場所は変わって守谷神社。そこではカオスの軍勢に備えて東風谷早苗、八坂神奈子、洩矢諏訪子が準備をしていた。そんな中、神奈子が諏訪子に言う。
「我と早苗は妖怪の山周辺に群がるカオスの軍勢達を殺ってくる。諏訪子はここに残って襲いかかるカオスの軍勢達を殺ってくれ。我はまだ未熟な早苗を鍛えるために付き添いで行く。」
「分かったわ。二人とも無茶しちゃだめよ。」
「はい、分かっています。諏訪子様も無茶はされないで下さいね。」
そう言うと早苗は神奈子と共に妖怪の山へと飛んでいってしまった。それを見届けた瞬間、タイミングを見計らったかのように次々とカオスの軍勢がやって来た。それを見た諏訪子は溜め息を吐き、言う。
「さて、雑魚を倒していくか・・・。早苗と加奈子は何処かへ行っちゃったし。」
そう言った瞬間、一斉にカオスの軍勢の男達が諏訪子に襲いかかる。
と、その時だった。突如男達の姿が一瞬にして消え、彼らの持っていた武器が地面に落ちる。
「!?」
それを見た諏訪子は驚きを隠せず、思わず声にならない声を上げてしまう。
「驚いた?まぁ、地上の者ならそうなるかもね。」
その瞬間、奥から扇子を持った少女が微笑ましい笑みを浮かべてやって来た。そんな彼女に諏訪子が言う。
「・・・あんた誰?幻想郷では随分見ない顔のようだけど・・・」
「地上外の者って言えばいいかしらね?」
「現世から来た人?」
「残念、正解は月の都よ。」
「月の都?あぁ、確かそこであの吸血鬼がやられたって言ってたわね。」
「あのスキマ妖怪もこの私に敗れたわよ?」
「自慢してるようにしか聞こえないけど・・・。で、あんたはどうしてここに来たのよ?」
「簡単な話よ。この幻想郷巡りってところかしらね。」
「嘘憑いてるわね?もし幻想郷巡りが目的ならどうしてカオスの雑魚達を倒したの?」
「嘘が通じないなんてね・・・。あら、よく見るとあなたは陛下である月夜見が言っていた土壌神じゃない。全く気づかなかったわ。」
扇子を持った少女、綿月豊姫の言葉に腹が立った諏訪子は表情を急変させて口を開く。
「遠回しにチビって言ってるの、腹立つんだけど。」
「あら、ごめんなさいね。地上のマナーとかよく分からなくて。」
「喧嘩売ってるつもりなの?」
「そういうつもりではないけれど、丁度いい機会ね。」
「?」
「折角久しぶりに地上に来たんだからスキマ妖怪や吸血鬼以外の人と戦いたいわね。」
「それは私に殺り合おうって言ってるの?」
「そう聞こえた?」
「いいわ、やってあげようじゃない。私を馬鹿にしたことを後悔するがいい。」
「ウフフ、期待してるわね。スキマ妖怪よりも楽しい戦いを。」
豊姫が言った瞬間、諏訪子は鉄の輪を取り出す。そんな彼女に関わらず豊姫は笑みを浮かべている。それを見た諏訪子は心の中で語る。
(奴は何を企んでいるというの?全く攻撃しようとしない。まずは様子見で攻撃してみるか。)
そう言うと諏訪子はスペルカードを取り出した。そして発動する。
「土着神手長足長さま!」
発動した瞬間、諏訪子の背後から身体中茶色で手足が長い巨人、手長足長が現れた。それを見た豊姫は少しびっくりしたような顔をして口を開く。
「あら、流石土着神ね。こんな大きな巨人を呼び寄せるなんてね。でも、こんなのじゃ物足りないわ。」
そう言うと豊姫は扇子を開き、彼女に向かってくる手長足長に向かって仰いだ。その瞬間、手長足長が先程のカオスの軍勢と同じように一瞬にして消えてしまった。
「何ッ!?」
それを見た諏訪子は思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別に豊姫は言う。
「月の兵器であるこの扇子は、物体を素粒子に変えることが出来るのよ。それが例えあなたがさっき召喚した巨人みたいにね。」
そう言うと豊姫は一瞬にして諏訪子の目の前に現れるとそのまま扇子で諏訪子を殴り飛ばした。
