

 

そう言った瞬間、カオスは倒れるアヌビスを掴み、自分の顔の前まで寄せる。そして大きな口を開き、その中にアヌビスを投入する。

 

「なっ、まさか!!」

 

悠岐が言った瞬間、カオスは顎を動かし始めた。彼が顎を動かす度にアヌビスの骨が砕ける音、肉がぐちゃぐちゃと嫌な音が鳴り響く。そしてカオスはゴクンという音を立ててアヌビスを飲み込んだ。そんな彼に悠岐が言う。

 

「部下に対しても慈悲が無いな。流石悪魔族の頂点に君臨する存在だ。」

 

「これでも我はまだ頂点までいっていない。あの女を越えるために我はこの全ての世界を統一する。」

 

「テメェは全ての世界を統一出来やしない。ユニ達がテメェを倒すからな!」

 

「なるほど、あの小娘がか。まぁよい。本来であれば我は貴様と戦いたかったが我は自分の場でしか戦わない主義でな、我の城に入ってくるあの小娘達に期待するまでだ。ではさらばだ。貴様といつか戦えることを楽しみにしている。」

 

そう言うとカオスは再び空間を出現させ、そのまま空間の中に入っていった。彼が消えた瞬間、悠岐が妹紅と慧音に言う。

 

「少し治療を頼む・・・。二人は俺と楓の治療が終わったら直ちに人里の人達を避難させてくれ。おそらくカオスはそこに多くの魔物達を送るつもりだ。」

 

「分かった、直ちに治療する。」

 

そう言うと妹紅は悠岐の元へ、慧音は楓の元へ寄り、二人の体の傷を治療し始めた。




アヌビスを倒した悠岐達。だがその瞬間にカオスが現れる。カオスの目的とは!?
次作もお楽しみに!

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