自分の肩から氷柱を抜いたペルセポネは氷柱をユニ達目掛けて投げつけた。
「無駄だ。」
楓が言った瞬間、氷柱が四人とは全く別の方向へ飛んでいった。それを見たペルセポネが口を開く。
「小娘、それは一体何の能力だ?妾にとって弾幕の方向を変えられるものなど、聞いたことがあらぬ。」
「ペルセポネ、これは私自身の能力じゃない。これは私の身内がくれた能力だ。」
「フン、小娘の能力などもうどうでもよいわ。妾には到底及ばぬのだから。」
「なんだと!?」
そう言うとペルセポネは右手を上に上げた。彼女の右手には何やら紫色のオーラが漂っていた。そして指を鳴らした。
「ん?」
ユニ達はペルセポネのとった行動を理解することが出来ず、頭を傾げる。その瞬間、ユニ達のいた場所が突如として白爆発が起きた。突然の攻撃だったため、ユニ達は避けることが出来ず、ダメージを受ける。そんな四人にペルセポネが言う。
「どうだ?妾の力は。人間ごときが妾に勝てるはずなかろう。」
「クソッ、何て力だ・・・。」
魔理沙は必死に立ち上がろうとするが、中々立ち上がることが出来なかった。そんな中、よろよろになりながらもユニは立ち上がり、スペルカードを発動する。
「剣符アームストライク!」
ユニが発動した瞬間、彼女の右側に空間が現れ、その中から緑色のオーラが漂う槍が出てきた。それを見たペルセポネが口を開く。
「ゲイボルグの槍か・・・。」
「ゲイボルグの槍?」
聞いたことのない名前を聞いた霊夢達は首を傾げる。そんな二人に楓が言う。
「過去、現世にはクーフーリンという英雄がいた。その英雄が使っていた武器があの槍、ゲイボルグの槍だ。あれもかなりの力を誇っているのだが・・・。」
「だが?」
「ペルセポネはゲイボルグの槍の力を越えているかもしれないんだ。だから、ユニだけの力で倒せるか心配だ。」
そう言った瞬間、楓はユニのいる方向を見る。彼女につられて霊夢達もユニのいる方向を見る。ユニは一人でペルセポネを倒そうと槍を振り回していた。ペルセポネはそれを持っていた杖で防ぐ。そしてペルセポネは杖を思い切り槍に叩きつけた。その瞬間、ユニの持っていたゲイボルグの槍が真っ二つに折れてしまった。
「なっ!?」
「チッ、やはり無理だったか。」
楓が言った瞬間、ペルセポネは杖でユニを殴り飛ばした。そのまま彼女は霊夢達から少し離れた場所に叩きつけられる。
「ユニ!」
霊夢と魔理沙が彼女の元へと駆け寄ろうとした時だった。
「!?」
急に動こうとした瞬間、霊夢と魔理沙の体が痙攣し始めたのだ。それを見た楓が二人に言う。
「二人ともどうした!?」
「体が動かないのよ!」
「どういう訳か、体が痙攣してるぜ。」
「体が痙攣している?まさか!!」
何かを察した楓はすぐさまある方向を見る。彼女が見る方向。そこには不気味な笑みを浮かべるペルセポネがいた。そんな彼女に楓が言う。
「ペルセポネ・・・お前の仕業か!!」
「ハッハッハ、気がつくのが遅かったようだな、小娘どもよ。妾の白爆発は相手を痙攣させる力があるのだ。」
「でもどうして楓やユニには聞かないのよ?」
「白爆発にも当たり外れはある。一人、二人当たらないことは既に分かりきっている。」
「クソッ、奴を倒さなければ霊夢と魔理沙は動けないって訳か!」
彼女が言った瞬間、瓦礫の中からユニが姿を現した。彼女の体は瓦礫によって傷だらけだった。そんな中、ユニがペルセポネに言う。
「あなた、こんなことやっていいの?」
「・・・人間ごときが何を言う?」
