東方混沌記   作:ヤマタケる

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ウルガストを見事倒した啓介達。そんな中、カオスが動き始める。


第35話 カオスvs天子&衣玖

ネザーゲートから幻想郷へ再び姿を現したカオスはアヌビス、ペルセポネを連れていた。彼らが出た場所は無縁塚であった。と、カオスが口を開く。

 

「さて、ウィザーはどこに眠っている?」

 

「カオス様、ウィザーに関してはまだ情報が集まっておりません。ですので妾達が探して参ります。」

 

「ペルセポネ、今は我らの拠点となる場所を探さなければならぬ。そのためには何処を占領すれば我らのためになるかな?」

 

「カオス様、それなら有頂天を推薦します。有頂天なら空を飛べる者しか来ませんし、大軍で襲われることもありません。」

 

「成る程、有頂天か・・・。アヌビス、そこには何者がいる?」

 

「はい、そこには総領娘の比那名居天子がいます。」

 

「比那名居天子か・・・。試してみる価値はありそうだ。アヌビス、ペルセポネよ、ウィザーを復活させる前に有頂天を占領するぞ。」

 

「はっ!」

 

そう言うとそのまま三人は有頂天へと飛んでいった。ある一人の男がその話を聞いていたことに気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ここどこだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネザーゲートを通って悠岐が出てきた場所は博麗神社ではなく、妖怪の山だった。彼は誰かいるか辺りを見回す。そこには霊夢も魔理沙もユニも楓の姿も見当たらない。

 

「どういうことだ?どうして俺だけここに移動されたんだ?」

 

疑問に思った彼は後ろを振り返る。そこには本来ある筈のネザーゲートが跡形もなく消えていた。

 

「もしかするとアヌビスかペルセポネ、あるいはカオスの能力で俺だけこっちに移動されたというのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如何処からか少女の叫び声が聞こえたため、悠岐はその方向に目を向ける。

 

「誰かが襲われているのか?早く行って助けないとな。」

 

そう言うと彼は少女の声がする方向へ走っていった。しばらく走っていると何かが見えてきた。それを見つけた悠岐は草影に隠れて、その様子を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、大人しく降参を認めろ。さもないとお前の命を頂くぜ。」

 

「この命は・・・この命は、お兄様やお姉様、そして映姫様のためにあるものよ!お前らなんかに渡しはしない!」

 

そこには男複数人が赤髪でおかっぱの髪形で右手には刀を持っていて半袖にロングスカートの着物を着ていて目は赤く、腰巻をしている少女を押さえつけていた。そんな中、リーダーのような男が少女に言う。

 

「お前のような調子に乗っているガキは生きていく資格なんかねぇんだよ。とっとと死ね!」

 

そう言うと男は少女に向かって刀を降り下ろす。それを見た少女は覚悟を決め、目を瞑った。しかし、いくら経っても男は刀を降り下ろそうとしなかった。

 

「な、なんでって・・・!!」

 

少女が瞼を開いた瞬間、彼女は目を大きく見開いた。何故なら男の腕を一人の青年、悠岐が掴んでいるからだ。と、男が口を開く。

 

「なんだテメェ、このガキの味方か?」

 

男が言った瞬間、悠岐は掴んでいた男の右腕をあらぬ方向に折り曲げた。

 

「ギャァァァァァァァァ!」

 

あまりの痛さに男は叫んでしまう。そんな中、他の男達が口を開く。

 

「リーダー!!テメェ、うちのリーダーに何しやがる!」

 

そう言うと男達は一斉に刀の先を悠岐に向ける。そのた瞬間、悠岐の目が不気味に赤く染まった。それを見た男達は一瞬にして怯んでしまった。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「失せろ、下種野郎が。」

 

「こ、こいつは危険だ!逃げろー!」

 

あまりの恐怖に耐えられなくなったのか、男達はリーダーを連れて何処かへ走って逃げていった。それを見届けた悠岐は隣にいる少女に話しかける。

 

「大丈夫だったか?君。」

 

「あっ、はい、ありがとうございます。」

 

