アヌビスは槍を構え、悠岐達に先を向ける。そして言う。
「まずは4倍で試してやる。そこでお前達がどれだけ耐えられるか・・・!?」
アヌビスが続きを言おうとした瞬間、彼の目の前に1本のナイフが飛んできた。アヌビスはそれを槍で弾く。と、彼の背後から突然として悠岐が現れ、彼に言う。
「話している暇があるならさっさと戦いやがれ!」
そう言うと彼はアヌビスの顔を蹴り飛ばした。そのままアヌビスは体を縦に回転しながら壁に打ちつけられる。
「ガハッ、ゲホッ、ゲホッ。」
地面に崩れたアヌビスはその場で吐血する。そんな彼に休む暇を与えないかのように妹紅と慧音が彼に攻撃を仕掛ける。
「くらぇぇぇぇぇ!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
妹紅と慧音がアヌビスに向かって攻撃しようとした瞬間、アヌビスは二人を睨み、口を開く。
「16倍だ、試しに受けてみろ。」
そう言った瞬間、アヌビスのパンチが妹紅と慧音の腹を命中し、そのまま二人は壁に打ちつけられる。アヌビスは二人が地面に崩れる前に鎖で二人の四肢を縛った。
「妹紅、慧音!!」
動けなくなった二人に楓が口を開く。そんな彼女に悠岐が言う。
「楓、今はアヌビスを倒すことを優先させろ。妹紅と慧音は後に救出する。」
「わ、分かった。」
「それに、あの二人はアヌビスの一撃で気を失っている。相当奴の力が強かったんだな。」
二人が話している中、アヌビスが槍を構え、二人に向かっていく。それに気づいた二人は同時に横に飛ぶ。そんな二人にアヌビスが口を開く。
「どうした?避けているだけでは私に傷などつけられぬぞ。」
「分かってるんだよそんなことぐらい!!」
そう言うと悠岐は漆黒の刃をアヌビスに振り下ろす。アヌビスもそれを槍で打ち合う。二人が打ち合っている中、楓はアヌビスの背後に移動し、彼の背中を斬りつけようとする。
「はぁぁぁぁぁっ!」
「見え見えだ、小娘。」
そう言うとアヌビスは漆黒の刃を槍で地面に叩きつけると空いている左手に握り拳を作り、そのまま楓の腹にパンチした。
「ガハッ!」
楓はそのまま地面を滑りながら倒れる。それを見た悠岐がアヌビスから離れ、楓の近くに寄る。
「ゲホッ、ゲホッ。」
「大丈夫か?楓。」
「仲間の心配をしている場合か?」
その言葉が聞こえた瞬間、二人の背後に突如としてアヌビスが現れた。
「なっ!?」
二人は思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別にアヌビスは二人を蹴り飛ばした。
「くっ!」
悠岐は態勢を整え、何とか立ち上がる。一方楓は先程のアヌビスの攻撃により、動けなくなっていた。
「私も、やらないと・・・。」
何とか立ち上がろうとした楓の目の前にアヌビスが歩み寄り、言う。
「まずはお前を動けなくしてやる。」
そう言うとアヌビスは槍を構え、そのまま彼女の右足の脹ら脛に刺した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「楓!!」
すぐさま悠岐が彼女の元に駆け寄ろうとする。だがその行く手を妨げるかのようにアヌビスが彼に言う。
「何度も言わせるな。仲間の心配をしている場合か!!」
そう言うと彼は悠岐の目の前に現れ、彼を殴ろうとする。だがその瞬間、悠岐は彼の動きを見切り、彼の腕に漆黒の刃を突き刺した。
「何ッ!?」
「テメェには決して屈しない。例えテメェが何倍の力を出そうともな!!」
そう言うと彼はアヌビスの腹を蹴り飛ばした。そのまま彼は再び壁に打ちつけられる。
「馬鹿な・・・たかが悪魔に似た人間ごときが私の倍率をも越えるとはな。だが、勝負はこれからだ。」
そう言うとアヌビスはゆっくりと立ち上がり、右手を上げる。その瞬間、彼の背後に金色の世界が現れ、そこから大量の槍、剣、刀などの武器が現れた。その瞬間、気を失っていた妹紅と慧音が目を覚ます。そして口を開く。
「な、なんだあれは!?」
「クソッ、どうして動けない!!」
妹紅と慧音は鎖から逃れようとするがしっかり縛られているため、動けなかった。そんな中、アヌビスの力を見た悠岐が言う。
「テメェ、どうしてユニの技を!!」
「この技は元々私の技だ。あの小娘は私の力をコピーしたのだ。」
「違う!コピーしたのはテメェのほうだろ!!」
「フン、まぁどうでもよい。さぁ、私の16倍を越えるのだろう?ならばその倍の32倍で試してやる。」
