場所は変わって人里。ここでは特にカオスの軍勢は奇襲していないため、ここに住む人達にとっていつもの日常を送れているのである。そんな中、ある小屋に住む少女、稗田阿求は窓の外を眺めながら独り言を言っていた。
「平和ですね・・・。あの異変から2年が経ってるんですよね・・・。」
一人で呟いていた瞬間、彼女の小屋の近くにスキマのような空間が現れた。
「?」
阿求はてっきり紫が来たのだと思い、スキマに向かって口を開く。
「紫さんですか?どうしました?」
しかしスキマからは返事はない。聞こえるのは二人の話し声。阿求にとって空間から聞き覚えのない声が聞こえるのは初めてである。彼女は空間へ耳をよく傾けた。
「全く・・・お姉様ったら、地上にすぐに着くのに寄り道するから時間が掛かったじゃないですか。」
「うふふ、まぁいいじゃない。まだ地上はそこまであのカオスに支配されてる訳じゃないんだし。」
空間から出てきたのは紫ではなく、腰まで伸びる金髪に金色の目、襟の広い白い長袖のシャツに青いサロペットスカートを着ている少女と薄紫色の長い髪を黄色のポニーテールを用いて纏めていて赤い瞳に襟の広い白い半袖のシャツ、赤いサロペットスカートを着ている少女が現れた。それを見た阿求は目を細めて二人をじっと見る。阿求にとって二人は今まで見たことがない容姿をしている。そんな中、金髪の少女が口を開く。
「依姫、都久親王が言っていたカオスって一体何処にいるの?」
「分かりませんよ。都久親王からはカオスの軍勢達を倒せと言われただけであって何処にいるのかは知らされてません。」
「困ったわね、それにレイセンも探さないといけないわよね。」
「レイセンは私が探します。」
「あら、頼もしいわね。じゃあレイセンを探すのは依姫、あなたに任せます。私は地上にある『神社』って場所へ寄り道してるわ。」
「ちょっとお姉様!寄り道してる余裕なんて私達には無いんですよ!」
「大丈夫、大丈夫。そこへ行ったらすぐにお師匠様の元へ向かうとするわ。久しぶりにあの方に会いたいしね。」
「・・・私も、レイセンを見つけたらお師匠様の元へ行きます。」
「そうね、そうしましょう。私は神社へ行ってから行くとするわ。」
「全く、お姉様ったら・・・。」
依姫が言った瞬間、豊姫は先程から小屋から顔を出してこちらを見ていた阿求の方へ顔を向け、口を開く。
「すいませーん、そこの方。この地上でオススメの神社とかあるかしら?」
「ちょっとお姉様!」
豊姫に言う依姫だがそれに気にせずに阿求が豊姫に言う。
「そうですね、私がオススメするのはあちらの妖怪の山の麓にある神社でしょうか。」
「その神社は何という名前なの?」
「守谷神社というのですがそこは参拝客が多く、信仰されている神様、八坂神奈子と洩矢諏訪子は偉大な方でさので是非とも訪れたほうがいいですよ。」
「あら、確かその神は土壌神じゃなかったかしら?」
「よくご存知で。その通りです。」
豊姫と阿求が話している中、何かを思いついた依姫が阿求に言う。
「私も聞きたいことがあるのですが・・・。この近くに青い髪の兎を見ませんでしたか?」
「青い兎、ですか・・・」
兎という言葉を聞いた瞬間、阿求が真っ先に頭に浮かべたのは鈴仙とてゐである。しかし二人は兎ではあるが青い髪ではない。そう思った阿求は依姫に言う。
「すいません、私は見ていません。」
「そうですか・・・。」
「自力で見つけないといけないみたいね。」
「ご協力いただき、ありがとうございます。私達はここで失礼します。」
そう言うと豊姫と依姫は何処かへ歩いていってしまった。それを見届けた阿求は独り言を呟く。
「あの二方、幻想郷の人じゃない?じゃあ一体何処から・・・。」
阿求と別れた豊姫、依姫は歩きながら話していた。
「私は先に神社に行っているから依姫はレイセンを探してから来なさい。」
「それは分かったのですがお姉様、お師匠様は何処におられるのか分かっているのですか?」
「勿論、分かってるわよ。なんせ、この扇子が教えてくれるのだから。」
「そうですか・・・。」
「さ、依姫。早く探して来なさい。じゃないとレイセンが危ないわよ。」
そう言うと豊姫は守谷神社のある妖怪の山へ歩いていってしまった。それを見た依姫は溜め息をはき、ある方向を見ながら口を開く。
「まずはあそこに行ってみようかな・・・。」
依姫が向かった場所。そこは幻想郷の多くの人達がある人物を恐れ、近づくことのない場所。それはあの花の妖怪、風見幽香のいる太陽の花畑である。