少女は素直に悠岐に頭を下げた。それを見た悠岐は少女に言う。

 

「君の名前は何て言うんだ?」

 

「私ですか?私は豊聡耳神子様の部下の小野塚妹子と申します。神子様達には少し散歩すると言いましたがそれは嘘で少し修行をしようとしたら先程のようになってしまったんです。」

 

「へぇ、神子の部下か・・・。それに、君は小野塚と言ったね。もしかして、小町の妹かい?」

 

「はい、察する通りです。私はお兄様やお姉様とは違ってまだ未熟者なので強くなろうと一旦映姫様達から離れ、強くなってから戻るつもりです。」

 

「ちょっと待ってくれ妹子。お兄様?お兄さんがいるのか?」

 

「はい、私のお兄様は小野塚篁と言います。」

 

「小野塚篁?聞いたことないな。」

 

「お兄様は最強の魂狩人(ソウルハンター)と言われていてお姉様とは違って主に悪の心を持った魂を映姫様の元へ運ぶ仕事を務めています。」

 

「相当強そうだな、君のお兄さんって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、妹子。ここにいたのですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性の声が聞こえた瞬間、二人は後ろを振り返る。そこには妹子に手を振る神子がいた。それを見た妹子が彼女の元へ向かっていく。

 

「神子様!」

 

「妹子、何処へ行っていたのです?私達は心配してましたよ。」

 

「ごめんなさい、神子様。私は皆様の役に立てたらいいなと思っていてつい・・・。」

 

「大丈夫ですよ、この世の全ての者にはその人自身の欲があるのです。このような事が起こってしまうのは仕方ありません。」

 

「あっ、はい・・・。」

 

妹子が言った瞬間、神子が悠岐を見ながら笑みを浮かべて口を開く。

 

「あなたが妹子を助けてくれたのですね?ありがとうございます、悠岐さん。」

 

「礼はいいよ、神子さん。人を助けるのが俺の役目だしな。」

 

彼が言った瞬間、何処からか二人が走ってくる音が響いた。三人はその方向に目を向ける。そこには布都と屠自古がいた。そして妹子の方へ笑顔で向かいながら言う。

 

「おーいイモ!無事だったか?」

 

「イモ!心配したんだぞ。」

 

二人が言った瞬間、妹子の顔が赤くなり始める。それを見た悠岐が首を傾げる。そして妹子が二人に叫ぶ。

 

「イモじゃないです!妹子です!」

 

「あはは、すまぬイモ。」

 

「ごめんな、イモ。」

 

「だからイモじゃないですって何回言えば分かるんですか!!」

 

三人のやり取りを見た悠岐は苦笑いを浮かべ、逆に神子は汗を垂らしながら言う。

 

「布都や屠自古は何故か妹子のことをイモって呼ぶんですよ。そのほうが呼びやすいみたいで・・・。」

 

「逆に妹子は嫌がってるな。さて、神子さん。俺は大事な用があるからここで失礼させてもらうよ。」

 

「話は聞いています。カオスのことですよね?」

 

「・・・あぁ、そうだ。」

 

「あなたの無事を祈ります。」

 

「ありがとう。それじゃあ、行ってくる。」

 

そう言うと悠岐は何処かへ走っていった。神子はそれを彼の姿が見えなくなるまで見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有頂天へ辿り着いたカオス達は辺りを見回す。と、カオスが口を開く。

 

「ここで良いのだな?アヌビス、ペルセポネ。」

 

「はい、間違いありません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰よ、あんた達。」

 

「ここへ何の用があるのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如二人の少女の声が聞こえたため、カオス達はその方向に目を向ける。そこには有頂天に住む天人、比那名居天子と永江衣玖がいた。それを見たカオスが言う。

 

「成る程、あの小さいのが比那名居天子で大きいのがその部下の永江衣玖か・・・。」

 

「あんたのような勝手にここへ侵入してくる不届き者は私と衣玖が排除してやるわ。」

 

「総領娘様、無理はせぬようお願いしますね。」

 