そう言った瞬間、アヌビスは背後の金色の世界から槍、剣、刀を一斉に悠岐に向かって放つ。
「うらぁっ!」
悠岐は次々と飛んで来る槍、剣、刀を漆黒の刃で弾いていく。アヌビスは彼が疲れてくるのを待つように槍、剣、刀を飛ばしていく。遂に疲れたのか、悠岐の肩に槍が刺さる。
「ぐっ!?」
彼の肩から鮮血が飛び散る。悠岐は肩に刺さった槍を無理矢理抜くとその辺りに投げ捨てる。そんな中、アヌビスが口を開く。
「驚いたな・・・。まさか32倍でやっている筈なのにそれを耐えてしまうとはな。流石私が見込んだ男だ。だが、今度こそ終わりにしよう。次は64倍だ。」
「!!」
そう言った瞬間、アヌビスの背後の金色の世界から先程よりも速い速度で悠岐に飛んで来る。彼が槍を弾いた瞬間、彼の右腕からゴキッという鈍い音が響いた。
「!?」
彼が声にならない声を上げてしまった瞬間、後から来た槍が彼の左腕に刺さった。その勢いが強すぎるのか、彼は壁まで吹っ飛ぶ。
「クソッ!」
彼が動こうとした瞬間、彼の右腕に剣が飛んで来てそのまま彼の右腕が漆黒の刃ごと吹っ飛んだ。
「何ッ!?」
彼は失った右腕の斬られた部分を空いている左手で抑える。そして彼の息が荒くなる。そんな彼にアヌビスが笑みを浮かべながら言う。
「どうやらお前はここまでのようだな。だがお前はよくやった。よくもまぁ32倍まで耐えたな。その点だけは認めよう。しかし、お前の命もここで尽きる。私の手によってな。さらばだ、小僧!!」
そう言った瞬間、アヌビスは右腕を上げた。しかし彼の背後の金色の世界が消えただけで何も起こらない。だが悠岐の背後では小さな金色の世界が現れていてそこから槍が出てきていた。それに気づいた楓が彼に言う。
「悠岐、後ろだ!!」
彼女が悠岐に言った瞬間、悠岐はすぐさま後を振り返ろうとしたが間に合わず、彼の胸に槍が貫いた。
「か、ハッ・・・。」
彼は目を大きく見開いたまま吐血し、そのまま地面に打つ伏せで倒れた。
「悠岐!!」
楓、妹紅、慧音が同時に声を上げる。そんな中、アヌビスが口を開く。
「これが力の差というものだ。あの男にはそれを教えてやった。」
そう言うとアヌビスはゆっくりと楓の元に近寄る。そんな中、楓がアヌビスに言う。
「ゆ、悠岐が死ぬはずがない!」
「残念ながら、私の槍は小僧の心臓を貫いている。助かる可能性は極めてない。」
その言葉を聞いた瞬間、楓の表情が急変した。そんな彼女とは別にアヌビスが彼女に言う。
「安心しろ、お前もあの小僧の後を追わせてやる。一人で残るのは嫌だろう?」
「うっ!?」
その瞬間、アヌビスは楓の首を掴んだ。楓は彼の左手から逃れようと必死に抵抗するが鉄のように堅く、放れなかった。さらにアヌビスは楓の首を掴んだまま彼女の体を空中に持ち上げた。楓は足をばたつかせながら必死に抵抗する。そんな彼女にアヌビスが言う。
「さぁ、ゆっくりと小僧の元へと向かうがいい。その方が小僧のためであり、ましてはお前のためだ。」
「うっ、ク・・・。」
徐々に楓の抵抗する力がなくなっていく。そんな中、かろうじて意識を保っていた悠岐が心の中で語る。
(呼んでいる・・・。
「何をしている?小僧。」
その時、彼の心の中から女性の声が響く。それを聞いた悠岐がすぐさま心の中で言う。
(この声・・・まさかあなたは!!)
「我の名は言わなくてよい。さて、小僧よ。お前は今何をしている?」
(俺は、俺は今、楓を助けようとしている。だが体が言うことを聞かないんだ。)
「下らぬ言い訳だな。見よ、あれを。」
女性が言った瞬間、悠岐は自然と楓の方を見る。そこにはアヌビスによって首を掴み上げられ、絞められている楓の姿があった。そして遂にアヌビスの手首を掴んでいた彼女の両手がだらんと垂れる。そんな中、女性が悠岐に言う。
「いいのか?あのままではあの小娘は命が尽き、かつてのお前の仲間みたいになるぞ。」
(・・・・・けたい。)
「なんだ?聞こえぬぞ。もう少し我に聞こえるように申せ。」
(俺はあいつを助けたい!!)
彼が言った瞬間、女性がは溜め息を吐くと楓を助けたい思いがある悠岐に言う。
「小僧よ、お前は誰だ?一体何のために戦う?」
(俺は、西田悠岐。俺が戦う理由、それは大切な仲間を助けるためだ!!)
その瞬間、悠岐の回りに黒いオーラが漂い始める。それを見たアヌビスが言う。
「何だ次は・・・!?」
続きを言おうとした瞬間、アヌビスの右肩に先程悠岐に投げつけた槍が刺さった。
悠岐の身に起こる異変。一体彼の身に何が起こったのか!?
次作もお楽しみに!