「こんなことやってたらあなたのことを思っている冥界神ハデスが悲しむわよ。あなたはそれでもいいって言うの?」
彼女が言った瞬間、ペルセポネは思い切り歯に力を入れ、そして大声を発する。
「お前達に何が分かる!!」
「なっ!?」
突然怒鳴られたため、ユニ達は驚きを隠せなかった。そんな四人とは別にペルセポネは険しい顔をして再び言う。
「お前達に妾の何が分かると言うのだ!!妾は・・・妾は本来ならば平和な冥界で毎日を過ごしている筈だった。だが、あの女・・・あの女に会ってさえなければ妾はこんな不幸な者にならなかったのに!」
「ペルセポネ、まさかお前・・・。」
楓が言った瞬間、ペルセポネは冷静さを取り戻し、再び言う。
「元々妾は父であるゼウスと母であるヘラの間に産まれた存在だった。妾の他にもアレス、ヘルメス、アルテミス、アポロンがいた。妾を含むこの五人はいつも仲が良かった。だが、我が儘な冥界神ハデスによって妾は冥界に連れていかれ、冥界から出ることの出来ない実を飲まされた。」
「・・・・」
ユニ達は一言も話さなかった。それに気にせずペルセポネは話を続ける。
「妾は父上の元へ戻りたかった。だが、ハデスの元で暮らしている内に、冥界が妾本来のあるべき場所だと考えてしまった。だが、そんな中、あの男が突如として冥界にやって来た。」
「ある男、ですって・・・。」
「そう、ある男だ。その男は感情も無ければ心も無かった。奴は冥界にやって来ると妾にある薬を提供した。男曰く、この薬は一生幸せになれる薬、だと。妾はすぐに男の言葉を信じ、薬を飲んだ。妾の悲劇が始まったのは薬を飲んだ翌日だった。冥界の魔物が数百匹死んでいたのだ。全ての魔物は内臓をえぐりだされて死んでいた。犯人は分からなかった。だがハデスは犯人をすぐに特定したのだ。」
「その犯人ってまさか・・・。」
「そうだ、悪魔の小娘。ハデスは犯人は妾と言ったのだ!!妾は冥界魔物には興味がなく、殺す気も無かった。だがハデスは妾が犯人だと言った。妾は何とか殺していないと説得したが無駄だった。そのまま妾は実の効果を消され、冥界から追放された。」
「そんな過去があったなんて・・・。」
「冥界を追放された妾は何百年ぶりに父上の元へ訪れた。だがその時には父上はいなかった。妾は仲間のアレス、ヘルメス、アルテミス、アポロンを探した。だが彼らもいなかった。そして、母上のヘラも・・・。妾は絶望し、思わず声を上げた。もう妾の場所など無かったのだ。絶望した妾は何を考えたのか、再び冥界へ訪れ、ハデスを殺した。」
「なっ!?」
「ハデスを殺した、ですって!?」
「そうだ、妾にとってハデスは目障りな存在だった。だから妾はハデスの最後を見る前に父上達を何処へやったか聞いた。ハデスはこうこう答えたのだ。『我が全て滅した』と。怒り狂った妾はそのままハデスの息の根を止めてやった。そして妾はあの男を殺そうとした時に幸せが訪れた。ハデスを殺した妾を、カオス様が認めてくださったのだ。そして今の妾がいる。」
「・・・・。」
「後に妾は気づいたのだ。男が妾に提供した薬、それは不幸が訪れる薬だったのだ。」
「ちょ、ちょっと待てよペルセポネさん。あんたはその男に何かしたのか?それじゃなかったらあんたにあんなことをしないだろ!」
「そう、妾はハデスによって冥界に住んでいた。ほぼ数百年は冥界にいたから地上には何もしていない。妾に恨みを持つ者がいること自体おかしいことだったのだ。」
「じゃあ一体何故・・・。」
「分かる筈なかろう!!分かっていれば妾は真っ先にその男を殺しにいっているに違いない。」