場所は変わって紅魔館。そこではレミリア達がカオスの下部のアヌビスと戦っていた。
「再開する前にお前達にはイメージしてもらいたい。16倍がどれほどの力の差があるということを。」
「16倍ね、容易いわ。4倍の4倍だと思えばいいのよ。」
「レミリア・スカーレットよ、16倍でもかなりの力の差が現れるぞ。油断していれば殺られる。お前達は今、その状況に陥っている。」
「フン、関係ないわ。16倍であろうと何であろうと私はお前を倒すことに集中する。」
「面白い、では見せてみるがいい。」
そう言うとアヌビスは右手を差し出し、そこに力を込めて槍を取り出した。それと同時にレミリアもグングニルを構える。そしてスペルカードを発動する。
「神槍スピア・ザ・グングニル!」
「はあっ!」
レミリアと同時にアヌビスは持っていた槍を投げる。二人の槍がぶつかった瞬間、レミリアの放ったグングニルが一瞬にして消え、代わりにアヌビスの投げた槍がレミリアの右翼に刺さる。
「な、にっ!?」
アヌビスの勢いが強すぎたのか、レミリアはそのまま紅魔館の門を破壊し、ロビーで倒れこむ。
「お嬢様!」
すぐさま咲夜がレミリアの元へと駆け寄る。そんな彼女にパチュリーが言う。
「駄目よ咲夜、行っては駄目!」
しかし、パチュリーの警告が遅かったのか、咲夜の目の前にアヌビスが急に現れ、そのまま彼女の頭を掴み、地面に叩きつける。その後にアヌビスは口を開く。
「愚かな女よ。主のためにすぐに隙を作ってしまうなんてな。」
アヌビスが咲夜の頭を押さえつけている中、パチュリーと小悪魔が同時に弾幕を放つ。それを見て呆れたアヌビスが言う。
「力の差がありすぎるのが分からぬのか、この愚かな妖怪共がぁっ!」
そう言うとアヌビスは再び右手に槍を作り上げるとそのまま二人の放った弾幕を弾いた。その弾かれた弾幕は真っ先にパチュリーと小悪魔に命中する。
「パチュリー、小悪魔!」
フランが二人の名前を叫ぶ。それを見たアヌビスは笑みを浮かべる。と、フランがスペルカードを発動する。
「禁忌レヴァーテイン!」
フランはそのままレヴァーテインをアヌビス目掛けて放つ。しかしアヌビスはそれを右手で作ったバリアで防いだ。それを見たフランは驚きを隠せなかった。そんな中、アヌビスが言う。
「あらゆるものを破壊するお前でも16倍には到底敵うまい。」
そう言うとアヌビスは猛スピードでフランの元へ向かう。
「させません!」
フランを守ろうと彼女の前に美鈴が立つ。だがアヌビスは彼女を左手で叩き、壁の外まで吹き飛ばした。そして油断したフランの腹を蹴りつけ、レミリアの元まで吹っ飛ばす。
「フラン!」
レミリアはすぐさまフランの名前を叫ぶ。対するフランは地面に血を吐きながらレミリアを見る。だがそれを邪魔するかのようにアヌビスが二人に弾幕を放つ。
「ぐあっ!」
「きゃあ!」
その瞬間、レミリアはフランとは別の方向に飛ばされた。対するフランはアヌビスの弾幕をくらい、動けなくなっていた。
「フラン!」
彼女の名前を叫ぶレミリアとは別にアヌビスがレミリアに言う。
「言ったであろう?これが力の差だと。所詮お前のような吸血鬼など私の相手にならぬ。」
レミリアは悔しくて何も言い返すことが出来なかった。と、アヌビスがフランの腕を乱暴に掴み、宙吊りにする。それを見たレミリアが口を開く。
「待って!フランに何するつもりなの!?」
「お前の妹は私が預かっておこう。いや、お前以外の者全員を預かっておく。返して欲しければ有頂天まで来るがいい。」
「う、有頂天、ですっ・・・・て・・・」
「私はそこでカオス様と共にお前達が来るのを待とう。では去らばだ。」
そう言うとアヌビスは追い討ちをかけるかのようにレミリアに弾幕を放った。その瞬間、レミリアは動かなくなった。それを見たアヌビスはポケットから黒い粒を取り出し、回りに撒く。その瞬間、粒が一瞬にして黒い人の形になった。アヌビスは黒い人形に言う。
「レミリア・スカーレットを閉じ込めろ。他は私の手伝いをしろ。」
そう言うとアヌビスは黒い人形を率いてフラン達をさらって何処かへ行ってしまった。その瞬間、幻想郷を覆っていた紅い雲が消えていき、晴天に戻った。
アヌビスの圧倒的な力に敗れたレミリア達。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!