「私が立てた策略、それはさっきあんたに噛みついた白蛇が源よ。」
「あの時に私に噛みついた白蛇が源?最初は何も感じなかったけれど、まさか!!」
「そう、あの蛇には噛みついた者の体力を徐々に削っていくという
「そ、そんな・・・・そんなことが・・・。」
「出来るわよ。呑気に戦うあんたには到底出来ないと思うけれどね。」
「ち、調子に乗るんじゃないわよ!!」
「調子に乗ってたのはあんたのほうでしょ?」
「チッ!」
舌打ちした瞬間、豊姫は再び姿を消した。だが諏訪子は冷静に辺りを見つめる。
(捉えた。)
心の中で語った瞬間、豊姫は先程と同じように諏訪子の背後からスキマのような空間を展開させ、彼女に攻撃する。
「甘いわよ。」
そう言った瞬間、諏訪子は豊姫のいる後を振り返り、そのまま彼女の腹を蹴り飛ばした。
「ぐはっ!?」
そのまま豊姫は神社とは別の方向にある木々をなぎ倒していく。それを見た諏訪子は彼女に言う。
「私が二度も同じ手に引っ掛かるとでも思ってたの?」
そう言うと諏訪子は木々に倒れる豊姫の元へゆっくりと近づく。その瞬間に豊姫は諏訪子に弾幕を放つ。
「っと!」
それに咄嗟に気がついた諏訪子はバック転をして彼女の攻撃を回避する。豊姫は自分の帽子が落ちていることを気にせずに諏訪子に近づきながら言う。
「最高ね、土着神さん。私は今まであなたのような人と戦ったことは無いわ。たくさん楽しませてもらうわよ。」
そう言うと豊姫は扇子を閉じるとそのまま諏訪子の方へ向かっていく。諏訪子も鉄の輪を取り出して彼女に対抗する。二人で打ち合っている中、豊姫が言う。
「さっきよりも動きが鈍くなってるんじゃないかしら?」
「それはこっちの台詞よ。あんただってさっきよりも動きが鈍くなってるわよ。」
そう言うと諏訪子は空いている左足で豊姫の腹部を蹴りつけた。
「ぐっ!?」
一瞬声を上げるものの、豊姫はすぐさま諏訪子の右腕に向かって扇子で殴りつける。その瞬間、辺りにゴキッという音が響く。
「・・・ッ!」
その瞬間、諏訪子は声にならない声を上げ、豊姫を蹴った後に腕を抑える。それを見た豊姫が諏訪子に言う。
「そろそろ、互いに動きが鈍くなってるわね。もうそろそろ終わりにしましょうか。」
「良いわよ、月人を越えてやる!」
そう言うと諏訪子は鉄の輪を構える。それに対して豊姫は扇子を構える。
「行くわよ、土着神!!」
「来なさい、月人!!」
二人が同時に声を上げた瞬間、二人は同時に地面を蹴り、武器を打ち合う。力は少し豊姫が押していたが、先程の猛毒の効果により、途中で彼女の動きが乱れる時があった。
(よし、もらった!!)
そう確信した諏訪子はスペルカードを取り出し、発動した。豊姫との戦いを終わらせるために。
「蛙符血塗られた赤蛙塚!!」
彼女から放たれた攻撃は真っ直ぐ豊姫に向かっていく。その瞬間、豊姫はスキマのような空間を出現させ、空間の中へ入り、諏訪子の放った攻撃を避ける。
「何ッ!?」
突然自分の目の前から豊姫が姿を消したため、思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別に豊姫は諏訪子の頭上に空間を展開させ、そのまま諏訪子に向かっていく。
「し、しまった!!」
「終わりよ、土着神!」
そう言った瞬間、豊姫の扇子による一撃が諏訪子の頭を捉えていた。それを食らった諏訪子は頭から血を流し、そのまま倒れた。それを見た豊姫はフフフと笑い、言う。
「どうやらこの勝負、私の勝ちみたいね。やはり地上の力は月の力には及ばなかった。また出直してきなさい。」
そう言うと豊姫は足を引きずりながら神社を出ようとした。
「うっ!?カハッ、ゲホッ、ゲホッ。」
だがその瞬間、胸に再び何かが生じ、再び地面に吐血した。その瞬間、彼女は倒れている諏訪子の方を見る。僅かだが彼女の顔には笑みが浮かんでいた。
「なる、ほど・・・。この力、は・・・私のっ、力が、尽きるまで、続、くってわけ・・・ね・・・。」