「ぐはっ!」
そのまま諏訪子は地面に転がりながら神社にぶつかる。そしてゆっくりと起き上がりながら吐血する。そんな彼女に豊姫が再び口を開く。
「残念ね、私はただ参拝に来ただけなのに勝負をしなきゃいけないなんてね。」
「じゃあなんで普通に戦ってるのよっ!」
「あなたが私に攻撃してくるからでしょ?」
豊姫が言った瞬間、彼女の言葉に再び腹が立った諏訪子は声を上げながら豊姫に向かっていく。
「調子に乗るなぁぁぁぁっ!」
諏訪子は鉄の輪を使って豊姫を殴ろうとするが豊姫は彼女の攻撃を扇子で容易く防ぐ。そんな彼女に豊姫が言う。
「そんなに激しく動きすぎると後に疲れていって体力無くすわよ?」
「そんなのどうでもいいっ!私はあんたを倒すことだけを考える!!」
「成程、それじゃあ私もガチにならないと。エリュシオンにまた殺られないようにね。」
豊姫が言った瞬間、彼女の言葉に何か疑問に思った諏訪子は心の中で語る。
(あいつ、今エリュシオンって・・・。奴は何者だ?あいつが話す限りでは味方ではなさそうね。でもどうして・・・)
心の中で語っていた時、豊姫が諏訪子の目の前に現れ、そのまま彼女の顔を扇子で叩く。その瞬間、彼女の被っていた帽子が吹っ飛ぶ。
「隙有りね。」
「?」
諏訪子が言った瞬間、突如として豊姫の足元から白い肌に赤い目をした蛇が現れ、そのまま彼女の足に噛みついた。
「・・・ッ!」
すぐに豊姫は蛇を振り払い、扇子で仰いで素粒子にする。それを見た諏訪子が彼女に言う。
「私の蛇を意図も簡単に素粒子にするなんて・・・。流石月人ね。」
「いやいや、あなたも十分強いと思うわよ土着神さん。まぁ、私の勝手な想像だけどね。」
彼女の言葉を聞いた瞬間、諏訪子はスペルカードを取り出し、発動する。
「緑石ジェイドブレイク!」
彼女の放った攻撃は豊姫に向かっていく。彼女はそれを扇子で仰いで素粒子に変えると一瞬にして姿を消した。
「何処だ、どこにいる!!」
そう言った瞬間、彼女の背後からスキマのような空間が現れ、そこから豊姫が姿を現した。
「なっ!?」
「ウフフ。」
急な攻撃だったため、諏訪子は対応出来ずに豊姫の一撃を再び食らう。
「うっ!」
そのまま諏訪子は地面に崩れ、再び吐血する。そんな彼女に豊姫が笑みを浮かべて言う。
「残念ね、土着神さん。私はあなたに期待していたんだけれど、期待外れだったわ。まぁ、あの時の闇の青年よりは相手になったけれどね。」
「・・・・。」
豊姫が言っても諏訪子は無言のまま顔を下に俯いたままになる。そんな彼女とは別に豊姫が言う。
「・・・・どうやら、覚悟が出来たみたいね。それじゃあ、終わりにしましょう。」
そう言うと豊姫は空いている左手で諏訪子の頭を掴み、無理矢理宙に浮かせた。今彼女は豊姫によって頭を掴まれ、宙吊りの状態になっている。そんな彼女に豊姫が言う。
「じゃあね、土着神さん。」
そう言うと豊姫は扇子を開き、諏訪子に構える。そしてそのまま振り下ろした時だった。
「!?」
突如として豊姫の体に何かが生じた。その瞬間、諏訪子の顔には笑みが浮かんでいた。そんな彼女に気づかずに豊姫は彼女を放してしまう。
「うっ、ゲホッ、ゲホッ。」
その瞬間、豊姫は胸を押さえながら必死に咳き込み、その場で吐血する。そんな彼女に諏訪子が言う。
「あんた、呑気に戦いすぎなのよ。そんなんだから私の策略が読めないの。」
「あなたの、策略?」
「そう、あんたは気づいていないみたいだけれどね。少し待って少しは気づくかと思っていたんだけれど全く気がつかないんだもの。折角だからあんたに教えてあげようかしら?」
そんな彼女の表情は先程とは全く違う険しい顔ではなく、余裕の笑みが浮かんでいた。
突如苦しみだした豊姫。そして笑みを浮かべる諏訪子。一体彼女の身に何が!?
次作もお楽しみに!