「ペルセポネ、言いたいことがある。」
「何だ、小娘。」
ペルセポネに首を突っ込んだのは楓だった。彼女の右手は震えていた。そして楓は言う。
「いくらお前であろうと、こんなことをして誰のためになる!!何か利益はあるのか!?誰か得するとでも言うのか!!」
楓が言った瞬間、ペルセポネは彼女の目の前に降り立ち、彼女の腹を殴った。
「ぐっ!?」
あまりにも急だったため、楓は反応出来ずに腹を抑え、地面に膝をつく。そんな彼女にペルセポネが言う。
「余計なお世話だ、小娘。魔物を殺そうとハデスを殺そうと、カオス様に従おうと妾の勝手だろう。お前ごとき小娘が口出しするな。」
「・・・さない。」
「聞こえぬぞ。もっとはっきり言ってくれないと妾は聞き取れぬ。」
「絶対に、お前を許しはしない!ペルセポネ!!」
そう言うと楓は氷竜の剣を取り出し、ペルセポネに降り下ろす。それに反応したペルセポネは杖で防ぐ。楓は氷竜の剣を振りながらペルセポネに言う。
「お前のことを、思ってくれた人達を、何とも思わないお前を私は絶対に許さない!!」
「許す許さないなど、どうでもよい!!お前の好きにしろ!妾は気にせぬ。」
そう言うとペルセポネは空いている左手を縦に降り下ろした。その瞬間、楓の体に傷口ができ、鮮血が飛び散った。
「なにっ!?」
「これも妾の力よ。お前のような人間に力を思い知らせるには好都合なのかもな。」
ペルセポネが話している間に楓はスペルカードを取り出していた。そして発動する。
「氷界ブリザード!!」
その瞬間、楓の周りから吹雪が吹き始めた。それを見たペルセポネは鏡を巨大化させ、吹雪を防ぐ。そして言う。
「人間よ、お前は愚か者なのか?妾に特殊攻撃は通用しないと先程証明したではないか。」
そう言った瞬間、ペルセポネは楓の目の前に現れた。楓はすぐさま防御体勢に入った。だがペルセポネはそんな彼女の動きを見切り、目の前で弾幕を放った。
「ぐはっ!」
そのまま楓は10mほど飛ばされ、彼女は地面に倒れる。
「楓ちゃん!」
そう言うとユニは倒れる楓の元へと駆け寄り、優しく頭を起こした。そして彼女に話しかける。
「楓ちゃん、しっかり、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。」
そう言う楓だが、彼女の体は先程のペルセポネの攻撃により、傷だらけになっていた。そんな中、楓が言う。
「参ったな、このままじゃ負けてしまう。」
「楓ちゃん、一緒に戦おう。そうすれば勝てるかもしれないから!!」
「だがユニ、お前も瓦礫によって傷だらけで私は奴によって傷だらけだ。」
彼女が言った瞬間、ユニは自分の体を見つめ直す。彼女の体は先程の瓦礫によって傷だらけになっている。そんな中、ペルセポネが言う。
「所詮人間は何も出来ない生物なのだ。人間とは弱い存在。だがお前達は中々の腕前だったぞ。」
ペルセポネが言った瞬間、楓はゆっくりと立ち上がり、一言発する。
「やれやれ、少し私も力を入れていかなければ死んでしまうな。ならばペルセポネ、私はあまりこれを使いたくはなかったが、お前を倒すならば使わせてもらうぞ。」
そう言うと楓は自分の喉元に氷竜の剣を当てた。
「・・・何をしている?」
「楓、何するつもり?」
彼女がとった行動を見て霊夢達は全く理解することが出来ずにただ呆然と見ていた。その瞬間、楓は自分の喉元を斬りつけた。
楓がとった謎の行動。果たして何を意味するのか!?
次作もお楽しみに!