「お前達は勇敢だな、正面から我に当たってこようとするとはな・・・。その勇気だけは褒めてやろう。だが・・・。」

 

その瞬間、カオスが天子の目の前に一瞬にして移動していた。そして右手に握り拳を作る。

 

「総領娘様!」

 

カオスの攻撃が天子に当たる前に衣玖が彼女のことをかばった。忽ちカオスの攻撃は天子には当たらず、衣玖の腹に命中した。

 

「がっ・・・」

 

その瞬間、衣玖の腹からバキバキという肋骨が折れる音が響き、そのまま衣玖は吐血しながら地面に倒れる。

 

「い、衣玖ー!」

 

はっと我に返った天子はすぐに衣玖の元へ向かう。しかし、それを邪魔するかのようにアヌビスが彼女の目の前に現れ、天子の顔を殴り付ける。

 

「ぐあっ!」

 

そのまま天子は5mほど飛ばされ、地面に倒れる。それを見たアヌビスが言う。

 

「少し力が足りなかったか。まぁ、このような小娘に最大倍率を出す必要もないか。」

 

「っ、そこをどけぇぇぇぇぇ!」

 

そう言うと天子は再び起き上がり、衣玖の元へ向かおうとする。それを見て呆れたアヌビスが口を開く。

 

「そこまで仲間の心配をする必要はないというのに・・・。お前はまず自分のことを優先したほうが良いのではないか?まぁ、今更言っても遅いか。ならば折角だ。私が少し倍率を上げてやる。」

 

そう言うとアヌビスは天子の方へ目を向ける。天子は緋相の剣を取りだし、アヌビスに向かってきていた。その瞬間、アヌビスは目を大きく開き、天子を殴り付ける。

 

「フン、二度も同じ手には掛からないわよ!」

 

「さて、それはどうかな?」

 

緋相の剣でアヌビスの攻撃を防ぐ体勢に入った天子だが、アヌビスの力が強いのか、彼のパンチは緋相の剣を砕き、天子の腹に命中した。

 

「ごはっ!」

 

その瞬間、衣玖の時と同様に天子の腹からバキバキという肋骨が折れる音が響いた。そして地面に吐血する。そんな中、アヌビスは天子には前髪を掴み、無理矢理自分の目線に合わせた。そして言う。

 

「今の私の倍率は16倍だ。普通でも強い私の力が16倍となって腹にくるのはどんな気分だ?」

 

「総領娘様・・・」

 

アヌビスによって体が傷ついていく天子を衣玖はなんとかして助けようとするが先程のカオスの攻撃によって肋骨が折られ、どうしようも出来なかった。そんな中、カオスが口を開く。

 

「もう良い、アヌビス。良くやった。後の処理は我に任せろ。お前達には働いてもらう。アヌビス、お前は紅魔館を。ペルセポネ、お前はウィザーを探し、復活させろ。今すぐ行け!」

 

「はっ!」

 

そう言うとアヌビス、ペルセポネは地上へ降りていった。それを見届けたカオスは傷ついた二人の元へ歩み寄る。そして言う。

 

「処理すると言ってもまだ我は貴様らの能力を知らぬ。殺すのは何やら勿体ないな。」

 

「殺すならとっとと殺しなさいよ!」

 

「ほう、死を覚悟するか。中々勇敢でよろしい。ならばこうしようか。」

 

そう言うとカオスの顔に笑みが浮かんだ。そしてカオスは二人を掴むと自分の目線に合わせた。そして言う。

 

「我が贄となるが良い、比那名居天子に永江衣玖よ。」

 

「な、何をするつもりですか・・・」

 

「何、察してくれれば問題ないよ。」

 

そう言った瞬間、カオスが信じられないくらい大きく口を開いた。それを見た瞬間、二人は逃げようと必死に抵抗するがピクリとも動かなかった。

 

「嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「止めて!」

 

しかし、二人の嘆きは誰かに届く筈もなく、そのまま天子と衣玖はカオスの体内に取り込まれていった。




カオスにやられた天子と衣玖。そして地上に近づくアヌビスとペルセポネ。幻想郷はどうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!

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