そう言うと豊姫は猛毒に耐えきれなくなり、そのまま地面に倒れた。
「諏訪子!!」
まるでタイミングを見計らったかのように妖怪の山に行っていた神奈子と早苗が戻ってきた。すぐさま二人は倒れている諏訪子の元へとやって来る。
「ひどい傷だね。至急手当てをしないと・・・?」
続きを言おうとした瞬間、神奈子の目線に倒れるもう一人の少女、豊姫が移った。それを見た早苗は神奈子に言う。
「彼女は綿月豊姫。海と山を繋ぐ月の都の姫様です。」
「そんな奴と諏訪子は互角の勝負だったと言うのかい?」
「そ、そうみたいですね。」
「早苗、諏訪子をよろしくね。」
そう言うと神奈子は抱えていた諏訪子を早苗に手渡し、倒れている豊姫の元へと歩み寄る。そんな彼女に早苗が言う。
「気をつけてください、神奈子様!何をやってくるか分かりきったことじゃありません。」
「諏訪子との戦いで奴は既に戦力を失っている。今の奴が私に敵うとは思えないけどね。」
そう言うと神奈子は豊姫の近くまで来ると彼女の側でしゃがみ、彼女を見つめる。その瞬間、豊姫の目がゆっくりと開き、神奈子を見つめる。そして彼女は笑みを浮かべると神奈子に言う。
「あなたが、八坂神奈子、ね・・・。」
「あまり喋らぬほうがいいよ、綿月豊姫。その傷はかなり深いのだから。それに、諏訪子が世話になったみたいだね。」
「中々楽しめる戦いだったわ・・・。地上には、私のっ、知らない力を持っている人が、何人もいるのね。」
「私にとっても君は知らない力を持っている人だよ。」
「フフ、そうみたい、ね。あ、そうだ、八坂さん、頼みがあるのだけれど・・・。」
「出来るだけ簡単に済ませなよ。君の傷がどんどん深くなっている。」
「じ、じゃあすぐ、に済ま、せ、る、わね・・・。お師匠様・・・八意様の元に連れていって下さる?私は・・・私は、今、お師匠様に、会いたいっ!」
そう言った瞬間、突然豊姫から力が抜け、そのまま彼女は意識を失ってしまった。それを見た神奈子は早苗を見つめて言う。
「早苗、私は綿月豊姫を八意永琳の元へと連れていく。お前は諏訪子を任せたよ。」
「え?ちょっと神奈子様!?」
早苗は咄嗟に口を開いたが既に神奈子は豊姫を抱えて永遠亭へと飛んでいってしまった。
場所は変わって永遠亭。そこでは先程幽香との戦いにより力尽きた依姫を運んできた永琳が到着していた。
「お師匠様、一体どちらへ行ってたんですか?」
「太陽の花畑に行ってたわ。依姫がいたみたいで。」
「依姫様が!?一体どうして?」
「分からないわ。けど、幽香との戦いでかなり酷い傷を覆ってるからすぐに治療しないとね。」
そう言った瞬間、突然上から誰かが降りてきた。降りてきたのは豊姫を抱えた神奈子だった。それを見た永琳が神奈子に言う。
「豊姫は誰と戦ったの?」
「諏訪子と戦ってこの有り様だよ。諏訪子もこいつと同じ状態になっている。なんせ、あんたに会いたがっていたからね。」
「成程。依姫がいるから豊姫もいると何となく察していたわ。じゃあこの子は私が預かっておくわね。鈴仙、依姫をお願いね。」
「あっ、はい。」
そう言うと鈴仙は永琳に担がれていた依姫を背負った。続いて永琳は神奈子から豊姫を受け取る。と、神奈子が永琳に言う。
「・・・・何かの気配がしないかい?」
「何かの、気配?」
「あぁ、私は出会ったことがないのだが何やら感じたことのある気配なんだよ。」
「うーん、私には分からないわ。でも、何者なのかは気になるから見つけたら後で私に報告してくれるかしら?もしかしたらあの五人の誰かなのかもしれない。」
「分かった。見つけ次第報告しておくよ。」
そう言うと神奈子は気配のする方向へと飛んでいってしまった。永琳はそれを見つめて、神奈子の姿が見えなくなったのと同時に永遠亭の中へと入っていった。
諏訪子と豊姫の戦いも相討ちに終わる。
次なる戦いは一体何処で・・・。
次作もお楽しみに!